原題:Doctor Who (TV Series 2023–) プロデューサー:フィル・コリンソン 製作総指揮:ラッセル・T・デイヴィス、ジュリー・ガードナーほか 演出:レイチェル・タラレイほか 脚本:ラッセル・T・デイヴィス、スティーヴン・モファット、ケイト・ヘロンほか テーマ曲:ロン・グレイナー 音楽:マレイ・ゴールド 制作会社:バッド・ウルフ・プロダクション 制作局:BBC 配信:Disney+ 製作国:イギリス 上映時間:各話50分、全9話 2023.12/25~2024.06/21(日本では2024.05/11) シリーズ:『ドクター・フー』15代目のシーズン1、新シリーズ(2013-)ではシーズン14(通算では『ドクター・フー』(1963-) シーズン40)
TikTokLiteしてたらファスト映画紹介みたいな動画で、今回のシリーズの第5話「73ヤード」が流れてきて、あまりに面白そうすぎて検索して観た。
1963年からイギリスBBCで放映されてる世界最長のSFドラマシリーズ。
最初は子供向けだったが、やがて大人も楽しめるようになったらしい。
長い放送期間で、ドクター役が、代替わりではなく俳優交代でいけるように「ドクターは死ぬたびに違う地球人の姿で再生される」など色んな設定があるものの「ドクターと、サイドキックのコンパニオンが色んな時代や場所で冒険する」という展開のための舞台装置としてそれら設定が後から作り出されたのが面白いなと思った。
「なんかボンヤリ名前を聞いたことあるなぁ」くらいの認識で、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)が公開された時にネビュラ役のカレン・ギランがドクター・フーのシーズン5-7(2010-2012)でレギュラーだったので、その時お試しで入ってたHuluにあったので観ようとしたが膨大すぎて観る前に疲れた、また演技が異常に大げさなのもちょっと合わなかったので数話しか観なかった。
ゴミ箱みたいなダーレク。クラシカルな機械人間サイバーマン。だるまさんが転んだ的な嘆きの天使などの敵は有名なのでそれらは知ってた。
というか本作はワンシュチューエーション一話完結だし、色んな面白い怪異や怪物や神などが敵だったりして全体的にSCP財団がドクター・フーに似てるなぁというボンヤリとした印象がある。……いや、子供も楽しめる明るい雰囲気やタイムマシンで冒険する感じなどからして劇場版ドラえもんを毎週やってるような感じかもしれない。
作品全体とかドクターなどの各種設定は説明書くのが面倒なのでWikipedia貼るだけで感想に移ろう。
ドクター・フー - Wikipedia
ドクター (ドクター・フー) - Wikipedia
あとテーマ曲がめちゃくちゃカッコいい事も知ってた。
www.youtube.com
ネタバレあり
👩🏾🦲👩🏼🖱️ 👩🏾🦲👩🏼🖱️ 👩🏾🦲👩🏼🖱️ 👩🏾🦲👩🏼🖱️ 👩🏾🦲👩🏼🖱️
滅んでしまった惑星ギャリフレイの種族〈タイムロード〉の生き残り、ドクター。
タイムロードは、外見は人類と同じだが、心臓を2個持ち、重大な生命の危機に瀕した時は12回まで別の体に再生できる能力を持つ長命な種族。
また彼らはタイムマシン〈ターディス〉(Time And Relative Dimension In Space)によって宇宙のあらゆる場所や時代に行く事ができる。
ドクターは地球人の助手〈コンパニオン〉と共に、ターディスや色々な道具を駆使し、時にはドクターをサポートしたり外星人や超常現象に対処すべく国連に作られた組織〈UNIT〉の協力も借りながら、数々の冒険を続けていく――
本作の主人公、15代目ドクター(演:チュティ・ガトゥ)。今回のシリーズの前作となるのは特番で14代目ドクター(演:デイヴィッド・テナント)ボディが限界に来て今回の黒人男性である15代目ドクターのボディへと再生した……らしい(観てないので)。
