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『キャビン・フィーバー スプリング・フィーバー(旧題キャビン・フィーバー2)』(2009)/下品系ホラー部分も良いけどタイ・ウェスト作品に期待する人間ドラマや冴えないヒロインのエモ描写がやっぱ良かった🦠


原題:Cabin Fever 2: Spring Fever 監督&原案:タイ・ウェスト 製作国:アメリカ 上映時間:86分 ※劇場未公開作品

 

 

地味に観たかったがタイ・ウェスト作品、アマプラに来てたのですぐ観た。
「X」三部作の第一作『X エックス』 (2022)は「なんか悪いけとか70年代ホラーが好きそうで趣味が良いけど面白いような面白くないのか……」という感じだったが前日譚を描いた続編『Pearl パール』(2022)が傑作すぎて、過去作が配信に入ったら観てるタイ・ウェスト監督作。今年か来年あたりに公開されるであろう完結編の『MaXXXine(原題)』(2024)は今一番楽しみな新作の一つだ。
タイ・ウェストの過去作と言えば『インキーパーズ』(2011)もまた「面白いような面白くないのか……」という内容だったが異常にエモかった。それでいてわかりやすい見せ場がなく(幽霊映画なのに幽霊が出てこず若者がダラダラしてる時間が大半)釈然としない作品なのでネットの評価はめっちゃ悪い。でも僕は凄く良いと思った。
最近アマプラを検索してたらこれがあったので早速観た。
本作の一作目はイーライ・ロス監督の長編デビュー作『キャビン・フィーバー』(2002)。これは一言で言うと田舎に来た若者たちが謎のウイルスに感染して身体がグシャグシャに崩れていくウイルス系ホラー。メインの内容よりもどっちかというと「パンケーキ!」を連呼しながらカンフーキックをスローモーションで繰り出す長髪の男児がいたり本作にも登場する不真面目な警官など、全体的に「メイン以外が面白すぎる」→「この監督面白そうだな」と一気にイーライの人気が出た(それに続いて監督したのが『ホステル』1&2なので一気に人気者になった)。
本作はその『キャビン・フィーバー』(2002)の正式な続編だがイーライ・ロスは離れているし別に続編を観たいタイプの映画じゃなかったしビデオスルーだったので僕もスルーして15年……経ったがまさかその監督の映画に感動して掘り返す事になるとはわからんもんだね。
当ブログに感想とか描いてないけど短編とかも可能な限り観てる。
V/H/S シンドロームのgockの映画レビュー・感想・評価 | Filmarks映画

本作は、アマプラでは『キャビン・フィーバー スプリング・フィーバー』 という邦題だが映画情報サイトなどでは『キャビン・フィーバー2』になっている。多分、昔DVDが出た時は『キャビン・フィーバー2』だったけど配信するにあたって邦題が変わったのだろう(細かいけど『キャビン・フィーバー2 スプリング・フィーバー』になってるサイトもある)。
こんな映画、検索するやつ殆ど居ないだろうが一応、検索に出るように記事タイトルに2つ書いておいた。
ちなみに3作目は1の前日譚『キャビン・フィーバー ペイシェント・ゼロ』(2013)、イーライ・ロスが製作総指揮&脚本を務めて一作目をリブートした『キャビン・フィーバー』(2016)というのもある。が、どちらも観てない。多分どちらも観てない。
YOUTUBEなどに比べて旧作の記事って殆ど誰も読まないので(本作のような不人気作は特に)、ほぼ虚空に向かって喋ってるような虚しさがあるが自分のために書いてるので頑張っていこう。

ネタバレあり

 

 

 

 

