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映画の感想ブログ 😺 おしずかに‥〈Since.2015〉

『ノット・オーケー』(2020) 全7話/「ライフイズストレンジ」+「キャリー」って感じ。凄く面白い👩‍🦱

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原題:I Am Not Okay With This 企画ジョナサン・エントウィッスル。クリスティ・ホール
製作総指揮:ショーン・レヴィほか 原作:チャールズ・フォースマン 制作局:Netflix
製作国:アメリカ 配信時間:各話約20~30分、全7話

  

 

 

グラフィック・ノベルが原作の青春ドラマ(〈グラフィック・ノベル〉は正確な定義付けされてないみたいだけど個人的には「ヒーローもののアメコミ以外の、少し文学的な大人向けのアメリカンコミック」だと思ってる)。
IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のベバリー役の子役女優ソフィア・リリスが主人公、その男友達役として同じく『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のラビの息子のユダヤ系少年役だった子が出ている。
本作同様にNetflix制作で「子供」「田舎町」「超能力」などを扱った『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の監督が本作の制作総指揮をしており本作もストレンジャー・シングスに少し似てるかも(80年代が舞台のストレンジャー・シングスと違って本作は現代の話だが、現代っぽい描写が少ない普遍的な思春期像を描いてるし出てるキャラがレトロ趣味だったりして結果的にストレンジャー・シングスの30年後とは思えない、殆ど同じ時代のドラマに見える)。
また、僕は観てないけどNetflixで人気の青春ドラマ『このサイテーな世界の終わり』の監督が本作の監督を務めており、本作の雰囲気は『このサイテーな世界の終わり』に似てるらしい(「サイテー」の方も暇な時に観てみるか)。
感想の終盤でネタバレあり。

 

 


ペンシルバニアの田舎町。17歳の女子高生シドニー(ソフィア・リリス)が主人公。
シドニーと仲良かった父親は、一年前のある日、自宅の地下で首吊り自殺して亡くなった。以降、ウェイトレスの母親、小学生の弟と暮らしている。
ドラマの冒頭、血液のような赤い液体をかぶったシドニーが呆然と町を歩いている。恐らく終盤であろう場面で彼女が「何故こうなったか」という回想がこのドラマ本編。「いけてない女子高生の青春ドラマ」でラストが血まみれ……否応なしにブライアン・デ・パルマの『キャリー』を思い起こさせる。キャリーのように血を被るのか、誰かの返り血か、はたまたパンチやトマトジュースなど無害な赤い液体か……そんな択一を念頭に置き、ドラマが始まる。
転校してきたばかりのシドニーは引っ込み思案で友達も少ない、いわゆる陰キャ。しかし同じ時期に引っ越してきた事で親友になった黒人少女ディナは凄くモテるしスポーツ堪能かつ優等生……という陽キャ。しかしディナは最近、シドニーが最も苦手とするアメフト部のガサツな陽キャ、ブラッドリーと付き合い始めたので面白くない日々。
シドニーのイライラが積もり積もった時、超能力が発動するようになった。
周囲の物を吹っ飛ばしたり人に鼻血を出させたり小動物が死んだり……。
そんなある日、近所に住む心優しいサブカル少年スタンリー(ワイアット・オレフ)と仲良くなったはいいが彼に超能力を見つかってしまい……みたいな話。
各話20~30分で全7話……全話合わせても『アベンジャーズ エンド・ゲーム』一本分より短い、それに単純に面白いので1日~2日ですぐ観れる。

 

 

 

