gock221B

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『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』 (2022) 全8話/ギレルモ関係作でこれが一番好きかも。特にパノス・コスマトスの第7話👿


原題:Guillermo del Toro’s Cabinet of Curiosities 企画&原案:ギレルモ・デル・トロ 各話の監督&脚本&原作:※後述 制作&配信:Netflix 製作国:アメリカ 配信時間:各話40分、全8話

 

 

優しく熱心な人格と癒し系のルックスとオタクな趣味で、本人の魅力は高いのだが個人的に監督する作品はどういうわけか合わないものが多いギレルモ・デル・トロ
で、ギレルモの名が冠された本作も興味なかったが、H・P・ラブクラフトの「ピックマンのモデル」「魔女の家での夢」があるので興味を惹かれて観た。第2話「墓場のネズミ」もラブクラフトの友人ヘンリー・カットナーが書いたクトゥルー神話らしい。そういえばギレルモ氏は昔からクトゥルー神話を映画化しようとしては断念してるよね。クトゥルー神話はオタクに人気で映画化もされてるがメジャーな大作映画にして大ヒットするとは思えない微妙な位置にある。ギレルモが好きなクトゥルー神話を始めとしたホラー短編小説や自身が原案したホラー小話を好きな若手監督に撮らせたオムニバス・ホラーってところか(ちなみに第一話と最終話がギレルモ考案の話)。今まであまりハマる作品がなかったギレルモ制作作品だが全作めちゃくちゃ良かった。ギレルモ監督作の苦手な部分は情が溢れる場面が異常にウェットで苦手だったが、ギレルモ本人が撮るより他人に撮らせてワンクッション噛ませた方がちょうど良くなるのかな?そういえば唯一好きだったギレルモ作品である『パンズ・ラビリンス』(2006)はドライで本作っぽかったね。本作は『パンズ・ラビリンス』(2006)に近い。そういえば『クリムゾン・ピーク』(2015)も、本作の中の一話でもおかしくないドライな作品だったが単純に面白くなかった。『クリムゾン・ピーク』(2015)こそ短くしてオムニバスで良かったのでは……。大物監督だしNetflixから潤沢な制作費が与えられているのか小物に至るまで惚れ惚れするほど美しい。意外な掘り出しものでしたね。なんならギレルモ・デル・トロ関連作でこれが一番好きかも。

早く続きが観たくなる『イカゲーム』 (2021)とか『ストレンジャー・シングス 未知の世界』などの続きものならNetflix特有の「全話一挙公開!」形式は合っているが、凄くコッテリした40分の一話完結の本作には合ってない。だから「数日ごとに2話づつ公開される」という形式で「上手いことやってるな」と思った。まぁ僕はほぼ全部公開された頃に観始めたので全話一挙公開みたいなもんでしたが……。

ネタバレあり。5点満点で考えよう。2点が「まぁまぁ」3点が「結構よかった」くらいの感じ。

 

 

 

 

第1話「ロット36」🐙 ★★★☆☆
原題:Lot 36 監督:ギレルモ・ナヴァロ 原作&脚本:ギレルモ・デル・トロ 脚本:レジーナ・コッラド

借金返済のためレンタル倉庫の中身を買い取って金目の物を売りさばくことにしたレンタル倉庫管理人(演:ティム・ブレイク・ネルソン)。持ち主の老人が死んだ36番の倉庫のガラクタを処分しようと足を踏み入れた管理人だが、保管されていた恐ろしいものを目の当たりにする事となる――

