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「エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に(2016)」魅力を説明しにくいがとにかく傑作!

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原題:Everybody Wants Some!! 監督:リチャード・リンクレイター
製作国:アメリカ 上映時間:117分

この映画、公開された昨年末に「どう良いのかうまく説明できないがとにかく良い!」という評判をちょくちょく聞いてたやつ。
観てみると確かにいい。最高と言ってもいい。そしてやはり上手く説明しにくい。
リンクレイター監督作品は今までいくつか観たが、中でも「ビフォア・サンセット」「ウェイキング・ライフ」「スクール・オブ・ロック」「ビフォア・サンライズ」「スキャナー・ダークリー」「ファーストフード・ネイション」などが好きだった。
だけど2010年代に入っての「バーニー/みんなが愛した殺人者」「ビフォア・ミッドナイト」などが自分の中でいまいちだったので彼の映画への興味を失っていた。
本作の魂的前作「がんばれベアーズ」は観てない。
この監督は作品によって題材や作風が大きく違いすぎるので捉えどころのない印象。
何となく「人間に興味あるんだろうな」って感じや瑞々しいノリだけが共通している。
あとリンクレイター作品と言えば、会話シーンが豊富で長い事が有名だった。
同年代で同じく会話シーンが売りの監督といえばタランティーノがいるが、会話のノリがタランティーノとは大きく違う。こっちはもっと人生の機微を表現した会話が多い
それはこの体育会系キャラによる本作でも顕著だった。

 

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1980年9月、野球推薦で大学に入学する新入生の投手ジェイクは野球部の寮へ来た。
寮にいたのは野球エリートだが変人の先輩たちに手荒い歓迎される(根っからの変人というわけではなくエネルギーが有り余っている体育会系という感じ)
入学して寮に入ったが新学期が始まるまでの3日くらいあるので彼らが遊んでるだけの3日間が描かれる。
ラストで新学期や野球の練習が始まるが、それまで劇中ずっとクラブやパーティに出かけたり飲んだり草吸ってブリったりゲームしたりSEXしたりしてるだけで大きなストーリーはない。
劇中、ドラマチックなエピソードは「ジェイクが一目惚れしたビバリーと付き合い始める」と「妙に老け顔のマリファナトワイライトゾーン大好きな先輩の秘密(この先輩の話がめっちゃいい)」とかだけだけど、それもささやかなものだし。
小エピソードは色々あるがそれらも、わざとオチが付けられてない。
‥と言うとサブクエストだけのゲームのようで面白くなさそうに聞こえるかもしれんが、評判通り最初から最後までめっちゃくちゃ良かった!
良い映画には「あのシーンは本編と関係ないから要らないけど、でもめちゃくちゃ良いシーンだよね」っていうシーンがたまにあったりするが、そういう映画の中のどうでもいいけど良いシーンだけを二時間にしたような映画だった。

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体育会系の彼らが皆いい奴。‥いや、別に良い奴というわけでもない‥か。
普通の奴らとして描かれてるのが新鮮だった。
映画に出てくる体育会系は大抵いじめっ子だったり嫉妬深い嫌なマッチョな事が多い。
主人公ジェイクが演劇女子ビバリーに「体育会系だからって全員バカってわけじゃないよ。普通の人達と同じで賢い奴もいればガサツな奴もいるんだ」と当然の事を言ってたが、この台詞はかなり監督の意志を感じた。
アメリカ映画‥特にジャンル映画では、体育会系は嫌な奴、オタクやいじめられっ子は聖なる奴として描かれる事が多いが、もういい加減そういうステレオタイプすぎるキャラ付けはつまんないからやめてほしい。
特にホラー映画ではそれが顕著で、ホラー映画自身がそれをセルフパロディし始めてからも20年くらい経ったけど中々なくならないね。
だからイーライ・ロスが「キャビンフィーバー」とか「ホステル」で、ホラーのお約束を外して描いてたのが凄く新鮮だった覚えがある。
話を戻そう。
彼らは仲よくてずっと一緒に遊んでるが、友情が高まってるわけではない。
仲間意識はあるがライバルでもあるし、まあ‥うまくやってるって感じがいい。

