gock221B

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『バービー』(2023)/面白かったし良作だったが最後に台詞で映画のテーマを全部まくしたててしまう場面だけ醒めた。ミームを始めとする映画外の話題の方が長くなった👧🏼👱🏼


原題:Barbie 監督&脚本:グレタ・ガーウィグ 脚本:ノア・バームバック 製作&主演:マーゴット・ロビー 原作:マテルの着せ替え人形バービー(1959-) 製作:トム・アッカーリー、ロビー・ブレナー、デヴィッド・ハイマン 製作国:アメリカ 上映時間:114分



アメリカの玩具メーカー〈マテル社〉が1959年に発売して世界的にヒットした「着せ替え人形バービー」の実写映画化。
僕は日本の中年男性なのでバービーについてはよく知らないがアメリカ本国では「最初は金髪白人女性バービーだけだったが、ボーイフレンドのケン、多様な人種や職業のバービー達が作られた。日本では日本人向きに改良されたものが発売された。最近のアメリカではバカにされつつある存在らしい」という基本的な事しか知らん。
でも「これは絶対観るぞ!要チェックや」と楽しみにしていた。
といっても僕からするとバービー人形には興味なく監督のグレタ・ガーウィグと主演&制作のマーゴット・ロビーって部分でした。

👧🏼監督:グレタ・ガーウィグ
監督のグレタ・ガーウィグは女優であり、本作の脚本もしている映画監督ノア・バームバックと恋人で二人の間には子供も居る。母親や男に翻弄されつつ自立する少女の成長を描いた『レディ・バード』(2017)が素晴らしくて覚えた。
三作目『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)は、その名の通り『若草物語』(1968)をグレタ・ガーウィグが現代的な独自解釈で映画化したもので三作目にしていきなりアカデミー賞6部門にノミネートした。これも前作同様に当然、四姉妹の人生を通して女性の成長や自立を描いた映画。二作とも「女性が成長&自立する映画」ってところ以外にも、絶世の美青年ティモシー・シャラメが主人公の周りをウロウロしてるが結ばれはしないという「美青年シャラメに騙されない二部作」と呼べなくもない(本作でこの役目はアメリカ女性の憧れの存在であるライアン・ゴズリングになった)。
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)だが、あまりに面白すぎて2020年の日本公開映画
の中でぶっちぎりナンバーワンになった。それだけじゃなくて全ての映画の中で好きな10本選べと言われたら入れるくらい好きだ。もちろん「女性の成長や自立」的な要素も好きなんだが、その前にもう全シーンのお話やキャラや描写、撮影……とか満遍なく面白すぎるからだ。地盤となった原作の強固さもあるのだろうがマジで何回観ても飽きないので何回も観た。はっきり言って「南北戦争時期の女性たちの話」なんて何の興味もない(退屈そうだから)。「女性が成長&自立する映画」って部分も「何かよくわからんが軽んじられてた女性が華麗にライジングする作品ばかりで気持ちいいぞ!」と応援する気持ちはあるのだが理解度的には自分は中年男性なので良くて半分未満しかわかってないだろうにこんなに面白すぎるとは凄い監督なんだなと思い、一気に好きな監督上位に躍り出た。

👧🏼主演&制作:マーゴット・ロビー
本作の主人公バービー人形を演じるのはマーゴット・ロビー。正にバービー人形を演じても誰一人文句を言うものがいないくらいマンガみたいな美貌とスタイルを持った白人女性俳優。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013)で元モデルで主人公の妻になる役でブレイクして、しばらく”見た目通り”セクシーな金髪白人美女役をやらされてたが、トーニャ・ハーディングの数奇な半生を描いた映画『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017)から映画製作も始めた。カス男に復讐する『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020)、DV彼氏のジョーカーと別れた女性ヴィランのハーレイクインが女性同士連帯して悪い男性ヴィランを倒す『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』(2020)、そして本作。
……なんか彼女の作りたい映画&演じたい役の色が見えてきてマーゴット・ロビーが”只の白人美人女優”じゃなく日本の男性オタが「前は好きだったが、この女はもうダメだ……意志を持ちはじめた」とネット上でだけ、こっそり敬遠しそうなほど映画製作に積極的に乗り出した。マーゴット・ロビーは大スターではあるが映画製作者としては若い美人女優なので裏で映画製作してる時はめちゃくちゃオッサンに軽んじられたりバカにされ続けてるという。最近急に女性の映画製作者や監督が活躍できるようになったが、それはここ数年で急激に表面的にそうなったというだけだからね(本作でケンが家父長制に目覚める切っ掛けとなった、都会で出会った実は家父長制好きビジネスマンが見事にそんな表面的にだけ男女平等になった2023年の全男性を表現している。個人的に「やる偽善」は良いことだし頭の中で何を思ってても外に出なければ悪くないので、この男性キャラをそこまで悪く言おうとも思わないが)。

👧🏼そんなグレタ監督とマーゴット氏が合体したらどうなっちゃうんだ~
そんなグレタ・ガーウィグマーゴット・ロビーが合体して「現在アメリカではバカにされつつある金髪白人でスタイルの良い美人女性バービー人形」を映画化するんだから、これはもうどういう痛快な内容なのかは観なくてもわかるだろう。人形のことはよく知らんが、そういう理由で楽しみにしていた。
……というか企画の段階であまりにも示唆的過ぎて「これはもう観なくても感想書けるくらい明白だな」と思った(映画好きや読書好きの方ならわかると思いますが僕らは内容みてなくても全く同じ分量・熱量でまだみてないものの感想が書けます。そんなことする意味ないからやらないけど……)。で、本作を観に行って……先に感想書いちゃうけど、全編とても面白かったけど本当に想像以上に想像通りの内容過ぎて逆に恥ずかしくなってくるというよくわからない気持ちになりました。
映画自体は面白かったし本国で人気出たようなので良かったけど正直言って「グレタ・ガーウィグマーゴット・ロビーがバービー人形の映画を撮ります」この第一報だけで、もう全てを語り終えていたと言っても過言ではない。

