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『フォールガイ』(2024)/『ワンハリ』や『デスプルーフ』をもっと前向きに気取らず作った感じのスタントマン愛あふれる高橋留美子の漫画っぽい可愛い映画💥


原題:The Fall Guy 監督&制作:デヴィッド・リーチ 制作会社:87ノース・プロダクションズほか 主演&制作:ライアン・ゴズリング 脚本&製作総指揮:ドリュー・ピアース 原作&製作総指揮:グレン・A・ラーソンの制作ドラマ『俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ』(1981-1986) 製作国:アメリカ 上映時間:127分 公開日:2024/3/1(日本は2024/08/16)

 

 

スタントマンのコルト・シーバースが、スタントの腕を活かして賞金稼ぎとしても活躍するドラマ『俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ』(1981-1986)のリブート&映画化。

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といっても古すぎてそんなドラマ今初めて聞いた。(本作の主人公2人がやたら水着がどうこう言ってたのは、このOPで昔のジョディがビキニ着てるからかな)

アクション俳優やスタントマン出身で現在はアクション映画監督のデヴィッド・リーチ監督作なのでスタントマン愛に溢れる映画だということは観る前からわかる本作。
この監督の映画は『ジョン・ウィック』(2014)『アトミック・ブロンド』(2017)『デッドプール2』(2018)『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019)『ブレット・トレイン』(2022)……と、このブログを始めた頃に『ジョン・ウィック』(2014)でブレイクしたせいか結構感想書いてる。どれもひとしきり面白いがあと半歩だけ何かが足りないという印象の監督だった。……が本作はその半歩を突破して心に響いた一番良かった映画だった。

ネタバレあり。
割とほぼ全部ネタバレしますが、まぁ映画好きな人なら始まった瞬間に最後までわかると思うのでそういう人にはネタバレとも言えないが、そうでない人にはネタバレなので注意でございまする。

 

 

 

 

腕利きスタントマンコルト・シーバース(演:ライアン・ゴズリング)は、映画スタートム・ライダー(演:アーロン・テイラー=ジョンソン)の代役として活躍し、映画監督志望の映画スタッフ、ジョディ・モレノ(演:エミリー・ブラント)と付き合っており幸せな日々を送っていたが、ある日スタントで大怪我をして一線を退く。
1年半後、コルトは傷が癒えても駐車場係で食いつなぎながら失意の日々を送っていたが、大物映画プロデューサーゲイル・メイヤー(演:ハンナ・ワディンガム)からスタント復帰の依頼を持ちかけられる。
一度は断ったコルトだがジョディが映画監督として撮影中のSF大作だと聞き、すぐに撮影現場シドニーに駆けつけた。しかしゲイルの依頼はスタントだけでなく「失踪した主演トムの捜索」も含まれていた――

そんな話。
ぼんやりと「スタントマンが事件に巻き込まれて本当の事件に立ち向かう」と聞いてたが、割と結構な長い時間スタントマンとして撮影現場で物語を繰り広げるので「あれ?ひょっとして映画撮影の映画かな?どちらでもいいけど」と途中まで思ってた。

コルトは監督となった恋人ジョディの前からも黙って姿を消していた。
だから復帰してもジョディとの間がかなり長い間ギクシャクしている。ジョディは出演者やスタッフ一同の前でスピーカーで撮影の指示をする。しかしやがて台本を読んでいないコルトに向けてストーリーの説明をする。「SF恋愛ストーリー」である映画『メタル・ストーム』の内容……カーボーイの男と宇宙のプリンセスの恋愛模様を説明しながら、やがて「コルトが去って自分がどれだけ寂しかったか」としか聞こえない話になっていく。コルトを何度も爆発で吹っ飛ばしては遠回しな愚痴を繰り返す。スタッフと出演者は全員「ジョディ監督とコルトの恋愛のこじれ」を知っているので、男性スタッフは自分が責められてるかのように気まずいムードになり女性たちは「わかるわかる!」「もっと言ったれ!」と笑顔になる。あれ?楽し……。