36番のレンタル倉庫の家賃の支払いがほんの少し遅れてしまった移民の女性。管理人は「もう遅い、倉庫のものは俺のものだ」と言う。女性は家族のアルバムなどを取り戻したいだけで「私のアルバムを貴方が所持してて何がいい?」と言うのだが管理人は女性を無下にする。そんな意地悪な管理人には勿論、災難が降りかかる。「銀行員の女性が出世のために、ローン延期を訴える老婆を無下にしたら呪殺されてしまう」というサム・ライミ監督の『スペル』(2009)と殆ど同じ話と言える。しかしこの主人公である管理人もまた戦争で耳をやられ女房には逃げられ借金に追われ……幾つかの不運が重なり不寛容な人間になった事が語られる。物語の中で、不寛容の連鎖は高いところから低いところに流れ……だからホラー映画での犠牲者は若い女性や年寄りた貧困者など社会的弱者になる。
管理人は『インクレディブル・ハルク』(2008)でMrブルーことサミュエル・スターンズ役してた人だな。このサミュエル・スターンズは『キャプテン・アメリカ ニューワールドオーダー』(2024)でハルクの血液のせいでヴィラン〈リーダー〉として帰ってくるらしい14年ぶりに帰ってくるらしい……。
管理人は36の貸し倉庫から降霊台を見つけ、売りに行くと質屋の友人であるオカルティストが霊的な書物を見つけ「三冊目もあれば高い値で買う」という。
管理人とオカルティストは倉庫に行き、三冊目を探す。
太古の邪悪なオカルティストは妹に悪魔を取り憑かせた。大量の触手を持つ顔のないクトゥルーっぽい死体が管理人を襲う。

 

 

第2話「墓場のネズミ」🐀 ★★☆☆☆
原題:Graveyard Rats 監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ 脚本:ギレルモ・デル・トロ 原作:ヘンリー・カットナー「墓場の鼠」(1936)

墓地に埋葬された金持ちの遺体に装着された金目の装飾物を盗んで売り捌く墓泥棒(演:デヴィッド・ヒューレット)。遺体の装飾物を奪うため墓地のネズミが掘った迷路のような地下トンネルを進むが――

ラブクラフトの友人の作家ヘンリー・カットナーが書いたクゥトルー神話が原作。
この話もまた、借金に追われていて墓泥棒せざるを得ない社会的弱者が主人公。
閉所恐怖症である主人公は、棺に生き埋めとなりネズミに襲われる悪夢を見る。すごくエドガー・アラン・ポーっぽい息苦しい悪夢。もうオチが見えるし観ていて息苦しい作品。
ネズミ達は、遺体を巣に持ち帰るため棺を食い破り遺体を移動させられるほど大きいトンネルを掘っていた。主人公はトンネルを進むと、人間の子供くらい巨大なネズミの親玉も居た。明らかに普通ではない。地下には広い部屋があった。そこにはネズミが持ち帰った墓地の遺体の骨がたくさんあった、墓泥棒は地下の遺体が付けていた金目の遺品を大喜びで拾う。部屋をよく見ると旧支配者を思わせる邪神像、そして邪神を信仰する教祖のミイラがあった。ミイラが付けていた旧支配者ネックレスを奪うとミイラは動き出し上半身だけで追ってくるので墓泥棒は逃げる。するとネズミの王も追ってくるので挟み撃ちになる墓泥棒。だが勿論エドガー・アラン・ポー的な結末にはなるものの、なかなか楽しい。旧支配者信仰がネズミに禍々しい力を与えていたという話のようだが原作では「超常的な存在がネズミに力を貸していたらしい」程度の話で邪神像やミイラなどは出て来ないらしい。

 

 

第3話「解剖」👴  ★★★★★
原題:The Autopsy 監督:デイビット・プライアー 脚本:ギレルモ・デル・トロデヴィッド・S・ゴイヤー 原作:マイケル・シェイ「The Autopsy」(1980)

森で見つかった血が残っていない遺体の捜査にあたる保安官は、古い友人である検視官(演:F・マーリー・エイブラハム)を呼び、一連の奇妙な出来事の真相解明を依頼する――

