gock221B

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『イップ・マン 完結』(2019)/目の前の外敵を通して敵の背後の政治的状況と戦う様は好きだが完全に中国とアメリカを分断して終わるのは現実を踏まえると怖い✋

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原題:葉問4 監督&制作:ウィルソン・イップ アクション監督:ユエン・ウーピン 音楽:川井憲次
製作国:中国 / 香港 上映時間:105分 フランチャイズ:『イップ・マン』シリーズ4作目

 

 

 

ブルース・リーの師匠として知られる中国武術詠春拳〉の達人、イップ・マン(葉問)の人生を若干のファンタジーを交えつつ描いたシリーズの完結編。
葉問 - Wikipedia
僕は中国・香港映画とかあんまり観ないけど、それでもこのイップ・マン(葉問)と黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)などの近代の英雄は、カンフー映画武侠映画にやたら出てくるので知ってる。日本で言うと新選組とか宮本武蔵みたいな感じ?
日中戦争で故郷を占領した日本軍と戦った一作目『イップ・マン 序章』(2008)。香港に引っ越したらサモ・ハン・キンポーやイギリスの統治と戦うことになった二作目『イップ・マン 葉問』(2010)。やられ役を一切やる気のないマイク・タイソンと揉めながら愛する妻の死という最大の敵と戦った『イップ・マン 継承』(2016)を経ての4作目。
最初に言っておくとネタバレあり。ドニー・イェンや香港カンフー映画もそこそこ好きだが大好きすぎるほどではないし特に詳しくない。
イップ・マン(ドニー・イェン)の息子は何やら反抗期のようで、自分のやりたいこと(武術)より勉強するよう強要するイップ・マンと揉めている。どこにでもある父子の光景だ。
ちなみにイップ・マンは冒頭で癌が見つかり、余命が僅かな事が先に宣言されている。
そしてイップ・マンは若々しいドニー・イェンが演じてる事もあるし中国・香港映画は主人公の加齢をあまり描かない事もあって年齢がよくわからない。だがラストを見る限り、どうやら本作のイップ・マンは見た目に反してかなりの高齢者らしい。
長男は学校で喧嘩が絶えないため退学。イップ・マンは愛弟子ブルース・リー(チャン・クォックワン)が頑張っているサンフランシスコに息子を留学させようと渡米する。
米国に渡ったイップ・マンが、チャイナタウンの中華総会と触れ合ったり、アメリカ白人のレイシズムと闘い天寿を全うするというのが完結編である本作。
……このブルース・リー役を務める俳優チャン・クォックワンは『少林サッカー』(2001)でブルース・リーそっくりな役でデビューしたブルース・リーマニアのダンサーだった男。だから前作で登場した時「夢を叶えて本物のブルース・リーになるとは……」と感動した覚えがある。……しかし彼のWikipediaを今見たところ『ブルース・リー伝説』(2008)ってドラマでブルース・リー役を主演して2千万人の国民が観た超絶ヒット作品となってて俺が軽く思ってた「ブルース・リーに憧れてた男がブルース・リー役できてよかったじゃん」って印象の数千倍、大スターになっていた模様。しかも「ブルース・リー大好きだからブルース・リーそっくり俳優で売れて嬉しいなぁ」などと増大しがちなスターのエゴの抑え込みにも成功してる模様。前作では「おぉ似てる似てるw」って感じだったけど本作の彼は只のそっくりさんを超えて本当に強そうな感じにオーラが増大していた。本作におけるブルース・リーは確か2作目ラストでイップに弟子入りする後ろ姿で初登場した。だから「3作目ではイップ先生と並んで戦うブルース・リーが見れるんだろうな~」と期待してたら殆ど出てこなかったし、売りだったはずのマイク・タイソンも中途半端にしか戦わず悪役のはずなのに愛妻家で良い奴みたいに負けもせず退場するというクソしょうもない出方でめちゃくちゃガッカリした。だが本作の舞台は既に強くなって自分の道場を持ってアメリカ人にも教えている渡米後のブルース・リー。これは今度こそ期待できる。
渡米したイップ・マンと再会したブルース・リーブルース・リーは空手大会でワンインチパンチを披露している。ジークンドーワンインチパンチと言えばブルース・リーの孫弟子、石井東吾先生が総合格闘家・矢地祐介のYOUTUBEチャンネルで実演しておりジークンドーが再注目されている。