ジョディは全体的にプリプリしておりコルトをまだ許していないのだが、互いに大好きなのが隠しきれず、コルトはジョディとの仲をダメにしてしまった事を悔いてテイラー・スウィフトを聴いてさめざめと泣くし、ジョディもコルトを許さないと言いつつ彼のことが気になって仕方ない……という様子が全編繰り返される。
アクションよりラブコメ要素が多い。こういう映画だったのね。
ジョディがアメリカ映画に出てくる中年の女性にしては異様に乙女チックな……少女漫画のヒロインみたいにヤキモチを焼いたりコルトを熱い視線で見つめたりする。本編がアクションを交えたコメディだし、コルトとジョディだけでなく周囲の仲間も皆、漫画のサブキャラっぽい態度を取るので、ものすごく高橋留美子の漫画みたいに見えてくる!(ということは「劇団☆新感線っぽい」も当てはまる)。
ジョディは勿論、コルトも、コルトの親友ダン・タッカー(演:ウィンストン・デューク……MCU『ブラックパンサー』シリーズのエムバク役の人)や映画スタッフもみんな、物凄く可愛い。可愛い映画だ。本作は全編こういった可愛いくて楽しいムードで進む。
リアリティラインは低くて同じ監督でたとえると『アトミック・ブロンド』(2017) ではなく『デッドプール2』(2018)『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019)『ブレット・トレイン』(2022)とかに近い漫画っぽい描写や展開。

 

 

コルトは、ジョディとギクシャクしながらスタントの仕事をしつつ、大物映画プロデューサーゲイル・メイヤー(演:ハンナ・ワディンガム)から「主演のトム・ライダー(演:アーロン・テイラー=ジョンソン)が見つからない。彼のマンションに行き連れてきてほしい。問題になったらいけないから誰にも秘密で」と頼まれる。
自分が代役を務めていたトムのマンションに忍び込んだコルト。そこに居たトムの恋人から貰ったヒントでクラブに行ったコルト。

そこで飲まされた酒にドラッグが入っており、コルトの視界が楽しくなりユニコーンが常に近くに現れるようになる。コルトはきまったまま襲いかかってきた売人の手下をやっつけ、逃げた売人を得意のスタントで追い詰める(ここのアクションは凄くカッコよかった)。
コルトは売人に貰ったヒントで、トムがいるかもしれないホテルの一室を訪れる。
ここでジョディから電話があり画面はスプリット・スクリーン(二分割)になる。
ここでジョディはコルトに映画『メタル・ストーム』について話す。しかし2人は撮影中の『メタル・ストーム』について話しつつも互いのことだけ考えているのは一目瞭然だ。そうして映画について話しながら遠く離れた場所にいるはずの2人の動作は同期している。2人は相性ぴったりなのだ。
……というかデヴィッド・リーチの映画で、アクションだけでなくこんな風にメインキャラの心理状態とシンクロさせるとは……デヴィッド・リーチの映画じゃないみたい。いや『デッドプール2』(2018) とか『アトミック・ブロンド』(2017)も少しはあったか?でも今回ほど上手くやってるのは初めて……な気がする。
コルトはバスルームのバスタブで氷水に浸かっている男性の死体を発見する。
コイルは、騒ぎを大きくせず映画撮影を続けたいゲイルの反対を押し切り警察を呼ぶが死体は忽然と消えていた。ユニコーンが見えるドラッグの幻覚だったのか?
コルトは撮影現場に戻る。
コルトとジョディは撮影を通じて徐々に元通り仲良くなっていく。少なくとも「親友」くらいの仲の良さには戻った。
この前半?中盤くらい?までのコルトが「昼はジョディと撮影」「夜は捜査(捜査したり戦ってる間にジョディから電話かかってきて結局1日中ジョディと接してる)」というパートはかなり楽しかった。特に夜の探偵パートが、昔のハードボイルドをコメディっぽくしたかのようで凄く良い。
ジョディの”カルォクィェ”(カラオケ)シーンも良い。
ライアン・ゴズリングは元々凄い演技できるし雰囲気あるイケメンとして有名だったが、近年のこの軽妙な三枚目イケメン度が凄いなと思った。
レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』(1953)……ではなく、それを巨匠の故・ロバート・アルトマンがタフガイ探偵フィリップ・マーロウを、とぼけた三枚目の探偵にしてエリオット・グールドに演じさせて映画化した『ロング・グッドバイ』(1973)の方ね(アルトマンの『ロング・グッドバイ』(1973)はオールタイム好きな映画ベスト10で『アルファヴィル』(1965)と共にベスト5位から9位までに20年以上位置していて3、4位の映画とかが時と共に消えたりしてる中で『ロング・グッドバイ』(1973)と『アルファヴィル』(1965)はずっと居るのでこのまま死ぬまでどかない気がする)
このライアン・ゴズリングならロバート・アルトマン版『ロング・グッドバイ』(1973)のリメイクも余裕で出来そうだと思った。