前作は、田舎に遊びに来た大学生の若者たちが身体が崩れ落ちるウイルスに罹って全滅する。主人公も感染して川に落ちて死んだ。

……と思ったら生きててゾンビみたいになりながらスクールバスに轢かれて『ロボコップ』の悪人みたいに粉微塵になって死んだ。
前作ラストで確かに死んでた気がするがこの粉微塵になって死ぬ華々しいオープニングのために蘇らせられて殺された感。
OPで前作の主人公の血肉がこびりついたスクールバスから運転手が感染したり、前作のウイルスがどっさり入った飲料水が学校に運ばれる様がアニメで描かれる。
www.youtube.com
本作の主人公は前作の山の近くの高校
生徒たちは卒業間近でプロムパーティの噂をしている。
主人公は医者になるため大学進学が決まっているジョン(演:ノア・セガン)。
そのジョンが幼い頃から想いを寄せているが彼氏がいるキャシィ(演:アレクシス・ワッサー)、ジョンの親友は大柄のアレックス(演:ラスティ・ケリー)。
前半~中盤で、徐々に生徒や職員たちの中に感染し始めるものが増えていく。
主人公の親友の大柄も、振られて泣いているビッチ系女子生徒に「どしたん?話きこか」と優しく話しかけたら猛烈にオーラルセックスされる。ラッキー。しかしビッチ女生徒の口にはヘルペスみたいなものが出来ていて殺人ウイルスに感染していた。このラッキースケベによって大柄は既に死んでしまった。

ジョンはキャシィと仲がいいのだが、キャシィの暴力的な彼氏に嫉妬していつも絡まれている。だがジョンは勇気を出してキャシィをプロムに誘う。
既に何人か感染者が出始めているプロム。感染者古参のスクールバス運転手は悪ガキ達を嫌ってるのでパンチに尿を混入させる。
これによってジョンとキャシィが殺人ウイルス+ションベン入りパンチを飲む飲まないのプチスリルを演出。だがキャシィの嫌な彼氏が二人の間に割り込んできたおかげで2人は死ぬパンチを飲まずに済んだ(こんなシーンで「世の中なにが幸いするかわからんな」と考えさせられてしまった)。
それにしてもこの、北米のプロムという風習、そしてアメリカの高校生のパーティに必ず出てくるパンチという飲み物(大きいボウルに甘い粉を溶いたカラフルな飲み物?)。これどんな味なんだろ。めっちゃ甘そう。それよりもデカいボウルに入った飲み物をパーティの間じゅう放置してて、飲みたい時は柄杓のような物で掬ってコップに入れて飲む。……いやぁ、これ汚いだろ……ホコリとか小さい虫とか入りそうじゃん。
パンチを飲もうとしてキャシィの嫌な彼氏に絡まれて外に出たジョン。
追いかけてくるキャシィ。
ジョンは感情を爆発させて「僕にはわからないよ!何で君がバカなのか!君は凄くいい娘なのに、よりにもよって何であんな嫌な奴と付き合ってられるのか!」「僕が君のことをずっと昔から好きなのは周りの奴ら皆知ってるのに何で君は知らないの?バカだから!?もう僕のことは放っといてくれ!」と叫ぶ。キャシィはさめざめと泣いている。
このジョンが激怒しながらキャシィを褒めつつ激怒したまま告白する一連の流れは演技も言い回しも素晴らしい。めちゃくちゃ良い!ジョン役の青年の表情とか言い方、弱りきって聞いてるキャシィ、全て良い!
キャシィもまた自分の腕を抱いて「しく……しく……」と泣いていて凄く良い。
演じてる女優さんはあまり見かけないが今は脚本とか監督も始めてる女優らしい。凄く特徴的な、美人なんだかそうでないのか曖昧なそれでいて奇妙な愛らしさのあるルックスをしている。そしてこのキャシィというキャラも「優しくてお人好しで……しかし嫌な奴と付き合ってる女子」という絶妙なキャラ。
成績優秀なジョンに「貴方が医者になってこの町に帰ってきたら皆、太って子育てしてるわ。私には特に目的もない。私の彼氏もきっと貴方が羨ましくて焦って意地悪してるんだと思う」とか言う。ジョンはキャシィの事が好きだがキャシィの方は、ジョンに置いていかれると思ってる女の子なのだ。
ジョンの怒りと泣きが入った告白をしくしく泣いてるキャシィを見てると、しょうもないエログロホラーのステレオタイプなキャラを超えて、何だか自分の幼馴染かのような人間味を感じてキャシィが愛おしくなってくる。
『インキーパーズ』(2011)のヒロインも割と似たタイプのキャラだった(可愛いのかそうでないのかよくわからないルックスの、目的がない儚い凡人の女子)。『インキーパーズ』(2011)のヒロインも好きだったな。『Pearl パール』(2022)のパールも殺人鬼ながら、薄幸どんづまり少女って感じで凄く心を揺さぶられた。何かタイ・ウェストの描く凡人の女の子キャラはツボに深く刺さりますわ。