話を戻して、ダイナーでイップ・マンと談笑するブルース・リー。そこへ空手大会でブルースの実演をインチキだと思った白人が絡んできて、ブルース・リーは「よくある事です。先生はここで待ってて」とはじける笑顔を見せた後、満を持して白人空手家とストリートファイトブルース・リーっぽい鼻こすり仕草やヌンチャクのアクションなども交えつつ立派なカンフーファイトを繰り広げる。
彼はただそっくりなだけでなくブルース・リードラマを演じきったおかげか、どこから観ても文句のないキレのある俊敏な動き。チャウ・シンチー映画によく出てた「ブルース・リーに似てるガリガリの面白い男」って印象じゃなくて、もう只のカンフースターだわ。
昔はなかったスターのオーラまで漂わせててブルース・リー役やってても何の違和感もない。だが、本作での本格的なファイトはこれだけで、後は2、3回チラッと顔出すだけだった。まぁこれはイップ・マン先生の作品だからね。ブルース・リーがあんまり出張るとイップ・マンのドラマが薄くなると感じて出番少ないんだろう。「ブルース・リーの活躍はドラマを観て!」って事なんだろう。
イップ・マンはチャイナタウンを仕切る中華総会の総会長(ウー・ユエ)に、息子を学園への推薦状を貰いに行く。しかし太極拳の達人でもある彼は子供の頃からアメリカ白人からのアジア人差別が原因で大の白人嫌い。イップ・マンの弟子ブルース・リーアメリカ人にも中国武術を教えたり中国武術の教本を出版している事を快く思っておらず両者の会談は決裂。ちなみに、この総会長を演じてるウー・ユエ氏は八極拳の大会で優勝した事もあるガチの達人らしい。
しかし白人生徒にいじめられてる彼の娘をイップ・マンが助ける。だが素直になれない総会長はイップ・マンと対決して引き分けに終わり友情が芽生える。
ところで、このイップ・マン vs.総会長の立ち合いは、急に起きた地震によって中断される。立ち合いの結末まで描いてしまっては変な感じになるので中断させたかったのはよくわかるが、この地震が物語に全く関係なく、ただ2人の立ち合いを止めるためだけに起きた地震というのが凄い。正に神仏が止めたって事だよな。こんな役割のために天変地異が起きる演出ってドラマチックで好きだわ(『日出ずる処の天子』で絶縁したら両者の間の地面が割れるとか)。
関係ないけど、この総会長の娘はアイドルグループ、アンジュルム佐々木莉佳子そっくり。ハロプロ好きならそう思うであろう。凄いアイドル声だしグラマーだし中国ではさぞかし人気者なんだろうと思った。
そんで面倒臭いので説明は省くが、中国人を快く思っていない総会長の娘をいじめてた白人JKの父親が中華総会長を冤罪で連行し、また別口で中国人を差別しまくっている白人の海兵隊軍曹が、中華総会のお祭りに襲撃をかける。
……このさ、総会長の娘をいじめてた白人JKの父親と海兵隊レイシスト軍曹。共に中国人を快く思ってないレイシスト白人だが、このキャラ、一人のキャラで良くない?二人とも顔が全く覚えられないモブ白人顔なので最初、一人の人物だと思ってたら突然、2人に分裂したので軽く混乱した。
これは多分あれだな、軍曹が中華総会長を私怨で直接連行してったらおかしいから、まずは警察署のレイシスト白人に冤罪で連行させ、しかし最後の「イップ・マンの活躍で海兵隊の必修科目に中国武術が加わった」の一文を加えるためには海兵隊基地で対決する必要があるから、軍曹が中華総会長を基地に連れて行った……と、こういう流れだろう。
警察署のレイシスト白人はこれ以降一切出てこないので、もう警察署のレイシスト白人がレイシスト軍曹に変身したようにも見えるし物語的には全くそうと言ってもおかしくない。
それと、中華総会長が連行されたと同時に米軍海兵隊に襲撃された中華総会。ここでは中華総会長ほどではないが腕に覚え有りの師匠連が空手家の海兵隊に立ち向かうが劣勢、ここでイップ・マン先生が蹴散らしにやってきてイップ・マンと中華総会の結びつきが生まれる。関係ないけど海兵隊に立ち向かうアラフォーだかアラフィフくらいの中年女性の師匠がかっこよかった。敵に物理的に立ち向かう中年女性っていうのは映画にあまり出てこないからハッとするカッコよさを感じた。自分は詳しくないからよく知らんが、きっとカンフースター関連の人なんだろう。
そんで連行された中華総会長は善戦むなしく軍曹にボコられ、怒りのイップ・マンがアベンジしに行く……という流れ。

