gock221B

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『オカルトの森にようこそ THE MOVIE』(2022)/ファンサービスに徹した白石ホラーBESTプレイリストみたいな内容で楽しかったが、あまりに全てが分かり易すぎると少し物足りなくなるのが映画ファンという人種🌳


監督&脚本&撮影&編集&出演:白石晃士 制作&配給:WOWOWKADOKAWA 製作国:日本 上映時間:123分



まだ観に行ってないけど現在『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』(2023)が絶賛公開中の白石晃士監督が昨年、モキュメンタリーホラー映画を久々に撮ったやつ。白石監督の作品は『貞子vs伽椰子』(2016)以降、メジャーな映画製作に抜擢されて訳のわからん内容の映画を分けのわからんキャストで撮らされるという、映画好きの監督がチャレンジさせられて疲弊していく時期に入っていて、白石監督はめげずに頑張っていたが単純に面白くなさそうなので全く観てなかったが昨年、かつてのファンが好きそうなものを久々に撮ったのがコレ。過去の白石作品を観てたら気になるキャラが色々出てくるし気になってたが、いつまで経っても配信に来ないしデジタルレンタルもまともに出来るところが少ないので「DMM TV」とかいう訳のわからんストリーミングに加入して30日間の無料期間を利用して観た。
本作は過去の白石作品の要素が多い。白石監督はスターシステムのように違う作品の登場人物と同じ俳優や名前のキャラがよく出てくる(時には過去作品と同一人物だったりもする)、今ならMCUを始めとしてマルチバースを扱った作品が多いので「マルチバース」と言えば伝わりやすいので助かる。また白石作品に出てくる異界やクリーチャーなどは全て同じものだと思われる。詳細に説明していくと長くなって面倒なので省略。
同名のWOWOWオリジナルドラマの劇場版。でも最初から映画としても作って殆ど同時に公開してたから、同様にWOWWOWでやって映画版に編集して公開してた黒沢清『予兆 散歩する侵略者 劇場版』(2017)と似たような企画だったんですかね。

ネタバレあり

 

 

 

 

Story
10年くらい前、ホラー映画『オカルティズム』で数多くのファンを作ったが現代ではパッとしない映画監督黒石光司白石晃士)は助監督市川美保(堀田真由)と共にドキュメンタリー映画の撮影のために山奥の家を訪れる。
そこには『オカルティズム』ファンだという山奥で孤独に暮らす変わり者の女性・三好麻里亜筧美和子)がいた。
黒石と市川がここに取材に来たのは、麻里亜が送ってきた「赤い隕石が落ちて霊体ミミズが発生する」という衝撃的な投稿映像がきっかけ。そして彼女が連絡してきたのは自身の不思議な体験は、黒石の映画の内容そのものだったからだと言う。
次の瞬間、信じられない出来事が次々と起こり始める――

そういう感じで一言で言うと、白石監督演じる黒石監督と『コワすぎ!』シリーズの市川と工藤を合体させたようなキャラクター市川は、頭がおかしい麻里亜、行方不明の幼女を探して山に入ったスーパーボランティア江野祥平宇野祥平)や、名無しの超霊能者飯島寛騎)達とチームを組んで異界からの侵略をぶっつぶす映画。それを黒石くんが撮ってるカメラの視点で最後まで見せていく。


