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『ホワイト・ノイズ』(2022)/コロナ禍の揶揄&陰謀論コメディかと思ったら死生観の映画?思いのほか面白かった👨‍👩‍👧‍👦


原題:White Noise 監督&脚本&制作:ノア・バームバック 原作:ドン・デリーロの小説『ホワイト・ノイズ』(1985) 音楽:ダニー・エルフマン 製作会社:A24、ヘイデイ・フィルムズ、Netflix 配給:Netflix 製作国:アメリカ 上映時間:136分

 

 

去年、大晦日あたりに配信された本作の監督ノア・バームバックは好きなので観ようと思いつつ凄い時間経ってやっと観た。
このバームバック監督との間に子供も居る恋人は本作で主人公の妻を演じているグレタ・ガーウィグ。いま変な炎上の仕方をしている『バービー』(2023)の監督でもある(この話は『バービー』(2023)の感想の時に……)。彼女の映画はどれも好きだが特に『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)は「2020年の日本公開映画」の中で最も好きな映画だった。
夫よりグレタ氏の映画の方が好きだがバームバックの映画も好きだ。昔から突飛なギミックなしの家族とか人間同士の関わりの映画を撮ってる印象。あと両親が作家と映画評論家のせいかブルーカラーの家庭とは違う少しだけ風変わりな両親がよく出てくる。
2作続けてアダム・ドライバー主演、主演じゃなければ4作もドライバーが出てるし、バームバック監督はドライバーを自分の分身として描いてるように思える。

ネタバレあり

 

 

 

 

Story
1984年、大学教授ジャック・グラドニー(演:アダム・ドライバー)は、4番目の妻バベット・グラドニー(演:グレタ・ガーウィグ)と4人の子供たちと一緒に暮らしていた。
ある日、有害化学物質を運んでいた列車の事故によって化学物質が流出し”空媒毒物事象”が発生。グラドニー一家は避難を余儀なくされる。
それはそうと長女デニース(演:ラフィー・キャシディ)は最近の母の異常についてジャックに語る――

第一幕
ここは主人公たちの紹介といったところ。映画本編の時間が長い上に一体どういう話なのか掴めない時間が長いので少ししんどい。
ジャック・グラドニー(演:アダム・ドライバー)は、大学で「ヒトラー学」を教えている教授。
仲のいい同僚は「エルヴィス・プレスリー学」を教えているマレー教授(演:ドン・チードル)。ジャックはマレーに頼まれてプレスリー講座の途中で参加してヒトラー学をぶちかましてラップイベントのように盛り上がる。この派手なパフォーマンスもジャックの講座の人気を支えるものなんだろう。
ジャックの語るヒトラー、ついでにマレーのプレスリーは、ジャックのパフォーマンスが異常に長かったことも含めて、如何にも何かのメタファーっぽい要素だが全くわからないので僕はスルーする。

ジャックの妻はバベット・グラドニー(演:グレタ・ガーウィグ)。ジャックの4番目の妻らしい。ヨガ教室のインストラクターのような仕事をしている。物凄いフワフワした見事なヘアースタイルをしている。

四人の子供のうちジャックとバベットの子供は末っ子男児だけで後は二人の連れ子。
子どもたちの中で一番出番が多いのがバベットの連れ子であるサンバイザーをいつも被っているキャラの強い長女デニー(演:ラフィー・キャシディ)は『トゥモローランド』(2015)の美少女アンドロイド役の子役だった。
そのデニースはジャックを呼び止め「最近、母バベットがおかしい」「オカルト本を天井裏に隠している」「物忘れが多いし”ダイラー”とかいう調べても何なのかわからない変な錠剤を飲んでいる」と言う。
ジャックは妻を探ったり質問してみるが彼女は、しらを切りよくわからない。しかし妻がバケモノになる夢を見たりする(この夢が、そこらへんのホラー映画より怖いのでバームバックには、そのうちホラー映画を撮って欲しくなった)。またジャックが深夜、目を覚ますと妻が窓辺に座って外をじっと見てたりする。謎が多すぎて怖い。……というかこの時点では本作が一体どういう映画なのかわかっていない。「家族がどうのこうのって感じの人間ドラマ?」って感じしかわかっていない。過剰に怖い悪夢が挟み込まれるのでワクワクしてきた。何だかんだで映画好きは本編の8割くらいどういう内容なのか観てたら……いや観る前からわかる事が多いので、先がどうなるかわからない映画が一番面白い。近年で言うと……ホラーが多いのだが『ヘレディタリー / 継承』(2018)『バクラウ 地図から消された村』(2019)『バーバリアン』(2022)の三本がそれにあたる(『ヘレディタリー / 継承』(2018)は2010年代で一番好きな映画だし他の2本もその年のベスト3に入るくらい好きだった)。
そういう感じでジャックが見る妻の悪夢が必要以上に怖いタッチで描かれて期待度が高まった。

 

 

