gock221B

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『アウトレイジ』(2010)、『アウトレイジ ビヨンド』(2012)/キャラ名を把握して再見したら、より面白かった🔫

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もうすぐアウトレイジ 最終章 (2017)」が公開されるが「アウトレイジ (2010)」「アウトレイジ ビヨンド (2012)」の「あのキャラ死んだっけ?あいつは最終的にどうなったんだっけ」という細かいところを殆ど憶えてないなと思ったので久々に通して観てみた。

 

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アウトレイジ (2010)」
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監督&脚本&主演:北野武 製作国:日本 上映時間:109分
シリーズ:「アウトレイジ」トリロジー

 

ざっくり言うと、
関東の巨大ヤクザ組織・山王会(会長・北村総一朗、若頭・三浦友和)が、傘下の小さな武闘派の大友組(組長・たけし、若頭・椎名桔平加瀬亮)を使って、最近力をつけてきた傘下No.2池本組(組長・國村隼、若頭・杉本哲太)と、違法薬物の売買をしてるので快く思っていない無所属の弱小組織・村瀬組(組長・石橋蓮司、若頭・中野英雄)を互いに争わせて弱体化させようとする話。
そこに若干の裏切りや下克上が絡んでくる。
‥と、こうあらすじを書くと、三国志や戦国ものや政治や経営の権力争いやママ友同士のマウンティング合戦にも通じるし、「HUNTER×HUNTER」で今やってるカキン王位継承編などが好きな人も楽しめそうな普遍的な、万人が好む裏をかき合う系エンターテイメント作品なので大ヒットした理由もわかる。
しかし北野映画なので痛そうな残虐シーンが多いのが特徴。
正直言って、この映画は今までの北野映画よりも台詞が多くて、ぐっとわかりやすくしてくれてるのだが、人名が「加藤」だの「村瀬」だの異常に普通っぽいものが多く、それをボソボソと密談で相談してるため最初観たときは誰が誰をどうしたいのか今どういう状態なのかよくわからなかった。

群像劇の形を取っているが一応、たけしが所属する武闘派やくざ集団、大友組(たけしや椎名桔平)が主人公ポジションと言える。
昔の任侠映画のような仁義などは当然持ち合わせていないが、他のずる賢い強キャラやくざ達に比べると、実直に力押ししてるだけのたけし達は「古風なヤクザ」と言える。主にたけしに忠誠を誓うカッコいい椎名桔平の腕力で中盤まで無双するが、力押ししてるだけなので後半ではハメられたり前半のつけが回ってきたりして貧乏くじを引かされる。
こう書くと、大友組は我ら一般庶民が感情移入して観れる主人公として申し分ない組織だったと言える。

それまでの監督主演作での主人公たけしはイーストウッド同様、神性のようなものを纏った厭世感漂う死を恐れない超人たけしを演じていた。しかし本作では、中間管理職的な普通のヤクザ「大友」を演じたので、今まで北野映画を観てた人たちを驚かせた。
過去の北野映画のノリだったら「良いように使われてる事に腹を立てた主人公たけしが暴走し始め、目上の奴らも片っ端から殺していくも最終的には巨大勢力に滅ぼされる‥だけどたけしは死にたがってるから別に殺されてもバッドエンドではないのでした~(おしまい)」というナルシスティックな展開になりがちだった。
本作の大友(たけし)は今までの北野作品のたけしではなく「ただのヤクザ大友」なので暴走らしい暴走は目上の池元組長(國村隼)殺害にとどまり、山王会には牙を剥かず最終的に生き延びようとする。ここが今までの超人たけしと違う。たけしと言うよりあくまでも只のヤクザ大友。