ボディが代わると記憶などはそのままだが性格や癖はボディごとに微妙に変わるらしく、今回は陽気で洗練された感じのキャラクター……らしい。まぁ14代目を観てないのでよく知らない、情報で知ってるだけのことを言っていてしょうもない。
今回のコンパニオンは、赤ん坊の時、クリスマスに〈ルビー通り〉にある教会に捨てられたが親切な里親に育てられた明朗快活な女の子ルビー・サンデー(演:ミリー・ギブソン)。
今回の15代目ドクターによる新シリーズはシーズン1全9話を通して背後に流れるルビー・サンデーの謎を匂わせながら一話完結で数々の不思議な事件に対峙していく。
第1話(ep.0)「ルビー・ロードの教会」 ★★★
昔、雪の降るクリスマスの夜、ルビー・ロードの教会に捨てられていた女児は養母カーラ・サンデー(演:ミシェル・グリニッジ)に拾われて大きくなり、見つけられた場所にちなみルビー・サンデー(演:ミリー・ギブソン)と名付けられて立派に育った。
新たに預かった赤ん坊の面倒を見ていると天空からハシゴが降りてきてゴブリン達に攫われてしまい。ルビーは駆けつけたドクター(演:チュティ・ガトゥ)と共に赤ん坊奪還のためゴブリンの天空船に潜入する。
そんな話。
ドクターとルビーは唄でゴブリンを驚かせたりして「今回のドクターは唄とダンスが得意で性格が明るくて洗練された感じ」なんだなとわかる。……「今回は」と言いつつ通して観るのは初めてなのにこんな言い方するのは変だが、すっかり「今までずっと観てきた人になった気持ち」で観てたので、そんな風な言い方になってしまった。
異次元ゴブリンはタイムスリップも出来て結果的に現実改変できてしまう何気に凄い存在。だが、あっさりドクターに退治される。このように一話完結で進んでいく。
「ルビーが捨てられたクリスマスの夜」はこのシーズンの軸なのでこの後も何度も出てくる。
ドクターとの冒険を気に入ったルビーは押しかけ助手的な感じでターディスに乗り込み、冒険が始まる。
ドクターは凄くテンションが高く、また演技が舞台演技みたいに大仰。ちゃんと観てないけど一番人気のドクター役の人とかマット・スミスとかも大げさ演技なので、この作品自体が全体的に芝居がデカい傾向なのかもしれん。
ルビー役の人は初めて観たが死ぬほど可愛い!ドクターに合わせてかテンション高い、まるでアミューズメント・パークのお姉さんのようだ。皆、芝居がデカいのは子供番組の名残りだろうか。
第2話(ep.1)「スペース・ベビー」 ★★
遥か未来の宇宙ステーションに来た2人。
1階で怪物に追いかけられて2階に行くと、そこは科学で生み出された賢い赤ちゃん達だけで運営する宇宙ステーションだった。別室には赤ちゃんたちを陰から助ける乳母がいた。赤ちゃん工場を放棄して大人たちは地球に帰ってしまったが乳母は赤ちゃんを見捨てられず残っていたらしい。
このままでは食料や空気も尽きて皆死んでしまうため、ドクターとルビーは皆が近くの惑星に行けるよう、怪物ブギーマンに注意しつつサポートする。
そんな話。
今回も普通に面白いのだが、喋る赤ちゃん達と童話のような怪物……という事で2話続けてキッズムービー的なファンタジー感で、こういうのはあまり好みじゃない。でも面白いしメインキャストは好感持てるので見てられる。
ドクターがルビーのDNAを検査したら宇宙ステーションの通路なのに、ルビーが捨てられた夜の雪が降る……しかも幻覚ではなくしっかりと物理的な雪が!こういった不思議な要素は凄く気になって良い。
第3話(ep.2)「悪魔のコード」 ★★★
1925年、とある名もなき天才音楽教師が悪魔の楽譜を見つけてマエストロ(演:ジンクス・モンスーン)という神のような悪魔のような超常的存在が顕現する。
ビートルズのレコーディングを聴きたいというルビーの賛成したドクターは1963年にやってくる。