第二幕
有害化学物質を運んでた列車の事故で化学物質が流出する。
ジャックは「いやいや……大丈夫だろ」と余裕。
やがて有害物質が雲になり有害な雨を降らせ始めたので住民は避難するような町内放送があり御近所は皆、クルマで移動し始める。
2022年末の映画、ウイルス的なもの……という事で、今まで掴めなかった本作に対して「あぁ、ひょっとしてコロナ禍、そして陰謀論についての映画なのかな?」と思った。
家族の中でジャックだけが、なかなか腰を上げずいつも通りの夕食を続ける。正常性バイアス(異常事態が起きても「大丈夫、大丈夫」と普段通りに過ごしたがる逃避行動)に囚われている感じがして見てられない。
子供の中でデニースの次に出番がある長男ハインリヒ(演:サム・ニボラ)は有害物質についてデータを集め、論理的に父ジャックを論破する。ハインリヒは早くから避難した方がいいと訴えてたが父ジャックがまともに取り合わず避難が一手遅れた。ハインリヒはドイツっぽい名前からしてジャックの連れ子なんだろうね。
グラドニー家は避難を余儀なくされるが、すぐに渋滞に巻き込まれる。
それもこれもジャックが正常性バイアスに囚われ、いつまでも移動しようとしなかったせいだ。
そしてジャックはガソリンを入れる際に、10秒浴びたらヤバい有害な雨を2分間も浴びてしまった。避難所の医師に「貴方の寿命は縮まりました」と言われてしまう。
内向的だった長男ハインリヒは避難所の人たちを集めてジョーク交じりで有害物質の危険性について語る。
「俺たちはまるで中世の疫病患者みたいぢゃないか!」と世界の終末を叫ぶ気狂いみたいな初老男性も居る。この男性はジャックを見て「今、お前を見てるこの時間、以前も体験した記憶がある」と言う。「人は未来でする体験を知覚して既知の体験だと感じる」という話が本作でよく出てくる。いわゆる”デジャ・ブ”だ。だが、これまた本作の中でどういうメタファーなのか、僕はわかんなかったのでこれまたスルーします。
こればかりだがとりあえず面白い。
”有害物質の雨”騒動はとりあえず収束する。有害物質の雲を無力化する細菌が雲に撃ち込まれたらしい。事態の好転のはずだが妻バベットは「科学の発展が怖い……」と不安な表情を見せる。彼女の不安とは何なのだろう?
パンデミックで見られる色んな描写が起きるが科学の力で、ほどなくして終息する。
有害物質の雲と雨をコロナ禍、おかしな行動する人たちを陰謀論者に見立てた映画かと思ってたが、それだけじゃないみたいだ。

 

 

第三幕
とりあえず普段通りの生活に戻ったギラドニー家。
バベットはますます物忘れが激しくなり、夜どこかに出かけていく。
長女デニースは心配な表情、ジャックは謎の薬ダイラーを大学の科学の教授に調べてもらうが「大脳皮質に変化をもたらす市販のものではない薬」ということしかわからない。
このままじゃ、あらすじ全部書いちゃいそうな勢いなので、そろそろやめるとして。
ジャックは思い切ってバベットを問い詰める、すると思いもよらない真相が明らかになり、ジャックはマレーに貰った護身用の短銃を持って寂れたモーテルに出かけ『タクシードライバー』(1976)的な展開を迎えつつ急転直下のラストに行き着く。
いや、なんだかんだ序盤よくわからないし長い映画だったが有害物質流失事件から最後まで予想できないとても面白い映画だった。
最初に思った「コロナ禍と陰謀論の映画」……というのも外れては居ないが、もう少し範囲の大きな”死”についての映画だったみたい。もっと深遠なテーマがあったのかもしれないが僕は全く気付かなかったので目に見えてないそれはどうでもいい。
それと本作……特に第三幕は1シーン毎に、画になるロケーションや構図ばかり出てくるので観ながら思わずスクショいちいち撮りながら観てました。
最後の神を信じないけど病人が安心するから神の絵を飾ってる犯罪者も治療するシスターの病院も……何らかのメタファーっぽいけど例によってピンとこないのでスルーです。

いまひとつ観る人が少ないがめちゃくちゃ面白い近年の映画に『バーバリアン』(2022)『バクラウ 地図から消された村』(2019)などがあった。それらは一定のファンが多いホラー映画だったので今後も観られていきそうだが本作は一体どういう映画なのかわからず実際観てもしばらくわからない定義しにくい映画であるため、本作を観る人はノア・バームバックのファンくらいしか居なさそう(僕もこれ)。
いつもの風変わりな家族の映画だと思って観始めたが……いや確かにそうなんだが、こんなに混乱した登場人物が多く出てきたり、おかしな出来事が起きるとは思ってなかったので思いのほか楽しめました。何か後半は少しデヴィッド・リンチ映画っぽかったね。
本作のアダム・ドライバーグレタ・ガーウィグも素敵でしたね。ついでにドン・チードルも。

 

 

 

 

そんな感じでした

ノア・バームバック監督作〉

『ヤング・アダルト・ニューヨーク』(2014)/”中年と若者”じゃなく”純粋かそうじゃないか”という話?👨👦 - gock221B
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White Noise (2022) - IMDb

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