gock221B

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『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』(2023)/シリーズの集大成で既視感ある描写やキャラの数々。そして男の有害性に対峙する工藤に不思議な感動があり、このシリーズはもうこれで終わりでいいかも🏏


監督&脚本&撮影&音響効果&出演:白石晃士 プロデューサー:三上真弘、田坂公章 製作:吉原豊 編集:宮崎歩 配給:アルバトロス・フィルム 制作:日本 上映時間:78分 公開日:2023年9月8日 シリーズ:コワすぎ!シリーズ第10作目

 

 

白石晃士監督の人気シリーズ8年ぶりの新作(そして恐らくこれで終わりっぽい?)。
観たいな~と思いつつ観に行かなかったのだがレンタル始まってたので観た。
破天荒な主人公・工藤ディレクターと仲間たちが金属バットや特急呪物で物理的に怪異に立ち向かう愉快な人気シリーズ。途中からエヴァンゲリオンとか深夜アニメっぽい描写が増えてきて第7作目で一旦、完結し、そして別の並行世界の工藤達を主人公に2作だけ作られてストップし、そして8年ぶりに突然作られたのが本作。これまた別の並行世界の話っぽい。
一時期、毎年夏にニコニコ生放送などで配信されて極一部に今でも熱狂的な人気があったのだが配信で観られても白石監督自身は全く儲からず、とにかく監督が人気以外まったく得をしないシリーズだったみたいでどんなに人気が出ても白石監督はあまり喜んでいないように見えた印象が強かったシリーズ。

ネタバレあり

 

 

 

 

心霊スポットを撮影してTiktokYOUTUBEに投稿する若者三人(演:福永朱梨、小倉綾乃、梁瀬泰希)。
彼女らは廃工場っぽい廃墟(『カメラを止めるな!』(2018)でもお馴染みの廃墟)で、不気味な祭壇を発見し三人はそれを破壊。すると刃物を持って全身返り血を浴びたかのような赤い女(演:南條琴美)が追いかけてきた。
かつて怪奇系ドキュメンタリーを作っていた工藤仁(演:大迫茂生)は、赤い女の投稿ビデオを観て「ここで撮影すれば大儲けできる映像が撮れる!」と思い、かつて工藤の元でADをしていて今ではディレクターになっている市川実穂(演:久保山智夏)、田代正嗣カメラマン(演:白石晃士)ら、かつての仲間を集める。
工藤たちと若者三人は、更に霊能者鬼村伊三(演:木村圭作)も連れて廃墟に向かった。

という今まで通りの導入部。
工藤は昔のように市川にセクハラ&パワハラかますが、市川は昔のように嫌な顔してるだけではなくセクハラには「それセクハラなんでやめてください」と叱る。工藤は昔のように市川の頭を叩こうとしたら躱されてボディーブローを喰らって悶絶。……というシーンが前半に二回あり「いつまでも昔のノリを引きずって現代の女性(市川)に仕返しされる、アップデートできず時代に取り残された中年男性・工藤」といった面に大きくクローズアップしていたのが過去のコワすぎ!からの時の流れを感じさせる。
また、今までの白石監督作に出てくる和装の霊能力者は怪異に成すすべなくやられてしまうのが定番だったが本作の鬼村は、若者のはしゃぎを注意したり「ヤバいから引き返そう」と言ったり、時空が歪んで廃墟から帰れなくなると霊能力の師匠に電話したり、「帰れないみたいだから、こちらから敵の懐に飛び込んでカウンターパンチを打ちましょう」と覚悟を決めたりと、別に無敵とかではないが自らの実力を客観的に理解しており、その自分の実力内で出来ることを頑張ろうとする有能なキャラで、新しかった。
工藤達が廃墟に行ったのは昼間だったのだが突然夜になったり昼になったり、何度逃げようとしても廃墟の前に戻ってきてしまう。
廃墟に入って例の破壊してしまった祭壇の場所に行こうとしても、階段をいくら降りても元の階に戻ってしまい、廊下を延々と走り続けても端に付かない。
その辺の、何てことない日本の風景が突然時空が狂って抜け出せなく様子は僕が一番好きな第4作目『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!FILE-04【真相!トイレの花子さん】』(2013)を思わせて非常に良い。今まで何度もこんなシーンを撮ってきただけあってめちゃくちゃ慣れた手付きで、しかも恐らく恐ろしく安上がりに「時空の乱れ」を表現していて「さすが白石監督。というか潤沢な制作費出して白石監督にこういう大作撮らせろよ」と、昔から皆が思ってることをまた思わされた。『きさらぎ駅』(2022)などの2ちゃんレジェンドシリーズは長江監督がハマってて良いのだが、こういう感じのSFホラー大作を白石監督に撮らせればいいのに。なんで白石監督には微妙な大作ばかりで、白石監督が得意そうな大作SFホラーが回ってこないんだろ?