👧🏼🍄ネットミーム「Barbernheimer(バーベンハイマー)」騒動
本作はアメリカ本国で「原爆の父」と呼ばれた物理学者を描いたクリストファー・ノーラン監督作『オッペンハイマー』(2023、日本公開未定)と同日公開だった(2023年7月21日)。
ファンの間で本作と『オッペンハイマー』(2023)を組み合わせたミーム「Barbernheimer(バーベンハイマー)」が流行した。
日本人なので欧米のミームは意味聞いても半分くらいしか分からなかったりするがミームが生まれた当日は見かけて「あぁ、女児の着せ替え人形の真っピンクのカラフルな実写映画化『バービー』(2023)と、数十万の死傷者を出した不謹慎さの極地のような”原爆の父””を描いた『オッペンハイマー』(2023)を組み合わせた面白さかな?」とだけ思った。バービーを演じるマーゴット・ロビーと似つかわしくない原子爆弾のキノコ雲……ちょっと日本人の中学1年生くらいの男児が好む「ムキムキのアンパンマン」「残酷なドラえもん」「シャブ中のちびまるこちゃん」的な幼稚さを感じた。英語が出来てノリがわかってないとミームは真に理解できないので想像でしかないがそんな感じかなと思った。この感覚がミームの解釈として正解かどうかはわからんが「なるほどね。健全そうなものと不謹慎なものを合体させるのは全世界共通だからミーム画像を作る人からしたら良い素材かもね」と思った。
だが、このBarbernheimerが2日、3日……一週間くらい?続いたら段々と「やっぱ原爆の事をずっと知らないんだな」という怒りも湧いてきた。別にミームをどうでもいいと思う自分も同時に存在したが、この少しイラッとする気持ちは広島県出身のせいか。そんなBarbernheimerが目に入るとイラッとし始めた頃、既に公開して大ヒットして数日が経過していた『バービー』(2023)のX(旧Twitter)公式アカウントが幾つかのBarbernheimer画像を引用リポスト(旧引用RT)して同調するリアクションしてしまった。これまではファンが勝手にやってるだけだったのだが公式が乗っかってしまったので日本で炎上した。
するとワーナー・ブラザーズ・ジャパンのX(旧Twitter)公式アカウントがアメリカ本社に対応を求めるという極めて珍しい遺憾の意を表明。こんなの見たことがないし、よりによって今まであまりアクティブなイメージのなかったワーナージャパンの中の人がこんな積極的にデカい行動を起こすとは……と凄く驚きました。
そして本家ワーナーが全世界のプレスに謝罪してとりあえず収束した。
来日したグレタ・ガーウィグ監督とプロデューサーの一人ヘイマン氏は「何か映画と関係ないとこで知らん間にえらいことになっとるなぁ……」と困惑して縮こまっていた印象。
僕はこの騒動を見てて何だかモヤモヤする気持ちがあった。「僕の故郷で大勢死んだ原爆をミームに?許せん!」という気持ちは僅かにはあったがほぼなかった。いや少しはあったよ?だけど「原爆とかアメリカ人知らんやろ」というのがあった、特にミーム作った人らやピックアップした公式アカウントの人らに原爆の悲惨さな印象なんてゼロだろう。
まずアメリカ人にとって原爆とかって全然戦争をやめようとしない日本との戦争に勝利させた……というどっちかというと良いものだろうし。ハリウッド映画に出てくる核兵器の描写などを見ても大抵「爆弾が落ちてキノコ雲があがる」ここまでは一緒。その後は「その場に居た軍人などがウワーッとカッコいい映像で消滅する」そんなイメージ。『ターミネーター2』(1991)に出てきた世界の終末のイメージがこんな感じだったが他の映画でも大抵そんな「爆弾の凄い版」という印象しかない。死ぬのは大抵軍人だし、アクション映画に出てきても……たとえば『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008)でインディ・ジョーンズが冷蔵庫に隠れて爆風をやり過ごしたりして「マジで原爆のイメージってアメリカ人の頭の中には無いんだな」と思った。
僕も敗戦国の日本人だし原爆を喰らった広島県人だし小学校の時、夏休みに体育館に集められてアニメ映画版『はだしのゲン』(1983)を見せられたので「原爆」のイメージは「特に罪もないお母さんやお年寄りや可愛い子供達が一瞬で死んだ……というのはまだ運がいい方で、爆風だけを喰らったエリアの人たちは全身にガラス片が刺さったドロドロに溶けたゾンビのような感じで歩き回り喉が渇くので川に飛び込んで水飲んで苦しみ抜いて死んだ」という凄く嫌なイメージだけある。
とにかく「原爆落とされた側」と「原爆落とした側」との認識が違いすぎる。
さっきも言ったがエンタメ作品におけるイメージだけでもそれは顕著で、

※映画などに出てくる原爆のイメージの違い
原爆:日本(罪のない一般市民が大量虐殺された)、アメリカ(負けを認めず暴れるどうしようもない日本に対して使用して戦争に勝利!
原爆の効果:日本(数多くの一般市民が焼かれてゾンビみたいな感じで歩き回って苦しみ抜いて死んだ。二度と観たくない鬱になる映像)、アメリカ(とにかく凄い爆弾!屈強な軍人であってもシュッ!と蒸発してドクロになる。スタイリッシュな映像