しかしマエストロが既に世界の人々から音楽を取り上げてしまっていたのでビートルズも「音楽なんて……早くやめて就職したい」とやる気を失っており、音楽が失われたことで世界全体が殺伐としていた。そして2人が現代に戻ると世界は既に戦争で崩壊していた。「音楽がなくなる=世界の破滅」。そしてターディスもマエストロによって封じられタイムスリップ出来なくなり、ドクターとルビーはこの1963年で何とかしてマエストロを倒すしかない。
そんな話。
このマエストロは、トイメーカーという50年以上前に出てきた宿敵(!?)の子供らしい。
The Celestial Toymaker - Wikipedia
トイメーカーはゲームを使って勝負を仕掛けてくる奴だったらしいがマエストロは当然、音楽を使う。「音楽を司る」と聞くと陽気そうだがマエストロにとっての至高の音楽は紛争による戦いの音や悲鳴で、人々が音楽を楽しむのは許せなくて音楽を楽しむ者はただちに殺してしまう悪い奴。演じてる人は有名なドラァグクイーンらしく、やはり凄く大仰な演技で楽しませてくれる。「もののけ姫」の頃の美輪明宏っぽい。
能力もほぼ全能に近いのでドクターに勝ち目はないのだが父のトイメーカーと同様にルールに則って勝負してくるので、そこに勝機がある。
ルビーが捨てられたクリスマスの夜に流れていた「キャロル・オブ・ザ・ベル」。そしてやはりジョン・レノンとポール・マッカートニーの音楽的才能によってドクターはマエストロを封印する楽譜を書き上げて退治する。
という痛快な話だったが、シリーズでも滅多に出てこないレベルの神のような超常的存在が出てきて、そして一話のうちにやっつけられて退場してしまう……と、そんなところがこのシリーズの懐の深さを感じさせられるので、そーいうところが良かった。
第4話(ep.3)「地雷」 ★★★★
遙か未来の戦争中の異星。
戦場で致命的な傷を負った戦士を見つけた自動救急車は「戦力外」として殺害してしまう酷いディストピア。娘が近くにいる兵士が救急車に殺害されてカプセルにされてしまう。
そこへやってきたドクターはあろうことか地雷を踏んでしまう。生物だけを殺傷して無機物には無反応のその地雷、ドクターが急速に飛び退いたりバランスを崩すと、乗っているのが人間だとバレてたちまち爆発してしまう。
ルビーはさきほどの兵士の墓(彼のDNAが詰まったカプセル)をドクターに渡し、片足だけ乗せてバランスの悪かったドクターはとりあえず両足を付けることができた。しかし地雷から移動できない。
そこに先ほど死んだ兵士の娘や仲間がやってきた。地雷を踏んでしまい身動きが取れない上に銃口を向けられるドクター……という絶体絶命の「地雷もの」ワンシュチュエーションもの。まだ数話しか観てないけどこのシリーズはこういうSCP財団とかジョジョのバトルみたいに限定された状況の話の方が面白い予感がしてきた。
実際、ここまでの4話の中では一番面白かった。最初から最後まで面白いし、解決法やハッピーエンドどれも良い。ただ、この話に限ったことではないのだがドクターがハイテンションすぎるし事件が解決した後に、色々ポーズを取りながら長々とポーズをきめたり抱き合ったり笑い合ったりする時間が長すぎる。まるでカーテンコールのようで、イギリスの老婦人やキッズはこれがちょうどいいのかもしれないが(推測)、アメリカの乾いたノリが好きな僕としては、事件解決してもほっと一瞬笑っただけでさっさと帰ってほしい気もする。だがそういう好みは個人によってそれぞれ違うからね。ドクター・フーは殆ど観てないがやはりどの部もリアクションがハイテンションという印象がある。
第5話(ep.4)「73ヤード」 ★★★★★
これ!この話がTikTokLiteでまわってきて気になって検索して観たんだった。
現代のウェールズの崖に降り立った2人。ドクターはウェールズの伝承にある〈妖精の輪〉を踏んでしまい「マッドジャックよ、安らかに眠れ」と書かれた手紙も読んだ。するとルビーが目を離している隙にドクターは忽然と姿を消してしまった。ターディスも扉が開かないのでどうしようもない。
