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『カラオケ行こ!』(2024)/今んとこ今年の映画で一番よかった🎤

監督:山下敦弘 脚本:野木亜紀子 原作:和山やま『カラオケ行こ!』(2020) 製作:根岸洋之 編集:佐藤崇 音楽:世武裕子 主題歌:Little Glee Monster『紅』(2024) 制作会社&配給:KADOKAWA 製作国:日本 上映時間:107分 公開日:2024.1/12

 

 

和山やま氏の漫画『カラオケ行こ!』(2020)の実写映画化。
公開されてすぐ人気が出て、これは映画が面白い人気の出方だt気になってたが逃してしまったのでレンタル始まるのを待ってた。

和山やま氏の漫画は、このシリーズと『女の園の星』(2020-)を読んでるくらい。
生物の生態を客観的に観察してる感じの低体温で男性同士のギリギリBLにはなってないけど深い微妙な関係性を描く漫画家という印象。
特に男性同士の関係性萌えを愛好しているわけでもない中年男性なのでガチファンほどわからず関係性に盛り上がってるわけではないけど客観的で低体温なフィクションが好きなので好感を抱いてます。
特に『女の園の星』の第3巻が一番面白かったです。
本作の原作は現在、主人公の少年が大学生になった続編『ファミレス行こ。』(2020-)が連載中で、そっちも一応読んでるけど『カラオケ行こ!』にあったカラオケ&合唱祭という「唄」という軸がないので宙に浮かんだ聡実と狂児の関係性を見つめるしかない感じで、面白いけどよくわからない。多分『カラオケ行こ!』同様にクライマックスになった時に真価がわかる漫画っぽいのでそれまで待とう。

監督の山下敦弘は昔『リンダ リンダ リンダ』(2005)、『天然コケッコー』(2007)などの青春映画が凄く好きだったが理由はないが以降の映画は観てなかった。今年公開された『水深ゼロメートルから』(2024)が前述の青春映画に似てそうなのでレンタルが始まったら観てみようと思う。
……というか今公開中の『化け猫あんずちゃん』(2024)、『告白 コンフェッション』(2024)も漫画原作。『カラオケ行こ!』も昔好きだった『天然コケッコー』も漫画原作、『深夜食堂』(2016-2019)もこの人、「邦画界にめちゃくちゃにされたくない誰かの大事な淡々とした静かな漫画の実写映画化御用達監督」になってる?去年と今年だけで6本も監督作が公開されてるし、少し観ない間に爆売れ監督になってたんだね。
確かに狂児に出会った本作主人公の聡実くんが「オイイイ!かかか、カラオケ!?カラオケって何だよ!?つかヤクザにカラオケ指導とか無理ですからァァ!(変顔で絶叫)」みたいに無茶苦茶にされたら嫌だもんね。そうされたくない漫画の場合、山下監督に頼むってわけだ。なるほど、わかってきた。

ネタバレあり

 

 

 

 

合唱部部長中学3年生岡聡実(演:齋藤潤)は、ヤクザ成田狂児(演:綾野剛)に突然カラオケに連れて行かれて半ば強引に歌のレッスンを頼まれる。
組のカラオケ大会で最下位になったヤクザは、組長に稚拙で恥ずかしい入れ墨を彫られてしまう、その罰ゲームを回避したい狂児はカラオケを上達しなければならない。
狂児の十八番は、高音で難しいX JAPANの『』(1989)。
放課後、狂児に嫌々ながら歌唱指導を行いながら中学最後の合唱祭を控えている聡実だが、彼もまた声変わりでソプラノを出せなくなっている事に悩んでいた――

みたいな話。

 

 

狂児はカラオケ大会に危機感を抱いてるだけあって唄が上手いわけでもなく『紅』を裏声プラス絶叫唱法で唄うので尚更うまく歌えない。
聡実は狂児が上手く唄えるよう『ルビーの指輪』(1981)や奥田民生ブルーハーツの曲など、狂児の音域でも唄えそうな歌をピックアップする(どれも僕が10代の頃に初めてカラオケ行った時に唄いやすそうだと思い選んだ曲!)。
狂児はそれらを練習するが結局『紅』に固執して『紅』ばかり連打してしまう。
狂児役の綾野剛『幽☆遊☆白書』(2023)の戸愚呂・弟役という無茶苦茶なキャスティングの時に「雰囲気あって良いな」と思った。本作でもかなり良かった。常にSEX後のピロートークのような感じで吐息まじりに雰囲気たっぷりに関西弁で喋るので観ていてとても楽しい。綾野剛本人はどういう人なのかはよく知らない、真偽は不明だが凄いナルシストで女性関係が激しいという噂をよく聞く。若いのに濃厚すぎる雰囲気が出てるのは特異な私生活を送る人物であるおかげなのかもしれない。知らんけど。
狂児は夕方になると聡実の中学校の前で待っており、同級生が「あれ聡実の知り合いちゃう?」と言い、見るとグラサンをかけてニヤけた狂児がひらひらと手を振る。
子供である聡実に対しては常に優しく接しているが、女性を口説いている男性のような態度にも見える。女性が描く漫画に出てくる魅力的な「ズルい男」ヤクザキャラとなっており、男の僕が見てもたまらんキャラなので、こういうキャラが好きな女性が見ればもっとたまらんキャラであろう。
聡実は賢いクール毒舌キャラ中学生だが実際は素朴な中学生男子なので「明日、元気をあげます」とLINEして「げんきおまもり」と書かれた御守りを狂児にくれようとしたりして基本的にずっと可愛い。
本作は2人の関係性を眺める映画となっている。

