先日『マッドマックス:フュリオサ』(2024)を観て、物凄く良かった。
メル・ギブソンの昔の三部作は小学生の時以来何十年と観てないがアマプラで全部配信されたので折角なので観返してみた。
ネタバレあり
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『マッドマックス』(1979)
原題:Mad Max 監督&脚本:ジョージ・ミラー 脚本:ジェームズ・マッカウスランド 編集:クリフ・ヘイズ、トニー・パターソン 製作:バイロン・ケネディ 音楽:ブライアン・メイ 配給:配給 オーストラリアの旗 ロードショー・フィルム・ディストリビューターズ(日本はワーナー・ブラザース) 製作国:オーストラリア 上映時間:93分 公開日:1979年4月12日(日本は1979年12月15日) シリーズ:『マッドマックス』シリーズ第一作目
ほんの数年だけ近未来、オーストラリアで凶悪化した暴走族を取り締まるため暴走族専門の特殊警察M.F.P.が作られた。そのM.F.P.に所属する警官マックス・ロカタンスキー(演:メル・ギブソン)が主人公。
M.F.P.が暴走族を捕まえたり、暴走族が報復したり……を繰り返し遂にはマックスの妻子がその犠牲に……。復讐の鬼となったマックスはV8インターセプターと水平二連式のソードオフ・ショットガンで武装し、首領トーカッター(演:ヒュー・キース・バーン)や暴走族達を血祭りにあげ相棒グース(演:スティーヴ・ビズレー)を焼殺したジョニー・ザ・ボーイ(演:ティム・バーンズ)を残酷な方法で殺して復讐を果たすが既にマックスの心は”あちら側”に行ってしまった――
という話。
「という話」というか全部言ってしもた。
やったりやり返されたりを繰り返すうちに振り子の揺れ幅が大きくなっていき破局を迎える系バイオレンス映画。
台詞のないモブ暴走族たちは当時オーストラリアで社会問題になっていた本物の暴走族を起用。それをトーカッターを演じて後に『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)でイモータン・ジョーを演じた俳優が現場でトーカッターやイモータンみたいにまとめて警官役とギスギスしたり……という現場だったらしいので、物凄い低予算映画だった事も加わってか映画全体から異様に緊迫した雰囲気が出てて凄く怖い。
暴走族が市民を乱暴したり殺す展開が多いのでキツい。暴走族が実際に暴力を振るう直接的描写は殆どないのにも関わらず、異常に嫌~な気持ちにさせられてしまうのは、やはり演出が凄く上手いからなんだろう。乱暴された女性が裸で首に鎖を付けられて怯えてたりするの凄い胸が痛いもんね。
そしてトーカッター一味がマックスの妻に目をつけて付け狙ったりして最終的には幼い子供もろとも殺されてしまうのだが、最後に殺されるのをわかっててロカタンスキー夫婦が楽しく過ごしてる様子を見るのが本当に辛い。他の映画とかでもそうなんだけどレイプリベンジ系映画とかでも実際に被害に遭うシーンよりも、その前のアバンとかで後で被害に遭う女性が「なんか空気の良い所ね」とか笑ってて、後に乱暴する悪者がニヤニヤして見てる場面、この時間が一番苦手。恐らく「後に起こることを知ってたら運命を回避できるのだが、この主人公は当然それを知らないからどうにもならん」という、本当はどうしようもないのだが実は運命を変えうる「揺らぎ」のある時間……そこで何も気づいてない被害者キャラを見つめる時間が一番キツいかもしれない。
で、本作の場合「全編がそういう時間」なので、はっきり言って観てる間、全然楽しくないし監督が「上手くいかんかった」と後悔してる古い映画だけあって面白くもない。だけど観終わって翌日以降に思い返すと面白い。観てる最中は面白くないけど、鑑賞済で思い返す時って観なくてもいいからね。そういった感じで、観てる時はつまらないが観終わったら面白い作品って割とあるよね(あと大して面白くないので眠気と闘いながら観て、その感じを後から思い返すと気持ちいい映画もある、後述するサンダードームとか)。