星空から岩盤、保安官の組んだ手が森林にディゾルブする前半、妙に凝った映像で惹きつけられる。
田舎町で、血が一滴も残っていない連続殺人事件が起こる。ベテラン保安官の旧友の年老いた検視官が鉱山で起きた爆発事件の遺体を調べる。
どうやら鉱山で働く男が突然、同僚を殺し始めたようだ。最初は他の話のように「邪神や悪魔にでも取り憑かれたのかな?」と思うのだが男の家には光る球体がある。これがオカルト的なことと結びつかず「一体何なんだろう?」とストーリー的な興味が湧く。
また他の作品同様に美しい映像なのだが「死体安置所」「渋い検視官(『アマデウス』(1984)のサリエリ役の人)」「解剖の道具」「ペダルを踏んで録音する機械」「換気扇のプロペラ越しの映像」「懐メロが流れるラジオ」「遺体の服を切って箱に保存」「皮膚を切り開いて内蔵を取り出してチェック」……そんな異常にフェティッシュな作業をドアップで映す。デヴィッド・リンチタランティーノの映像みたいで「検視ってカッコいいなぁ」と思わずにいられない。というかこの監督が仕事してるところを撮ったら何でもカッコよく映りそう。
主人公の検視官は妙な雰囲気を纏っている。旧友である保安官は連続殺人事件について語り車で死体安置所に向かう途中「……で、何があった?」と尋ねる。検視官は癌で余命半年だと言うが完全に死を達観している。
コズミック・ホラー的な展開になっていき「やはりこれもクトゥルフ的な話だった」とわかる。クライマックスで体内の神経組織というミクロなものを広大な宇宙のように撮ってるのも、微細なものを描くことで「その者」が来た外宇宙を同時に想起させるし、老検視官はジョジョの登場人物みたいな勇敢な振る舞いでエイリアンを撃退するしで、最初から最後まで魅了されっぱなしの話だった。
冒頭の殺人事件を描写してた時から、こういう結末になるとは思わなかったし、このまま2時間の映画でもよかったくらいだが、こんなおじいさん検視官が頑張る話は地味すぎてヒットしそうもない。だからやはりギレルモの皆が観るオムニバスの中の1篇で丁度よかったのだろう。

 

 

第4話「外見」👩🏻 ★★☆☆☆
原題:The Outside 監督:アナ・リリー・アミリプール 脚本:ハーレイ・Z・ボストン、ギレルモ・デル・トロ 原作:エミリー・キャロル「Some Other Animal's Meat」(2016)

人付き合いが苦手なステイシー(演:Kate Micucci)は職場に溶け込むため、人気のローションを使い続けるうちに彼女の身に思わぬ変化が起こり始める――

Webコミックが原作。
野暮ったくてホラー映画や動物を剥製にするのが趣味の、いわゆる変り者のステーシー。職場の、ゴシップやSEXの話題ばかりしている所謂「普通の女性たち」の仲間入りしたくて、女性のリーダーが勧めるスキンケアのローションを使うがかぶれてしまう。優しい夫は「そんな事しなくても君は魅力的だよ」と熱心に慰めるのだがステーシーは聞き入れず使い続けて肌が悪化し、精神も狂気をはらんでいく。
……という、こういう女性の「美」へのコンプレックスをテーマにしたホラーでは、肌も心もグズグズになったり、自分には美しく見えるがハタから見るとグズグズになっているという狂気オチが定番だが本作は本当に美しくなってしまう。そしてステーシーは他のマダムたちと同じように、くだらないゴシップを話し狂った表情を見せて終わる……同調圧力に合わせて自分を捨てて「普通の人」の仲間入りする事のグロテスクさを描いた作品だった。
最も痛々しい話だったかも。主演の女性は美人なのだが瞳が異常にデカくて鼻も凄く高いという極端な顔をしている、そして前半の「変り者ステーシー」の時は寄り目で顎を引いて姿勢を悪くしてそれを魚眼レンズで撮って「ブス」演出で撮っていた(こういう撮り方すればアン・ハサウェイでもブスに映るだろう)。
この作品が真にホラーなのは、主人公は最初の時点で既に幸せだったのにどんどん狂っていくところだろう。鳥を撃って剥製にしたり「怖がりなのにホラー映画を好む」という自分をしっかり持った趣味を持っており、優しい夫は「君は今のままで中身も外見もとても魅力的だよ」と熱心に言う。なかなか巡り合うことのできない「ありのままの自分を愛してくれる真に優しい夫」なのだが「美しくなって職場のマダムたちの仲間入りしたい」という夢を叶えたいステーシーに夫の言葉は届かず、遂にはそんな夫をブッ殺してしまう。そして美しくなったステーシーは職場のマダムの仲間入りして「男のペニスについて話してばかりのマダム達の仲間入りし、狂ったように笑って終わる。最初に自分をしっかり持ってて優しいパートナーがいるのにどんどんしょうもうない人間になっていく……というホラーは、これは最も恐ろしい展開かもしれない。

 

 