ルビーは、73ヤード(約67m)先に立っている老婦人を見つける。老婦人は手を振って何かを言っているが遠くてよく聞こえない。そして老婦人に近寄っても遠ざかっても老婦人は常に73ヤードの距離を保って近寄ることができない。
そこでルビーは通りかかった人に老婦人に伝言を託す。だがその第三者が老婦人と会話すると、第三者はルビーの方を見て恐怖に囚われたように逃げ出し帰ってこない。その後、何人かに頼むが皆こうなる。
電車で移動しても、あらゆる場所の73ヤード先に老婦人が立っている。
ルビーは実家に帰り第1話以降久しぶりに養母カーラに再会。そこで73ヤード先の老婦人のことを養母に話し「携帯電話を通話状態にしたまま老婦人と話して私に聞かせてみて。老婦人が何か怖いこと言うみたいなんだけど信じちゃダメよ」と言う。カーラは第1話で色々不思議なことを見てるのですんなり理解する。
ルビーが言うようにスマホを通話状態にしたまま老婦人に近寄り話しかけて会話する。だが電波が悪いのかルビーには老婦人の声はよく聞こえない。すると老婦人に何かを聞いた愛する母は険しい顔でルビーを見た後、そしてタクシーに乗って走り去った。
ここまでをTikTokLiteのファスト映画紹介で見て、気になりすぎて観たというわけ。
絶望するルビーが自宅に帰ると、母によって鍵が変えられており電話で「一度だけ通話してあげる。出ていって。一生会わない」と告げられる。これが母と話す最後の会話となった。
困り果てたルビーはドクターをサポートしたり超常現象に科学力で対処すべく国連に作られた組織〈UNIT〉のケイト・レスブリッジ=スチュワート最高司令官(演:ジェマ・レッドグレイヴ)に助けを求める。
UNITという組織は1968年の二代目ドクターの辺りで初登場して、ケイトは1995年のビデオ作品で初登場したらしい(演じてるのは別の俳優)。今の女優さんが演ずるUNITで働くようになったケイトが出てきたのはマット・スミス演じる11代目ドクターとカレン・ギランがコンパニオンだった時らしい。
ドクター以外で、いつでも連絡して超常現象に対処してくれる存在という感じなのかな?
とにかくルビーは今までの事を説明する。UNITの装備で老婦人の顔を拡大して撮ろうとするが上手く撮影できず物理的に近寄るしかない。ケイトも「了解。普通の老婦人じゃないわね。隊員全員、催眠音波の類にも全て対応するから安心しておいて」と、言ったのだが老婦人に近寄ったUNIT隊員は全員今までの人と同じようにルビーの方を見て困惑している。そしてルビーの隣でトランシーバーを聞いていたケイトも顔色が代わりルビーを睨みながら「全員撤収」とだけ言って全員立ち去ってしまう。
そして20年が経過。
20年間、ずっと老婦人は73ヤード先に立っている。老婦人は能動的に誰かと喋ったり近寄ってきたりとルビーに害を成すわけでもなく、またルビーも老婦人をどうにもできない。ルビーは73ヤード先に老婦人を立たせたまま普通に仕事や恋愛などをして暮らしていた。
……今思ったけどスナイパー・ライフルを買って撃ったらどうなるんだろう?だけどドクターを消したり、撮影できなかったりと超常的なエネルギーフィールドを展開してそうだから銃弾が逸れたり、又は撃ってなかった事になったりして結局は命中しないんだろう。
ルビー40歳は、冒頭でドクターが「近未来でとんでもなくヤバい首相が誕生する」と言っていた男と今活動している首相候補の名前が同じなこと。そして彼の名前が妖精の輪の手紙に書いてあった〈マッド・ジャック〉であることに気づく。そしてマッド・ジャックの事務所で雑用係として働く。近くでマッド・ジャックを探ったところ彼をこのまま英国首相にしてしまったら核戦争が起きて大勢が死ぬことは間違いない事がわかる。
このマッド・ジャック、73ヤード先の老婦人……ルビーは閃いてある行動に出る。
そして更に40年経過……!
