gock221B

映画の感想ブログ 😺 おしずかに‥〈Since.2015〉

「お嬢さん (2016)」悲惨で暗い物語と思いこんで観てなかったが女が悪い男達を倒す爽やか痛快作だった👩🏻

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原題:아가씨 英題:The Handmaden 監督&脚本&制作:パク・チャヌク 美術:リュ・ソンヒ
原作:サラ・ウォーターズ『荊の城』 製作国:韓国 上映時間:145分

 

 

前回の「クリード 炎の宿敵」以降、映画やドラマ色々観て、どれも可もなく不可もなく普通に観てたが改めて感想に書くこと特にないのでスルーしていた。
本作のパク・チャヌク監督は特別に大ファンというわけでもないが観てつまらない事は無いのでソフト化されてるものなら全部観てる。とりあえず「復讐者に憐れみを (2002)」が一番好きだった覚えがある。
本作はパク・チャヌク作にも関わらず何となく観てなかった、ボンヤリと「この儚げな〈お嬢さん〉とやらが酷い目に遭うのでは?」と勝手に思い込んでそんなの観たくないなぁと思ったからかもしれん。本作はAbemaビデオで配信してたので観てみたが、全くそんな話ではなく、むしろ痛快な話だったので観てよかった。
ウェールズの同性愛者の作家によるミステリー小説が原作。物語の舞台をヴィクトリア朝のイギリスから日本統治時代の朝鮮に変更しての映画化。センセーショナルな作風やオリエンタルな美術がカンヌほか世界各国で評価されたらしい。
今回は割と古い映画だし丸っきり全部ネタバレします。ミステリーだし今後この映画観る予定の人は読まない方がいい。

 

 

 

1939年の朝鮮半島。貧民街の孤児朝鮮人少女〈スッキ〉は〈伯爵〉と呼ばれる立派な身なりの詐欺師の計画に雇われる。
桂文枝の若い時みたいな顔した〈支配的な叔父〉のもとで孤独に暮らす華族の〈秀子お嬢さん〉。若い時の松嶋菜々子と若い時の浅野温子を足したような顔の彼女は、結婚した暁には〈莫大な遺産〉を相続することになっていた。詐欺師は世間知らずのお嬢さんを籠絡して結婚し、お嬢さんを精神病院にぶち込んで財産を丸々いただいてしまおうという計画。日本人メイド「珠子」になりすましたスッキは、お嬢さんの近くで彼女の世話しながら詐欺師のサポートをする役目。
まずパク・チャヌク監督だけあって画面がめちゃくちゃ美しいし、物語の舞台は90%くらい屋敷と敷地なんだけど、カンヌで芸術貢献賞を受賞したというだけあってお屋敷やお庭、屋敷内の小物、地下室どれを映しても確かに良い。俳優も、脇役を除いて殆ど4人のメインキャストが出てるだけだけど皆キャラが濃いので、美術+メイン4人による場持ち力が凄く高かった。
「メイドの珠子」となって屋敷に潜り込んだスッキは秀子お嬢さんの部屋のすぐ隣室が居場所、24時間ずっとお嬢さんの世話をしている。スッキによる「お嬢様は私の赤ちゃんです」発言。秀子お嬢様がスッキを着替え人形代わりにする「お嬢様ごっこ」とか凄く微笑ましい。尖った歯をコスコスしてるのは何してんのかよくわかんなかったが、とにかく二人はボディタッチ増えて親しくなっていき、やがてベッドで肉体を重ねる。
スッキは「お嬢さんを精神病院にブチ込んで財産をせしめる」という目的のために動いてはいるのだが、孤独で純真なお嬢さんに同情や友情のような感情が生まれてきて、お嬢さんを騙している自分の行為、それを計画し行っている〈伯爵〉の事が醜く思えてストレスがたまってくる。
だがスッキは辛い思いで自分を殺してお嬢さんと伯爵をくっつけ「お嬢さんを精神病院にブチ込んだ‥と思ったら いつのまにかブチ込まれてたのはスッキだった」 何を言っているのか わからねーと思うがスッキも何をされたのかわからず頭がどうにかなりそうだった。催眠術だとか超スピードだとか そんなチャチなもんじゃ断じてない恐ろしいものの片鱗を味わった。
伯爵とお嬢さんはグルで、身寄りのないスッキを利用して処分し遺産を二人で山分けする計画だったのだ。という一つの結末が明らかになって第一部が終了。