……といっても本作はそんな風に人間ドラマを観るものじゃなくて全編、SEXと血と爛れる皮膚とチンコとゲロとションベンと堕胎……そんなのばっかりのエログロホラーなのだが。でも個人的にこの監督の人間ドラマやキャラクター造形は凄く刺さる。
このシリーズの本来の楽しみ方は、思春期の生々しい「生」と色んな気持ち悪い描写をシンクロして描くのがこのシリーズだからね。
タイ・ウェスト作品にはカッコいい映像とかホラー演出もそうだが、こういう人生うまくいかないやりきれなさを感じるタイプのエモさを求めてるので、このシーンで割と元は取れた気がする。
しかしスーツを着た政府のエージェントがジョンとキャシィを高校へと送り返す。政府は、学園の者は全員がウイルスに罹患したと見て、全員を校舎に閉じ込め、逃げるものは射殺して全員見殺しにするつもりなのだ。
ジョンとキャシィは大柄アレックスと合流し脱出しようとする。
プロムのパーティ会場は全員発症して血の池地獄になっている。
そんで前半のラッキースケベのせいで発症したアレックスとか、ジョンの過剰な治療法とか、キャシィの嫌な彼氏との決着とか色々ありつつ映画は終わる。
前作にも出てた声の高い不真面目警官は本作にも全編出ており、上手く使われている。
しかしジョンの過剰な治療法は、結局失血により逃げられなくなるし恐らくキャシィも罹患したであろうし、やんない方がよかったよね……。
色々下品に振り切ったメインのホラー部分は悪くないが、さすがにイーライの『キャビン・フィーバー』(2002)の方がいいかな?
自分的にはタイ・ウェストっぽいエモ描写&行き止まり系凡人ヒロインを期待して観たので、割と観たかったものはジョンとキャシィの言い合いのところで満足して後はオマケって感じだったが……この監督、Xシリーズ終わったらホラー以外の映画を観てみたいかも?

他のアマプラにあるタイ・ウェスト作品『サクラメント 死の楽園』『ゼム』を観るか、次は。

 

 

 

そんな感じでした
〈タイ・ウェスト監督作品〉
『Pearl パール』(2022)/製作&脚本もしてる主演のミア・ゴスと彼女が演じる主人公のどうしようもなさとタイ・ウェスト監督らの異常な真剣さに物凄く心が動かされた👩🏻🪓 - gock221B
『インキーパーズ』(2011)/死ぬほど低評価の何も起きないホラーだが自分には掛け替えのない一本になった変な映画。Xシリーズのタイ・ウェスト監督作品👰 - gock221B
『X エックス』 (2022)/公開時に観てピンと来なかったのだが傑作だった続編『Pearl パール』(2022)観たら思うところあったのでもっかい観て感想書き直した❌ - gock221B
『サクラメント 死の楽園』(2013)/前回観た時パッとしなかったがタイ・ウェストにハマって再見してもやはりイマイチだったが感想書いてる間に良さに一つ気付いて少し評価上がった。今回もまた本題以外の可哀想な少女で演出してた感🥤 - gock221B

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Amazon.co.jp: キャビン・フィーバー スプリング・フィーバーを観る | Prime Video

Cabin Fever 2: Spring Fever (2009) - IMDb
Cabin Fever 2: Spring Fever | Rotten Tomatoes

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