要するに思春期の少女が家族、友人、恋愛……など、人間関係で悩んでて、その感情の爆発を超能力で表現した青春ドラマ。
そんな話は、遥か昔から大量に創られてきた。本作の特色は……実はあまり無い。単純に映像が綺麗で美術やファッションの趣味やテンポが良くて面白い、正攻法で攻めるドラマ。強いて言うならラストがちょっと反則な感じするが、それは後述。
主人公シドニーを演じるソフィア・リリスは『IT』でめっちゃ良い感じの、5、6年後にはブレイクしてスターになってるのは間違いない現在のナンバー1女性の子役。低い温度で周囲を冷静に観察してるので「ドライな子かな」と思ってたら、何か嬉しいことあったら一瞬で太陽のように喜びを表現する。そんな素直な顔芸が今の時代の若者っぽい。有名人で言うとビリー・アイリッシュっぽい……と書いて思ったけど何時の時代の若者も皆そんな感じかもしれない。よくわからなくなってきた、まぁいい。
ソフィア・リリスは軽蔑したりウンザリしたり激怒……といったネガティブな感情の演技が凄く上手い(そして笑う時は全て照れ笑い)。このドラマは殆ど彼女のワンマンショーという感じで凄く惹きつけられる。彼女の顔を観てるだけで楽しめる。友人たちと比べて陰キャシドニーはもっさりした格好をしており、その立ち姿も可愛いらしい。
シドニーと仲良くなるサブカル好きの変わり者の少年スタンリーを演じるのは『IT』でユダヤ人少年を演じてた子だが、彼もソフィア・リリス同様すごく良い。彼が着る水色のジャケットもお洒落だ。スタンリーはシドニーと知り合ってジョイント(マリファナを紙で巻いて煙草みたいに吸う)した日に弾みでSEXし、お互い童貞と処女を捨てる。スタンリーはこの田舎で話が合いそうなシドニーを前から気に入ってたようだが、彼女と仲良くなって更に好きになって全編、シドニーを助けてくれる。スタンリーは若干17歳ながら苛ついたシドニーに突き放されたりフラれても常に彼女を助けようと追いかけて助け続ける姿は『マッド・マックス 怒りのデスロード』のマックスとか少女漫画に出てくるボーイフレンド並に広い心を持っている聖人の少年だ。僕が高校の時……だめだ、そもそも女子と話しすら出来なかったし若い時は自分のことしか考えてなかった、せいぜい30代後半にならないと他人のことを考えられなかった(つまりスタンリーは僕より20年分偉い)。彼はいつもシガレットケースにジョイントを10本くらい入れてて学校で隠れて吸ったりするので、もし自分が彼の父親なら「マリファナ吸ってもいいけど裏山とかで吸いなさい!」と言いたいところ。生え際が後ろすぎる事だけが心配だが何もかも最高の少年だ。噂では彼は、原作に出てくる脇役2人を合体させて扱いを大きくしたキャラらしい。
そんな感じで「パパが死んで悲しいし、ママとギクシャクしてる」「親友に彼氏ができて辛い」「はずみで男の子とSEXしちゃったけど、恋人ってほど好きなわけでもない……」「超能力を会得した。こんなパワー欲しくないのに……」などといった、他愛もない(しかし本人にとっては切実な)青春ドラマが繰り広げられる。
アメリカの美しい田舎町〉で〈家族と少し溝がある〉〈繊細な少女〉が〈シニカルな冗談〉とか〈内省的なナレーション〉を言いながら〈爽やかなギターポップ〉がBGMで、キレたら〈スーパーパワー〉をかます、そして〈親友以上の関係の同性の親友がいる〉〈異常に親身になってくれる、私のことを好きな異性がいる〉〈主人公の心の声が頻繁にナレーションで入る〉そして〈青春ものだけど最後にヤバいことになる〉という……フランスの傑作青春アドベンチャーゲーム『ライフイズストレンジ』と被ってるところが凄く多い。だが「パクリ」だとか言いたいんじゃなくて現代的なテーマを取り入れて欧米の繊細な女の子を描くと大抵こうなってしまうんだろう。このシドニーの「陰キャだけど飾らなくて魅力的な女の子」感は『ライフイズストレンジ』の主人公マックスにも似てるし『ライフイズストレンジ』をドラマ化したら、こんな感じだろうなと思った。
シドニーやスタンリーたちも可愛いし、美しい町並みや家の内装や小物も凄く可愛いので久々にちょいちょいスクショさせられた。それにしても『ライフイズストレンジ』もそうなんだけど、アメリカの田舎を舞台にした繊細な主人公の青春ものを観たら、アメリカの田舎に行ったことないのに「懐かしい……」と思ってしまうのは何故だろう。スタンリーが「あの塔知ってる?」と指差すと、行ったことのは勿論まだ塔が劇中に出てきても居ないのに「知ってる知ってる。懐かしいなぁ」と思ってしまうのが不思議だ。自分の子供時代が田舎だったし、子供の時にスピルバーグの映画などアメリカの田舎を舞台にしたジュブナイルを多く観たせいか、アメリカの田舎を舞台にしたフィクションばかり観てたせいか、自分の心の中に「存在しなかったアメリカの田舎」というバーチャル空間が出来あがってるのかもしれん。将来、ジジイになって認知症になったら、それらの記憶がごちゃまぜになるんだろうな。
次の段落から終盤のネタバレ