マックスは相棒グースが殺されて、普通だったらここでブチギレて復讐開始しそうなもんだが、すぐにはそうせず嫌気がさして警察辞めようとする。ここが面白かった。署長に「俺は走りが楽しくなってきてる。俺はバッジを付けてる以外は暴走族どもと大差ない気がする」とか言う。ここもまた普通だったら「(家族や平和を愛する)俺と(極悪非道の)暴走族たちは全く違う!」と言いがちなのだが、マックスだけ自分たちと暴走族は合せ鏡のような存在だ、と悟ってるのが他の映画と違うところだと思った。これは続編でも出てくるテーマの一つだね。先日観た『マッドマックス:フュリオサ』(2024)でもフュリオサは宿敵ディメンタスに「俺達は似てる」とか言われてたし。
そしてまた他の全作品もそうだがマックスが全然強くない上に、デビュー作である本作に至っては出番すらサブキャラかってくらい少ないのも面白い(まるで群像劇かってくらい各キャラの出番が均等)。シリーズ通して観るとマックスの微妙なキャラ性能が後になるほど、どんどん面白くなってくる。
あと本作の暴走族は、ほとんどスラッシャー映画の殺人鬼みたいな演出されてるせいか途中からホラー映画のようにも見えてくる。これはむしろ観てて気が楽になる描写だった(あまりに人間臭い奴が暴力振るう方が胸が痛くなるからモンスターだと思えた方が気が楽になる)。バイオレンス・アクション映画というより暴走族を怪異と捉えたホラー映画にも見える。ショットガン老婆の親戚の知的障害者ボーイもサンダードームのブラスターの原型っぽい。
そういえばマックスの妻を護るために老婆がショットガン持って暴走族に立ち向かうシーンは、後のシリーズでの闘う老婆を思わせる胸熱シーン。その一方で、暴走族が近くにいるのに海水浴行って水着でうたた寝する迂闊な妻やボンヤリしてるマックスに少し苛ついてもくる。
とにかく真の意味で「治安が悪い」映画という言葉が浮かぶ。多くの続編の方が規模が大きいし、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)などは規模も映像も巨大化して最高なのだが乱暴者の嫌な感じや「治安の悪さ」は本作がぶっちぎりだと思う。
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『マッドマックス2』(1981)
原題:Mad Max 2: The Road Warrior 監督&脚本:ジョージ・ミラー 脚本:テリー・ヘイズ、ブライアン・ハナント 撮影:ディーン・セムラー 製作:バイロン・ケネディ 音楽:ブライアン・メイ 配給:ワーナー・ブラザース 製作国:オーストラリア 上映時間:95分 公開日:1981年12月24日(日本は1981年12月26日) シリーズ:『マッドマックス』シリーズ第二作目
核戦争で世界が滅んだ暴力が支配する荒野。北部族の長老が幼い頃に出会ったマックス・ロカタンスキー(演:メル・ギブソン)について語る回想が本作。
家族を失い犬と共にV8インターセプターで荒野を彷徨うマックスが、小型オートジャイロを持つジャイロ・キャプテン(演:ブルース・スペンス)や、〈楽園〉を目指す石油精製所の一団と出会い、首領ヒューマンガス(演:ケル・ニルソン)やウェズ(演:ヴァーノン・ウェルズ)の凶悪な暴走族との闘いに巻き込まれていく――
そんな話。
アメフトの防具みたいなものを付けたモヒカンのヒャッハー暴走族が暴れる暴力が支配する荒野に革ジャンの寡黙な救世主がやってくる……という路上+車とガソリン+ディストピア英雄譚な世紀末救世主伝説。80年代少年ジャンプが『北斗の拳』(1983-1988)で盛大にパクってそれも大ヒットした。ジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)、『ゾンビ』(1978)が後に死ぬほど作られたゾンビ作品のジャンルを作ったように本作もまた「”こういう感じ”の作品ジャンルを作った」印象。まぁマッドマックスと北斗の拳以外特に残ってないような気もするが……「マッドマックスみたいな」と言えば一言で「核戦争後の世界でモヒカンが暴れてる作品ね」と一発でわかるのが大きいね。
本作でも肩アーマー付きの革ジャンにV8インターセプターやソードオフ・ショットガンというトレードマークはそのままに新たに犬を連れてる。
そして蛇を飼って小型ヘリに乗って顔が細長すぎるというキャラの濃いジャイロ・キャプテンや、石油精製所の戦士たちやブーメラン小僧と共闘する。