麻里亜の家を訪ねてからは超常現象の連続になるわけだが、ちょっとその前に冒頭に話を戻しますが、映画が始まると黒石と市川が仕事してる事務所に頭のおかしい男が訪ねてくる。10年くらい前『オカルティズム』を観て感動したという彼は13年かけて『オカルティズム』の上映時間14時間にも及ぶ脚本を書き上げてきたという。
男は刃物を振り回したりし始めて危険なので追い返すが映像では男の口から霊体ミミズが出ていたり部屋の隅に黒いモヤがあったりした……というのは『コワすぎ!』でいうと前半で怪異を捜査してる本編の前フリみたいなパートで、僅かに関係はあるが本当なら麻莉亜の家に向かう途中で彼女から送られてきたビデオを見て、いきなり麻莉亜の家を尋ねるところから始まった方が早いのだが、ワンクッション置いて変な男の訪問から始まる地味な場面から始まるところが良かった。「黒石くんって事は白石くんが出てくる『コワすぎ!』や『オカルト』とは違うマルチバースか」とか「このマルチバースでの市川はこの市川なんだな」等と色々考える時間が生まれるので、この割と地味なところから始まる冒頭は良かったのかも。
また、この世界の黒石くんはいつもの『コワすぎ!』田代や白石くん等とほぼ同じキャラ。で、本作の市川は『コワすぎ!』の市川よりも口が悪いし強硬的な手段にも打って出るので「この市川は『コワすぎ!』市川をベースに、工藤の要素も入ってるな」と思った。黒石くんが「い、市川、取材対象にそんな口効いちゃだめだよ……」等とツッコんでくれるので「確かに工藤+市川+田代は二人組でも成立するかもね」と思った。また本作では黒石くんにもドラマがあってほぼ主人公だったので「こうなると本作には確かに工藤いらんな」と思った。
最近アマプラに来たので10年ぶりに『コワすぎ!』シリーズを観ていて、世間で人気なのは核心に迫る深夜アニメっぽい派手な展開なのだが久々に観ると「この捜査してる前半いいなぁ」と思ってたのもある。市川が「口裂け女……口裂け女とは……」とか説明してるパートとか、のんびりしつつワクワさせてくれて良い。
麻里亜を訪ねて以降はジェットコースターっぽく超常現象の連続になるので、最後まで観終わって思い返すと不思議と、むしろ序盤の地味な狂人が訪ねてくる部分の方が印象に残ってる。