しかも大友はお飾りの主人公にしか過ぎず、ストーリーも過去作の様にたけしの死生観中心に動くわけでもなく、たけしのキャラは群像劇の中の一人にしか過ぎなかったという新しい北野映画だった。
その冷たさがカッコよくて特に前半が凄く面白かった。
その反面、面白アイデア残虐殺害があまりに連発されたせいで徐々にコントっぽく見えてきたりもしたし、中盤のアフリカン黒人を使ったカジノ経営編はあまり笑えない上に丸ごと要らないし(あのアフリカ出身の黒人が何で寝てるだけの蛇があんなに怖いのか謎だ)、後半の全滅エンドも過去の北野ヤクザ映画でよくあった敗戦処理的に殺されていくノリ。この流れ作業的に殺されていく流れ、たけし本人は恐らく無情さを出したくてコレよくやるんだろうが僕はあまりハマったと思ったことがない。
まとめると、全体のテイストと前半全部とオチは良いけど、中盤から後半にかけてが好きじゃない感じだった。作品内での高低差が激しい。
だが良い部分はめちゃくちゃいいので「ビヨンドよりこっちの方が好き」という人の気持もわからないでもない。特に大人っぽいヤクザ映画が好きな人はや椎名桔平加瀬亮のファンなどはこっちだろう。
それにしても椎名桔平を本作でリタイアさせたのは勿体なかった気もする。

 

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アウトレイジ ビヨンド (2012)」

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監督&脚本&主演:北野武 製作国:日本 上映時間:112分
シリーズ:「アウトレイジ」シリーズ

 

続く「アウトレイジ ビヨンド (2012)」。
今回はまず「エンターテイメント映画のお約束をあんなに嫌っていたたけしが続編を作るとは」というところで驚かせられた。

下克上を果たして山王会を我が者として成り上がった加藤(三浦友和)石原(加瀬亮)。その力は五年経って政治の世界にも及び始めた。
前作から引き続き登場のマル暴の片岡刑事小日向文世)は、山王会と持ちつ持たれつでやっていたが、さすがにそこまで力をつけた山王会を何とかしたい。
そこで片岡刑事は、山王会内で新参の上司である石原にイラついてくすぶっていた古参幹部の仲良し三人組(中尾彬名高達男光石研)に目をつけ彼らを、関西の巨大暴力団花菱会神山繁西田敏行塩見三省)に引き合わせ、花菱会+山王会古参組を山王会本体にぶつけようとするが古参幹部達はヘタレなので上手くいかない。
そこで片岡刑事は、大友(たけし)を仮出所させ、前作で大友が潰した元池元組の木村中野英雄)と組ませるが、大友はこの世界に疲れてしまっていて山王会を殺る気は失せていた。
だが勝手に大友を恐れた石原が大友を狙う。そして復讐に行った木村の弟分の不良青年たちが惨殺された事で大友と木村に火が点く。
大友&木村は根性を見せて花菱会の強力なターミネーター数体を借りて山王会へのリベンジを果たそうとする。


前作よりも更にわかりやすくなった代わりに、
前作の冷たさと残虐描写祭りは無くなり、主人公のたけしと木村は明確に良い奴として描かれている。
前作では使われるだけだった大友(たけし)は、動機が前作のように処世や損得ではなく「仇を討つ」「汚い奴らを討つ」というヒーロー性も獲得したキャラクターになったため、明確な痛快エンターテイメントへと変わった感があった。
本作の大友は、前作の中間管理職的「普通のヤクザ大友」ではなく超然とした、大友というよりも「たけし」と呼びたい感じの往年のたけしキャラになっていた。
仮出所するが、ヤクザ世界での権力争いに興味を持てなくなっていた大友は、片岡刑事の煽りに乗る気もなく、知り合いの大物韓国フィクサーのところに身を寄せようとしている。
そして接待要員の美女を退ける(ここで恨みを晴らす気もなく出世欲もない上に性にも興味ない事がわかり「ただのヤクザキャラ大友」ではない、幽霊のような男である事がわかる)。そしてソファーに座って何もない前方の宙空をぼーっと見る‥という過去の北野作品によくあった仕草を再び見せる。
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自分の内面を観てるのか未来を観てるのか、定かではないが超然としたたけしキャラにはこのカットが必ずある。
ここで「あ、これは只の大友じゃなくて過去の北野映画のたけしキャラなんだな」とわかる(全然関係ないけど思春期の時の僕は、このたけしの宙空を見る動作に憧れて、電車で座ったり教室で座ってる時に(何も考えてないのに)何もない宙空をぼーっと見たり真似していた)
そして、リベンジする切っ掛けは自分がハメられた事では無く他人の仇討ちのためだし完全にヒーロー性が増したキャラになっている。
ひょっとして前作の大友は、刑務所で木村に刺された時に本当は死んで、今の大友は復讐の精霊にでもなったのかもしれない。