 

 

 

第一部はスッキの主観視点で物語を描いていたが第二部は秀子お嬢さんの視点で語り直される。
スッキはお嬢さんのことを「世間知らず」で「純真」だと思っていた、確かにお嬢さんは敷地から出たことない世間知らずではあるもののスッキが思っていたほど純真ではなかった、そして秀子の視点では「スッキこそが純真な少女」だと秀子が思っていた事がわかる。
秀子には桜の樹で自殺した美しい叔母がいたこと、秀子は叔父と共に地下で第三者の立入を禁ずる怪しい読書をしていた事などが第一部でも語られていたが第二部では詳細が明らかにされる。
叔父は地下に数人の親しい変態の金持ちを招き、秀子お嬢様が官能小説を朗読し、時には尻をぶたれたり人形と絡んだり‥という変態的な催しを行っていた。秀子は幼い時からエロ朗読を叩き込まれていたし、美しい叔母が首吊り自殺したのはそんな「叔父の自慰行為の手伝い」というオナホ以下の自分の存在意義に絶望してのものだった。そして叔母の死後は秀子がこれを受け継いだ。
何だかよくわからない変態パーティだが、本当は叔母または秀子が、金持ちの客達の相手をさせられたり衆人環視の中でSMを披露させられたりといった身も蓋もない酷いものだったんじゃないかもなと思った。そんな描写だと観たくなくなるほど陰惨だしAVみたいになってくるから「官能小説の朗読」という婉曲的な表現にしたんじゃないかという気がする。
まぁとにかくどんな描写だろうと本質は同じ。秀子そして自死した叔母は、変態の叔父に一生涯、性的搾取され続ける哀れな女性たちだった事が明らかになる。
〈伯爵〉は詐欺師の正体を隠して変態パーティに潜り込んだ客の一人だった。伯爵は秀子に「身寄りのない孤児を犠牲にする事によって貴女は自由になれる。遺産は山分けしましょう」と話を持ちかける。秀子と伯爵、お互い好きじゃないが偽装結婚とスッキを騙すことに全力を尽くそうという共闘。
そして第一部でスッキ視点で描かれた様々な場面が秀子視点で描き直される。
やがて二人は愛し合い色々すったもんだあって互いに心の内を全て明かし合う。お嬢さんとスッキはお互いを好っきになっていた。二人は互いがそれぞれ「伯爵と組んで『もう一方の女』を騙して遺産を得る計画」を行ってた事を明かしあい、‥というか把握してなかったのはスッキだけだから秀子が一方的に教えてあげてるだけか。そして二人は改めてずっと一緒にいることと協力し合う事を誓う。貧民街のスリ仲間であるババアにも金を掴ませ協力者となってもらい、悪い男たちを出し抜く準備は出来た。
そんな秀子とスッキ、叔母など犠牲となった女性たちの悲しい過去を語ってきた第一部と第二部だったが、第三部は彼女たちの復讐、物語の顛末が描かれる。

 