聡実は、前回最下位でキティの稚拙な入れ墨を彫られてしまったキティの兄貴(演:チャンス大城)とかタンポポの兄貴(演:橋本じゅん)等のヤクザが集結したカラオケボックスで彼らに歌唱指導する面白シーンもある。本当は歌がうまいチャンス大城が上手に音痴に見せかけるように唄っていた。
本作が公開された時にSNSで「ヤクザは本当に悪い奴ばかりで、フィクションに出てきがちな”良いヤクザ”など居ないのに、こんなヤクザに触れ合う作品を作るなんて!」などといった批判も少しだけあった。元ヤクザの男が主夫を頑張りつつ町の人たちと触れ合うギャグ漫画『極主夫道』(2018-)に対しても、そのように怒る人もたまにいるが、これらの作品のリアリティレベルは低く、コントに出てくるヤクザキャラのように「細かい背景や現実感のないヤクザキャラ」になっているので目くじら立てる必要はないと思う。わかる?言ってること?どちらかというとヤクザというより「昔話に出てくる鬼」みたいなもんで村人である聡実が山から降りてくる鬼たちと歌合戦してるようなもの、それくらいのファンタジー感で描かれてる。

一方、聡実は中学校最後の合唱祭が控えているが声変わりでソプラノが出にくくなったせいか、合唱部をサボりがちで古い名作映画を鑑賞する部員が一人しか居ない「映画を観る部」に行りびたって部活をサボっていた。
合唱部二年生の和田は熱血漢……というか中学生特有の思春期尖りで、部活サボりがちな聡実に何度もぶつかってくるが、その度に聡実は相手せずスルーする、和田くんはチャウ・シンチーの映画によく出ててた面白い感じの青年(『少林サッカー』の歌手になりたかった青年役とか)に少し似ている。

学校、放課後、家庭などどこでも、クールな聡実に絡んでくる外部の可笑しな人たちといったゆるいコメディが全編続く。全編が「クールな聡実から見た外のおかしな人ばかりの世界」といった感じで、映画全体が聡実の主観を映像化したような感じで描かれていて面白い。
しかし聡実はクールなのは外面だけで内面には熱いものがあり「高音が出なくなった自分」に苛立っており、子供扱いして合唱部のいざこざをからかってくる狂児に対して激昂してキレる。聡実が純粋さを爆発させてキレるシーンは二回あるが、普段の聡実からのギャップもあって凄く良い。屋上で過ごす狂児のように「あー……久々やわ。光合成……」という感じで観る者の滋養となる。
彼の声変わりは、わかりやすく「変わっていく自分と世界」「綺麗な子ども時代が終わり清濁併せ飲む大人時代の始まり」の象徴として描かれている。狂児も「ほんまアホやな。きれいなもんばかりやったらこの街ごと全滅や」と観客にわかりやすいように翻訳して台詞にして言ってくれるしな。……というか原作にない『映画を観る部』も、聡実と部長が旧作を観ているビデオデッキも再生専用で巻き戻したら壊れてしまうという不可逆的なマシンだったし、あれも聡実の青春を現してたんだな。……聡実だけじゃなく我々全員の時間も猛スピードで過ぎ去っていく不可逆的なものだが……それを考えると恐ろしいので今はそれについて考えるのはやめておこう。

で、クライマックスは何やかんやあって合唱祭を抜け出した聡実がヤクザに激昂する滋養となるシーン。そして狂児への鎮魂歌として『』をカラオケで熱唱する。
これはめちゃくちゃ良い。最初は歌が上手い聡実が『』を上手く唄っていたが後半では高音が出なくなる。聡実のソプラノ(子供時代)が終わったのだ。
高音が出ず喉をかきむしりながら苦しそうに唄う聡実……という齋藤潤氏の演技、そもそも『』自体すごく良い歌だし、狂児との短い思い出が映像でフラッシュバックするのも原作にない映画の強みでめっちゃ良かった。というか10回くらい繰り返して観た。
原作だと唄い終わった後で「死んでへんかった狂児」が登場するのだが、映画版は唄の後半でねっとりした視線で見つめる狂児が映り死んでへんかった様を早バレするのが何か良かった。普通だったら唄い終わってバラす事の方が多いだろうが、どうしても「自分のために『紅』を歌ってる聡実を視ている狂児」の瞬間を見せたかったのかもしれん。
このシーン観ながら「狂児は死んでなかったわけだが、映画オリジナル展開で本当に死んでたら、どうなるか?映画的にはよりドラマチックになるのか?」と何度か考えた。しかし「狂児に対する想いを『紅』歌って表現する聡実」という部分が感動するのだから狂児の生死は別に感動に関係がない……というか狂児が本当に死んでたら逆に「そんなに深い絆ないだろ」と思ってしまいそうだから、やはり生きてた方がいいなと思った。

なんかボンヤリした感想になったが、今年観た映画だと一番よかった。何が?と訊かれても上手く言えないが……。映画でもドラマでもクライマックスに爆発したものが凄く加算されるので、だいたい満遍なく面白い本編……がクライマックスで燃焼!という本作がツボにはまったんだろう。レンタル24時間だから3回くらい観たしね。
齋藤潤演じる聡実の『』の分だけ原作より映画の方が良かったです。
僕もひさしぶりにカラオケいこ

 

 

 

 

そんな感じでした

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