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『死霊のはらわた ライジング』(2023)/女性が、シングルマザーになる勇気を出すまでのメタファーとしての”死霊のはらわた”それでいて凄く良く出来てる”死霊のはらわた”でした。劇場公開すればよかったのに🧟‍♀


原題:Evil Dead Rise 製作総指揮&原作:サム・ライミブルース・キャンベルほか 監督&脚本:リー・クローニン 製作国:アメリカ / ニュージーランドアイスランド  上映時間:96分 シリーズ:『死霊のはらわた』シリーズ5作目

 

 

※いま2年に一回くらい来る映画やドラマ観たいブームとブログ書きたいブームが同時に来てるのでなるべく2日に一回ペースで更新してます。すぐ書けるので……。

ホラーの老舗人気シリーズだが全米では大ヒットで面白い『スクリーム』 新シリーズ同様にソフト&配信スルーになってしまった。
当時の日本のファンは40~50代だから、映画館に観に来ないだろうってことか?

このシリーズはサム・ライミ監督と主演のブルース・キャンベルが自主制作スプラッターホラー映画『死霊のはらわた』(1981)をヒットさせて始まった。カメラを取り付けた木材を持った二人が全力疾走することで、猛スピードで犠牲者に迫る死霊目線の映像を発明した(当時は「地を這うカメラ」とか呼ばれてた)。
幼い頃に、今は絶滅危惧種だが当時は超最先端メディアだった”レンタルビデオが住んでた田舎町に出来たので姉が『バタリアン』(1985)、『死霊のしたたり』(1985)と同時に借りて無理やり3本観せられて死ぬほど怖かった(当時はスプラッターホラーのブーム)。その後『死霊のはらわたII』(1987)、『キャプテン・スーパーマーケット/死霊のはらわたIII』(1992)などの続編も作られたので観に行った。この三部作の20数年後にTVドラマ『死霊のはらわた リターンズ』(2015)という続編作られた。どれも、かなりグロいが『ルーニートゥーンズ』などのカートゥーンをホラー調にしたようなノリで、実のところ大人が観たらそれほど怖くなく、全作ホラーコメディのテイストがある(だけど自分が一作目を観たのは幼かったのでただただ怖いだけだった)。ただでさえコメディっぽい感じのこのシリーズだが、作品を追う毎にコメディテイストが全開になっていった。2の時点でかなりコメディシーンが増えていたし、最新のTVドラマ版にもなると主人公アッシュは全く死霊にビビらず素手で倒す時もあったし完全にコメディ。
このドラマ版、あまりにコメディ過ぎて緊張感がなく大して人気でなかったのでシーズン3で打ち切りになった。観てる人は少なかったが自分は観てて、シーズン1と2の終盤は映画版での山小屋のあの瞬間にタイムスリップして当時の死霊と再会したりとファンサービスが楽しかった。このブログにも感想を書いてたんだが操作を間違えて知らない間に消してしまったようで今見たらなくなってた。だが、幾ら人気キャラとはいえ強すぎるし死霊を全く怖がらないアッシュを主人公にして緊張感あって面白い『死霊のはらわた』を作るのは無理そうだと思った(一作目で死霊に怯えてた大学生が本来のアッシュだからね。2作目の後半くらいからスーパーヒーローくらい強くなってしまった)。
ドラマ版の2年前にリメイク版『死霊のはらわた』(2013)も作られた。これは女性主人公のメンヘラ具合と死霊化による変化をダブらせた作品で、「怖さ」より「痛さ」を押し出した力作で、死霊によるやたら痛そうな攻撃が多かった。だが旧シリーズファンを納得させられず一作で終わってしまった、僕は大好きなわけでもないが嫌いではない。特に顔芸が豊富な主人公役のショーン・レヴィが好きだった。このリメイク版の監督と主演女優コンビは数年後『ドント・ブリーズ』(2016)を大ヒットさせた。

本作の監督と脚本を担当したのはリー・クローニンという凄く苦労してそうな名前の知らない人。過去作のホラーも観てないのでよくわかんない。サム・ライミブルース・キャンベルというシリーズお馴染みの監督&主演コンビが製作総指揮してる。
予告編があまり面白そうじゃなかったんだけど観たらかなり面白かった。意外……。

ネタバレあり。今回かなりネタバレしてます

 

 

 

 

映画冒頭、どこかの避暑地で異常な状態になった若い女性が友人二人を惨殺した。

その一日前。
ライブハウスで楽器のメンテナンス?のような仕事をしている自由人ベス(演:リリー・サリバン)は、思いがけず妊娠した事を相談しに、疎遠にしていたであるエリー(演:アリッサ・サザーランド)を訪ねてロサンゼルスアパートにやって来た。
タトゥーアーティストである姉エリーは、夫が出ていったらしく女手一つで 長女ブリジット(演:ガブリエル・エコールズ)、長男ダニー(演:モーガンデイビス)、まだ幼い次女キャシー(演:ネル・フィッシャー)……三人の子供を育てて大変そうだった。
その夜、突然の大地震でアパートの地下に謎の小部屋がある事を見つけた次男ダニーは、そこで「死者の書」と「修道士の呪文が吹き込まれたレコード」を発見し、高く売れるかもしれないと思い持ち帰る。
あまりに不気味な挿絵が描かれている「死者の書」に長女ブリジットは引くが、ダニーは好奇心からか魔導書の魔力に操られてかページをめくる手が止められない。そして「修道士の呪文が吹き込まれたレコード」を再生してしまう(いつもの流れ)。
「カンダー……アマントス……カンダー……」
すると猛スピードで接近する何者かの視点がアパートのエレベーターに乗ったところだった母エリーに襲いかかる。
エレベーター内でエリーは、まるで薄気味悪いモンスターの触手のように蠢くエレベーターの機械のコードに四肢を縛られ囚われる(これも、いつもの流れ)。

