gock221B

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『哀れなるものたち』(2023)/赤ちゃん並の知能でSEXにしか興味なかった主人公ベラが読書や知的な友人を得て自由意志が芽生えて精神年齢が一気に上がる豪華客船のあたりから一気に面白くなる!👩🏻


原題:Poor Things 監督&制作:ヨルゴス・ランティモス 制作&主演:エマ・ストーン 脚本:トニー・マクナマラ 原作:アラスター・グレイの小説『哀れなるものたち』(1992) 製作国:イギリス/アメリカ/アイルランド 上映時間:141分 公開日:2023年12月8日(日本は2024年1月26日)



この監督の映画は全然観てなくて唯一『ロブスター』(2015)しか観てないがあまりピンと来ず……というか観たけど1mmも内容覚えてない。『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2017)は……面白そうだと思ったが何か胸糞悪そうだったので結局観てない(でも、あまりに色んな人が話題に出すので観とかなければいけない義務感が生まれつつ、でもまだ観てない)。
この映画は原題も邦題もかっこいいし予告のエマ・ストーンや映画のビジュアルが気になるので素直に観たくなった。
エマ・ストーンも自ら制作に参加し監督と何年も温めてたこの映画を制作したらしい。

※追記:第96回アカデミー賞で主演女優賞、美術賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞、衣裳デザイン賞……など四冠を達成した。

ネタバレあり

 

 

 

 

知能未発達女性ベラ(演:エマ・ストーン)は、外科医ゴッド(演:ウィレム・デフォー)とメイドと共に彼の屋敷に住んでいた。
ある日、ゴッドは医学生マックス(演:ラミー・ユセフ)を助手として己の屋敷に棲まわせる。
マックスはベラの成長過程を記録するよう命じられる。
ベラとコミュニケーションを取ってる間にマックスはベラに好意を抱く。
ある日、マックスはゴッドからベラの秘密を聞く。
ベラは橋から投身自殺した知らない妊婦で、飛び降り現場に居合わせたゴッドは既にこと切れている妊婦を連れ帰り、お腹の胎児の脳を妊婦の頭に移植し、全てをリセットした女性”ベラ”として蘇らせたという。ゴッドという異名からして彼はベラを創造した神というポジションだ。ちなみにゴッドはフランケンシュタインの怪物のようなズタズタの顔をしている、また身体中も外科医の父の人体実験によってズタズタみたい。最初は可哀想なのだが父にされた酷い人体実験の話も三回目くらいからは酷すぎて笑えてくるので「あ、これギャグも入ってるんだな」と分かった。それより、ゴッドは時折「ポヨン」と音をさせてシャボン玉みたいなものを口から出す、アレ何なんだろう?なんか松本人志のコント作品や映画っぽいシュールさがある。
マックスはゴッドの勧めもあってベラと婚約する。
頭ベイビーのベラを屋敷の外に出すわけにも行かず、ゴッドとしては信頼できる若者マックスと共にベラが屋敷に永遠に居てくれたら安心という事だ。
……だがマックスは優しい男性だが、この冒頭の時点のベラの精神年齢はせいぜい3、4歳?くらいで全く自立した自我がない幼女同様なので、幾ら外見が美人だからといって脳が幼女に恋して婚約してしまうのは、マックスも少し良くないなという感じはある。
すごい速度で成長するベラは性の快感に目覚め、享楽的な弁護士ダンカン(演:マーク・ラファロ)に誘惑されて屋敷から家出してしまう。
ベラはゴッドに「私はここから出ていく」と宣言。ゴッドは勿論反対するが「このままでここに居たら憎しみが私の中にいっぱいになってしまう」という感じの事をベラが言うので、ゴッドも仕方なく家出するベラを見逃す。
ゴッドも、心配は心配だが自我が芽生えた娘の自由意志を無視して監禁するのは良くないと思ったのだろう。
とはいえ、まだベラの精神年齢は幼稚園くらいなので自由に外界に出すのは早すぎるのだが、本作はかなり戯画化された、おとぎ話っぽいテイストの映画なので(ティム・バートン映画やウェス・アンダーソン映画みたいな感じ)そう細かく文句をつけても仕方がない。本作はカメラが引くと魚眼レンズのように世界が歪んでいたり、また覗き穴から撮ってるような画面に頻繁に変わる。これは「ゴッドや後の保護者の男たちがベラを閉じ込めて監視してる」ということを表してるのかな。またこのベラがゴッドの家から出れない冒頭では画面がずっとモノクロで、外界に出て以降は画面に鮮やかすぎるカラフルな色合いになる。そういうビジュアルも相まって、本作は全体的におとぎ話っぽい雰囲気が漂う。なんか現実の世界とは違う……昔なのか近未来なのかよくわかんないしね。
ベラの脳はまだ少女レベルだが「思春期の娘のやりたい事を止めてはいけない」くらいのことをフィクションにした感じなんだと受け止めた。
ちなみにベラは本気でダンカンに乗り換えて駆け落ちしたわけではなく、ダンカンと外の世界を見て遊んで帰ってきてマックスと結婚するつもりでいる。
ダンカンもまたベラに惚れたわけではなく「幼女レベルの知能しかない美女」とSEXしまくったり遊びたいだけ。
旅行に出かけたベラはダンカンとSEXしまくる。
外の世界に触れたベラは、頭脳は子供の好奇心旺盛な女性なので酒やダンスやタトゥーやダンカン以外の男など、世界の楽しいことを覚える。
最初はベラと遊んで捨ててやろうと思っていたダンカンだったが、奔放なベラが世界に羽ばたき始めると焦りや独占欲が芽生え、激しく嫉妬するようになる。
ベラが夢中で自分とSEXしまくってくれていたのは、ただベラが自分しか男を知らなかっただけ、という事を身をもって知ったためだろう。
嫉妬に狂ったダンカンは、ベラと豪華客船の旅に出る。海の上ならベラはどこにも行けないし他の男も少ない。
こうして客船で二回目の軟禁状態に陥れられたベラは不機嫌になる。