といった感じで映画だけ見てても認識の違いはわかる。別にアメリカの教科書に出てきても日本との戦争を終わらせたとしか書いてなさそうだし。
この「原爆への認識の違い」が一番重要なところで、僕もBarbernheimerというミームに対して少しくらいはイラッとはしたが、それよりも二国の「原爆への認識の違い」に対してその10倍くらい苛立った。というのも、こんな只の言い合いじゃなくて実際の殺し合い……戦争が起きるのは、こういった認識の違いから起きるからね。
日米間の戦争が終わって何十年も経ったけど「ただ戦争が終わって何十年も経っただけで別に認識の違いというのは殆ど変わってないんだな」と思ったというか。それが一番衝撃でしたね。
でも、ああいうミームに対して抗議して「何か原爆について弄ったら日本人怒るらしいな?」と思わせるのは良いこと……な気はするが、それで反省するのは僅かな教養ある人達だけでミームを作ったり楽しんでた人たちには全く伝わらん虚しさもある。
あと普段、他国のセンシティブな部分については無自覚なのに自国に関わる原爆についてだけ大声で怒る人たちも目立ったが「他国については無関心だが、自分に関わる原爆についてだけ怒る」……って事は、はっきり言ってアメリカで原爆のミームで遊んでる人と人間的には同じだよね?
そういう感じで虚しさを感じた。そんなBarbernheimerも本作自体には1mmも関係ないからね。でも感じたことを書こうとしたらこんな無駄なスペースを取らざるを得なくてそれもまた虚しいよね。
とにかく戦争に関わる怒りや悲しみは色々考える事が大事だと思うので脳死でただ数日間、怒り狂ってるだけの人とか見たら不安になる。凶悪事件のリプ欄で「こんな奴死刑だ!」「同じ目に遭わせろ!」と怒り狂う人たちも(気持ちはわかるが)見るたびに「やばいこの人感情を発散してるだけやん……」と物凄く不安になる。そんな凶悪事件のリプ欄を見た時と似た不安を感じました。
まぁ考えても結論が出ないことを書いてたら幾ら書いても終わらんのでこの話はここまでにしとこう。
一言で言うなら「ミームへの純粋な怒りよりも、ミームで遊ぶ欧米人とそれに単純な反応する日本人、双方に同じくらい虚しさと不安を感じた」といった感じ?
「こんな広報が居る映画なんて、抗議の意味も込めて観に行かない!」と宣言する人も続出した。もちろんどういう抗議しようと個人の自由だが映画本編には関係ないやろ……と思った。監督とか主演俳優が公式アカウントみたいな事したんならわかるけどさ。
ちなみに原爆を扱った『オッペンハイマー』(2023)の方は未だに日本公開未定。このまま未定のままのわけもなく「原爆の日」や原爆を思わせる夏が終わって涼しくなったら日本公開を発表して冬辺りにひっそり公開するつもりだろうと予想した。
あと「『オッペンハイマー』(2023)の日本公開が決まってないのは『バービー』(2023)の不祥事のせいだ!」とか皆目見当違いの怒り方してる人も見た。とにかく、この映画はエキセントリックな反応する人が多い。それだけ人の心を動かすってこと?(まぁミームは貰い事故だが)。