第5話「ピックマンのモデル」🎨 ★★★☆☆
原題:Pickman's Model 監督:キース・トーマス 脚本:リーパターソン、ギレルモ・デル・トロ 原作:H・P・ラヴクラフト「ピックマンのモデル」

リチャード・アプトン・ピックマン(演:クリスピン・グローヴァー)という内向的な男と出会い、その恐ろしい絵に心ひかれた美術学生のウィル。ピックマンの絵はウィルの精神に多大なる影響を及ぼす――

この話が観たくて『驚異の部屋』を観始めたのだが実際のところ、この話以外の方が面白くて、この話はまぁまぁだった印象。
バック・トゥ・ザ・フューチャー』一作目のマーティの父親役とか『チャーリーズ・エンジェル』(2000-2003)の痩せ男役とかで有名な奇人俳優クリスピン・グローヴァーがピックマン役、60歳近いのに美学生役してるのも凄いがスタイルが良いし劇中で他の生徒に「あいつだけ80歳くらい老けてない?」と言及されるのであまり気にならない。むしろ「忌まわしい絵を描いてるせいで実年齢より老けてるのか?」と思わされる。
原作だと「凡庸なイケメン美学生ウィルは、処刑された魔女を先祖に持つピックマンの秘密のアトリエに招待され、グールが人を食っている数々の忌まわしい絵を見せてもらいピックマンの想像力に感嘆する。だがピックマンは本物のグールの写真をモデルにして見たまま描いただけだった→怪物が周りにいるというだけでピックマンには別に優れた美術の才能などなかった」みたいな話。「魔女が先祖に居て周囲に怪物がウロウロしてる」という不思議な出来事より「別にピックマンには想像力はなかった」という現実的な事の方が大オチになってるところが味わい深い。
原作での語り手である主人公ウィルの生活がピックアップされている。ピックマンの絵を見てから現実世界でも怪物の幻覚をよく見るようになっていくのでウィルはピックマンを遠ざける、しかし数十年後にピックマンが街に帰ってきて再会。ウィルは再び幻覚を見るようになる(ウィルはピックマンを遠ざけようとするのでピックマンは「僕たち友達じゃなかったの?」とか言うのが物悲しい)。
ウィルはピックマンの絵にどんどん侵されていって彼の世界は破滅する……という、こういう展開はラブクラフト的ではあるが原作とはもはや全く違う話になっている。
ピックマンの絵が画面に出る時はバーン!とアップになって揺れたり絵の中の魔女がCGで少し動いたりする。見ただけで精神を侵されるような絵を映像で見せるのは無理なのでこうするしかないのか。個人的には、こうするよりも『パルプ・フィクション』のお宝みたいに、絵を見た人のリアクションだけ見せて絵そのものは一切見せない手法の方が良かった気がする。
美学生時代に自分や同級生の平凡な絵とは違い教師からも反発される強烈な絵を描いていた変り者ピックマンの才能に惹かれつつショックを受けたウィル。数十年、画家にはなれなかったが美術関係の仕事して妻子にも恵まれて幸せに暮らしていたウィル、そこへ同級生の中で一人だけ有名な画家になれたピックマン(しかし生活能力ゼロで電気も停められている)。ウィルは彼を遠ざけようとするが美術関係の同僚や妻子までもピックマンに魅了されていき遂にはウィルはピックマンを殺す。ピックマンは撃たれても全く恨み言を言わず「この世の裏にある真実を描きたかっただけだ」と繰り返して言う……というストーリーからして「本物の天才への嫉妬で身を滅ぼす凡人」という話にしたんだなと思った。
ピックマンの「モデル」って部分がもはやどうでもよくなってるのでタイトルの意味がわからなくなってしまっている気もしたが、ピックマンが描きたかったモデルとはグールなどの怪物じゃなくて、この世の欺瞞とかそういう社会に隠された闇を指したのが「モデル」って事だったのかな。それに、この回のポスターはウィルが描かれている、だから原作での人食いグールが本作ではウィルに置き換えられてるんだろう。だからウィルが嫉妬でどんどん狂っていったんだな。

 

 

第6話「魔女の家での夢」🧙 ★★★☆☆
原題:Dreams in the Witch House 監督:キャサリン・ハードウィック 脚本:ミカ・ワトキンス、ギレルモ・デル・トロ 原作:H・P・ラヴクラフト『魔女の家の夢』

