gock221B

映画やドラマの感想ブログ 😺🐱 殆どのページはネタバレ含んだ感想になってますので注意 😺 短い感想はFilmarksに https://filmarks.com/users/gock221b おしずかに‥〈Since.2015〉

『インキーパーズ』(2011)/死ぬほど低評価の何も起きないホラーだが自分には掛け替えのない一本になった変な映画。Xシリーズのタイ・ウェスト監督作品👰


原題:The Innkeepers 監督&脚本&制作&編集:タイ・ウェスト 製作国:アメリカ 上映時間:102分

 

 

かつて『ホステル』などで好きだった監督イーライ・ロスに見出されたタイ・ウェスト監督は近年、2作まで公開されているX三部作(『X エックス』 (2022)『Pearl パール』(2022))でブレイクした。自分も好きなので過去作のコレも観てみた。
他には『キャビン・フィーバー2』(2009)と『サクラメント 死の楽園』(2013)も過去に観たのだが正直ピンと来なかった。いや、むしろ『X エックス』 (2022)ですら半分くらいしか理解できてなかったのだが『Pearl パール』(2022)まで観たら、さすがにこの監督が物悲しい持ち味が理解できたので色々と観返そうとしてるのが今です。昔ピンと来なかったものや未見のものもそのうち観てみようと思う。
そして、この映画『インキーパーズ』(2011)もまた、ネットで感想を探すと酷評ばかり、だがそれも凄いわかる。僕もこの2011年とかに観てたら「なんやこれ……?」と忘れてた気もする(現に他の過去作にはそうしてたし)。……いや、当時観てても多分好きだろうな。
だけど「Xシリーズ監督の過去作洗い直してみるか」というタイ・ウェスト掘り起こし作業で観たという経緯だったのは間違いない。タイ・ウェストの名前なしで本作のジャケットを配信サイトで見かけても無名の人しか出てないから再生してなかっただろうしね。
どうでもいい話だが、このブログは「映画観るまでの動機や動線などの心の動きも映画の感想の一部」だと思って大事にしてるので書いときました。
完全にネタバレありだが、ネタバレせず観た方がハラハラを楽しめるというのはある。だから「以降読まずに観てくれ」という気持ちもあるのだが、しかし本作を観た人の殆どは「ハラハラもしないし面白くもない」という感想を抱く人の方が多い。それを加味すれば……まぁ好きにしてほしい。以下を読み始めて「自分自身で確かめてみたいかも」と思ったら読むのをやめて観てほしい。ネタバレしたら僕と同じようなものはもう味わえなくなるのでよく考えてください。

ネタバレあり

 

 

 


あまり宿泊客が来なくなってきて数日後に廃業が決まったホテルが舞台。
フロント&客室係は若い女クレア(演:サラ・パクストン)と中年男性ルーク(演:パット・ヒーリー)。
二人は泊まり込みでホテルに滞在している。
ホテルに泊まってるのは、夫と喧嘩して息子を連れて家出中の主婦、そして近くである講演会のために泊まってる元女優の霊能力者リアン(演:ケリー・マクギリス)……だけなので、二人はほぼする事がなくボーっとしたり二人でふざけたり交代で寝たりして過ごしている。
このホテルには過去、結婚式当日に男に逃げられて首を吊った花嫁の幽霊が出るという都市伝説がある、が二人はまだその霊を見たことはない。
一応この幽霊が本作のメインディッシュなのだが花嫁の幽霊は、この映画本編の95%くらい出てこない。
恐らく、これが酷評されている一番の理由だろう。
ここ20年で一番売れてる幽霊系ホラー映画と言えばジェームズ・ワン製作の幽霊屋敷映画2シリーズ(『インシディアス』シリーズ(2010-)『死霊館』ユニバース(2013-))がある(というか、どちらも新作作り続けてるし13年も続いてる事に気付いてビビった)。
それらは前半で民家で霊障が起こって、専門家がやってきて最終的には解決する……というのがおおまかな流れ。霊障だとか解決する工程にバリエーション作って工夫して数十本作り続けてるが(こう書くと凄い)、ざっくり言うとどれもこの流れ。
で、幽霊系ホラーに疎い人とかが観たらこの第一幕の「民家で霊障が起きる」って部分を指して「なんにも起きないじゃん!つまらない」とか言い出す。
この「幽霊系ホラーに慣れてない人」または「幽霊や怪談が嫌いなので否定したい思想の人」にとっては、幽霊がモロに出る前の「前触れ」部分は「何も起きてない」と言いがち。本当はこの部分も「起きてる」のだが幽霊に興味ないせいでそういった辛い見方になる。imdbやロッテントマトなどを見るとホラーの評価は全体的にめっちゃ低い。
今も昔も多くの人が「しっかり作られてて」「中身がある」と思う映画というのは「前半の伏線を後で回収したり」「終盤で感動的」なものが多い(具体的に言うと『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズとか『ショーシャンクの空に』)。あとここ20年くらいで「B級映画っぽい内容だが、3時間近くの長めの映画に作って壮大な劇伴を流す」というのも褒められやすい映画の条件になってきた(具体的にはクリストファー・ノーランとか『NOPE/ノープ』(2022)以降のジョーダン・ピール)。
で、10年以上全米大ヒットし続けてるジェームズ・ワン製作の幽霊屋敷映画でもそうなのに、本作はその五倍くらい幽霊が出てこないのだから「『何も起こらない』中の何も起こらない映画!」と言われても仕方ないところはある。
では本作の殆どの時間、何を観るかというと主人公の女の子クレアと中年男性ルークを見つめ続ける事になる。
本作の……少なくとも90%くらいは暇そうにしているこの主人公二人を見つめることになる。