廃墟に着いてからの時空移動などもそうだが既視感あるシーンやキャラが多くて、『コワすぎ!』シリーズや白石監督のSFホラーの集大成って感じの雰囲気が強い。

やがて「どうやら自分たちはさっきから過去に戻ったり、平行世界にいどうしているらしい」とわかってくる。
そこへ若者三人組のうちの一人の女性、その娘が女性と一緒に廃墟に入ってくる。工藤達は「過去の彼女たち2人」がこの廃墟を訪れた時にタイムスリップしていたらしい。
すると黒いボールのような物が落ちてきて忌まわしい「黒い男」がやってくる。

……といった辺りから、この場所にまつわる真相や解決に迫っていく。
ここ以降、「黒い男」が工藤達に近づいてくる時に、必ず黒いボールのようなものが転がってくるので、ボールが転がってきたら「やべえ!アイツだ!逃げろ」とボール1つで「黒い男接近」を表現できててここもまた白石監督らしい上手さを感じた。
ピンチの工藤たちの前に、鬼村が廃墟突入前に電話してた霊能力の師匠・珠緒(演:桑名里瑛)が来てくれる。
「珠緒」というのは『貞子vs伽椰子』(2016)に出てきた霊能力少女と同じ名前なので、白石監督が霊能力を持った女性に付けたい名前なのかも。
珠緒はヤンキー女みたいなアニメのキャラみたいな感じで、それでいてマルチバース間の移動やタイムスリップ、固有結界、呪いパワー無効化など、万能なスーパー霊能力者だった。『カルト』(2013)のホスト風スーパー霊能力者・NEOとか『オカルトの森にようこそ THE MOVIE』(2022)のホスト風スーパー霊能力者・ナナシとか『貞子vs伽椰子』(2016)の経蔵&珠緒などと同系統の「白石監督のホラーに出てくるアニメキャラみたいに強い霊能力者」キャラの一人だと言える(しかし良い歳したギャルなら居そうだけど良い歳したヤンキーって何だかヤバい気がする。霊能力一本でやれるから10代の頃からこのまんま来てしまったんだろう感がある)。
そんな万能な珠緒だが途中で工藤たちと分断されてしまう。珠緒が全部解決したら話終わっちゃうからね。珠緒は全て助けて説明してくれる便利なキャラであるが、肝心の敵を倒すのはあくまでも工藤のようだ。
珠緒はキャッチーなキャラなので公開時にファンアートとか描かれるくらい人気あったのはわかるし僕も珠緒は良いキャラなので好きだけど、あまりに万能すぎる上に本編での不思議な事を全て説明してくれるので、終盤では疑問や心配が全て解消されてしまい本編の面白さが減ったなと思った。珠緒が来る前に皆が慌てて廃墟内で夜になったり昼になってて、その理由もわかってなかった時の方が楽しかった。『オカルトの森にようこそ THE MOVIE』(2022)のスーパー霊能力者ナナシも劇中で無双する時間があまりに長すぎて面白さが減ってて、その時も感じた不満と似ている。
珠緒は良いキャラだが、珠緒は来なくて工藤たちと鬼村だけで必死こいて何とか解決する感じで良かったんじゃないかなという気はする(もしくは鬼村程度の能力の珠緒だけがいるとか)。『貞子vs伽椰子』(2016)の時も、貞子に執着してるだけの教授と共に行動してる時の方が経蔵&珠緒が出てからよりも楽しかった。
だが問題なのは、彼ら白石スーパー霊能力者はキャラが良いという事だ。いつも公開されるたびにファンアートが描かれる(地味な実録心霊ものの体で展開してる時にスーパーパワーを持ったアニメキャラみたいな奴が出てきたら、それはオタクは飛びついてしまう)。それほどキャッチーで人気あるとわかっている存在を今更出さないというのは難しい。
『カルト』(2013)のNEOの場合は「アニメみたいなスーパー霊能者が、登場に似つかわしくないモキュメンタリー風心霊映画に出てきて全部解決しちゃう」というネタを最初にやったというのと登場する時がかなり後半だったのが良かった。
今後は白石スーパー霊能力者は出さないか、出してもほんの数分だけにしてほしい。
とはいえ珠緒がプリキュア映画を公開してる映画館みたいな煽りをするのも不思議な感動があったけど。

「黒い男」の正体が明かされ、彼を倒す役目は金属バットを持った工藤達に振られる。
前半で工藤のパワハラ&セクハラが市川に反撃されてたのも含めて、工藤(というか全ての男性)が己が内包する「男の有害性」の存在を認め、それと戦う話だったようだ。
工藤は「お前の存在は知ってる。俺はお前を殺す。蘇ってきても何度でもブッ殺してやるよ!」と黒い男を打ち据える。『呪術廻戦』でも似た場面あったな。何か工藤がそんな事言うとは思ってなかったのでグッと来るものがあった。
そして面白かったことや感動した気持ちと同時に、本作が既視感あるシーンやキャラばかりだったこと、それ以上に工藤が自分を顧みて成長したことなどを観て「面白いし感動もあったけど『コワすぎ!』で今後やる事もうなさそうだな」と感じた。
白石監督は「『コワすぎ!』はこれで終わりだけど、本作があまりにヒットしたら続編もありうるかも」と言っていて、仮にまた続編が作られたら喜んで観るけど、『コワすぎ!』シリーズはもうこれで無理に続けずに完結で良い気がした。
……という感じで、観るのも遅いしテンション低い感想になったが、日本映画の中でトップレベルで面白いのは間違いない。シリーズ観てなくて、いきなり初めて本作を観た人が居たらめちゃくちゃ新鮮で面白いだろうし。だから全作観てきた人と初めて観た人とでは感想のテンションが少し変わる気がする。

 

 

 

そんな感じでした

『鬼談百景』(2015-2016) 全10話/『赤い女』が一番よかった👤 - gock221B
『貞子vs伽椰子』(2016)/フレディvsジェイソンのプロットそのままに貞子と伽椰子がプロレス👩🏻👩🏻 - gock221B
『オカルトの森にようこそ THE MOVIE』(2022)/ファンサービスに徹した白石ホラーBESTプレイリストみたいな内容で楽しかったが、あまりに全てが分かり易すぎると少し物足りなくなるのが映画ファンという人種🌳 - gock221B

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