1930年代、死別した双子の妹と再会することだけを願って生きてきたウォルター・ギルマン(演:ルパート・グリント)は、特別なの力を借り、妹の魂が存在するかもしれない不思議な世界に足を踏み入れる――

ハリーポッター』シリーズで一番いい顔してるロン役で有名なルパート・グリント主演。これもラブクラフト原作の短編小説が原作。幼い頃に超常的存在に妹の魂を抜かれてるところを目撃した主人公、彼は学業も仕事も投げ出しスピリチュアル系の研究員として妹が連れて行かれた世界のことを探し続けている……死者が蘇るわけでもなし未来のない無職だ。スピ仲間は取り返しがつかなくなる前に就職してウォルターを心配して勤め先を勧める、つまりスピ仲間やスピリチュアル研究所の人たちでさえ遊びでスピってたんだが主人公だけ本気なのだ。これもまた「ピックマンのモデル」と同じく「本物と本物ではない人の違い」の話といえる。
原作では「兄妹」の設定はなく主人公ウォルターが魔女が棲んでた物件で暮らしながら数学を極めすぎた結果、眠りの世界で不思議な世界に行って様々な邪神を目撃しつつ魔女を倒すって感じだった。本作では主人公が「幼い時に連れて行かれた妹を取り戻すために頑張る」という事を主軸としたオリジナルの話になっている。更にスピリチュアル画家やシスターやウォルターの友人などがウォルターに協力してくれる仲間が妙に多いので、ちょっとした冒険ファンタジー映画のような雰囲気。ウォルターが妹の霊とリンボの森を彷徨ってるシーンなどはどうしてもハリポタを思い出させる。
しかし数々の邪神たちを夢で目撃したり「数学でリンボ(異界)の存在を探知する」などのオリジナリティありすぎる要素が消えてしまったのが残念。ラブクラフト色よりファンタジー色を強くした感じ。
ウォルターがリンボで、幼い頃に死んだ年齢のままの妹と出会った時に「交響楽団に入った?」と妹が訊いてきて「君にまた遭うため音楽は辞めたよ」と答えて「才能あったのに……」と妹が落胆する場面、めちゃくちゃ哀しすぎてこんなシーン撮るなよと思った。
「過去に囚われたままの青年がドラッグで身を滅ぼす話」とも観れるがクライマックスで急に仲間が集まるという原作とは違う少年漫画的な展開になるものの結局バッドエンドになってしまうのも可哀想な気持ちが倍増してションボリさせられた。妹のことだけ考えて生きてきた兄が救いに来ても妹の霊は「嬉しいけど兄さんは自分の人生を生きてほしかった」とずっと思ってそうなところもまた哀しい。
妹がこっちの世界に実体を持って来て、こっちの世界の人とコミュニケーションを取るという場面は意外で面白かったが、ファンタジーっぽくするなら救って欲しかったし、そうじゃないんだから原作まんまの話で良かった気がする。

 

 

第7話「観覧」🥃 ★★★★★
原題:The Viewing 監督&脚本:パノス・コスマトス 脚本:アーロン・スチュワート・アン、ギレルモ・デル・トロ

謎に包まれた大富豪リオネルピーター・ウェラー)の素晴らしい邸宅に、各々が異なる才能を持つ4人の男女が招かれる。邸宅にはドクターザーラソフィア・ブテラ)とボディガードの男が一人。一行は「一生に一度の経験ができる」という話を持ちかけられる。彼らの好奇心が恐怖へと変わるのにそう時間はかからなかった――