という話でさすがに面白すぎる。英国では「ドクター・フー最高傑作」という声もあるらしい。ワンシュチュエーションで最初から最後まで引っ張り、ひねりもあって意外なラスト。割と色々と明らかになる。だけど謎は謎のまま残してお土産もある(たとえば老婦人は近寄る人たちに何を言ってたのかは最後までわからない)。主人公のドクターが全く出てこないというのも面白い。
はっきり言って、この話だけを、2時間のオリジナル映画にできそうなくらい面白い。
結局、老婦人が近寄る人に何と言っていたのかは最後までわからない。「ルビーは酷い犯罪者だ」……などと言ってたら普通に通報されるがそれもないし。老婦人の固有能力か?と思えてくるが、最後まで見るとそんな能力はないことはわかる。現世の存在ではないことがわかる。それによって特殊なエネルギー・フィールドが張られてるとしか思えない。まぁ「色んな人が次々と自分に失望して去っていく。何があっても味方でいてくれるはずの母でさえも……」という「見放される恐怖」をホラーっぽく演出しただけで特に具体的な会話の内容とかは設定されてない気もする(設定されてたら最後に見せると思う)。
そういう感じで面白かったです。この話か、次の「ドット・バブル」のどちらかが一番面白い話候補だと思う。僕は……次の話かな?
第6話(ep.5)「ドット バブル」 ★★★★★
遥か未来。裕福な白人の若者たちは綺麗な街ファインタイムに住んでいた。
起床したリンディ・ペッパービーン(演:キャリー・クック)はドット・バブルを起動させる。
これは一言でいうと、SNSを表示したスマホのようなものでフォロワーたちのホログラム画面が、使用者の頭部を球状に囲んでいる。
ドットバブルの画面は若干、半透明ではあるもののビッシリと頭部を囲っているため、現実の世界が非常に見えにくい。歩いて職場に行くときも自分の目で見ずにドットバブルの指示に従わないと歩けない。そして絶えずフォロワーたちとの他愛もないおしゃべりやトレンド、好きなインフルエンサーの画面……などを1日中見ている。
すると、町に異変に起きたらしく住民を手助けする職種の人に扮装したドクターやルビーが、何度もリンディに警告を送ったり危険なところから遠ざけようとする。とく見るとリンディのフォロワーが何人も消えていたり、挙句の果てには職場の同僚がすぐ横で怪物に食べられてたりする。「つらい現実」など見たくないリンディはそれらに全く気づいていなかったばかりか、怪物から逃がそうとするドクターの通信を何度も切ろうとする。「つらい現実」よりも流行の曲やトレンドを見て逃避したいのだ。
それでも何とか怪物から逃げていると、いつも見ている憧れのイケメン・インフルエンサーと遭遇。彼はリンディを護って一緒に逃げてくれた。
という話。
今回はドクターやルビーじゃなくサブキャラが主人公で、リンディの主観で進んでいく回。しかも、この甘やかされたガキがそのまま大きくなったかのようなリンディ、わがままだしアホだしで全く魅力がない。
そしてドットバブルの設定を見れば誰もが1秒で気づくが、あからさまなSNSの暗喩……しかもわかりやすすぎるほどの……。「ちょっとそのまますぎないか?しかも2024年に。リンディも魅力ないし」と最初は興味なかったのだが、結果から言うとこれが「73ヤード」を超える今回の最高傑作だったのだからわからないものだね。
この話はネタバレありで書くので、自分で観たい人は第7話「ローグ」まで飛ばしてください。
よくあるアメリカ作品や日本のアニメのパターンだと「わがままリンディは突然、危険に対処しなければならなくなる。ドクターとルビーに反抗していたがやがて自立や協調性の大切さを学んで成長する」そして「一緒に逃げてくれたイケメン・インフルエンサーは実は凄くダサいやつだった」こーなるパターンが非常に多い。
だが本作は全て逆!嫌な子リンディは物語が進むほどに嫌な奴っぷりを披露していき、最終的には自分が助かるために自分の命を危険にさらしてまで助けてくれようとしたイケメン・インフルエンサーを怪物に差し出してしまう!