帰宅したエリーは顔面は真っ青で狂人のようになっており、怯えるベスや子供たちに襲いかかる。
エリーはさっきエレベーターで既に死霊によって肉体は殺されておりボディを乗っ取られている状態。つまりエリーは死霊。
死霊のはらわた』に出てくる死霊というモンスター……、映像的には”ゾンビ”に似てるがゾンビとは少し違う。悪魔レベルに強力な悪霊が人間の肉体を乗っ取って受肉した状態。『エクソシスト』(1973)やジェームズ・ワン制作の幽霊屋敷系ホラーのように”悪魔が憑依した人間”といった状態。やがて死霊に精神も乗っ取られて死人同然になってしまうので限りなくゾンビに近いがゾンビには本能以外の自我がない、死霊は悪意という意志を持って受肉した人間の記憶を利用して近親者を拐かしたりする。まぁ、とにかく「受肉した犠牲者の肉体が死んでしまう”悪魔憑き”」と言えば合ってるか?
ベス達とひとしきり攻防があって何度か死霊エリーをノックアウトする。
アパートは大地震で非常階段が破壊されエレベーターも故障、それを何とかしようと廊下に出ていた隣人たちも巻き込んで、死霊エリーは暴れる。隣人の顔に噛みついて目玉を齧り取る。
ベスは恐ろしくてドアを締め鍵をかける。
部屋の中からドアの覗き窓で廊下を見るベス。すると死霊エリーが近所の男児をブッ殺している。アメリカ映画で子供が殺されるのはよっぽどだ。調べたらR指定みたいね(そして12歳の末娘キャシー役の子役が観れないから、キャシー役の12歳の子役でも観れるバージョンを特別に作って彼女に観せたというニュースを読んでほっこりしました)。死霊エリーはショットガンを持った猫おじさんと戦って、猫おじさんが敗北!死亡!……なんか猫を飼ってる独身男性はアメリカ映画で死亡する事が多いので、世界的に「猫を飼ってる独身男性は死んでもいい」と言われているようで猫を飼ってる独身男性である僕はグサッと……来たりはしませんでした。全てを乗り越えて、そういう殊勝な性格ではないので……。
隣人は全員、惨殺されてしまったが死霊エリーを追い出すことに成功したベスと三人の子供たち。
予告にも多く使われてたが、ドアの覗き窓から覗くと死霊エリーが廊下で隣人たちを惨殺したり、覗いてるのがバレると話しかけてくるのが怖い。というか単純にエリー役の女優の顔が怖すぎる。『ヘレディタリー / 継承』(2018)のママ役で再ブレイクしたトニ・コレットにも通じる「凄く痩せてる中年の美人が怖い顔したら一番こわい」という系譜。キャシーがうっかりドアの鍵を開けてしまって死霊エリーがドアの隙間から覗くのは、『死霊のはらわた』(1981)とかリメイク版『死霊のはらわた』(2013)でもあった地下室の入り口から顔を覗かせる有名な場面をドアでやったんだなと思った。ドアの覗き窓というのは僕らも使うしたとえば東京に住んでて予告なくチャイム鳴らされても応対しないわけですよね。警官や配達員のフリして各部屋を回ってる犯罪者とか訪問販売の奴が居るから。だから覗いて「東京電力か……」「配達員の格好してるけど覗き窓の視界から避けてるから偽物だな」とか、覗き窓見てる時間自体が結構怖いんですよね。だから覗き窓は世界共通で怖さが伝わりやすい。
しかし長女ブリジットは死霊エリーに傷つけられた頬から死霊が感染し始めていた。
ここまでは、予告編を観て想像した通りの流れだが、あれ?結構いいなと思った。

 

 