 

 

 

そんな感じで〈超能力〉と〈父親かもしれない黒い霊を目撃した〉こと以外は、何とか解決できそうな爽やかな思春期が描かれてて楽しい。
仲悪かった母親とも仲直りしたし嫌な奴も居ない……しいて言うなら親友ディナのアホの彼氏ブラッドリーくらいか。しかし、このブラッドリーも「君は俺を嫌ってるけど、ディナを困らせないように俺たち仲良くしよう」とシドニーに握手を求めるなど、アホではあるが心底悪い奴というわけでもない感じで描かれていた。嫌なやつというよりは自分の利益を求めてるだけの只のガキといった感じ。異常に心が広いスタンリーより、むしろコイツの方が平均的な男子高校生と言える。
だが自分の大事な親友……いや、親友以上の感情を抱いてしまっているディナをアホのブラッドリーに取られて苛ついてたシドニー。そんな彼女はブラッドリーの浮気を知りディナに話して、ディナとブラッドリーは破局。ブラッドリーはシドニーに逆恨みするが「お、おぼえてろよ!」と睨むくらいで、まぁあまり深刻な感じはしない。だが悪評が立って人気者のブラッドリーの周囲には人が居なくなった。ここに至ってもブラッドリーはまだ、そこまで嫌な奴には見えない。唯一残った舎弟に「ホームカミングの日を楽しみにしてろよ」と言う。やはり『キャリー』よろしくパーティでシドニーに赤い液体をかけて愚弄する予定のようだ。
そして迎えたホームカミングの日、シドニーはママやディナと仲直りして、ディナと出かける。会場で、喧嘩別れしてたスタンリーとも仲直りして三人は楽しく過ごす。そしてディナはシドニーの〈親友以上の愛情〉を受け止めようとしている、全てが順調に動き始めた。
ここでブラッドリーが登場。シドニの日記を盗んで読んでいた。皆の前でシドニーの秘密「ディナに恋愛感情を持っている」を皆の前でぶちまけ、シドニーレズビアンだと嘲笑する。怒って止めさせようとするスタンリーも殴り倒される。ここまで、さほど嫌な奴にも見えてなかったブラッドリーが急ハンドルで一気に悪役になったね。
ブラッドリーはこの行いも顔も口調も、とても周囲が味方してくれるようなものではなく「こいつ明日から学校でどう過ごすつもりだろ」と思った。まぁ憎しみだけ膨らんで暗黒面に堕ちてもうどうでもいい感じなんだろう。火口でオビワンと闘うアナキンみたいな感じ。
ブラッドリーは続けて「シドニーの超能力」について暴露しようとしたため、既にキレていたシドニーの感情は限界を超えて膨れ上がりブラッドリーの頭部を『スキャナーズ』のように吹っ飛ばしてしまう。首が爆散して倒れるブラッドリーの首なし死体。
酔ってディナにキスして拒まれただけで林の木々を吹き飛ばしてたんだから、嫌いな奴にここまでやられたら、そりゃこうなるか。
ブラッドリーが「ディナの日記には超能力持ちだと描かれている!」と言ったところで証拠はないのだから「それは私が書いた小説だ」と言えばそれで済んだんだけど、シドニーはディナへの想いを暴かれた事と目の前の大嫌いなブラッドリーが悪意を自分にぶつけてきてるのが耐えられなかったんだろうな。そういえば「シドニーはすぐキレる」って最初から振ってたしな。
しかしシドニーがブラッドリーを惨殺したのは驚いた。
というのも第1話の冒頭で『キャリー』みたいなシドニーを観はしたが、このドラマは割と爽やかにここまで来たし、ブラッドリーもそこまで悪いキャラとして描いてないから「ブラッドリーがシドニーの秘密を嘲笑し、それでシドニーがキレてパーティ会場を無茶苦茶にして逃げちゃうんだな。それでパンチか何かを頭から被って赤く濡れるオチかな」くらいの想像してたんだけど、まさかブラッドリーのドタマを吹っ飛ばすとは!
確かにブラッドリーは憎まれキャラだが悪いことと言えば浮気しかしてないし惨殺は明らかに過剰防衛。意地悪されて仕返しするという予想はそのままだったが、仕返しの内容がこちらの想像の斜め上を行っていた。こういった「展開は想像通りだけど描写が想像を超えてきた」というのは映画やドラマを観ててかなり面白いと思えるポイントだ。