なんという事を。そういえばこのイケメン・インフルエンサーはリンディたちと違って「ドットバブルとかつまらないよ。僕はバブルを切って紙の本を読むのが好きなんだ」と言い、町の外にも興味を持っていた。おそらくリンディからすれば「他人を一生懸命助けようとするとか変わった人ね」と思っていたのだろう。イケメン・インフルエンサーは「なんかよくあるパターンだと実はサイコパス悪人だが……」と思ってたら、まさかの自分を犠牲にしてまで見ず知らずの他人を助けるスーパーヒーローみたいな高潔な青年だった。でもリンディに無惨に殺された。
この町の設定なんだっけ?たしか怪物は意図的に繁殖させられており、住民の子どもたちをアルファベット順に食わせる。賢くならないようドットバブルでアホにして管理してたんだっけ。何でそんな設定なのかは忘れた。怪物は生物兵器かなんかでリンディたちはその餌だっけ?でも、この状況を作り出してリンディの内面を見せるための話で、だから今回のストーリーや設定自体はあまり重要じゃないと思う。
町の外に逃げようとする若者の集団に合流できたリンディ。そこで生身のドクターとルビーに初めて対面する。
自分が怪物に殺させたイケメン・インフルエンサーは他の人を助けに行ったと嘘をつくリンディや若者たちにドクターは「君たちが行こうとする所は危険だ。僕のターディスで安全なところに連れて行ってあげる」と言うがリンディは軽蔑したような目でドクターを見て「結構よ。そもそも、あなた……見た目が私達と違うじゃない。ドットバブルの画面越しでは私のこと助けさせてあげたけど、生身で直接私に話しかけるとか失礼だと思わないの?」とリンディは仲間たちとせせら笑う。
リンディ達はアホなだけではなく、とんでもないレイシストだったのだ。
ルビーは呆れて「こんな奴らほっとこ」と帰ろうとするが、ドクターは「僕のことを何と言ってもいい!頼むから君たちを助けさせてくれ!」と懇願する。しかしリンディ達はドクターを蔑んだ目で見て去っていく。恐らくもっと恐ろしい怪物がいるだろう場所へ……。
ドクターとルビーは、リンディ達を助けられなかった事やリンディ達の差別的な発言にショックを受けて立ちすくんで終わる……。
という事で「これこれ!俺が観たいイギリス作品!」という感じの皮肉な内容だった。
SNSへの安易な風刺……ではなく、そのSNSの向こうで差別的に育ってしまった白人のガキの話だった。本当に素晴らしい完成度。これが「73ヤード」と同じかあるいは凌ぐくらい今シリーズで一番良かった回だった。
15代目ドクターは凄く洗練されてて賢くて優しく歌やダンスが上手な人物であるため、そんなドクターを見下すリンディがよりもよって愚かかつ卑小で無能なレイシストという……この対比がたまりません。
また「初の非白人ドクター、つまり初の黒人ドクターでもある」という事で、15代目ドクター役のチュティ・ガトゥの「黒人」というネタをさっそく使ってきましたね。ここまで観てきたから彼が黒人であることとかすっかり意識から抜けた、この第6話で黒人ネタを使ってきたのもタイミング良いです。
第7話(ep.6)「ローグ」 ★★★★
1813年、貴族の舞踏会に参加したドクターとルビー。
どうやら「コスプレしてドラマチックな体験をする」というゲームをしているシェイプシフター系宇宙人達を捕まえるために来たらしい。宇宙人は自分が化ける人間を殺して入れ替わるし、目撃者の人間などは殺しまくるのでかなり害悪な存在。
コスプレ宇宙人を退治に来たのはドクターだけでなかった。
宇宙の賞金稼ぎローグ(演:ジョナサン・グロフ)も来ていた。
このローグは宇宙人なのかどうなのか……よくわからないが多分宇宙人か?パートナーを喪ったため自暴自棄気味に賞金稼ぎに身をやつしている殺伐とした男。
最初はドクターをシェイプシフター宇宙人と間違えて殺害しそうになるが誤解が解けて共闘している間に、共に愛する者を喪った過去を持つ者同士、恋に落ちる。
前話の「初の黒人ドクター」に続いて初のバイセクシャルなボディのドクター……なのか?過去作を観てないのでよくわからない。