石油精製所の女戦士とかは、白い羽が付いた可憐なアメフト防具みたいなの付けてたりして『北斗の拳』が南斗やマミヤでパクりまくった感ある。
巨漢モヒカンのウェズが恋人らしき美少年を連れてたが、美少年が戦死して怒り狂うのは永井豪が『バイオレンス・ジャック』の関東地獄街編とかでもパクってた(ここでは怒りのモヒカンが死んだ恋人を泣きながらそのままモリモリ食う場面があってさすが豪)。
そういえば闘いを控えたヒューマンガスが凄く大事そうに箱の中に保管してる銃を取り出すシーンが二回くらいあったがよく見たら古い夫婦の写真があったので「両親?ひょっとして良いところの坊やだったのか?」と思った。勿論、単純に他人の物を盗っただけという可能性もあるが、このシリーズは細かい美術や描写で語られてない背景が伺えるのが面白いね。
マックスは石油精製所とヒューマンガス率いる暴走族との争いに巻き込まれ、流れでジャイロ・キャプテンともども石油精製所側に着く。黒澤明の『用心棒』(1961)をどうしても思い浮かべてしまう。というか監督は黒澤明好きらしいし劇伴も妙に黒澤明時代劇っぽいし、現代とは大きく違う野蛮な世界観だし、ストーリー展開も(今の時代から観れば)スローテンポに思えるので観てるうちに凄く時代劇を観てる気持ちになった。
暴走族が捕虜を車両の戦闘に張り付けにしてたり、ラストバトルは「巨大タンカートレーラーが”約束の地”に向かって爆走しながら暴走族と死闘を演じる」「暴走族のボスは、野蛮で恐ろしい見た目だがカリスマもある戦略家でもある」「虐げられてる者たちの新天地への脱出に命賭けで協力しつつ最後はクールに去る」など、久々に観たら思いのほか『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)の原型なんだなと思った。
そして本作のマックスもまた全然強くないところが良い。いや困難な任務を一人でこなしたりして強くはあるのだが「そこら辺の奴らより1.5倍強いだけ」って感じの凄く微妙な強さなのが最高……いや1.5もないな、モブより1.25倍の強さ。ジョン・カーペンターの『ニューヨーク1997』(1981)、『エスケープ・フロム・L.A.』(1996)のスネーク・プリスキンや『ゴーストハンターズ』(1986)ジャック・バートンや『遊星からの物体X』(1982)のマクレディ……要はカート・ラッセルが演じてた「カリスマ性があって少しだけ強いが強すぎない主人公」くらいの強さだ、というか僕が全映画の中で一番好きな『ゴースト・オブ・マーズ』(2001)の主人公二人もそうだしジョン・カーペンター映画の主人公全員微妙な強さだと言っていい。
……もうちょい最近の人気キャラで言った方がいいか、『マンダロリアン』〈シーズン1-3〉(2019-2023)の主人公ディン・ジャリンとかがそうだよね。敵5人くらいを倒せたかと思えばモブのチンピラに気絶させられる事もできる。スーパーヒーローも素人に毛が生えたくらいの能力のやつの方が絶対に超スーパーパワーのヒーローより面白くなるからね。MCUのパワーが強いキャラを見ればわかりやすいが「ハルクとソーとワンダはメンタル激弱」「キャプテン・マーベルは常に留守」パワーが強すぎるヒーローは如何に使いにくいかがよくわかる(ジェームズ・ガンの『スーパーマン』(2025)が楽しみ)。その一方でキャプテン・アメリカ、ブラックウィドウ、ホークアイ、デアデビルとかは動かしやすいし「大して強くないですから~」と言い訳しながら延々と活躍させられっぱなしになって良い。
「ヒーローは微妙な強さの方が良い」最も大きい理由は「大して強くない→やられる可能性が高い→それでも他人のために命賭けで闘う→何て素晴らしい奴だ!」といった感じで、そのヒーローの精神性の高さを示しやすい。マックスやフュリオサは言わずもがな、彼らに協力して悪に立ち向かう老婆とか出てきたら一発でジーンとさせられる(ジョン・カーペンター映画にも、巨悪に立ち向かう弱っちいやつが割と出てくるのが好きな理由のひとつ)。
しかし、いかに「ちょっとだけ強い、微妙な強さ」とは言いつつ、トレードマークのインターセプターの修理が完成して「これでマックスも全力出せるぞ!」と思った次の瞬間に襲撃されて大破してマックスが血まみれで荒野に大の字に転がって虫の息になったのは爆笑した。