で、麻里亜の家を黒石&市川が訪ねたところ。麻里亜もまた冒頭の狂った男同様に情緒がおかしい。家には色んな電波系の張り紙がたくさん貼ってある。
麻里亜役の筧美和子さんは可愛いし前から好き。僕はケンコバのファンなのでアンガールズMBSでやってるラジオ『アッパレ!やってまーす水曜日』を昔から聴いてるんだが一時期、筧美和子もレギュラーだったので映画が好きだったりと中身も割と好き。近年は女優もやってて良い感じ。
そんな感じで好きなんだけど、本作の狂った女役は正直イマイチだった。まず「殺すか殺されるか!アンタらどっち!ねえどっち!?」などとキメ台詞言ったり、ラストにふざけてる場面はスターの輝きで良いんだけど、狂人役は全然狂ってるように見えない。普段の明るいノンビリした雰囲気が漏れすぎてる。ついでに電波系の家も、急ごしらえ感が強くて過去の白石作品に出てくる、まるで本物みたいな狂人たちに比べてしまうと「この家と筧美和子の狂人演技はイマイチだなぁ」と思った。
で、麻里亜の家で取材してたら霊体ミミズ霊体クラゲが発生。ここで行方不明の幼女を探して山に入って黒石&市川を心配して来てくれたスーパーボランティア江野祥平宇野祥平)が猟銃で霊体ミミズと霊体クラゲをシュート。4人は家を飛び出す。
この宇野祥平もまた複数の白石作品に出てくる重要人物を演じがち。異界の悪を滅する超人だったり純粋な極悪人だったり様々だが、たとえ極悪人だろうと中身は「純粋な性格」してるキャラを演じることが多い。大抵は「江野」というキャラクターで出てくる。
で、本作の「江野」は完全にヒーロー。元々、無償でボランティアしてるし(このキャラも数年前に山で遭難した少女を助けたボランティアのじいさんがモデルだろう)、会ったばかりの黒石くんや市川を命懸けで助けてくれるし叱咤激励までして成長させてくれる。霊体ミミズや霊体クラゲなどのバケモノに対しても山の知識や猛獣用の武器である程度対抗できる。
麻里亜は知らない男と遠くに行くのを極端に怖がってるので、性被害に遭った事がある過去を思わせる。4人はバスに乗り込むがバスの運転手が正に子供の時の麻里亜に乱暴した男だった。
後半で、赤い彗星に魅入られた狂人たちが集まるカルト教団が舞台になるが、霊体ミミズに取り憑かれてカルト教団に集まった女性たちも「過去に性被害に遭った事がある」という設定があって気になった。物語とは直接関係ないが、この「過去に性被害に遭った女性は取り憑かれやすい」という設定に妙に力が入ってて、あまり発展してはいかないが、この要素が出てきた時だけ本作にジメッとした妙な雰囲気が立ち込める。まだ観てないけど今公開中の『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』(2023)では、この要素が更に重要になってるらしいし白石監督が描きたい要素なんだろうと思った。
そう言われたらグラマーな筧美和子演じる麻里亜が、身体のラインが出ないワンピース着てたり、山奥の一軒家で引きこもってる事などが「対人にトラウマあるのね」と、色々察せられた。
逃避行してる間に黒石くんは麻里亜に惚れてしまったようで聖人の江野に「恋も映画もがんばれ!応援するで!」などと励ましてもらっていた。
バスでは、白石映画によく出てくる「如何にも霊能者って感じの霊能者」が出てくる。今回は広島蒼天(演:中野英雄)という素晴らしい名前しかも演じてるのが中野英雄で本当に良かった。残念ながらこの「如何にも霊能者って感じの霊能者」は白石作品では割とすぐ死んでしまう。僕は、後に出てくる「超人イケメン霊能者」よりもこの「如何にも霊能者って感じの霊能者」キャラの方が好きだ。
この「超人イケメン霊能者」もまた白石作品によく出てきがちな人気キャラで、最初は『カルト』(2013)のNEO様や『貞子vs伽椰子』(2016)の経蔵などがそうだ(今やってる『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』(2023)ではギャルのスーパー霊能者が出てくるらしいからそのギャルもこの超人イケメン霊能者の亜流かな?)。ニチアサ特撮の主演みたいなスマートなイケメンがホストみたいな格好でふらふらしながらスーパー霊能力でバケモノを祓ってしまう無敵キャラだ。学生時代の五条悟みたいなもんなので男女だれが見てもズルいカッコよさだ。
『カルト』(2013)のNEO様は、地味な心霊ドキュメンタリー風映画に、いきなりホストみたいなルックスと名前のイケメンが出てきてバケモノを「破ァ!」と祓うという少年漫画的な展開を最初にやったってところが最高だったが、『貞子vs伽椰子』(2016)の経蔵は正直邪魔だった。というか超人イケメン霊能者も、さすがに貞子や伽椰子には全く勝てないので前述のやられ役である「如何にも霊能者って感じの霊能者」ポジションに堕ちてしまっていたが。
本作の「超人イケメン霊能者」が今までと違うのは割と前半に出てくるので、たくさんバケモノと戦ったり市川が惚れたりと人間ドラマもほんのちょっとだけあるってところ。
幼い頃に麻里亜に乱暴したバスの運転手が戦いに巻き込まれて死んだのはよかったが、中野英雄演じる広島蒼天も全く知らん間に死んだのは残念だった……。この超人じゃない方の霊能力者も今度はもう少し活躍させてほしい。
で、事件の発端となった隕石はカルト教団が持ち帰り、隕石をポータルとして異界の邪悪な存在を召喚しようとしているらしい。
5人はカルトのフリをしてカルト教団に入り込む……。

 

 