 

 

 

そんな感じで話の流れは、中国拳法の達人と立ち合いして友情が芽生えるが、その達人がレイシスト白人にボコられてイップ・マンが正義の鉄拳を放つ……という二作目『イップ・マン 葉問』と同じ流れ。
二作目の時は「いや、どう見てもラストバトルするモブ白人よりサモ・ハン・キンポーの方が強いやろ?」と思わされたが、本作のレイシスト白人もまた「とにかく悪いレイシスト!」ってだけの性格しか持ち合わせていない人間味の一切ないモブ白人なので「こんな奴に何でイップ・マンがここまで苦戦するんだ?」と不思議になる。もっと総会長みたいに人間を描いてれば強さに説得力もあるのだろうが、このシリーズはとにかく敵となる外国人は一面的な性格しか持ち合わせていないので毎回ラスボスのが、じっくり描いてる中国人の中ボスより遥かに薄い。制作陣も今回そこは気づいてるみたいで「イップ・マンは癌を患った老人」「中華総会長の娘を助ける時に鉄の扉で手を挟まれて手が痛い」などのハンデをイップ・マンを負わせてるので、まぁイップ・マンが苦戦するのもギリ理解できなくもない。とはいえ演じてるのがドニー・イェンなので彼が過去に見せてきた強さ表現の印象があるので、いくら「イップ・マンは癌の老人」と言われても「いやいや、癌とか加齢とか彼には関係ないやろ」と思ってしまう。というか総会長が白人が負ける時点で納得いかないものがあるし。
そして卑劣な軍曹……いやアメリカ白人のレイシズムに怒り心頭のイップ・マン先生は、軍曹とのラストバトルでは「眼球かすらせチョップ」や「金的」などの「肉親には出せぬ技」を繰り出し何でも有りバトルを制すのが良かった(ここが一番リアルでよかった)。しかも目潰しや金的は、強調すると卑怯に思われかねない技なので「俺でなきゃ見逃しちゃうね」って程度にさりげなく描写されてるのもまた本物感あってよかった。
それといつもやってる細かい超連打パンチ……仮に無影拳と呼ぼう……この無影拳は果たして効くのだろうか?それともダメージよりも拳の弾幕で壁を作り敵を疲弊させるのが目的の技なのかな?などといつも考えてる。
まぁ最初の方で言ったように、肝心な場面でブルース・リーが絶対不在で参戦しないのは「イップ・マンの活躍がぶれるから」ってのはわかるのだが、やっぱ少し不自然だよね。彼のカンフー教本が騒ぎの一端になってるのに全盛期のブルースは出てこなくて老人のイップ・マンが闘い続けるので「師父が危ないぞ?ブルース・リー同じ街いるのにどこで何してるんや」と落ち着かなかった。ここは「ブルース・リーは映画のオーディションに行った」とか「死闘すればもう道場を経営できなくなる」とか、何でもいいからブルース・リー不参戦の理由付けが欲しかった。
また、イップ・マンの人生やドニー・イェンの素晴らしい動きを堪能できたのは良かったのだが、ちょっとあまりにも登場人物の性格が単純すぎるのが気になった。レイシスト白人たちの「良い面」などを描いてる時間がなかったのだろうが、産まれた時からレイシストレイシストとして生きてきたレイシストとしての一面しか持ってないかのようなキャラ造形がちょっと古いなと感じた。まぁ舞台設定が古いので「ゴールデンエイジはパンチで物事が解決するシンプルな時代だった」という見方もできるのでいいか。そして当時のチャイナタウンの中国人や劇中の中国人たちが受ける言われもない差別は許さないので映画観て「レイシスト白人ども許せん!イップ・マン先生こいつら早くやっつけて中華総会の皆を救ってくれ!」と思いながら観てたのだが、観終わってみると「確かにアジア人差別は許せないのでイップ・マンや中華総会や中国人を応援しまくってたけど、現実の中国はかなり巨大で世界を席巻する大国になってるよな」と香港のことなど思い出すと微妙な気持ちになった。
また、映画前半では白人との分断を語る中華総会に「武術に国境などありません」と言ってたはずのイップ・マン先生も卑劣なレイシスト白人や、彼らに迫害される中華総会などを散々見て帰郷する時には「隣の芝は青くなかったですね」と総会長に言って中国に帰っていく(そして恐らくもう二度と来なかっただろう)。イップ・マンの息子は「最初から別にアメリカ行きたがってない」というのもあるが、それにしたって「息子の留学」がイップ・マンの目的だったはずだがラストでは「もういいやこんな国」って感じになっていて推薦状をくれた中華総会長を苦笑させる。そういえば推薦状貰いに行った先の偉いさんも「犯罪者かもしれないのに推薦状なんか書けるか!」と感じ悪かったり 学園長も「大金くれれば入れてあげるわよ」とか言ってて感じ悪かったし本作で有効的なアメリカ人は、ブルース・リーの弟子の黒人警官だけだった。この手の映画だと何だかんだあっても最後は和解するのが筋だが、これほどまでに完全に「アメリカに希望を持っていたイップ・マンがアメリカに失望し断絶して『中国で頑張ろう』って感じで終わる」なんて結末になるとは思わなかった。
強くて紳士でカッコいい達人イップ・マン先生の詠春拳や活躍そしてその人生の終幕まで見届けたのは良かったが、一面的なレイシストアメリカ人しか出てこなかったり、そんな彼らを見切って「多様性とか、ここでは無理だから私たちは中国で頑張ろう」と「中国とアメリカを分断」して終わるのを現実の中国と照らし合わせて観ると……ちょっと怖い終わり方で、あまり感動できなかったな。過去作同様ドニー・イェン演じるイップ・マン先生やブルース・リーや達人たち等の登場人物(回想でしか出てないけどイップ・マン夫人も好きだった)、イップ・マンが物理的な強敵とただ戦うだけでなく敵の背後にある世相や集合的な悪意に対して詠春拳を喰らわせる様は好きだったけどね。

 

 

 

そんな感じでした

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映画『イップ・マン 完結』公式サイト

www.youtube.com

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