👧🏼『バービー』(2023)、公開
公開されて半月も経たずに全世界興行収入が10億ドルを突破してワーナー・ブラザースが配給した全作品の中で第二位の記録を樹立した。エゲツない大ヒット。今年の映画で10億ドルを突破したのは『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』 (2023)と本作だけだという。前述のBarbernheimerを始めとして社会現象的になっており普段、映画館に行かないライト層も観に行ってこうなってるという。
で、日本ではヒットしてない。「監督グレタ・ガーウィグ」「主演マーゴット・ロビー」「バービー人形の映画」「女性の成長や連帯」……どれも映画ファンなら気になるだろうが一般的にヒットする要素ゼロだもんね。ミームのせいで成績が下がったのかどうかはよくわからない。
そしてアメリカ本国では「若い男女が観に行って、男がピンとこなくて別れる」みたいなネットニュース見た。本当かどうか知らんが、有り得る話だ。僕も20歳の頃、女性たちが連帯するニューシネマ的な内容の映画『テルマ&ルイーズ』(1991)を観て、マジで意味が全く分からなかったので彼女とか女友達に死ぬほど馬鹿にされた(この時にしか体験してない特別な馬鹿にされ方だったので印象に残った)。
とにかく公開前にBarbernheimerで思ってた方向とは違う不安な盛り上がり方した本作だが、僕もそうだが映画ファンは前から内容に期待してたので姿勢を正した。
公開日の前の夜に、既に海外で映画を観た女性の映画系アカウントが「この映画は女性だけでなく男性たちも観て思わず反省してしまうような内容よ!さ~あ男たち!覚悟して!」みたいなノリのPost(旧ツイート)してるの見かけて……全く知らない女の人が俺の家に入ってきていてビビって部屋の隅に移動した俺に、逆光でニヤニヤして両手を広げてにじり寄って来ている映像が脳裏に浮かんで怖くてわんわん泣いちゃった。「楽しみにしてたし、本編がそういう内容なのは予想してるけど、めちゃくちゃ観に行くの嫌になる書き込みだな……」「というか、お前が作ったんかい!」等と思って少し姿勢が崩れたので、再び姿勢を正した。
公開されたが生活範囲内の近所でやってないし都合がつかなかったので「仕方ない、来週のサービスデーに行こう」と思った。賛否両論だし大コケして終わったが僕は大好きな『ザ・フラッシュ』(2023)も近所でやらなかったし、僕の近所はワーナー系弱いんだなと思った。
で、公開されてそのフェミニズム的な内容が(物凄く人数が少ない映画好き界隈でのみ)反響を呼び、「こんな不謹慎なBarbernheimerミームに乗っかった公式アカウントの映画なんて……抗議の意味も込めて観に行かない!」と宣言していた人たちも「こうしちゃおれん!」と観に行き始めた。意味ない抗議だと思うし、観に行った方が良いので良いことだとは思うが「こういった社会問題に毎日つぶやいてる人たち、感情や行動が日によって変わりすぎじゃない?」とも思った。
それを直接言うと「それはトーン・ポリシング(社会的課題について声を上げた相手に対し、主張内容ではなく相手の話し方、態度、付随する感情を批判することで論点をズラすこと)だ!」と言い返されて敗北する事がわかっているので言わない。ただ思っているだけ。
そして観に行った映画好きアカウントは「『バービー』良かった!」「むしろケンの映画!」次々に感想を言い出して「みんな観に行っていいな。僕も早く観たいが」とか思ってたら映画の序盤や中盤はおろか「バービーが最後、◯に行って△するラストだが……」とか普通に全部ネタバレして語る人が異常に多くてビビった。というか映画観る前に何が起きるか全部知ってしまった。
最近は映画のネタバレしない事を心がける映画ファンが増えたし、X(旧Twitter)している人は高齢者が多いから尚更そんな事は起きにくいのだが、どういうわけか本作に限ってはネタバレ気にしないどころか……えっ!?普通に公開して2、3日しか経ってない『バービー』(2023)のラストのネタバレを「『猿の惑星』(1968)ラストの自由の女神」「『シックス・センス』(1999)のブルース・ウィリスの正体」「ダース・ヴェイダーはルークの父親」くらいの雰囲気で普通に全部話しとる!とビビりました。
ど、どうした!?
悪意あるネタバレじゃなくて、自分がネタバレしてると思ってなさそうな感じ。
お前がしてるのは自分が『ネタバレ』してると気づいていない……もっともドス黒い『ネタバレ』だ……
ここで「ネタバレしたぞ……」と連呼する歌いだしに聞こえるオリジナル空耳曲Drowing Poolの”Bodies”を聴いてもらおう。

ついでなので82歳のおじいさんが”Bodies”を熱唱してる動画も貼っておこう。

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改めて聴くと「ネタバレしたぞ」とか聞こえない気もしてきたが、まぁいい。
『君たちはどう生きるか』(2023)の時とか一言も感想を見かけなかったし(というか未だに感想を口にしてる人いないまま終わったが)そんな、いつもはネタバレしないように気をつけてるX(旧Twitter)の社会問題に敏感な映画クラスタたちが何故今回はネタバレしまくりやがってしまったのだろうと考えた。
推測だが「自分はいま大事な社会問題(フェミニズム)についての話をしている」と思っている熱い気持ちが大きすぎて「公開2日目の新作映画の話をしている」という前提を追い越してしまったのではないか?
Barbernheimerのミームに徹夜して悩んで、抗議しまくって、もうバービー観に行かない事を公言して誓った、が「フェミニズム!?行く行く!」と寝室から飛び出て、観て帰宅して全編ネタバレしまくって、一年前から楽しみにしてて「何か問題起きてるが絶対見に行くぞ」と思ってた俺がネタバレされまくる……という状況になってしまい感情の上下が激しい人たちに対して納得行かない気持ちになった。
……と直接言うと「それはトーン・ポリシングだ!」と言われて敗北してしまうので「……そんなに観たかったのに初日に行かなかった自分、そんな私が悪かったね」と僕の心の中のジジイが諦めた声で呟きました〈『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』(2008)ラストのジジイをイメージ〉
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そして本作を観に行った『GANTZ』などでお馴染みの漫画家・奥浩哉が、劇中で成長&自立するバービーを観て
最初の方はお洒落だし可愛いし笑いながら観てたけど後半になるにつれてだんだん冷めていった。なんか強烈なフェミニズム映画だった」「男性を必要としない自立した女性のための映画。こんなの大ヒットするアメリカ大丈夫なの?」
……などと「『男性を必要としない自立した女性』って良いことなのに、それが大ヒットしたら何でアカンの!?」と、たとえフェミニストじゃなくても言いたくなるようなことを言って更に「きっと田嶋陽子先生は大拍手するだろう」とPost(旧ツイート)したので「こいつ……『ビートたけしのTVタックル』(1989-)の1990年代初期あたりからアップデートされてない!」という事が明らかになって驚かされた。言うなればキャプテン・アメリカよろしく1990年代に冷凍睡眠を施された男が突然現代に蘇ったような異常事態だ。
漫画「GANTZ」の作者、奥浩哉氏がミソジニー批判に反論 映画「バービー」をめぐる議論で - 芸能 : 日刊スポーツ
炎上した事で奥氏は「女性総理大臣も女性天皇も全然OKだし、もっと社会での女性の地位向上にも賛成だし、女性を尊敬してる僕がミソジニーならそれでいいよ……」と火を和らげようとしたが「あっ!『バービー』(2023)本編の悪役(ウィル・フェレル)が言ってた台詞だ!」といった感じで、一挙手一投足すべての発言を殺されてたのでめちゃくちゃ興奮した。
奥は「ああ…フェミの人達に見つかってしまった…面倒くさい…」とPost(旧ツイート)し「僕に悪口書く暇があったらバービー、日に何回も観にいってやってくれ。」とPost(旧ツイート)しながら日本での『バービー』(2023)の興行収入が伸び悩んでいるソースを貼り「しばらくスマホ放置しまーす」と終わらせるというミソジニー&ブチギレよくばりコンボを決めた。わずか数ツイートでこれだけの面白さを生み出すとはさすが日本……いやクールジャパンが誇る漫画家だ……。
奥先生は不思議な男性ですね……今の時代こんな男性が居ると思いますか?(鈴木敏夫カンヤダ語録)。
そして数個のPost(旧ツイート)だけでなく、それぞれに付けられた返信に対しての奥氏の返信なども香りが強く、本当に荒廃したスラム街を一糸まとわぬ素っ裸の美女が闊歩してるかのような奥氏の振る舞いに陶然としました。もし自分がフェミニストなら奥が一言一言発する度に「まだ!まだやらせてくれるというのかッ!」と怒りを通り越して喜びすら感じそうだと思いました。

