gock221B

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『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』(2022)/〈手〉のアイデアも凄いしワンアイデアを主人公の人間ドラマと絡めてどんどん展開させていくのが上手くて、これが若のデビュー作と思うと凄いですね🖐️


原題:Talk to Me 監督&脚本:ダニー・フィリッポウ 監督:マイケル・フィリッポウ 脚本:ビル・ハインツマン 原案:デイリー・ピアソン 配給:A24 製作国:オーストラリア 上映時間:95分 劇場公開日:2023年7月27日(日本では2023年12月22日)

 

 

人気YouTubeチャンネル「RackaRacka」を運営する双子の兄弟ダニー&マイケル・フェリッポウがA24から長編映画監督デビューを果たし、2023年サンダンス映画祭で話題を呼んだオーストラリア製ホラー映画。
これは観に行きはしなかったのだが、あらすじ聞いたら気になりすぎたので配信とかに来るのを待ちきれずレンタルで観た。
A24はBackroomsの短編をYOUTUBEにUPしてた高校生をBackroomsの映画『The Backrooms』の監督に招いたりして新人発掘に余念がないですね。
このチャンネルは、WWE好きな青年たちが友達集めて色んなキャラに扮してプロレスごっこしてるものが登録者数684万人にまで膨れ上がり「もうYOUTUBEでやる事全部やったから新しい事をはじめたい」と言って作ったデビュー作がこれ。で、高評価&スマッシュヒット。すごいね。
カプコンの格ゲー『ストリート・ファイターII』の実写版の監督に決まったそうだけど、監督兄弟はオタクなのでストIIも当然好きでわざわざタイに行ってサガット役を探したりしていて期待が持てる(タイに演技できるあんな巨人居るかなぁ)。

ネタバレあり

 

 

 


2年前の母の死から立ち直れずにいた高校生ミア(演:ソフィー・ワイルド)は、友人ジェイド(演:アレクサンドラ・ジェンセン)から、同級生のホームパーティにてSNSで話題の「90秒憑依チャレンジ」が出来ると誘われ、ミアが想いを寄せる幼馴染ダニエル (演:オーティス・ダンジ)も参加すると聞きパーティへ。
それは呪われているという〈〉の形のオブジェを握って「トーク・トゥ・ミー」と唱えると霊が視え、招き入れると霊に憑依される。その手は「90秒以内に離さなければ霊に乗っ取られてしまう」というルールがあった。
強烈なスリルと快感にのめり込みチャレンジを繰り返すミアや仲間たちだったが、ジェイドの幼い弟ライリー(演:ジョー・バード)に今は亡きミアの母が憑依して――

という話。

主人公ミアの母は、ミアとも仲の良い快活な女性だったのだが鬱っぽくなり「自死したんじゃないか?」と匂わされている。その日、ミアの母は自室で薬を飲みすぎた。異変を感じた父が開けようとするが母は扉の前でぐったりしていたため、扉が開けられず間に合わなかった。この状況は後で何度か出てくる。
母を救えなかったと思ったのか父ともギクシャクしており、友達のジェイドの家に入り浸っている。

この〈手〉は、超能力者または霊能者または悪魔崇拝者……とにかく「霊と交信ができる能力者の切り落とした手の上からセラミックで加工したもの」などと悪ガキから語られるが、手の正体は最後までよくわからない。まぁあまり手の真相は重要じゃない。とにかく握るだけで凡人でも霊が視えて霊を憑依させることが出来るという特級呪物。
〈手〉を握って「トーク・トゥ・ミー」と言うと、ランダムで幽霊が目の前に出現して、霊と手を繋いだ状態になりなかなか怖い。その霊は〈手〉を握ってる本人にしか見えない。ランダムなので事故死して血まみれのオバサンとか綺麗な幼女とか様々。
この段階では乗っ取られたり人間に危害を加えたりはできない。
「入っていいよ」と許可すると憑依される。許可しないと入れないというのは吸血鬼ドラキュラとかと同じだね。
憑依した霊は自分の想いを喋ったり、肉体を得て快感を得ようと憑依した身体を弄ったりとか色々ある。この時に暴れたりどっか行ったりしないように「トーク・トゥ・ミー」する人は事前に縛っておく。
90秒以上経ったら乗っ取られてしまうため、83秒くらいの時に「そろそろやめようぜ」と〈手〉から体験者の手を離す。これで憑依状態から解ける。
この〈手〉の設定は面白い。これで映画一本つくろうと思ったのも分かる。
〈手〉を試したミアだが少し暴れてしまったため、90秒を少し過ぎてやっと憑依を脱した。〈手〉を握っていた時間が長かったせいか、その日からミアはちょいちょい日常生活で霊を見るようになる。
この霊もバリエーション豊かで、死んだ母はミアが会いたいと思ってる存在なので全く怖くない人間ドラマっぽい若干ハートウォーミングな感じで現れる。病院のトイレで、母の霊が自室の自死のトラウマを再現するシーンはスティーブン・キングで出てきそうなシーンで普通に良い。あとはミアが曇ガラスの向こうに知らないオバサンが一瞬立ってたり(ちなみにこれが一番怖かった)、あとミアの自室で服とかを積み重ねてある?って感じの隅っこが「よく見たら人じゃないか?」と思ったら事故に遭ったらしき太ったオバサンが動き出して這いだすシーンも凄く良かった(だけどあまりに鮮明に映りすぎてて怖さが減った、もっとわかりにくい方がよかった)。