ブルータリズム建築の素晴らしい屋敷に作家、科学者、ミュージシャン、超能力者?など各界の最高峰の人材が招かれる。
ロボコップ役でお馴染みのピーター・ウェラー演じる大富豪は彼らと共にある物を観覧するために呼んだ。まずその前に客人それぞれの好物の飲み物や煙草などの最高級品が振る舞われ、次に至高のウイスキー原哲夫」、至高のマリファナ、至高のコカインなど順を追って一段上の嗜好品が振る舞われる。
素晴らしい邸宅には音楽が流れて、室内の光はビル・シンケビッチのアートのように常に帯になっている。この話自体が究極の嗜好品という感じ。
壁にはボディガードの機関銃が飾られている。富豪が客にそれを紹介するとボディガードは説明せず、つーっと涙を流す。何やら過去に辛い戦いがあったようだが一言も説明しないのが却って重みがあって良い。
コカイン吸う場面も非常にフェティッシュな感じで撮られてて「吸ったことないけど自分がこの場にいたら絶対にコカイン吸いたい」と思う非常に教育に悪い作品だ。
コカインを躊躇するミュージシャンに大富豪は「人生は二度ある。『人生は一度きり』と思った瞬間から二度目が始まる……」などと如何にも大富豪が言いそうな口説き文句を言う。すっかり酩酊した一堂は奥の部屋に通される。そこには地球外の不思議な石があり恐ろしいことが起こる……というラブクラフト的なクライマックス。ボディガードも例の機関銃を壁から外して戦う!
大した事は起きないのに最初から最後まで面白いのが凄い。科学者のアジア人女性が車を飛ばして逃げるシーンも、日本アニメのようにテールランプが尾を引いているのが最高。この話は監督&脚本だったので、この監督を調べたらニコラス・ケイジ主演で撮った一部で人気だった『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』(2018)の監督だった。マンディもすぐ観ようと思った。

 

 

第8話「ざわめき」(最終話)🕊 ★★☆☆☆
原題:The Murmuring 監督&脚本:ジェニファー・ケント 原作&脚本:ギレルモ・デル・トロ

1951年、子供を失った哀しみを抱えた鳥類学者ナンシー(エッシー・デイヴィス)とエドガーアンドリュー・リンカーン)夫婦。夫婦は、外敵に対して群れで一つの生物のような行動「ざわめき」を行う鳥ハマシギの調査に来た。ナンシーは寝泊まりする一軒家で不思議な現象に遭う――

『ババドック ~暗闇の魔物~』(2014)で悲しい母親を演じてた俳優さんがここでも悲しい母親を演じている。赤ちゃんを喪い破綻しかけた鳥類学者の夫婦、ナンシーは過去に調査のために滞在している一軒家で子供の声や足音を聞く。やがて、この家で母親が子供と心中した過去がある事を知る。そしてやがて感動的な異例のハッピーエンドに……。
ここまでクトゥルフ神話っぽいコズミック・ホラーや刺激的なホラーが多かったし、最終話のコレはギレルモ・デル・トロが書いた話だったので、てっきりクトゥルフ神話みたいな話でシメると思ってたので、静謐な幽霊屋敷もの+中年夫婦倦怠そして回復ドラマだったので拍子抜けしました。中年女性の哀しみと中年夫婦のギスギスが続く。
俳優さん達の熱演や美しい映像、そして幽霊屋敷ものも普段なら好きなんですが、こういうものを求めてなかったので全く乗れませんでした。これをお出しになる番組と順番が悪かったと思った。一個前の第7話がめちゃくちゃ刺激的だったのも災いして……。
この話自体は良い話なので、感動する方も多いと思うし否定する気持ちはないのだが、僕の場合カレー屋に入ったのに素うどんが出てきて「いや完全にカレーの舌になってるから……」という感じの戸惑いが最後まで消えませんでした。
よく考えたらギレルモ・デル・トロは中年女性を描きがちというのを忘れてた。

 

 

そんな感じで僕は第3話「解剖」、第7話「観覧」がダントツで良かったですね。比較的そこまで気に入らなかった話も最後まで興味が持続するくらい面白かったです。全話、美術や映像が凄い美しかったし。大好評らしいのできっとシーズン2も作られる予感。

 

 

 

 

そんな感じでした

〈本作の製作者や監督の関連作〉
『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)/きっと良い映画なんだろうとは思うが色んな過剰な描写が不要に思えて全然乗れなかった🐟 - gock221B
『スケアリーストーリーズ 怖い本』(2019) /全体的に平凡だったが大柄女性怪異と結末が良かった📕 - gock221B
『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』(2018)/ニコラス・ケイジ復讐ものだが本編の3分の2はサイケデリックな映像が続くのでそれに合わせに行く必要がある👿 - gock221B

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 ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋 | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト
Guillermo del Toro's Cabinet of Curiosities (TV Series 2022– ) - IMDb

www.youtube.com

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