「むしろ、奥先生は宣伝のためワーナーブラザーズジャパンからお金を貰ってミソジニー男性を演じてるのでは?」と思った方が納得いく感じで失言・炎上していました。
これ久しぶりに被害者が少なくて楽しい炎上でしたね。
一番最後の「しばらくスマホ放置しまーす(放置しない)」は気持ち良すぎて逝きそうになりました。
もうちょっと奥氏のファンの方達がX(旧Twitter)で「先生ぜんぜん悪くないっスよー!」「そんなの気にしたら何も言えなくなっちゃいますよ!」などと奥氏を擁護して、「そ、そうだよな?俺、悪くないよな?」と奥氏に思わせて何度も何度もミソジニー発言を連発させたり、以前、漫画の中で気に入らない2ちゃんねらー宮根誠司を虐殺した時のように漫画でフェミニストを虐殺して二度、三度……と炎上させる天の川のような炎上案件の星の連なり……炎上ロードの道筋を塗装して欲しかったですね奥先生の読者の方達には……。
しかし既に何度も「女性が成長&自立する映画」と書いたが、男が成長したり自立する映画に対して「『男』がが成長&自立する映画」とはあまり書かないから、そこからして既に歪みが表に出てきてるのかもね?
似たような事で、こういう映画ブログ書いてて「ホームセンターで働く黒人男性(演:デンゼル・ワシントン)が……」とか書いてて「そのキャラが白人だったら『白人男性が……』とかイチイチ書かないよな。だから変だな」と思い、最近あまり黒人男性と書かなくなってきた。「アジア人」はまだ書いてる、出てくる事自体が珍しいし未だにステレオタイプなキャラしか出てこないから。アメリカ映画に出てくるアジア人の比率がもっと上がったり人間として描くようになったらこのブログでもいちいち書くのをやめるだろう。
というか話題の移り変わりの速さが激しすぎて、これらの一週間前の出来事ってもはや”古い”ですよね。映画公開日は2023年8月11日(金)、話題になってたのはその週末。僕が観に行ったのは2023年8月16日(水)。日本ではあまりヒットしてないみたいだし一週間経つと既に『バービー』(2023)の話してる人は居なくなったね。日本でもヒットして欲しかったが、ミームの件がなかったとしても……多分ヒットしてなさそうだな。
映画本編と関係ない話で一万字超えてしまった。

ネタバレあり

 

 

 

 

Story
マテル社女児向け着せ替え人形「バービー」たちは〈バービーランド〉に暮らして、パーティ、ドライブ、海水浴……毎日、争いのない世界で楽しく暮らしていた。
しかし、ある日突然バービー(演:マーゴット・ロビー)の精神と身体に異変が起きた。
原因を探るため〈人間の世界〉へ行くバービー。彼女に好かれたいと思っていた「バービーのボーイフレンドケン(演:ライアン・ゴズリング)も着いていく。
しかし人間界はバービーランドとは違い、ネガティブな感情や混沌とした出来事が起きる現実世界。冒険の末にバービーが選んだ道とは――

そんな話。
冒頭、「昔、欧米の女児達は赤ちゃん人形で遊んでいたが突然、スタイルの良い金髪白人美女のバービー人形が登場。女児達は赤ちゃん人形を捨て『憧れの未来の女性』って感じのオモチャ?であるバービーを手にする」という事が、『2001年宇宙の旅』(1968)で「猿人が武器にしていた獣骨が宇宙に進出した人類の軍事衛星に変わる」という「映画史上最大のジャンプカットマッチカット」のパロディで描かれる。
「女児たちの流行が赤ちゃん人形からバービーに変わったよ」というだけのことをオモシロ映像で見せただけなのだが、ここまたX(旧Twitter)で「女児たちに赤ちゃん人形を壊させるなんて!ここでもう観てて無理になった!」とヒステリックに怒ってる人がいた。そして「あれは『2001年宇宙の旅』(1968)ネタでござるよwコポォ」と教える人が出始め「こういう時にドヤ顔で説明しだすおじって嫌だわ~!」などと……本作でまた新たなクソみたいな争いが始まった!
コンサート会場で赤ちゃんが産まれた!ウッドストック
何でこの映画、あらゆる箇所で色んな人の感情をヒステリックにさせ続けるのか?それこそが本作のパワーなのか?