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10代~20代前半の青春もの映画といえば、ホラー映画。モテない子がパーティでハチャメチャな経験を経て成長する系コメディ。難病やドラッグや過酷な環境やナイーブな心の動きの機微を描いたシリアスなドラマ。中年が振り返ってる視点のノスタルジック系‥とか色々あるが、ここまで自然かつドラマチックな事が何も起きないけど良い青春映画は初めて観た。
いや、本当は他にもこういう映画はあったのかもしれないが、青春映画イコール無名の俳優ばっかり出てるって事だから、本作の様に有名な監督がやってたりジャンル映画じゃない限り観る機会ないから俺が知らないだけかもしれない。
この映画も観てるとほんのり楽しいし、感動‥というのとも違う不思議な‥「良い気分」としか言いようのない感情にさせられる。
「新学期が始まるまでの三日間」という限定された時間が、謎の老け顔の先輩によって更に強調させられる。
そして一日ごとにじわじわとジェイク達新入生のキャラが出てくる。。

そういう薄いストーリーのうねりから推測するに、これはモラトリアムっぽさや、何気ないようだが実はかけがえのない時間を過ごしてる感を描いてるのかもしれない。
一言でいえばね。
80年代が舞台で、懐かしのファッションや懐かしゲームや音楽も出てくるが、それは割とどうでもいい‥本作は別に現代が舞台でも何ら変わりない気がする。
だとすれば何で80年代が舞台なんだろう?というのは未だにわからないわ。
細かいシーン毎にも、映画によくあるパターンとかはあまり出てこないので、本当に起きてる事の様に思えて没入度が高かったのかもしれない。
野球部のエネルギッシュな変人たちが中盤でロックのLIVEに、終盤では演劇部のアート系パーティに行く。
よくある映画だったら、ここでアウェイな場所に行った体育会系の荒い先輩たちが暴れてパーティをめちゃくちゃにしてしまう事が多い。
だけど今まで暴れまくってた先輩たちだが、アート系パーティに来てるからか「餅は餅屋」的に少しおとなしくしてアート系の人達に合わせて接してるのが良かった。
普通の映画だったら彼らは「変人のパーティアニマル」という性格しか与えられないから暴れるのだが、彼らはジェイクがビバリーに言った様に負けず嫌いで野球が上手いだけの只の若者なので、ちゃんとTPOをわきまえてる。というのが凄く良かった。
(だけどおとなしくしてるだけじゃなく全員ちゃんと女子とSEXしてるのもよかった)
恐らくこのアート系パーティに行く場面が一番いい場面だった。
皆が皆こんな感じで隣人と接せれば争いも起きないのに、と思った。

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キャラは皆それぞれ良かったが、まず主人公ジェイクは透明感あってかなりいい奴。
先輩たちも皆よかったが、主将っぽい負けず嫌いのヒゲと、謎の老けて見えるヒッピーっぽい先輩が好き。カナダの金髪ヒゲも良かったね。
青春系の映画でおすすめを訊かれたら今日からこれを答える事にしよう。
マリファナ吸ったり酒飲んで大暴れしてるのに、観終わったら「粛々と‥淡々としたした映画だった」という感想しか出てこないというのが凄い。
構造的には「アドベンチャー・タイム」とか日本の日常系萌えアニメに近い気もするが、何となく劇中の裏に流れているものが決定的に違う気がする。何か刹那的なものを描いてる気がするんだよね。
「誰が観ても」とは言わないけど映画好きな人なら楽しめるはず。
あと何となくこの映画、おとなしい文科系の人が観た方が楽しめたり感動できそう。
それと若者より中年の方が楽しめる気がする(でもノスタルジーからではないよ)
リア充大学生」+「野球」という興味ない要素ばかりなのに、こんなに良いとはね。
これは一回限りで終わった方がいい気がするが同じメンツ同じフォーマットで90年代バージョン、00年代バージョン、現代バージョンとかも観てみたい気もする。
とにかく凄く良かったよ

 

そんな感じでした

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