 


まず主人公クレア、彼女は特に目的のないフリーター。だが性格が良く、困っている人がいると積極的に親切にする(だが、この性格の良さのせいで酷い目に遭う)。
もう一人は30代後半~40代半ばくらいの中年男性ルーク。物静かな彼は大学中退したかなんかで?(忘れた)フリーターしている。仕事中のほとんど暇なのでルークはホテルのドアがひとりでに動いて……るかもしれないって感じの微妙な映像をUPした心霊ウェブサイトを作って遊んでいる。
要は二人ともパッとしない。しかし我々の殆どの者はパッとしない、故に彼女たちは我々だとも言える。
近所で行く所はカフェしかないが店員の女が自分の恋バナを長尺で捲し立てるので二人ともあまり行きたくない。
ホテルのオーナーは遠出してて劇中には最後まで出てこない。
そういう事で二人は霊が出る……という噂があるホテルにずーっと缶詰になっている。
クレアはルークがノートパソコンでポルノを観ている事をからかったり、ルークは怖がりのクレアを脅かし、その度にクレアは「きゃああ!」と良いリアクションを取ってルークは嬉しそうにしている。二人ともふざけてばかりでなく仕事する時はパッとするし、暇になったら同じテンションでサボる。「気が合う同僚」という感じ。
第一幕(映画の最初の三分の一)では、この二人がダラダラしてる様を見せる。
花嫁のオバケは……クレアの悪夢とか背景でちらっと出た気もするが殆ど覚えてないくらいだし「ほぼオバケは出ない」と言ってもいい。
僕はこの二人に好感や共感、親近感を持ったので何時しかオバケのことは忘れて「観れるなぁ」と思って観ていた。
本作を観た同時期に公開中の『コカイン・ベア』(2023)も観た。『コカイン・ベア』(2023)は割と全編面白い場面がある愉快な映画だったが、あまりに全編愉快なので特に書くことないな……と思ってブログに書くのが面倒でFilmarks送りにしてしまった。そう思うと「映画って三分の一くらいつまらない場面があった方がいいのかも?」と思った。俺だけか?少なくともブログに書くのなら面白さが全面に露出してるより分かりにくい面白さの方が書いてて楽しいと言える(その代わり、そんな映画は興味ある人も少ないのでアクセスも限りなくゼロに近い。僕が書いたら見たいという数人?数十人?だけのために私信を書いてるようなものだ)。まだ観てないんだけど『RRR』とかも、多分書くことなんかない気がするし。
また、さっき多くの人がそう思うみたいだから便宜上「何も起きない」「つまらない時間」と書きはしたが、個人的にはこの映画は最初からずっと面白かった。
中盤あたり?あまりにする事がないのでクレアはホテルの各部屋で集音したりして花嫁の霊を探し求めるようになる。
オカルト的には「クレアが霊に引っ張られてる状態」とも言える。
一人でホテルの誰も居ない部屋とか地下とか探ってる間にも、ちょっとした事でビビったりルークに脅かされてビビったりするので「この子は霊が怖いのか怖くないのかどっちだろ?」と思った。
というか僕あんまり映画とか漫画とかフィクションで登場人物をそれほど好きにならないが、特にやりたい事ないが親切なクレアのことが好きになってきた。好きっていうか「自分と仲良くなる女の子って大抵こんな感じの子だったよね」という親近感みたいな感じというか。
ホテルに霊能力者リアンがチェックインする。彼女はこの作品世界で「有名なドラマに出ていた元女優」でクレアは彼女のファンだったという。
クレアはリアンにファンだった事を告げるがリアンはクレアに女優を目指したりなどの夢がない事を指摘してクレアは傷つく。ルークはそんな傷ついたクレアを見て、仕返しでリアンの霊能力を侮辱する(この時にリアンが「デ・ジャブの逆の感じが霊能力」みたいな事を語ってたのが印象的でもっと訊きたくなった)。