バービーランド〉は割と概念的な世界。
まず〈現実の人間界〉つまり我々の世界にあるマテル社バービー人形を生産していて、そのバービーを消費者である女児が所持して共に暮らす。
そんな「女児達が遊んでいるバービー達の〈魂〉が暮らしているのがバービーランド」って感じ。
人間やバービー(やケン)は互いの世界を行き来しようと思えばできるフンワリ描写された世界観。バービーが人間界に行って「自分はバービー」と言えば「この女、イカれてる……」と思われるがマテル社の人間や母親などが「いや、あれは本物のバービーだ!」と言えば「あっ、本物だったんだ」と納得する。そういうリアリティ・ライン。
〈バービーランド〉に住むのは、その名の通りもちろんバービーたち。
主人公は、平均的な金髪白人のバービー(演:マーゴット・ロビー)。
この平均的なバービー以外にも、黒人やラテン系やアジア系など様々な人種のバービーがいる。そんなバービー達は大統領、宇宙飛行士、人魚……などそれぞれの職業に就いていた。
暮らしているのはバービーだけでなく〈バービーのボーイフレンド〉という「バービーの付属品という事だけが存在理由」であるケン達もいた。ケンも、バービー同様に様々な人種、職業のケン達がいる。
あとマテル社に忘れ去られた妊婦の人形や、アラン(演:マイケル・セラ)も居る。
アランとは「『バービーの付属品という事だけが存在理由の』ケン……の親友」という、かなり儚い存在の男性人形だ。
色んなケンの中でも平均的な金髪白人のケン(演:ライアン・ゴズリング)は、平均的な金髪白人のバービー(演:マーゴット・ロビー)の事が大好き。
だが平均的なバービー(以下:バービー)はバービーランドの皆……特に色んなバービー達が好きだが、ケンは「バービーの恋人役」という設定はあるがそれは人形としてだけの設定であって、別にバービー本人はケンと恋愛関係にあるわけでもない。バービーには性器や内臓は無いのでSEXはおろか食事をする時も「食事のジェスチャー」をしているだけで本当に飲食しているわけではない。これは正に女児がバービー人形でごっこ遊びでしているそのままだ。高い所から地面へもふわ~っと緩やかに着地する。これもまた女児がバービー人形を鷲掴みしてバービーハウスから降ろす動きから来ている。
本作のケンは、バービー人形の設定通り「バービーの彼氏」という存在価値しかない。つまりバービーが居ないと、そしてバービーに好かれていないとケンは生きている意味がない。そのため憐れなケンは一日中……そして永遠にバービーの気を引こうとしている。ケン役はここ10数年間ハリウッドの女性から「死ぬほどカッコいい!」と言われて続けているライアン・ゴズリング。ゴズリングのモテエピソードで「これは真のモテ男だ!」と思ったことがある。それは男の俳優で誰がカッコいいかと訊かれた女優が(誰だったか忘れたが有名な人)が「もう出来ることなら映画館の座席でライアンを観ながら自慰行為したい!」とジョークで言った時。女性は自慰の話を絶対にしない。恋人や妻は彼氏や夫にしないし、かといってビッチ的な女性も自慰の話はしない。これについて何故だろう?と考えたことがある。普通の彼女や妻などが男に言わないのはわかるとしてもヤりまくってる女性なら別に言っても良くない?と思ったのだが「ヤリまくってる女性はSEXの頻度を誇ってるので自慰はやってないか、又は自慰したと思われたくない」と聞いたことがある、本当か嘘か知らんが。実際に女性から自慰の話を聞いたことあるのは「お香を炊いて好きな音楽を流して、そんな自部屋の雰囲気に浸ってする」という嘘と、あとは美人の人妻の友達が「私は北関東の輩に拉致監禁されて犯されまくる想像してる」という衝撃的な2つの話だけだ。それくらい女性は自慰の話をしないのにも関わらず天下のハリウッド女優が「ライアンとファックしたい」と言うならまだしも「ライアンを観ながら自分でしたい」と言うなんて、よほど好きじゃないと言えないな、そう感じた感じです。全部、本当かどうかは知らんが、なかなか言う機会がなくて10年くらい書けなかった「女性の自慰の話」が出来て肩の荷が一個降りたな。また女性だけでなく『ドライヴ』(2011)で人妻と恋に落ちるカッコいい殺し屋役や『ブレードランナー 2049』(2017)で美女AIだけが恋人で寂しいラストを迎えるのがモテない男性に受けたので男からも人気がある。
ライアン・ゴズリングが男女共に人気あるのは、あのミステリアスな雰囲気だろうね。
『ラ・ラ・ランド』(2016) の時に、本当はアカデミー賞で作品賞を獲ったのは『ムーンライト』(2016)だったのだが司会が間違えて「受賞は……『ラ・ラ・ランド』(2016)……と言ってしまい後から訂正された。かなり残念な出来事のはずなのにゴズリングはずっと少女漫画にしか出てこなさそうなイケメンだけがするくすくす笑いをずっとしていて「これはモテるわ」と思った記憶がある。
だが本作の公開前、アメリカのティーン女子が「『バービー』(2023)のイケメンのケン役がライアン・ゴズリングて……しわくちゃのおじいちゃんじゃんw」とバカにされてる記事を読んで「ここ10年最もカッコいいとされてたゴズリングがそうじゃなくなった!?」と衝撃を受けた。といってもゴズリングもう43歳だからティーからしたらパパくらいの年齢だからそりゃそうか、ケンって17歳くらいの設定だろうしね。
話を戻すが本作のケンは、ゴズリング特有のミステリアスな雰囲気はなく、常にバービーの尻を追いかける憐れな子犬のようなキャラクターだ。