マックスに懐いて付きまとうブーメラン小僧も尻丸出しでうろちょろしたり犬みたいに唸ったりしてめちゃくちゃ可愛い。
そして冒頭とラストで「かつて石油精製所で共闘してくれたマックスの伝説」……つまり本編を語る北部族の長老によるナレーション、そのの声の主は年老いたブーメラン小僧だった。これが最後にわかる英雄譚っぽさも凄く良い。
ラストのナレーションでは、リーダーが戦士したので「空から来た男(ジャイロ・キャプテン)が次のリーダーになった」ということやブーメラン小僧がその後を継いだという事まで教えてくれるのが嬉しかった。
マックスについては一番ラストで、旅立つ皆を見送るマックスの映像に
「マックスのことは誰も知らない」とだけ言って映画が終わるのがあまりに渋い。
また、上のトップ絵は勝利後にジャイロ・キャプテンと互いに笑い合うスクショだが、インターセプターが大破して以降の終盤マックスは左目を瞑っていて(失明?)その左目がずっと半分閉じてるのが神話の人物みたいで凄くカッコいい(というか汚れたメルギブの顔が単純にカッコいい)。
このメルギブ旧三部作では本作がぶっちぎり人気だが、一番まとまってるからそれも頷ける。前作は、良い映画だけど殺伐としすぎてて観てる間は全然楽しくないものの、本作は車両とか世紀末世界とか衣装とか、色んなフェティッシュな魅力が詰まっているのでスター・ウォーズ的に世界そのものをフェティッシュに楽しめる要素も大きい(たとえばマックスがドッグフード食ってるのが妙に美味そうに見えたり)。
ドッグフードといえば犬が殺されたのは哀しかったが「ヒューマンガス一味への復讐心もあって石油精製所へ助力する心変わりする」という理由付けと、あとラストの「マックスのことは誰も知らない」のところでマックスを一人にしたかったから犬は居なくなる必要があったのかなとも思った。
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『マッドマックス/サンダードーム』(1985)
原題:Mad Max Beyond Thunderdome 監督&脚本&製作:ジョージ・ミラー 監督:ジョージ・オギルヴィー 脚本&製作:テリー・ヘイズ 編集:リチャード・フランシス=ブルース 製作:ダグ・ミッチェル 撮影:ディーン・セムラー 音楽:モーリス・ジャール 配給:ワーナー・ブラザース 製作国:オーストラリア、アメリカ 上映時間:107分 公開日:オーストラリアは1985年8月8日、アメリカは1985年7月10日(日本は1985年6月29日) シリーズ:『マッドマックス』シリーズ第三作目
愛車や愛犬すら失ったマックス・ロカタンスキー(演:メル・ギブソン)は、女王アウンティ・エンティティ(演:ティナ・ターナー)が統治する、物々交換で成り立つ街バータータウンに着く。
マックスはエンティティにバータータウン裏の支配者であるマスター(演:アンジェロ・ロシット)とブラスター(演:ポール・ラーソン&スティーブン・ヘイズ)の抹殺を依頼されて決闘施設サンダードームにてマスターブラスターと闘うことになるが――
という話。
ちなみに公開当時は(今も)不評だった作品。今観たらおもろいのでは?と思い、良いところを見つけようという前のめりな姿勢で30数年ぶりに観た。
開幕すぐアウンティ女王役ティナ・ターナーの熱唱で始まり、猿を連れたマックスは馬車に乗っていたが飛行機に乗った男と凄くハイテンションの可愛い坊やに襲撃されて奪われてしまう。
アウンティンとマスターブラスターが支配する物々交換の町バータータウンに辿り着いたマックスは絡んでくる役人の帽子を、いつものソードオフショットガンで吹き飛ばす。そして入口で武器を提出するよう言われるのであらゆる銃器、武器、弾丸などを次々にカウンターに置く。
だが幾ら何でもこんなに持ってたか?というくらい大量に置くのでギャグだと思った。しかも強いタフガイがその強さをギャグにするタフガイギャグというか、近年だとタフガイを描写する事自体が古臭くなってしまったため、こういうシーンすごい久々に観たなと思った。『ジョジョの奇妙な冒険』三部の承太郎とかがよくこういうギャグをするが、アニメ化されて初めて観た欧米人が承太郎を「お強いのねププ」と気に入りつつも少し笑っちゃってたので時代の流れを感じられて面白かった。