シドニーの超能力は今まで、ボーリングの玉を壁にめり込ませたり、大木を10本くらいなぎ倒したりと威力のあるところを見せてきたが、それがモロに人体に向くとこうなるわな。
全話かけて描いてきた、スタンリーと超能力を制御する共同トレーニング、ディナや周囲との和解……など、これまでの努力が全てどうでもよくなってしまう顛末が描かれて新たな次元に上昇して終わるラスト……。こういうラストは個人的にかなり好きだ。
修行で強くなるわけではなく「思い出す」事によってそれまでより1万倍強くなって人格まで上がって終わる『キャプテン・マーベル』や『カンフー・ハッスル』。今までの努力の結果、全く違う世界に行ってしまっただけでなく主人公すら今までの人格から別の者に成り7)とか、ラストで突然それまで出てきた多くのロボや敵よりも1万倍くらい強い真ゲッターロボが出てきて物語そのものがシンギュラリティを迎えた瞬間に終わる石川賢の漫画『ゲッターロボ號』とか。
それらの作品ほどじゃないけど、シドニーの過剰すぎる防衛によってそれら「今までの努力が全て無になるサイキック・パワーの暴走」で、今までの〈超能力はおまけで、メインは爽やか青春ドラマ〉って感じの本作の主題が急に超能力になって物語がアセンションして、更に今までシドニーを付けていた黒い影(父の霊?他の超能力者?)が「今度は彼らが恐れる番だ。さぁ始めよう……」などとアメコミやホラー映画みたいな台詞を言ってドラマは終わる。恐らくシーズン2に続くのだろう。それに、この最終回はまだ原作コミックの途中みたいだし。
ここまで「超能力を扱ってはいるが、それは只の調味料で、実際は田舎を舞台にした爽やか青春ドラマだよ~」と描いておいて最終回で急に、突然『スキャナーズ』や『キャリー』みたいなバイオレンスがブッこまれて、こんなX-MENの登場人物のオリジンみたいな終わり方するとは……正直ちょっとズルいと言えなくもない。だってマジでそんなノリで描いてなかったからね。ブラッドリーがそこまで嫌な奴じゃないように描いてたのも、ラストで驚かすためにわざとそう描いてたんだろうし。結構、反則ギリギリだが、そのズルさを覆い隠す面白さがあったのでズルさは相殺される。結果OKです。
それにしても『スキャナーズ』で頭が吹っ飛ぶところとか『エヴァQ』でカヲルくんが爽やかな笑顔のまま爆散する場面は何故か爆笑しそうになったが、本作のブラッドリー頭部破裂の場合、悪事に対して罰が重すぎるので「えっ!そんなに?!w」と思い、笑いより驚きの方がデカかったね。返り値で真っ赤になったシドニーが会場を出るところも大した距離じゃないのに細かくカットを割っていて、全カットでシドニーが凄いビックリ顔してるのだが、ここも最高に可笑しかった。

 

 

 

 そんな感じでした

👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱👩‍🦱

ノット・オーケー | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト

I Am Not Okay with This (TV Series 2020– ) - IMDb

www.youtube.com

I Am Not Okay With This (English Edition)

I Am Not Okay With This (English Edition)

 
I Am Not Okay With This

I Am Not Okay With This

  • 作者:Forsman, Charles
  • 発売日: 2020/02/25
  • メディア: ペーパーバック
 

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