そんな感じでバービーランドで半永久的に楽しく過ごしていた。
しかし、ある日バービーが目覚めると自分に口臭がある事を感じる。更に家から飛び降りようとすると落下し、バービーの足はハイヒールを履く斜めになった形のまま固定されているのだが、その足が平らになってしまい歩こうとしたバービーは転倒してしまう。
更に半不老不死のバービーには必要ないはずの「死」の概念が脳裏に浮き上がってきた。仲間のバービーに相談すると少し離れた所に住んでおり皆、恐れて寄り付かない「変てこバービー(演:ケイト・マッキノン)に相談しに行きなよ」という話になりバービーは恐る恐る変てこバービーの家に行く。
変てこバービー役のケイト・マッキノンは、人気コメディアンでレズビアン。日本じゃ無名だがアメリカ本国ではクィア方面から絶大な人気がある。女性版にしたためにアメリカ人の男性から死ぬほど叩かれた『ゴーストバスターズ』(2016)
でも一番マッキノンが目立ってたよね。
変てこは「貴女の持ち主が貴女に悪影響を与えている」と言う。
変てこが変てこバービーになった理由は、持ち主の女児の遊び方が個性的過ぎて髪を切られてKISSみたいなメイクもされてパンキッシュな感じにされたり股割りされたり放り投げられた所為らしい。まぁ、つまり「女児は『バービー可愛い!楽しい!』といった通り一遍等なポジティブな感じだけではなくダークな一面もある子もいる……といった違った一面を知ったせいで変てこバービー”だけ”は〈多様性〉を得た」という事なんだろう。
そしてバービーランド中央の明るいバービーたちは「多様性」を知らなかったが為に変てこバービーを「何だかよくわからない変わったバービーだわ」と認識してたのだろう。
バービーのツルツルだった肌にはセルライトも出来ていた。このままでは状況は更に悪化して平均的バービーは死んでしまうかも?
平均的バービーの生きる目標は「(楽しい生活の)現状維持」だったので何が起こるかわからない冒険はしたくない
しかしこのままでは死ぬかもしれないので仕方なくバービーは人間界に向かった。
そんなバービーの車には平均的ケンも乗り込んでいた。平均的ケンは平均的バービーに好かれたいので、二人っきりになれる冒険は彼にとってチャンスというわけだ。

 

 

人間界に到着したバービーとケン。その特異な格好が人間たちに笑われる。
生まれて初めて経験する「嘲笑」に戸惑う二人。
更にケツを叩かれたバービーは反射的にブン殴ってしまい留置所とシャバを出たり入ったりする。
「バービー人形が現実世界に来てウロウロしている」という事を知ったマテル社CEO(演:ウィル・フェレル)は「早く箱に入れてバービーランドに送り返さなきゃ!」と焦り始める。
本作の前半の悪役(……というか厳密に言えばマテル社CEOは別に悪役じゃないと思うけど)マテル社CEO役がフィル・フェレルなのは、本作と同じくオモチャを通して主人公が成長する『LEGO® ムービー』(2014)の悪役おしごと大王がフィル・フェレルだったからかな?とはいえフィル・フェレルは最近、悪すぎないオモシロ悪役をよくやってるような気もする。
そんなマテル社CEO達が「バービーが人間界に来ている!」と話してるのをマテル社で働く中年女性グロリア(演:アメリカ・フェレーラ)は聞いてしまう。
バービーは「自分の持ち主」であるグロリアの娘サーシャ(演:アリアナ・グリーンブラット)を見つけるが、サーシャは「バービーは前時代的なオモチャだし、遊んでいない」と言われてバービーは落胆する。
しかし、それでは自分に様々な症状がでているのか?
それは、娘サーシャが反抗期で会話してくれなくなり不安が高まったグロリアが、この主人公のバービーで遊び「うつ病バービー」「セルライトバービー」「足が平らバービー」などを空想しながら遊んでいたため、それがバービーに伝染してしまっていたようだ。
バービーはマテル社CEOによって箱に入れられそうになるが、謎の老婦人やグロリアの助力で逃げ出す。
本物のバービーと出会ったグロリアは元気になり、流れでバービーはグロリア&サーシャ母子をバービーランドに招待して連れて行く。

 

 