長男ダニーが拾ってきた「修道士のレコード」を聞いて死霊の倒し方(バラバラにして逃亡するしかない)を探っていたベス。ここで修道士が死者の書など死霊とのファーストコンタクトを語ってて何て言ってたか性格な文言は忘れちゃったけど「外部の者たちと接触してえらいことになった……」みたいな事を言ってて「外部の者たち」というワードのワクワク感が凄い!一体どこでどんな状況で死霊に(又は死霊を呼び出せる者)出会ったのか気になりすぎて修道士のレコードに惹きつけられた。フィクションとかAVなどのポルノで、こういう感じで一言つけ加えただけで一気に夢が何杯も広がる台詞って素敵だね。安上がりだし。
ベスがヘッドホンで聞いてる間、通気口から部屋に侵入してきた死霊エリーと交戦。何とか死物狂いで退ける。
同時に、長男ダニーは死霊になってしまった長女ブリジットから末っ子キャシーを護って火だるまにして倒すが、胸を包丁でブッ刺されて致命傷。
えらいことになった……。
一年くらい前に本作の予告編を観た時は「久々の『死霊のはらわた』だけど、子供たちが闘うのならあまり死ななさそう」と下に見てたが、こんな子供もバンバン惨殺されたり死霊化するR指定ホラーだとは意外だった。
というかハッキリ言って面白い。予告編があんなつまらなさそうだったのに。
妊婦のベスと幼女キャシー、あっという間に二人だけになってしまった。
ここにいてもエリーや長男&長女、隣人たちの死体に死霊が乗り移って、いずれは殺されるだけなので逃げるしかない。
死んだ猫おじさんのショットガンを拝借してエレベーターを起動させ乗り込むベスとキャシー。エリーや長男&長女、隣人たちが全員死霊となり嘯く「夜明けまでに全員死ぬ」と。
エレベーターを階下に移動させようとするがホラー映画のお約束として全く動かない。ドアは閉じてるので廊下の死霊軍団は襲ってこないがエレベーター内に生き血が溢れてくる。溺れそうな二人。エレベーターの天井に逃れようとする。するとエレベーターの上にも死霊たちが居て上にも行けない。このシーンの圧迫感、絶望感がすごい。「あれ?これ結構面白くない!?」と思った。
死霊が二人を溺死させようと溢れさせた血液が400kg以上に達してエレベーターは地下駐車場までズドーン!と落ちる。エレベーターのドアが開き、死霊の血液がドバーッ!と駐車場にスローモーションであふれる。これは勿論『シャイニング』(1980)の血のエレベーターの幻覚のオマージュだ。書くの忘れたけどベス vs.死霊エリーの時も目玉を刺されそうな『サンゲリア』(1979)を始めとしたルチオ・フルチ的なオマージュシーンも合った。目玉を突かれそうになるのも、いつしかホラーの定番になったね。
地下駐車場で脱出したいベス&幼女キャシー。これは勿論『エイリアン2』(1986)以降、定番の流れとなった「幼い子を護る女性が、実の母じゃないのに強い母親像を見せる」流れ。
ネタバレですが、ここで死霊達はドッキングして一つの巨大な死霊になってるんだけど正直、機動力が落ちてて元の死霊複数体のほうが10倍強かった気がする。
あんまり書いたらよくないから端折るとして色々と戦ってベスとキャシーはなんとか逃れる。
そういえばベスは死霊からずっと「グルーピーw」とバカにされ続けていて最終的にはベスはキレる。ベスの父親は全く出てこないままだったので、恐らく都会で奔放なSEXをして望まぬ妊娠してしまったであろう予想がつく。人の嫌がる事がしたい死霊は、だからベスに「グルーピーwグルーピーw」と、ベスが嫌がる事を連呼していたのだ。しかもベスが疎遠にしていた、子供たちを立派に育てているエリーの肉体を使って。
ベスは可愛くて幼いキャシーを護ると同時に、キャシーに印象的な感じで「おばさん、ママになるの?」と訊かれ、ベスはハッとしたあと「うん、そうなの!」と応える。思いがけず妊娠した事に戸惑っていたベスが、キャシーを護ると共に自身も母になる覚悟を決めた様子がよくわかった。だから初登場時はどうでもいい女性に見えたが、終盤の血塗れのベスはマジでカッコよかった。
で、なんだかんだ終わる。つまりは「ベスがシングルマザーになる覚悟をする」という事がテーマの映画で、それをR指定のグロいホラーで描いたのが本作だったようだ。
引きこもってたベスとキャシーが脱出するまでの後半はマジで面白かった。
本作も、『スクリーム』(2022)『スクリーム6』(2023)もそうだが、面白いホラーは劇場公開しろよと思った。
死霊のはらわた』定番の流れの数々……「死者の書と呪文で死霊復活」「触手に犯されて死霊になる女性」「仲間が次々と死霊に」etc……そして、登場人物がめっちゃ少なくて、本編の舞台はアパートの上の階と地下の駐車場。これだけ。これに合わせてお約束ばかりで、ジョークとか逃げも打たずによくこんな誠実に面白く出来たな、と少し感動しました。
予告観てもつまんない……って映画が面白いこともあるんだね。
本家サム・ライミブルース・キャンベルのTV版『死霊のはらわた リターンズ』(2015)や、前回のリメイク『死霊のはらわた』(2013)より本作の方が良かった(というか近年のホラーの中でも上の方)。
そういえば修道士のレコードで「山小屋に埋めた」云々言ってたけどアレは『死霊のはらわた』(1981)のことなんだろうね。
アメリカ本国でヒットしたかどうか知らないので続編があるかどうかは知らない。

 

 

 

 

そんな感じでした

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【ワーナー公式】映画(ブルーレイ,DVD & 4K UHD/デジタル配信)|死霊のはらわた ライジング
Evil Dead Rise (2023) - IMDb

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