ある夜クレアが花嫁の霊を見たか何かでビビりあげて仮眠しているルークの部屋に行く。ルークは霊を怖がるクレアに「しょうがないな、じゃあ入りなよ」と言うが、パンツ一丁のルークを見て「そういえばこいつも男だった」と思いだしたのかクレアは正気に戻って断る。ここ印象的。
ホテルに三組目の客が来た。老人だ。わざわざ遠くからこの廃業数日前の古びたホテルに泊まりに来たという。老人は「思い出が詰まっている三階のある部屋に泊まらせて欲しい」と言うが、三階は既に家具を運び出して宿泊できなくなっている。ルークは断るが、親切なクレアは「TVとか何もないけどベッドにシーツ敷いただけなら可能ですよ」と老人を案内する。誰がどう考えても「結婚式当日に消えて花嫁が自殺するきっかけになった花婿ではないか?」と思わせる爺さん。親切心故に爺さんを目的の部屋に泊めてしまった事といい、全体的にクレアの親切心が結末に向かって集束している。
ここ最近、花嫁の霊をちょいちょい見始めたクレアは、ルークと暇な時間に飲んでるとルークがクレアに「実は君が好きだ。俺たち気が合うと思う」などと唐突に告白する。クレアは「……そうだ、地下で花嫁の霊を呼び出そう」と地下に行く。凄くよくある告白のかわし方。確かに気が合ってると言えなくはないがルークはクレアから見たら10も20も歳上の、ほぼ無職だからダメなのか。
酔っ払った二人は地下で、集音器?みたいな機械で花嫁の霊を探知する。怖がりだったはずなのにワクワクしてるクレアと対称的に、めちゃくちゃ青ざめるルーク。そうルークが心霊サイト作ってたのは暇だからやってただけで本当に幽霊を信じていたわけではなかった。しかし今、霊がすぐ近くまで来ている!
クレアが「やば。私のすぐ後ろに誰かいる」と言ったらルークは恐怖の限界に達してしまい「クレアごめん!悪いけど俺帰るわ!」と車に乗って走り去ってしまった。
仕方なく霊能力者リアンを訪ねて花嫁の霊の話をするクレア。リアンは地下に降りてダウジング的な事をすると「今すぐ、ここから出ないと全員死ぬ!」と言う。
クレアは、三階の爺さんの事を思い出し部屋に行くと、やはり自殺して死んでいた。
結局この爺さんは花嫁の霊の花婿だったのか?多分そうだと思うが……しかし「全く関係ない爺さんがホテルに呼ばれて勝手に死んだ」と考えると、そっちの方が怖くて良い気もしてくる。
ここで勝手に帰った事を反省したルークが引き返してくる。クレアは自殺した老人のことや霊能力者リアンの事を告げると、ルークは「ちょっとリアンの様子を見てくる」と2階に上がる。クレアは……何でだったか忘れたけど何か探しに地下に降りる。もう完全にホラー映画クライマックスで悪霊と出会う最後の流れ。
何でこんな一大事で地下に降りるねんという気もするが、やはり執拗に花嫁の霊について調べてた前半の時点で、花嫁の霊に呼ばれていたと見た方がいいだろう。
「特に夢ややりたい事がない」といったクレアの性格も幽霊に魅入られそうでもある(人間的に「空洞だから中に入られそう」という意味で)。
地下では、さっき見た自殺したジジイの霊や花嫁の霊に追いかけられる。
クレアは「花嫁の霊に真相を聞いてあげよう」という感じでオバケ探ししてたり、無理言う爺さんに親切にしてあげた結果こんな事になった。やはりルークみたいに訳のわからんものからは、ある程度、距離を取った方が正解なんだろうな。
地下からガレージに出る扉は鍵がかかってる「助けて!」と叫ぶクレア。背後から花嫁の霊が迫る。
しかし、さほどハラハラせずに観ていた。やはり映画ファンから見るとクレアは死ぬ流れにないからだ。ルークは一回帰宅してたのに、わざわざ引き返して来た、だからそろそろルークが来て地下への扉を開けてくれるはずだし、そうでなければ霊能者リアンが来るかもしれない。どう考えてもクレアは助かって夜が明けて「ホテルも終わったし、やりたい事さがすか」とルークと言い合って終わりという流れだろうどう考えても。
でもカットが変わるとクレアは普通に死んでた。