叔父が秀子にしてきたエロ朗読やエロ教育などの性的搾取の事を知ったスッキは激怒し、地下室で叔父のエロ小説を全てビリビリに破って水槽に叩き込み、そして地下室の入り口で部外者を威嚇するよう置いてある蛇の彫像(叔父の男根の象徴)を粉砕する。このシーンのスッキはかなり少年漫画のヒーロー的で、お嬢さんがヒロインっぽく撮られていた。
悪いやつとはいえ伯爵の計画のおかげで秀子は変態叔父から自由になる切っ掛けを得れた。だが遺産相続が成功した夜、伯爵は秀子に「貴女を少しだけ好きかも」と言い抱こうとするが「女は無理やり犯された時に快感を覚える」と言う。女性に支配的な変態叔父のもとから(結果的に)秀子を救った伯爵もまた、新たに秀子を支配しようとする「新しい悪い男」でしかなかった。しかも気の毒なスッキを犠牲にしている。
次の瞬間、伯爵は秀子がワインに仕込んでいた薬品で眠った。
叔父は財産と生きがい(エログッズと自慰の手伝いしてくれる秀子)を失った怒りで伯爵を捕らえて指を次々と切り落とす拷問をするが、伯爵は水銀煙草で自分もろとも叔父を殺害する。悪い男たち全員死亡。
秀子は、精神病院を難なく脱出してスッキと落ち合い男装して国外へ。
夜の霧の中を進む豪華客船で二人は愛し合うのだった未来はこの海上の夜の霧の中同様先行き不明だがきっと大丈夫だ二人一緒なら‥的なまさかのハッピーエンド。
伯爵も今まで見下していた〈女〉たちに敗北し変態の叔父に何本も指を切り落とされて苦しむし、財産とエログッズ全て失った叔父も最高に絶望した状態だろうし、そんな二人が「もう物語での役割は終わった」とばかりに映画そのものに始末されてしまう様も痛快でした。めっちゃカタルシスある明るい終わり方だったので驚いた。善人や女子供だろうが惨死しがちなパク・チャヌク映画、悲劇で終わることが多そうなカンヌ出品作や韓国映画、しかも「日本統治下の朝鮮」という如何にも酷い事が起きそうな舞台、そして物語に出てきたら大抵悲劇で終わりがちの同性愛カップル、中でも更に悲惨な末路を遂げがちの女性同士のカップル‥などの先入観のせいで「これは酷い目に遭い続けてたお嬢さんが一瞬希望を抱きつつ酷い最後を迎える暗い映画なんだろうな」と思い込んでたせいもあってスルーしてたのだが、いざ観ると意表を突かれて爽やかな気持ちになれた。観てよかった。昔の映画だと同性愛カップルって絶対死んだり悲惨な最後を遂げてたけど今はそういう感じじゃないもんね。そして「日本統治下の朝鮮」というのも、お屋敷は外界から完全に隔絶されてたせいで殆ど機能してない舞台設定だったし、そういう外界から押し寄せる悲劇も起きようがなかった。
そしてラストに秀子とスッキが勝利SEXしてる時、かつて叔父が秀子にエロ教育する時に使ってた丸い玉を使ってたのが良かった。「性的搾取されてた象徴のエロ玉なんか見たくない!」っていうんなら叔父の性的な抑圧から逃れられてない感があるがエロ玉を自分たちで新しい使い方してるので、もう完全に過去を乗り越えた上に二人で新しいエロ歴史を塗り替えてる感じがして爽快感あった。それにしてもこのエロ玉は一体‥?エロ玉に限らず尖った歯をコスコスする行為など、よくわかんない描写は多く出てくるが‥まぁどうでもいい。とにかく前半は「どういう話なんだ?」と惹きつけられるミステリーだったし、後半は自分の予想と正反対だった事もあって秀子とスッキの活躍を単純に応援できる痛快作でした。
自分はそうではないが百合好きの人とかの感想も聞いてみたい、きっともっと面白い感想が聞けそうだ。
それにしても第二部の最後でお嬢さんの首吊り未遂シーンの時にスッキが手を離してしまいお嬢さんが空中でもがき苦しむという昔の漫画のようなギャグシーン、あそこのお嬢さんがめちゃくちゃ可愛かった。

 

 

そんな感じでした

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