原題:House of Gucci 監督&制作:リドリー・スコット 原案&脚本:ベッキー・ジョンストン 脚本:ロベルト・ベンティヴェーニャ 原作:サラ・ゲイ・フォーデンのノンフィクション本『ハウス・オブ・グッチ(原題:The House of Gucci: A Sensational Story of Murder, Madness, Glamour, and Greed)』(2000) 主題歌:ユーリズミックス「スウィート・ドリームス (アー・メイド・オブ・ディス)」 製作国:アメリカ 上映時間:159分
世界的ファッションブランド「グッチ」創業者グッチ家の経営権争いと、その中で起きた殺人事件を描いたノンフィクション本を原作にした映画。
巨匠リドリー・スコットが監督した風変わりな人物がたくさん出てきて風変わりな事が多く起こる本作だが、実際にはもっとひどかったらしい。
原作は読んでないんで映画観て全部信じて乗っかった上での感想でげす。
ネタバレあり
平凡な運送会社の娘パトリツィア・レッジアーニ(演:レディ・ガガ)、美しい顔とセクシーなボディを持った、いわば”トラック野郎の姫”といった感じの存在。
そんな小金持ちのパトリツィアはパーティーで弁護士マウリツィオ・グッチ(演:アダム・ドライバー)と知り合う。
パトリツィアはマウリツィオにストーカーすれすれのアタックし続けて、あれよあれよという間に交際しデートを繰り返し1972年にパトリツィア25歳で結婚、出産……。
かくして外様からグッチ一族となったパトリツィアがサークルクラッシャーよろしくグッチ一族を破壊してめちゃくちゃにする様を描いた映画。
……なのだが、最初の出会いのパーティで名乗りあった時、自分の名字を言いたがらないマウリツィオがおずおずと「僕の姓は……グッチ……」と言った時に、明らかにパトリツィアの顔色が変わった。有名ブランドのグッチの創業者一族である事は当然夜の人たちは知っていた。 勿論「こいつグッチの息子や!」と気付き、咥え込んでやるぜ~!という欲望に着火した瞬間を描写したのは間違いないのだが、具体的にそうとは言ってないし、マウリツィオ同様にピュアな人が観たら「この時は二人、純粋に愛し合ってたのに……」と、どっちとも撮れるように撮っている(これが巨匠の技?)。
パトリツィアと付き合い始めたマウリツィオは父に紹介するが、屋敷に飾ってあったクリムトすら知らないパトリツィアを見た父ロドルフォ・グッチ(演:ジェレミー・アイアンズ)は「……アカンアカンこいつ!決定的に教養がない!グッチの金に群がった蝿や!一人息子を過保護に育てすぎて……たらしこまれてしまった!」と察知して息子に「あの女はやめとけ」と言う。
しかし生まれてこの方過保護に育てられたマウリツィオは荒々しくグイグイくる一般人パトリツィアに対して「おもしれ~女」と思いメロメロになっており「父上は家柄や金の言葉ばかり……世の中には”真実の愛”や”自由”がある事に全く気づいていない……」と父に反発。家出して新妻パトリツィアの実家のトラック会社で働き始め「(実家ほど)金はないけど生きてる実感があって、この生活、最高や!」と、運送会社の生活を満喫する。
マウリツィオとパトリツィア、盛大な結婚式にグッチ側の出席者は僅か2〜3人だった。
だが、それでは満足できないのがパトリツィア。「信じられないほどエゲツないくらいの大金持ちグッチ家」と結婚したというのに夫マウリツィオ・グッチは有ろうことか”真実の愛”とか言い出して自分のトラック会社で運転手して喜んでけつかる!なんとかマウリツィオを家業に戻さなければ!と思う。
ちなみにこの時点でのマウリツィオの「トラック会社での今が一番楽しくて幸せ!」、マウリツィオの父ロドルフォの「このパトリツィアとかいう一人息子が連れてきた女は臭え!良くないぞ!」という嗅覚は100%合っている。
マウリツィオの父ロドルフォの思った通り「パトリツィアはクソ女」だった。
そして、この時のマウリツィオが自分自身について悟ってた通り、会社経営の才能は無い。
だが、そんなマウリツィオの妻パトリツィアはグッチ家に入り込む事だけ考えている。だから「トラック運送会社社長夫婦マウリツィオとパトリツィオの幸せな暮らしは有り得ない」しかし神の視点で見ると、それが一番幸せだった。
まぁ、そうはなりようがない現実でしたけども。