 

 

そんで真犯人はコルトが代わりにスタントをしていた、コルトの「映画上の顔」とも言える映画スター・トム(演:アーロン・テイラー=ジョンソン)だった。彼は自分にできないスタントをして意気揚々としてるコルトに嫉妬して故意に事故を起こしてコルトを殺そうとした(結局、重症で済んだ)。コルトが紹介した公認のスタントマンにもパーティで煽られたので乱闘になり勢いで殺してしまった、それがコルトがホテルで見た死体。トムに泣きつかれた映画Pのゲイルは、トムを守るためにコルトを呼び寄せて真犯人に仕立てようとした、ジョディが監督になれたのもコルトを呼び寄せるための餌だ。
面白おかしい感じの作風なのでサラッと見れてるが、立場が上の大物同士ゲイル&トムが、自分が嫉妬でした殺人を、自分が嫉妬で殺人未遂で殺そうとしたら生きてた立場が下のコルトにおっかぶせる、そして更に立場が下のジョディを利用……という物凄いドス黒い邪悪だったので後半、観ていてたまにぞわっと総毛立った。
コルトは、トム&配下の悪スタントマンに殺されかけるが、何とか死を偽装してジョディの元に辿り着き「コルト&ジョディ監督&親友ダンと善のスタントマン軍団&映画スタッフ」という立場が下の現場スタッフが結託して、トム&ゲイルを危険な撮影現場に放り込み自白させてボコって退治しコルトはついでにジョディに心の内を告白して復縁、映画は代役を立てて完成、ハッピーエンド……「人生にハッピーエンドなんてあり得ない」が口癖だったコルトとジョディは初めてのハッピーエンドを迎える。

という感じで非常に明るく楽しく前向きな、長年日陰に追いやられていたスタントマンへの讃歌だった。
コルトは「スタントマンのアカデミー賞はない」とぼやいていたが、ようやく検討され始めたらしいし。

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クエンティン・タランティーノが、『デス・プルーフ』(2007)や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)でスタントマン讃歌してたが、今思えばどちらもひねくれ過ぎてたよね(と言いつつ『デス・プルーフ』(2007)は観たあと10年間くらい全ての中で一番好き映画だったが)。タランティーノのそれら捻ったスタントマン讃歌に比べると非常に明るくて前向きだった感じ。
ED曲もモロにスタントマン讃歌だったので今調べたら原作ドラマ『俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ』(1981-1986)の主題歌だったみたい。

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そーいう感じで、今までの「面白いだけ」「カッコいいだけ」ではなく、エモいテーマが本編の楽しい描写と全編常に結びついていて今までのデヴィッド・リーチ映画を一段飛び越えた快作だった。奇しくもタランティーノが『デス・プルーフ』(2007)で、それまでの面白くて映画オタク映画ってだけだった領域より上に行ったのと似てるね。
『ブレット・トレイン』(2022)に引き続き出演して嫌な悪役を演じたアーロン・テイラー=ジョンソンだが今回もカッコよかった。新ジェームズ・ボンド役の候補筆頭に名前が挙がってるが僕も彼にきまってほしいね。

 

 

 


そんな感じでした

デヴィッド・リーチ監督作〉
『ジョン・ウィック』(2014)/現実的な銃撃戦と幻想的で不思議な漫画っぽい世界の融合🧔🏻🐶 - gock221B
『アトミック・ブロンド』(2017)/誰も信じるなって事と、自分が触れることのできる現実感が大事👱🏻‍♀️ - gock221B
『デッドプール2』(2018)/面白かったし、メタなギャグはギャグのためのギャグではなく本編を円滑に進めるための整地なのが良かった❌ - gock221B
『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019)/本編シリーズよりこっちを応援する気満々だったが思いのほか大味だった👨🏼‍🦲👩🏻‍🦲 - gock221B
『ブレット・トレイン』(2022)/映画自体は面白かったし真田広之は活躍したけどホワイトウォッシュをごまかすための日本要素に複雑な気持ちになった🚝 - gock221B

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The Fall Guy (2024) - IMDb
The Fall Guy (2024) | Rotten Tomatoes
フォールガイ - 映画情報・レビュー・評価・あらすじ | Filmarks映画

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