 

 

ベラは客船で、知的な老婦人マーサ(演:ハンナ・シグラ!)と黒人の紳士ハリー(演:ジェロッド・カーマイケル)と出会う。
それまでSEXや享楽的な遊びにしか興味がなかったベラだったが、マーサやハリーの語る哲学に「SEXより刺激的だわ」と興味を惹かれて読書を始める。それと共にベラの精神年齢はどんどん上がっていく。
ダンカンは、せっかくベラを軟禁したのにあまり相手にしてくれなくなったので酒とギャンブルに溺れていく。マーク・ラファロが演じてるということもあり最初はベラを外へ連れ出す魅力的な遊び人として描かれていたダンカンだったが、船に乗ってからはどんどんどうしようもない右肩下がりの男として描かれていく。
ある日、ベラがマーサやハリーと一緒に本を読んでいると酔っ払ったダンカンが「なぁ、もう本を読むのをやめろ。君の可愛らしさがどんどん失われていく」と「ここまでダメな事言わさなくても……」というくらいわかりやすくダメな事を言い始める。
ベラの自我や自由意志には、知的な新しい友人マーサ&ハリーや読書の影響で、知性や知識がつきはじめ、もはやSEXと遊びしか取り柄のないダンカンの手に負える女性ではなくなってきた。自分のものにするため軟禁したのに、それと反比例するかのようにベラと自分の距離は離れていき、ダンカンは酒とギャンブルに溺れ、ベラに悪影響(ダンカン以外には良い影響)を与えたマーサ&ハリーを逆恨みする。
この老婦人マーサが、出番が少ないけど妙にイカしてて誰だろうと思って検索したら、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督作品などでお馴染みのドイツのベテラン女優ハンナ・シグラだった。常に微笑しているがダンカンを軽蔑しきってるのがありありとわかる表情が本当にカッコよかった。
知性がついたベラだったが、ゴッドの家とダンカンのSEXと本でしか世界を知らない。ハリーは船が立ち寄った場所で、貧困のあまり死ぬしかない子供達をベラに見せる。ベラは生まれて初めて、貧しい人達、裕福な自分、しかし貧しい人達を救えない自分……などを一気に知ったことで半狂乱になりダンカンの全財産を貧しい人達に与えてしまう(というか船員に全部盗られただけだろうけど)。
ハリーは後で「君があまりに純粋だから意地悪したくなった」と謝罪する。
だがベラも、自分が知らなかった世界の現実を見せてくれたハリーに礼を言い、「貴方は、世界の残酷さを直視できない少年なんだわ」とハリーの内面を看破するほど成長した。
一文無しになったベラとダンカンはパリで降ろされる。
ベラは売春宿で自分の身を売って働きはじめ、知り合った娼婦と社会主義や解剖学を学ぶ。ベラが娼婦になったことを知った一文無しのダンカンは精神が完全に崩壊する……。

 

 

……というところから、まだ二転三転して終わるのだが、結局「女性の自由意志や自立や学び、そしてそれを何とか辞めさせて家に監禁しようとする愚かな男たち」という感じで最後まで進む。
もう、あらすじを追うだけでわかりやすすぎるほどに映画を通して言いたいことがわかりやすい。もう、そのままなので「これは◯◯を意味してる!」などと言ったら言った人が馬鹿に見えるくらいそのまんま。でも非情に明快で面白かった。
最初はションベン漏らすくらい頭ベイビーだったベラがどんどん成長していくところ、それをエマ・ストーンの演技ですぐわかるところなどが良かった。
冒頭は、頭ベイビーのベラが白痴みたいだし息苦しいので観てるのが辛い感じもあったが、やはり豪華客船に乗って読書や賢い友達によってベラが一気に賢くなった辺りからどんどん面白くなっていった。
最終的なところに話を飛ばすと、ベラはゴッドや婚約者マックスの元に帰ってくる。ゴッドは投身自殺した妊婦を手術して新しく生まれ直した女性がベラであることを黙ってたこと、マックスはまだ自我が殆どなかったベラと婚約したことなどを謝る。メタ的に見れば「頭がベイビーの時のベラにそんなこと説明してもどうせわからんからそうせざるを得なかった」んだけど、そういう問題じゃなくて前半の彼らは、それだけじゃなくて知能がないベラを自分たちの好きなようにしようとしてる部分もあったからね。

この映画に、特に欠点とか文句つけたいところは無いのだが、最後に改心してベラを支える婚約者マックス。優しい男なのだが、あまりに優しすぎて終始ベラに従いすぎるので、何だか少女漫画に出てくる優しすぎる彼氏みたいになってたな。ここまで来るとマックスの自由意志はないのか?と少し不安にもなった。だが本作はベラの自由意志やそこから生じる活躍を描くものであって、マックスはあくまでも「ベラの夫」という役割でしかないのだろう。徹頭徹尾「ベラという女」そして「ベラを通して女性そのもの」を語りたい映画だから、まぁそれでいいんだろうと思った。そんな感じでかなり面白かったです。画面もめちゃくちゃ人工的な美しさに溢れてたし。
あらすじ読めばわかると思うが全体的にフェミニスト映画的な色が強い。それを中年男性の自分が観てもこれだけ面白かったんだから女性が観たらもっと面白いんじゃないだろうかと思った。文句なし。

 

 

 

 

そんな感じでした

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Poor Things (2023) - IMDb
Poor Things | Rotten Tomatoes

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