その後、グッチ家に出戻ったマウリツィオは、叔父アルド・グッチ(演:アル・パチーノ)に寵愛される。アルドの実子パオロ・グッチ(演:ジャレッド・レト)は、とんでもない愚鈍な男であったため、アルドは実子を差し置いて賢いマウリツィオを重用した。
実際にはパオロはここまでアホではなく社長にもなった事もあったそうだが本作では思い切って白痴寸前のアホとして描かれる。
この当たりからパトリツィアは夫マウリツィオをグッチの頂点に立たせるべく、パオロを刺激してアルドを脱税で一年間収監させたり、パオロを著作権侵害で破滅させたりして潰す。そしてパオロはアホだからグッチの株を売ってしまい、勝手に自爆スイッチを押したアホの息子に対してアルドは絶望の咆哮を上げるが時すでに遅し……グッチの全県はマウリツィオに移った。パトリツィアは今は亡きマウリツィオの父ロドルフォの代から忠実に仕えてきた顧問弁護士ドメニコ・デ・ソーレ(演:ジャック・ヒューストン)のことまで「あいつ賢すぎて変!潰そう」と言い出したため、夫マウリツィオは「いいかげんにしろよ、お前……僕の家むちゃくちゃにして……」と正気に戻ってパトリツィアを危険視し始める。
マウリツィオは親族全員陥れて富を独り占めしようとするパトリツィアにやっと気付き、また幼馴染のセレブと不倫し始めて「やっぱ金持ちは金持ちと付き合うに限る……」と思ってパトリツィアを捨てる。
だがマウリツィオは、彼自身が若い頃に言ってた通り、才能がなくグッチが傾いてきたために他の代表者から追い出され、父の代から仕えてきた顧問弁護士とトム・フォード(演:リーヴ・カーニー)が後を継ぐ。
パトリツィアは以前から、人生の岐路で判断を仰いでいた占い師ピーナ(演:サルマ・ハエック)と相談して「マウリツィオを殺すしかない……」という結論に行き着く。
学のないパトリツィアは何一つ論理的に判断しておらず全て、この占い師の曖昧な判断で全てを決めていた。
この占い師が当たるか当たらないかはわからんのでさておき「グッチ家に入るに至ってどう動いていいか物差しがないから自分がする行動は、TVで見た占い師を基準にする」とパトリツィアが決めて行動してるのが凄く怖い。
そんで、アルドや顧問弁護士などの面々を「こいつ論理的で賢いから怪しい!よし消そう!」となるのが怖い。トランプ政権や自民党みたいな感じ。パトリツィアはすぐ他人を「こいつグッチ家を乗っ取るつもりかも!」と思って排除しようとする。自分が一番グッチ家を乗っ取ろうとしてるから他人もそうだと思っちゃうんだな。
ネタバレですが、パトリツィアは自分を捨てたマウリツィオを殺し屋を雇って暗殺。
マウリツィオは映画冒頭と同じ様に自転車の立ちこぎを無邪気に決めていた。死ぬまでボンボンのままだった。
だが暗殺依頼料金をケチったため、パトリツィア&占い師&暗殺者2人はあっさりと逮捕される……映画終わり。
かくしてお坊ちゃんのマウリツィオがパトリツィアという美人なだけの荒い女を持ち込んだがために、ブランドの〈グッチ〉にグッチ家の者は誰ひとり居なくなったのだった。おわり。
とりあえず「己を客観的に見て、身分相応に生きていこう」「親族経営は腐る」という2つの教訓を感じました。
つまらなくはないが『ゲティ家の身代金』(2017)みたいに、リドリー・スコットがササッ……と流して作った感があった。各キャラの深掘りがないし各キャラが漫画っぽすぎる誇張されたキャラだったからね。
ガガを始めとして俳優は皆良かったし、事件も面白すぎたが肝心の本作が何だか「奇跡体験!アンビリバボー」の再現ドラマみたいに性急過ぎましたね。深みがないですね。
ちなみに現実世界のパトリツィアは、出所して24億円Getして「生まれて一度も働いたことのない人生」をそのまま終えようとしている。本作についても「レディ・ガガは私を演じるんだから私に挨拶にこいや!」などと言っており、どこまでもパトリツィア。
そんな感じでした
〈リドリー・スコット監督映画〉
『エクソダス:神と王』(2014)/十の災いライド、そして哀れなアホのラムセス👨🏻 - gock221B
『オデッセイ』(2015)/クセがないが万人が面白がれそうな映画。リドリー・スコット女性キャラの機能美的なエロさ🍠 - gock221B
『エイリアン:コヴェナント』(2017)/中盤までは楽しく観てたがエイリアンのぞんざいな扱いにうんざりした👨 - gock221B
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