で、後半は省略するが、異界から邪神が顕現しないように皆で頑張って戦う感じ。
この時、黒石監督は「最高傑作を撮るため」に、カメラの下に銃剣のように包丁をくっつける。これで「撮ること」と「殺すこと」がイコールで結ばれるという何とも映画的かつ芸術的なギミックが生まれて「おお!」と、このアイデア自体には妙な感動があったし江野くんも「黒石くん、何やカッコいいやんけ!」と褒めてくれるが(江野くんは本編中、常に仲間を鼓舞したり称賛し続けている)が、この「カメラ包丁」による「POV的な殺人」は一回だけであまり期待してた映画的殺人シーンは少なかった。包丁でブスッと刺してしまうと画面が敵に接近しすぎて画面が真っ暗になってしまうせいかも。マジのドキュメンタリーで本当に人殺す際にやったら衝撃だろうけどね(あくまで是非は置いといた話です)。
白石作品にしては割と最初から最後まで少年漫画みたいな分かりやすさで結末もほぼハッピーエンドと言っていいだろう(実はラスト数秒で地球滅亡してしまうっぽい終わりなんだけど映画のラストと同時に世界滅亡エンドは様式美みたいなもんだし「主人公たちの活躍で望み通りの結果になる」のが直前だと、僕はたとえ滅亡エンドだろうがハッピーエンドだと思ってる)。
そういう感じで、メジャー映画によく雇われる前の『コワすぎ!』シリーズやホラーをよく撮ってた頃の白石作品を思わせるキャラクターや展開が多く、全体的にファンが喜ぶような作品だった。だけど同時に、全体的に凄く薄くて軽い感じもする。バンドのベストアルバムではなく、Spotifyで作成された「ベストヒッツ☆2022年」みたいなヒット曲をとりあえずリストに雑に入れた感じ。
キャラクターや展開は『コワすぎ!』シリーズの途中から、入れて新しい若いファンに好評だった「心霊ドキュメンタリーなのに、深夜アニメみたいな展開や台詞をやる」というノリで作られてる。台詞も「わたし被害者!あんた加害者!」などと一発でバカでもわかる分かり易すぎる説明台詞が多い。
基本的には最後まで楽しかったし愛せるキャラばかりだったのだが、映画好きって人種は傲慢なもんで、ここまで最初から最後まで分かり易すぎると物足りなくなってくる。もう少し「そういえば、あの場面なんだったんだ?」と後で考えたりするお土産が欲しくなってくる(強いて言うなら妙に湿度を感じた「過去に性被害に遭った女性は取り憑かれやすい」要素くらいか)。
本作は「黒石監督がずっと傑作となる予定の映像を撮ってる」って設定なんだけど、本作は傑作……とまではいかないな。とても楽しくはあったけど。
配信サービスにポンと置いてあると白石作品を知らない若にもウケそうだが、見放題で置いてる配信サービスが、俺がいま入った「DMM TV」とかいう誰も入らんサービスにしか無いのが残念だ。せっかく分かりやすくて楽しい映画なのに今は白石作品が観たい映画ファンが必死に探さないと観れないという状況だ。そんな人種はめちゃくちゃ少ないので、つまり本作は「誰も観ない映画」と言っても過言ではない。そのうちアマプラやネトフリでタダで観れたらいいが……。

本作は白石監督による久しぶりのドキュメンタリー風ホラー映画だったわけだが、劇中の「昔は面白いホラーを撮ってたけど、ここ10年くらいパッとしない」という主人公の黒石くんは正に白石監督が己を自嘲したかのような設定だ。
あと「黒石くんが麻里亜を好き」というのは只の劇中の設定なんだけど、観てたら段々と「白石監督、筧美和子を好きなのかも」と思えてくるのが可笑しかった。
ホラー映画で冒険したし、黒石くんと麻里亜がくっついても別に文句はないのだが、麻里亜に「黒石くんを一人の男として?あはは!ないない」と言わせて黒石くんが「あはは……ですよねぇ~」と、わざわざ自分のキャラをフラせていた。ここを観て逆に「白石監督、筧美和子がタイプなのかも」と更に思わせられた。
白石監督が「情緒不安定なキャラとはいえ筧美和子が、僕が演じるヒゲ大柄アラフィフを好きになる……いや、ないない。図々しいからフラれて終わっとこう!」と、考えて脚本をそうしたであろう誠実さが僕にそう思わせたのかもしれない。わかるか?

 

 

 

 

そんな感じでした
白石晃士監督作〉
『鬼談百景』(2015-2016) 全10話/『赤い女』が一番よかった👻 - gock221B
『貞子vs伽椰子』(2016)/フレディvsジェイソンのプロットそのままに貞子と伽椰子がプロレス👩🏻👩🏻 - gock221B
『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』(2023)/シリーズの集大成で既視感ある描写やキャラの数々。そして男の有害性に対峙する工藤に不思議な感動があり、このシリーズはもうこれで終わりでいいかも🏏 - gock221B

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