 

そんな風にミアが私生活でも幽霊を見始め、ジェイドの家でママ(RotRのエオウィン役の人)が留守中にホームパーティを開き〈手〉で遊ぶ。皆、ルールを守って適度な恐怖と快感を味わって楽しんでいたがジェイドの弟ライリーがやった時に「ミアの母」を名乗る存在がライリーに憑依してしまった。「ライリーまだ若いから50秒くらいにしとこうぜ」としてたのだが、母の死に心残りがあるミアが、母の霊と喋りたいがあまりライリーの憑依時間を引き伸ばしてしまった。それが災いしたのか邪悪な霊が入って暴れてライリーは意識不明の重症を負ってしまう。これが終わりの始まり。まだ幼さが残るライリーの顔がボコボコになってしまった様が迫真で良かったです。

ライリーの事で心の拠り所であるジェイドとジェイド母に拒絶してしまったり、ミアが好きな幼馴染ダニエルと良い感じになったと思ったら寝てる間に憑依されて大失敗してしまったりしてミアは坂道を転がり落ちるかのように悪循環に陥っていく。
その一つ起きた事が次の良くないことに派生し、それがまた次の良くないことに派生し……と次々と展開させていく過程も凄く上手い。これがYOUTUBERの若者のデビュー作だと考えるとかなり凄い。〈手〉のアイデアは確かに良いけど、このワンアイデアで最後まで突き進むのは結構難しいはず。そこで「母を喪った主人公」「その母は自殺だったのか?」など主人公の人間ドラマを〈手〉に絡めて、2つの相互作用で次々と展開させていくのが本当に上手い。「そろそろ半分くらい観たかな?」とシークバー観たらもう残り少なかったりして「こんなに時間の進みが早く感じるほど面白いとは!」と思った。先日観た『マエストロ:その音楽と愛と』(2023)が、展開のさせ方が下手で最初の50分観るのに一週間かかってしまったのと対象的だ。
また〈手〉を使っての「トーク・トゥ・ミー」遊びは、一目瞭然でドラッグで遊ぶ若者たちのメタファーとして描かれてる。本作は「母を失って哀しいミアが同級生に混じってドラッグを試してたら幻覚幻聴を聴いたりする内に自分をフォローしてくれるはずの人間も離れてしまいバッドに入って破滅」してしまう青春の悲劇を、ホラー映画として作り上げて表現した映画とも言える。
最後も素晴らしいオチで綺麗に終わる(序盤で言ってた「鏡に映った自分が消える悪夢をよく見る」という前フリも効いていた)。
母の霊や死の原因は、結局謎が多いのだが、父が言ってたことや母の遺書が「真実」であり、「母の霊」がミアに言うことは基本的に嘘またはミアの幻想だと思った。母もまた別の霊が母を騙って言ってたのかもしれないし死後の孤独で発狂した母の霊が悪魔のように娘を破滅に追いやろうとしてたのかもしれない。まぁ母の霊の正体は割とどうでもいい、どんどん情緒不安定になっていくミアの良くない精神状態のメタファーとして霊を使ってるだけなので厳密な真実とかは重要じゃない。
それにしてもミアのパパの今後は悲惨だな……。
そんな感じで特に欠点もなく楽しめました。しかもデビュー作だからね。『イット・フォローズ』(2014)を観た時の瑞々しさを思い出しました。あと一歩!あと一歩なにか重要なポイントがあればもっと歴史に名を残す傑作にもなり得た勢いがあった。

冒頭で書いたようにこの監督コンビは格ゲー『ストリート・ファイター』の実写映画化をしているほか本作の続編を作るという噂もある。
今後も楽しみな監督がまた出てきたなと思いました。

 

 

 

 

そんな感じでした

🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️🖐️

Talk to Me | A24
Talk to Me (2022) - IMDb
Talk to Me | Rotten Tomatoes

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