そして異次元に追放するゲートにコスプレ宇宙人達を囚えたはいいが、別行動で捜査していたルビーも一緒にポータルに囚えてしまった。
正義感の強いルビーは「ごめんドクター、いいよ。私ごとやって!」と、又も勇気を見せるがローグがサッと体当りしてルビーと入れ替わる。そして「ふむ。」といった表情で恋仲になったばかりのドクターに花束を投げあまりに爽やかすぎる消滅を見せる。
まるで庭で散歩でもするかのような軽やかさで自己犠牲を行うもんだから凄くグッと来た。
またローグとの恋愛だけでなく全編、隙がなく面白いし力作でした。
それにしてもルビーと体当たりで入れ替わるローグ、体当たりだけじゃダメだったのか?と野暮な事も思ってしまった。こういうこと思うのを防ぐために、第4話の地雷みたいに「0.5秒位内に同じ重さのものがそこにないと大爆発する」みたいな説明が事前にほしかった。
第8話(ep.7)「ルビー・サンデーの伝説」、第9話(ep.8)「死の帝国」 ★★★
いよいよ、ここまで全話のあちこちで振ってきた「ルビーとルビーの母の正体」「毎話どの時代どの場所にも出てきた謎の中年女性の謎」などが集約する前後編。
ドクターは自分だけでは無理だということでUNIT本部へ行き、またルビーの養母カーラも来てオールスター感ある完結編。
UNITの中年女性の隊員メラニー・”メル”・ブッシュ(演:ボニー・ラングフォード)がドクターとやたら何か有りげに懐かしんでたので調べたら、80年代の第6、7代目ドクターの時のコンパニオンらしい。その後、第13代目ドクター以降ちょこちょことUNIT隊員としてたまに事件に協力してるみたい。
後でターディスが敵に乗っ取られて「記憶で作ったターディス」が出てくる。記憶で作ったターディスなので中には過去のドクターやコンパニオンや敵の思い出の品々がどっさり飾られている……らしいが何しろ初めて観てるのでよくわからない。メルが、自分の時代のドクターの服を懐かしんでたので「何だか全くわからんが往年のファンが懐かしい品々が並んでるらしい!」と、他所の家の子供が受験に合格したくらいの温度で「よくわからんが良かったね」という薄い多幸感が湧いた。
で、ルビーの母の謎とか謎の中年女性の正体とか黒幕の正体とか倒し方とか、ほぼ全部説明してくれるので「あぁ、そうなの……?」と、その勢いで一応の納得はするもののその要素があまりに多い上に説明が少なくすぐ次々!と先に進んでしまうので、いまいち消化不良のまま終わってしまったというのが正直なところだ。
いやまぁ大体はわかるよ、でも言語化してまるっきり全部具体的に書いて説明してみせろと言われても上手くできない感じ。俺がアホなのか?もう少し要素を減らしてほしかった。
それに、こういう面白い一話完結系ドラマにありがちだが、こういう特別編よりも通常回の方が面白いね。スタートレックとか。
またラストでは、ルビーと別れてしまう。
確かにルビーの謎や人生の目的は全部解消してしまったが……、しかしそんなのどうでもいいからルビーはもう少し何シーズンか一緒に冒険してほしい!と思った。それくらい魅力的なキャラだった。シーズン2はこのシーズン1を参考にしたら多分来月あたり一話あって、新年から続きが放映されるのだろうが、是非ルビーは戻ってきて一緒に冒険してほしい。
ハズレ回とか無い、面白いドラマでしたわ。MCUやSWのドラマにこの面白さの5分の1くらいでも分けてほしい。
👩🏾🦲👩🏼🖱️ 👩🏾🦲👩🏼🖱️ 👩🏾🦲👩🏼🖱️ 👩🏾🦲👩🏼🖱️ 👩🏾🦲👩🏼🖱️
そんな感じでした
ドクター・フーを視聴 | Disney+(ディズニープラス)
Doctor Who (TV Series 2023– ) - IMDb
Doctor Who (2023) | Rotten Tomatoes
ドクター・フー - ドラマ情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarksドラマ