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『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』(2025)/本作のベニチオとスカヨハほんと良かった。ウェス監督作品が良くても感想書きにくい理由


原題:The Phoenician Scheme 監督&脚本&制作:ウェス・アンダーソン 製作総指揮:ロマン・コッポラ。へニング・モルフェンター 撮影:ブリュノ・デルボネル 編集:バーニー・ピリング。アンドリュー・ワイスブラム 音楽:アレクサンドル・デスプラ 製作会社:アメリカン・エンプリカル・ピクチャーズ。インディアン・ペイントブラッシュ 製作国;アメリカ/ドイツ 上映時間:102分 公開日:アメリカは2025年5月30日。ドイツは2025年5月29日(日本は2025年9月19日)

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ウェス・アンダーソン久々に観た……というかこのブログに記事がないことからして10年以上観てないと思う。
初期は『ザ・ロイヤル・テネンバウムス』(2001)が好きだった、登場人物が何故か皆スポーツウェアを着てるのがおしゃれだしグウィネス・パルトロー演じるキャラが、心を病んで目の周り真っ黒の作家なのにラコステとかのポロシャツ着てたのがギャップでよかった。
ウェス監督の映画は「アクションもワンカット長回し気味」「少し引いた位置から昆虫観察みたいに見ている視線」「画面は可愛いけど非常な展開」「左右対称の静謐な画面」「乗り物や建物の断面図」など、どの要素も割と映画好きが好む硬派な要素が多い、だから最初は好きだったのだが画面や衣装や小物がとにかく可愛い、可愛いすぎる。また登場人物が大抵お金持ちで趣味が凄く良い。ウェス監督自身もそんな感じだし。そんな感じで内容自体はいつも文句なかったものの「映画好きが好みそうな硬派な中身」と「上流の人が撮った可愛い画面の映画で上流キャラが趣味の良い生活をしている」というギャップ、これが小市民の自分と徐々に距離が生まれてきて「監督や作品は良いと思うけど、あまりにも自分と関係ない世界すぎるや」と思えてあまり観なくなったような気がする。今からして思えば。何故観なくなったのか自分でもわかんなかったけどこれだと思う。
そしてビル・マーレイを始めとする常連俳優たちもかなり金持ち感ある人たちが多かったのがその忌避感を助長させた。近年の作品は僕が好きなベニチオ・デル・トロスカーレット・ヨハンソンが多いので「いいかも」と思って久々に観ていくことにした。もちろんベニチオ・デル・トロやスカヨハも若くしてスターになってずっと金持ちではあるのだが、彼らは何故か普段の姿を感じさせないものがある。最初から映画の中の人みたいな感触?スカヨハが誰々と付き合ったとか結婚したみたいなニュースは逐一あるものの、映画に出てるスカヨハには興味あるが「役を演じてるスカヨハ……を演じてるスカヨハの中の人」にはあまり意識がむかないというか……わかるか?言ってること。ベニチオ氏もそうだよね。というか普段どうしてるのか全く知らんし興味もない。ただ映画に出てる彼はルックスも雰囲気も最高ということしか知らん。

ネタバレあり……と、いつもの儀式で書いたが本作のネタバレ聞いて怒る人もいないだろうが……

 

 

1950年代、大富豪の武器商人ザ・ザ・コルダ(演:ベニチオ・デル・トロ)は、冷酷なやり口によって敵対企業や各国政府、元部下などから始終、命を狙われていた。
ある日、唐突に修道女をしていた娘リーズル(演:ミア・スレアプレトン)を唯一の相続人候補とする。
ザ・ザ・コルダは、ヨーロッパの独立国フェニキアのインフラ整備プロジェクト〈フェニキア計画〉に取り組んでいた。
ザ・ザ・コルダとリーズル、そして家庭教師ビョルン(演:マイケル・セラ)の3人はフェニキア計画を成功させるための旅を始めたがザ・ザ・コルダへの暗殺や様々な妨害が3人を襲う――