前作の「只のヤクザたけし」も良かったんだけど、それは他の俳優でも代用できるし、せっかくたけしが出てるんなら僕はこっちの超人たけしの方が好きかもしれない。


そんな感じで強キャラたけしに盛り上がりつつも、前作で打ち出した「昔ながらの古いヤクザはリアリストに滅ぼされるのみ」というリアリティが消えてしまったのは残念だが、その穴をフォローするのが花菱会だ。

本作は、片岡刑事の暗躍もあって「良い奴たけし&木村が、悪い奴ら山王会を倒す」という単純な話だが、実は「良い奴たけし&木村を支援する花菱会」が、優しいおじさん達では勿論無く実は山王会よりもズル悪い奴らだった。というところが、本作が失ったリアリティを補填しているし面白い。
花菱会の一人勝ちは続編へのヒキもある。
かといってビヨンドでシリーズが終わっても、それはそれで問題ないし。
しかし花菱会‥特に会長(神山繁)と西田敏行のキャラはあまりにも強すぎた。
そして前作で無双していた無敵の山王会の三浦友和加瀬亮は別人か?と思うくらいアホのキャラになっていた。まあ2人のことは、覇権を握った時点で慢心から堕落したと思っておこう。

そして今回のたけし無双は「たけしは強いわけでも賢いわけでもなく、ただ花菱会からターミネーターを借りたから」ってだけ。
そう考えるとあながち荒唐無稽な話でもない。
同じ立場だった山王会古参(中尾彬はヘタレだったので支援を得れず死んだが、たけし&木村はThe Man Without Hear(恐れを知らない男)だったために花菱会のターミネーターを借りることができた。
そして復讐が終わったたけしが木村のように殺されず生き残ったのは、前述した超人たけしになっていたおかげ‥恐れを知らない力のある男なのに、出世欲などが全く無いという西部劇のイーストウッドのような超自然的キャラになっていたおかげだ(木村は普通に木村組を立ち上げるが、たけしは世を捨ててのんびりしようとする)。
パワーを得た理由も生き残れた理由も、たけしから人間性が失われて過去の北野映画っぽい超人キャラになっていたおかげ。
そんな常人離れしたキャラになった大友だが、処世だけ見ると前回同様ただ葉っぱのように大きな川の流れに沿って浮いているだけというのが面白い。
何かたけしの事ばかり書いたので、観てない人が読んだら、まるでたけしがコマンドーのように大活躍する映画に思えるかもしれないが実のところ、そんな事はない。
実際に一番動いているのは片岡刑事で、殆ど片岡が主人公みたいなものだ。
それにしても、たけしが西田敏行塩見三省と怒鳴り合う場面などのように聴き心地がよいシーンも多く、落語でも聴くかのように何度も楽しめる。

 

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それで10月は三作目の最終章。
ビヨンドで無敵の強さを誇った花菱会会長役の神山繁は亡くなってしまい登場しない。代わりに大杉漣が花菱会トップに就くようだが彼は予告編の時点で既にボコボコにやられまくっていた。
西田敏行がラスボスなのだろうか?個人的に応援したいのは松重豊の刑事。
新キャラ瀧に期待してるので出来る限り長く登場してほしい。あと津田寛治
本気で終わる気があるのなら大友(たけし)は今度こそ死ぬだろう。
一作目みたいに不明瞭なやられ方だったらやる気満々という事だ。
だけど個人的には寅さんみたいに延々と続けてもらっても構わないし良いと思う。
今までそれほど面白いと思ってなかったが再見して、こうして感想書いていると結構アウトレイジ好きな自分に気がついた。
というか最初の方にも書いたが、初見だと誰が何て名前なのかわかりにくく、要はストーリーがちゃんと理解できてなかったのかもしれない。単純に俺がアホだったのか

※追記:後に最新作『首』(2023)を観て他の作品ともども本作を観返しました。

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そんな感じでした。もういいよ木村!さっ帰ろう

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『龍三と七人の子分たち』(2014)/意外と良かったです/たけしの思い出 👴 - gock221B
『首』(2023)/北野作品史上最もカッコつけてるシーンがなくてエンタメに徹してるとこがカッコよくて面白い作品でした💀 - gock221B

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