だから「ええーっ!?」とめちゃくちゃビックリした。さっきも言ったが色んな細かい技で、クレアが死にそうなフラグが立ってないように思えたのだ。
「霊に呼ばれてる」とは言ったが、それは最後に「危なかった~」と笑うために呼ばれてるようにしか見えなかった。
死なないと思って観てたら死んでしまったので、クレアがダラダラしたりルークとはしゃいでる事が思い起こされて現実の友達が死んだくらい哀しくなった。
監督は、この悲しみを味あわせるため狙って最初からクレアや、ホテルの霊現象を撮ってたとしか思えない。言うて映画、特にホラーにおいて「人が死ぬ」というのはありきたりな出来事なわけで、殆どのキャラクターは観ながら死を連想させる。
老人→そもそも死にやすい。主人公の家族や友達や子供キャラやペット→死んだら哀しいから死ぬかも?パリピや不良→よく死ぬ。親切な人→善悪が幽霊に通用しない事を示すために死ぬかも?……そんな感じでクレアが死ぬ可能性があったとすれば……「他人に親切」「自殺した女の霊に同情して?積極的に近づく」というのは割と死にそうゲージが高まってたと言える。しかし全編フワフワしてるフリーターっぷり、あれが何か死にそうゲージを下げてたんだよね。俺だけか?
そして映画全編に幽霊が出てくる回数があまりに少なすぎたこと、特に前半は幽霊のことを忘れかけて「寂れたホテルの日常を描いたミニシアター系サブカル映画」みたいに観てたよね。あの時間が異常に長かったため「クレアが死ぬかも」という要素が俺の意識からはみ出てしまったのかも。狙いか偶然か、見事に感じたことない悲しみを味わった。下手したら映画の中で人が死んで一番悲しかったまであったかもしれん。
呆然とするルークはリアンに「あんたなら助けられたんじゃないのか?」と言うが、リアンは「彼女を助けられる道はなかった」と言う。
そもそも、このリアンの存在も何なんでしょうね?このリアンを演じてるのは『トップガン』(1986)トム・クルーズの相手役セクシー美人教官役を演じてたケリー・マクギリスさんなんですよね。でも彼女は女優にしては若くして異常に老けた事でも有名で(+20歳くらいの加齢を感じる)そのせいか現役の女優なのに『トップガン マーヴェリック』(2022)でも外されたのが何だか当時気になったな。近年はホラー映画でよく見かける。
本作でも「昔、映画とか出て有名な女優だったが今は霊能力者」という、妙にケリー・マクグリス自身を思わせるキャラを演じてるのだが「このキャラで何か言いたそうだが何が言いたいのかわからない」という事が凄く気になる。
また死んだ花嫁と後追い自殺したジジイが、クレアとルークとシンクロしてるのかな?とも思ったが、これまたはっきりわからなかった。
そんな感じで監督の色んな意図がよくわかってない感はあるが、心霊との関わりを真摯に描こうとしてる様や「親しみやすいクレアが死んであり得ないほど哀しい」という感じは味わえた。
『X エックス』 (2022)『Pearl パール』(2022)と並べて考えると、やはり妙な物悲しさやエモさ、女の子の可愛さなどが共通してると言えなくもない。

 

 

 

 

そんな感じでした

〈タイ・ウェスト監督作品〉
『Pearl パール』(2022)/一体どういう感情か自分でも分からないが監督と主演ミア・ゴスの異常な真剣さに物凄く心が動かされた👩🏻🪓 - gock221B
『X エックス』 (2022)/公開時に観てピンと来なかったのだが傑作だった続編『Pearl パール』(2022)観たら思うところあったのでもっかい観て感想書き直した❌ - gock221B

👰🏨👦🏼🧔🏻‍♂️👰🏨👦🏼🧔🏻‍♂️👰🏨👦🏼🧔🏻‍♂️👰🏨👦🏼🧔🏻‍♂️👰🏨👦🏼🧔🏻‍♂️👰🏨👦🏼🧔🏻‍♂️👰🏨👦🏼🧔🏻‍♂️

The Innkeepers (2011) - IMDb

www.youtube.com

#sidebar { font-size: 14px; }