一方、バービーに忘れられてたケンは「現実世界はバービーランドとは逆で男性優位社会なんだ」という事を知り〈家父長制〉という禁断の果実を手にしたケンは悪い方向に覚醒してしまった!
バービーがグロリア母子とバービーランドに帰還すると、家父長ケンとなったケンによる支配によりバービーランドは家父長制の国〈ケングダム〉に変わってしまっていた。
大統領を始め様々な職業に就いていたバービー達は家父長制ケンの悪影響を受けて以前の自分を忘れてしまい、ケンたちにへりくだったり食事を持って来るだけの……現実世界でいう前時代的な女性像に、そして「以前のバービーランドでのケン」のような存在に成り下がっていた。つまり下の存在だったケンが下剋上を果たしてバービーを従えていた。
まぁ、今まで自分の価値が「バービーに好かれないと存在できない」というものだったのに大して好かれてもなくて焦ってたので自分自身だけで生きられると知って下剋上してしまった気持ちもわかる。だが、バービー達(女性)を支配してしまっては現実の人間世界のように男性優位社会になっちゃうだけだからね。
当然バービー達は抵抗して……まぁ色々あって丁度いい落とし所を見つけて解決する。
まぁバービーとケンが対等な国にすればいいだけだからね。ケンは今まであった焦燥感の反動で極端な行動になっちゃったのかな?
「最初から男たちに支配されてる国に対して女性達が抵抗して逆転する」という単純なストーリーじゃなくて「最初に女性たちが支配してる国を作って男に逆転されて更に抵抗する」っていう感じで、現実の男女を逆にした話を作って男女ともに色んなことを「理解(わか)らせよう」というのが上手いなと思った。
女性版
『ゴーストバスターズ』(2016)で、マッチョなイケメンである金髪白人男性クリス・ヘムズワースに「見た目は美しくてセクシーだが死ぬほど頭が悪い」というキャラをやらせて「今までの男性優位社会で映画界で作った金髪白人女優はセクシーだがアホで何も出来ない役しかさせなかったやろ。たとえ女優がどんなに賢かったとしても」といううまいやり方で提示したなと思ったけど本作のケングダムはそれを更に発展させて、セクシーだがアホで何も出来ない男性ケンが現実世界の男性優位世界を真似て男が女を支配する国を作り上げて「それはアカンぞ」とバービーやグロリアたちに説教させるというやり方。
上手いなとは思ったのだが、グロリアが支配されたバービー達を反抗させるために演説する。それは良いのだが幾らなんでもグロリアがここで口頭で本作のテーマを全てまくしたてすぎ!せっかく上手いことバービーとケンに人間社会の比喩をやらせて進めてきたのに、ここで一気に「全部口で言っとるやん」という感じになってしまった。
別に演説の内容は合ってるんだよ?だけど映画内で「その自作を観て観客が気付いてこそ染み込む作品のテーマ」を全部台詞で説明してしまうと一気に醒めてしまう(黒澤明の映画や日本アニメ作品がよくこれやってよく醒めるけど)。
本作も全体的に面白かったのだが、バービー反乱軍が逆襲するあたりから一気に醒めてしまった。
ガーウィグの過去作『レディ・バード』(2017)『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)
ではこんな脚本じゃなかったのに……。
かといってガーウィグと共同脚本を書いた恋人でもあるノア・バームバックの映画でもこんな事はない。
謎だけど「バービー人形ってことで、メタファーとかもわからん幼女もいっぱい観るかもしれんから不本意だが最後に台詞で全部言わせちゃおう!」と思ったのかもしれないなと思った。ワーナーがごちゃごちゃ言ってきたら「じゃやめるわ」とか言いそうな監督だし、それ以外に考えらんないよね。
それ以外は良かったですけどね。ちょっとわかりやす過ぎる気がしなくもない。だが前述の通り「幼女にも全部伝わるように」という目的でそう作られたのなら子供の方が大事なので中年男性は文句言うべきではないから黙っとこう。
だから『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)には及ばなかったけど普通に良い映画だと思ったし、これを観た女児とか女性には男の僕には気付かない響くものが他にも色々あるかも、男だから知らんけど。
ケンはその心の隙間に人間社会で家父長制という悪影響が挟まってしまったが反省して、バービーは混沌とした人間社会で多様な人達や老女などを観てその「何が起きるかわからない現実世界」に身を投じ「老い」や「死」が待つヒューマンとなる。
これはなかなか美しい結末だとは思ったが、そんな決断をするにはグロリア&サーシャ母子や人間達との触れ合いが少し足りない気もした。バービーランドやケングダム戦争などを描く時間が要りすぎて人間との触れ合いを念入りに描く時間が足りなかったから仕方ないっちゃ仕方ない。
自分が中年のせいか、もう少しわかりにくく描写してほしかった(特に後半)、少し分かりやすすぎる気がしなくもないが前述の通り、幼児でもわかるようにするならこれで良い気がする。
本作は
『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2023)に迫る社会現象を起こすエゲつないヒットの仕方をしている。グレタ・ガーウィグは僅かな過去作で賞レース的な名作を作る評価を獲得していたが本作で、大ヒットが期待できるエンタメ大作映画の監督としても抜きん出た。たっぷり予算が掛けられるだろう次回作が楽しみです。

マテル社は色気を出して、本作の続編とか車のオモチャの映画も作って「マテル・シネマティック・ユニバース」を作りたがってるらしい。
グレタ・ガーウィグは「ご勝手に。私はやらんが」と言ってたしマーゴット・ロビーも人間になったし再演しないだろう。
それにしても本作は「オモチャ」だからウケたわけじゃなく「女性(と男性)」ってところでウケたのでオモチャって部分はほぼほぼ関係ないとも言えるのにシネマティック・ユニバースなんか作って勝算あるのだろうか?面白ければどんなものでも文句はないが……。

グレタ・ガーウィグはデュア・リパによるテーマ曲のMVも監督したみたいだね。
デュア・リパ氏はマーメイド・バービーの役で出演もしてたみたい。
そういえば僕が好きなジョン・シナもマーメイド・ケン役で出てた。ついでに「バス停でバービーに美しいと言われる老女」役はグレタ・ガーウィグのお友達のスタッフさんらしい。
このMVを貼って終わりにしよう。何だか映画の感想よりも前フリの部分の方が長くなりすぎてしまった(1万字以上ある、感想は8千字以下)。まぁいいです。

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そんな感じでした
グレタ・ガーウィグ監督作〉
『レディ・バード』(2017)/”レディ・バード”という仮面が生まれて消えるまでの一年間。そのレディ・バードが消えた場面が好き👩🏻‍🦰 - gock221B
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)/どの映画にも一つある「この良い場面1個あったからまぁ良かった」と思うような良いシーンが全編続く映画👩👱🏻‍♀️👩🏻‍🦰👱🏻‍♀️ - gock221B
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映画『バービー』オフィシャルサイト
マテル社「バービー」公式サイト - Google 検索
Barbie (2023) - IMDb

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※調子悪くなっていたビリー・アイリッシュが『バービー』観て感動して作った曲


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