『フォールアウト』(2021)／3年前に頻発した学園での銃乱射事件を元にした映画。ラストとジェナ・オルテガが良いです👩🏻

原題：The Fallout　監督＆脚本：ミーガン・パーク　製作国：アメリカ　上映時間：96分

気がついたらアクション、ホラー、「○○マン」みたいなタイトルの映画ばかり観てる事に気付いて、好きで観てるからいいんだけど、あまりに13歳の男児っぽすぎると危機感を覚えた。女性や家族と住んでたら自分だけじゃ観ないものを観たりしてバランス取れるが一人暮らしなので自分自身でバランス取ろうとジャンルものじゃない人間ドラマを観るようにしている。
で、これはジェナ・オルテガ主演だし評価高かったから観てみた。

「2020年のアメリカ銃乱射事件611件、銃犯罪での死亡者数19,411人、銃による自殺24,156件―――（※Gun Violence Archive調査）銃社会に潜む闇に翻弄される高校生たちの悲劇を描く衝撃サスペンス」だそうです。
……あ、そういえば数年前に銃乱射事件が起こり過ぎて高校生たちが今までにないくらいの熱烈な銃規制活動してたよね？そのころ色々読んで色んな興味深い話があったはずだが忘れてしまったから書くことないわ……。

今回は割と最後までネタバレあり

Story
主人公べイダ（演：ジェナ・オルテガ）が通う高校で、ある日銃乱射事件が発生。
べイダは偶然入ってたトイレに居合わせた女生徒ミア（演：マディ・ジーグラー）、男子クイントン（演：演：ナイルズ・フィッチ）と3人で身を潜め難を逃れた――

ベイダは優しい両親と、姉にかまってほしい小学生の妹がいる幸せな女子（……関係ないが、この妹役の子役が美少女すぎるし演技も上手かったので将来スターになるんだろうなと思った）。
ベイダは授業中、生理が始まったがママに言いにくいので電話かかけてきた妹の電話を取るために抜け出してトイレに行ってた。そこで銃乱射事件。
事件現場や犯人とか射殺された生徒の死体などは映らない。
銃声を聞いたベイダ達がトイレの個室に号泣しながら隠れてたら、パトカーが来て銃撃戦があって（たぶん）犯人が射殺された音だけ聞こえて状況がわかる。
本作は事件そのものではなく難を逃れたベイダと周囲の人の後日談を描写していく。
事件の1分くらい前、トイレを済ませたベイダはダンス動画をInstagramにUPしているイケてる女子ミアがメイクしているので思いきって話しかけてみる。
会話が始まったと思ったら銃声が聞こえて二人は個室に逃げ込む。しばらくすると返り血を浴びてパニック状態の男子生徒が逃げ込んでくる。
彼、クイントンは事件現場で弟を犯人に射殺されて逃げてきたばかりだという。
三人は難を逃れた。
ショックを受けたベイダは調子良くなるまで休校して自宅に引きこもる。
これが本作の殆どの時間。
ベイダは頻繁に銃乱射の悪夢を見るし学校が怖いので自宅謹慎。まだ事件に遭ったことを自分の中で消化できていない。
ベイダは、あの日のトイレで知り合ったクールなミアと連絡を取るようになっていたので遊びに行く。
クールなミアはめちゃくちゃカッコいい家に住んでおりアーティストの両親が描いたアートが飾られており、家にあるバーでワインを飲ませてくれる。
この二人「銃乱射事件がなければ二人は知り合えなかった」とか「生徒がいっぱい死んで二人が知り合えた」とかいうと嫌な感じになってしまうが「銃乱射という悲劇があったにも関わらず素敵な友だちができた！」と、なるべくポジティブな言い方に変えていくのが生きやすくするコツじゃないだろうか。
ベイダの両親は優しいが、それ故にベイダが自分の不安を伝えると心配するだろうから話しにくいだろうし、妹は幼いし自分を慕ってるから弱みは見せたくないだろう。
そしてそれ以上にベイダが心を通わせる事ができるのは自分に近い境遇……事件に遭った同級生が一番だろう。それでなくてもミアは「ミアのインスタに映っただけで人気者になれる」と学園でも憧れの生徒なわけだし。
ミアはそのカッコよさで近寄りがたいムードがあったが仲良くなると意外とナチュラルな普通の女の子だった。
ベイダとミアは互いに処女という事を打ち明けあったり、ベイダはミアの家に入り浸る。いくら自由人でも銃乱射事件に遭った娘を置いて旅行だかなんだかでアーティストの両親どちらもいないのは少し不自然な気もするが、ミアの両親出したら話を作るのが面倒くさいと思ったのかも。マリファナ吸ってプールで遊んだりしてるし、さすがに両親のキャラがいたら怒られてそういうシーンを展開できなかったかも。
二人は、共にトイレに避難したクイントンの弟の葬儀に出かける。ベイダはクイントンを実家に招いたりと仲良くなっていく。
ベイダは、世界とズレていくのを恐れた母に復学させられるが、学校に居たら落ち着かないのかベイダは悪ガキ同級生からエクスタシー（MDMA）を買って授業中に喰ってきまってしまう。明らかに多幸感に包まれてたりMDMAきまり中の噛み締め欲求のためペンを噛み砕いたりして観ててヒヤヒヤしすぎたが奇跡的にバレなかった。
一方、事件前から仲良かった男友達ニックは銃規制活動に夢中になっていき、事件のトラウマから現実逃避しているベイダとは足並みが揃わなくなっていく。
更にミアと初体験するが翌朝「なんかこれ違うかも」と思ってみたり、クイントンにもキスするが「そういう感じじゃない」という態度を取られてベイダは自分自身の制御ができなくなって泣く。
結局、家族に心を開いてないのが良くなかったみたいでベイダは妹、父、母とそれぞれにふさわしい感じで心を開いて自分の気持ちを表現し、少しはスッキリする。
ミアとも親友に戻り、事件のトラウマは癒えてきた……と思ったところスマホで「銃乱射事件が起きて生徒が10数人死亡」という緊急速報を読み、ベイダは再び恐怖とパニックに襲われる。
「また！また起きている！」「これからもずっと子どもたちが殺され続ける！」
そんな悪い予感を表現して映画は終わる。

もちろんアメリカ人、特にティーンエイジャーじゃないと身近には感じられないだろうが、良い映画なので日本人の中年男性の僕にもそれなりによかったです。
やはり、せっかく映画全編を使って心の旅をして具合が良くなってきていたベイダなのに銃乱射のニュースを読んだだけで全部ふりだしに戻ってしまう……このラストを見せたかったんだなと思うくらいラストが良かったですね。
「どんなに努力を積み重ねた人生を送ってても一発の銃弾で全て終わってしまう」という事のメタファーにもなってるラストだし。
ラストだけじゃなくてジェナ・オルテガ演じるベイダが、休学してダラダラ過ごして自らを癒そうとしてる描写も良かったです。特に際立った事件は起こらないが、既に際立った事件は起きた後でそれを癒そうと頑張ってるのが本編なので、実のところ全編頑張ってると言える。
しかしベイダは何でマリファナ吸って、砂糖を舐めた幼児みたいにハイになって喋りまくってたのか。マリファナであんな事にはならなくない？まぁハイになったベイダが「聞いていい！？今の私うるさい？」と言う場面可愛かったし別にいいか。
とはいえ地味な映画だがジェナ・オルテガを始めとして他の生徒や家族を演じる俳優の演技もよかったですし、なかなか誠実な映画だったんじゃないでしょうか。