映画開始そうそう全装備を失って初期アバターみたいになったマックス。
タウンに来るまでのマックスは(恐らく2を思わせるような)タフな闘いで勝利して来たのだろう、そして「今までの流れを全部リセットして新しい話を始めるぞ」という事ですよね。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)を期待してきた観客に『マッドマックス:フュリオサ』(2024)で「前のと一見似てるが今回はヒロイックな活躍は殆ど無しのアンチカタルシス映画や」と、ミラー監督が時代や語る順番によって変えることろは好きです。
サンダードームでブラスターと相まみえるマックス。サンダードームの意匠は素晴らしい。バータータウン住人がドームの側面にびっしりくっ付いてるのも、まるで住民全員が合体してドームを形成してるかのようで素晴らしい。
ドームでの闘いは、二人共バンジージャンプのゴムみたいなのでビヨンビヨンと飛び跳ねて闘う様がバラエティ番組みたいで、内容は死闘なのに見た目は間抜けというギャップが良い。
事前の潜入調査で「ブラスターの弱点は高音の反響」ということを突き止めていたマックスはブラスターを行動不能に陥らせる笛を持ち込んでいたが、ブラスターの猛攻で落としてしまい、それを拾おうとする度にブラスターの攻撃を喰らう……という笛を中心にした攻防を作り上げてて、これは文句なしに面白い。
しかしブラスターの素顔が子どものような知的障害者だったためマックスはトドメが刺せず、アウンティがブラスターを射殺し、マックスは荒野に放逐される。
そこでマックスは、緑が豊かな土地に子供だけで棲んでる部族に助けられる。
部族は、やってきたマックスを「僕たちを伝説の地に導いてくれる伝説のキャプテン・ウォーカー」だと思いこんでいた。
というか部族が全員、子供。族長にあたる少女も16歳くらい?だと思うけど、彼らは一体どうやってここに集まったんだ?凄く不思議なので調べたが、どうやら「核戦争から逃れようと難民を乗せたボーイングが核の爆風で墜落。ウォーカー機長が子供達を導き、このオアシスを作り上げて行方不明になった」という事らしい。親たちは墜落で死んだのかな?
マックスが「伝説のキャプテン・ウォーカー」ではなかった事に落胆した族長の少女は、マックスの静止を振り切って数人の子供を連れて外の世界を見に行く。客観的に見ると「このオアシスに水とか自然あるから荒野に出なくていいじゃん」と思えるのだが部族からすればボーイングのパンフレットを聖書のように読みこんで綺羅びやかな文明が外界に残っていると信じているようだし、何よりも外界に出たい若の気持ちは老が幾ら止めてもきかないものだしね。老は経験によって「ここは天国、外は地獄だぞ」と知ってるから言うものの、若からしたら「そんなのは老がそう言うだけで自分は見たことないし、どこかに文明があるかもしれないだろ!」と夢を見ても仕方ないね。
砂漠を旅する子供達はさっそく流砂に落ちそうになる。
そこに猛ダッシュで走ってくるマックス!子供を引き上げる。よかった……と思ったら一人、流砂に巻き込まれて子供死んだ。ここまで今までのマッドマックスとは違い80年代っぽい楽しいムードだったので、まさか普通に死ぬとは思えない描写だったので「うわ!子供死んだ!」とビックリした。
だけど少し弛緩した雰囲気だったから、死んだ子には悪いが子供が死んでぐっと映画が引き締まった。
バータータウンに潜入したマックスと子供達は、工場で働かされていた賢人マスターを仲間にして脱出。
ちなみに、ここまでは普通に面白いと思った。
だが最後、追ってきたアウンティ軍団と、毎回お馴染みの爆走ラストバトルがある。絶対外れがない爆走バトルだが本作のそれは凄くつまらなかった。なんか監督とずっと一緒にやってきた編集の方が亡くなった?せいなのか、ラストバトルの編集もカットが変わったらドアップになるのが頻出したり各キャラが何してるのかとか位置関係がよくわからなかったり、かと思えばあるキャラクターがこっち見てるシーンが妙に長尺で挟み込まれたりして画面も砂漠で茶色いし、観てる間にめちゃくちゃ眠くなってこれはアカンと思った。面白いのは能面で着飾った残機が多いアイアンバーという敵だけ。