というあらすじだが、要は「冷酷な仕事人間だった実業家のおっさんが突然、疎遠だった一般人の娘と旅するうちに打ち解けて最終的に人間性を取り戻す」という太古からずっと作られ続けてきたし今後も作られ続ける話のウェス版。
久々に観たが相変わらず、ワンカットっぽいアクション、趣味の良い可愛い美術の中でちょこまか動く人間たち、画面は可愛いけど突然の死、乗り物や建物の断面図……などいつもの感じ。だが前述の通りベニチオ氏が凄い良かったので忌避感なくスッと入ってきた。ザ・ザ・コルダも娘以外には血も涙もない冷酷な人物で、弱音を吐いたパイロットをクビにした瞬間に機外に放出したり奴隷労働を課したり、10分に一回くらい暗殺されそうになってずっと怪我してるので、主人公ザ・ザ・コルダは本編の間ずっと懺悔してるような状態なので好感が持てる。物語が始まるまでの数十年間は冷酷で色々酷い人物だったのだろうがそんな観てないしね。要は「軍師目線」って言葉があるけど映画が始まったらすぐ大富豪の冷酷な実業家ザ・ザ・コルダに感情移入できるので、過去のウェス映画によくあった「自分とは遠い金持ちが作った金持ちの話やな」といった、いじけ気味の忌避感なく素直に観れる。
最終的には、娘リーズルと冒険してる間に真人間化してきた主人公ザ・ザ・コルダは、弟?かなんかだっけ?ベネディクト・カンバーバッチ演じる親戚の実業家と対決する。
このカンバーバッチ演じる実業家は「娘と再会して心を改心しなかったバージョンの主人公」を意味してある。カンバーバッチが悪い形相で掴みかかってくるが、どこか一歩引いてて可愛い雰囲気なのが凄くウェス監督っぽい(記事一番下の拾ったGIF画像参照)。だが可愛い描写されるが最後は爆死して前進グチャグチャになる壮絶死、だが血など水分が全くない爆死っぷりもまたウェス監督っぽさ。
途中、ザ・ザ・コルダが政略結婚する再従姉妹役でスカーレット・ヨハンソンが出てくる。なんか監督お気に入りみたいで最近よく出してるらしい。スカヨハが綾波レイ的な無表情キャラしてるのでそれはもう一番可愛い。もっと出番が多ければよかったのに。なんか発掘現場みたいなところで短パン履いてて色気のない格好してるんだけど無表情でセクシーな彼女がそんな格好してるのがギャップあって凄くエロい。
久々にウェス監督作を素直に楽しめたし実際に今年のベスト10に入るくらい良かった。
だが実のところ感想に書くことが何もない。これもまたウェス監督作品にありがちだが本当に良かったとしても書くことが何もない。勿論映画を一緒に観に行った友達と話すように「あそこがよかった」「ここがよかった」などと延々と並べることはできるが、そういう点の感想って線の感想になってないから書く意味ないですよね。
映画の画面や描写は作家性ありすぎて、観た瞬間に「はいウェス・アンダーソン映画ね」と誰でも断言できるほど色があるものの。ストーリー自体は、本作でもそうだが物凄く普遍的なベタなものが多い。それでいて、どの作品もそうだが一歩も二歩も引いた昆虫観察のような目線で登場人物たちの活躍や死を描いている。そういう作品のあそこがこう、あそこはああだったとか書くと……なんかアホみたいなんですよね。
割とどんな作品でも感想は書けるがたまに感想書きにくいものがある、たとえば本作同様にベニチオがいい感じで出てて今年公開だった傑作『ワン・バトル・アフター・アナザー』(2025)がそうだ。本作の感想言いにくいのとは別のベクトルで……ワンバトルの方がまだ書くことあるかもしれないけどあれは作中の良いシーンとか語りたいメッセージが非常に明確で……それを「気づきましたか?あれは現代アメリカ社会の◯◯で……」とか語り始めたら「知ってるよバーカ!」という気分になりません?僕が第三者だったら「観りゃわかるだろボケ」と思いそう、だからといって傑作だったのに感想書かないのもありえない、だから良かったけど良かったのを書くのが難しいですわみたいな苦しい感想に留めておきました(だけどその苦しいワンバトルの感想は好評でした)。
「観りゃわかるだろ!」ということを言い出すと映画の感想ブログとか成り立たないし普段は、あまり人が触れないとことか挙げたりするもんだけどワンバトルの場合魅力が全部わかりやすく露出してて挙げようがなく、それで挙げたら挙げた人がアホみたいになるから、それで感想が難しくなるのだろう。本作の場合はそれとは少しパターンだけど違う感じで魅力を挙げにくい映画でしたわ。
だけどとてもいい映画だったし記事にはしたいので特殊なかたちではあるが、これで感想記事のかたちにさせていただいた。

 

そんな感じでした

 


 

The Phoenician Scheme (2025) - IMDb
The Phoenician Scheme | Rotten Tomatoes
The Phoenician Scheme (2025) • Letterboxd
ザ・ザ・コルダのフェニキア計画 | Filmarks映画

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