そして遂に、飛行機親子とマスターと子供達を飛行機で逃がしたマックスだが、前作同様その場に残される。そこへアウンティが追いついてマックス大ピンチ!と思ったら何とアウンティは笑顔で「良いパンチだったぜ!」とでもいう感じで哄笑して仲間を引き連れてタウンに帰る。このアウンティが急に良い奴になってノーサイド宣言するラストでめちゃくちゃ醒めた。アウンティ、邪気のないパワー系ブラスターを射殺するような奴だったやん。何で急に気持ちの良い人間になったのかと言うと、これはもうティナ・ターナーだからだろうとしか思えず、だから嫌になった。ひょっとして「マスターブラスターには苛められてて恨みがあったが、それ以外では良い女王」という設定なのかもしれないが、そう思わせる材料が作中で無いので僕の感じ方は仕方ないと思う。
映画もドラマもラストが良ければ、途中がイマイチでもよく思えてくるが逆はアカン。
正直、マスターを救出してタウンを脱出するところまでは「人気ないけど結構良いじゃん」と思えていたのだがラストバトル→アウンティの許しで一気にテンション下がった。
確かに、今までシリアスだったマッドマックスシリーズが、スピルバーグ&ルーカスに影響された如何にも80年代ハリウッド映画っぽいムード満載になったので嫌う人が多かったのはわかる。スター・ウォーズでいうなら『スター・ウォーズ ep6/ジェダイの帰還』(1983)だな、今では嫌う人減ったが当時は妙に子供ウケを狙ったジェダイの帰還は賛否両論で嫌う人が多かった(「80年代ハリウッド映画っぽいムード」についてもそれだけでこれまでの文章くらい書けるくらい言いたいことあるけどもう長くなってきたからやめとく)。
だが僕が嫌だった理由には「80年代ハリウッド映画っぽいムード」「子供ウケを狙ったマッドマックス」という部分は関係ない(そういう作風であっても好きな映画とかあるしね)。単純にラストバトルの編集とアウンティのキャラに納得いかなかっただけ。
……とはいえ後半の工場でマックスが敵を追いかけて扉の向こうに行くと敵が大勢いすぎてマックスが逃げて引き返してくる!というジャッキー・チェンみたいなシーンはどうかと思った。
終盤に集中した嫌だったところを除くと、美術、各キャラクター、サンダードームの死闘、旅客機パンフレットを聖書とする子供部族のオアシス……など良いところいっぱいあったので惜しいなと思った。
3作目もまた「約束の地」を探す話だった。ちなみにミラー監督が次に作りたいが『マッドマックス:フュリオサ』(2024)の歴史的大爆死で製作が危ぶまれてる『マッドマックス ウェイストランド』にもサンダードームや子供達が出てくるらしい、バッドエンドが既に決まってる作品だが、観たいよね。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)のマックスの前日譚で、何故マックスがあんなにショボくれてたかがわかる。僕はその部分のコミック読んだので既にストーリー知ってる。
そういう感じで三本とも毛色が違ってて楽しめました。
次は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)を観返そうと思う。というか公開時に観た時も感想書く時もテンション低くてしょうもない感想だったから再見して感想も書き直すわ。
というか『マッドマックス:フュリオサ』(2024)も観た日は「まぁ良いけど長くない?」と思ってたけど日が経つにつれて好きになってきて二回目観に行こうと思ってる。
今夜は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)を観れるから楽しみだな。
そんな感じでしたgock221b.hatenablog.com
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Mad Max (1979) - IMDb
Mad Max 2: The Road Warrior (1981) - IMDb
Mad Max Beyond Thunderdome (1985) - IMDb
Mad Max | Rotten Tomatoes
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