原題:The Bling Ring 原作:ナンシー・ジョー・セイルズ 制作会社:A24
監督&脚本&制作:ソフィア・コッポラ 製作:ロマン・コッポラ
製作国:アメリカ/フランス/イギリス/日本/ドイツ 上映時間:90分
「裕福な少年少女達がセレブの豪邸に次々と忍び込んで窃盗しまくってたら、すぐ捕まった」というアメリカで実際に起きた事件を本にしたものを原作にした映画。
アクセサリーや装飾品の輝きなどを表す擬音が映画タイトルになってるんだが、それならタイトルは「ブリンブリン」にした方が良かった気がする。日本のヒップホップの人らもよく言ってるだろ。。
ソフィア・コッポラの映画は、彼女の私小説的な内容‥「裕福だが微妙に孤独を感じている白人少女が周囲の人物を見てため息をつく」みたいな内容の映画が多く、日本の中年男性の自分としては全く共感しないし興味も持てないのだが、映像が綺麗だし話も最後まで観れるくらいは面白いので嫌いになれないものがある。また兄のローマン・コッポラや仲間の監督同様、生まれた時から金持ちじゃなかった時がない彼女たちの映画は、金持ちセレブ描写が異常にリアルで「ほ、本物の金持ちが撮った映画だ‥」という凄みがある。そして最初の二作目くらいまでは日本でも「ガーリーでおしゃれムービー()」として大々的に売り出してて恥ずかしかったが、近年は全然宣伝されなくなったので恥ずかしさが減った。そしてコンスタントに映画を次々と撮ってる様子が「この人、映画ガチで好きっぽいなぁ‥」と思わされて好感度が上がってる今日この頃。
本作はエマ・ワトソンが観たくなって検索したらネトフリにあったので観た。
Story
転校してきたばかりの少年マークは、ファッション好きの少女レベッカと意気投合して親友になる。
ある日、パリス・ヒルトンがラスヴェガスに出かけた事を知ったマークとレベッカは、ネットで調べたパリスの豪邸への侵入を試みる。
セレブに憧れる金持ちの少女ニッキー(エマ・ワトソン)やサム(タイッサ・ファーミガ)その他の少女達も加わり、彼らはネットでセレブの動向をチェックしては留守宅に侵入し、高価な品々を易々と盗み出す窃盗団「ブリングリング」となった――
ネームバリュー的にエマ・ワトソンが主人公なのかと思ってたが、彼女は割とどうでもいいキャラで、むしろ友だちを欲しがってる少年マークが主人公だった。
ファッション好きだが友達がいないマークは、レベッカという少女と意気投合して友達になる。そしてレベッカの誘いを断りきれないマークは、彼女と共にパリス・ヒルトンの家に侵入する。
セレブがどこに旅行に行っているかやセレブの住所は全てネットに載ってるし、どのセレブの家も異常にガードが緩いので安々と忍びこめていたようだ(セレブがアホだったからか、泥棒があまり入らなかった時期だったのか、もしくはその両方なのかよくわからん)
やがてエマ・ワトソンや数人の少女たちもブリングリング団に加わり、リンジーローハンやミランダ・カーなどの色んなお洒落セレブの豪邸に忍び込んでは高価な服やアクセサリー、現金などを盗む。
パリス・ヒルトンの家に至っては8回も忍び込んでいて可笑しい。ここまで来るとパリス本人より帰宅してるかのようだし、まるで「パリス本人の股もゆるいが家もゆるいわ!」と嘲笑っているかのようだ。「パリスの家のクローゼットにはハメ撮り写真がある」というネタもあった。ソフィア・コッポラは劇中で特定の人物や気に要らない同性を揶揄することがよくあるがこれもその一環なのだろうか?まぁパリス・ヒルトンの家には確実にハメ撮り写真くらいあるだろうが‥。
そしてソフィア映画の過去作で何度も主役を務めたキルステン・ダンストも本人役で出てたが、パーティで彼女を見かけた主人公たちに「キルステン・ダンストだ!クール‥」と言わせる露骨な身内アゲ、まさにソフィア・コッポラ映画を観てると思わされた。
マーク少年は、盗みがしたいというよりもレベッカとの友情のために盗みに協力しているように描かれる。マークは、盗み中に仲間(マーク以外の全員)が調子に乗って騒いだり銃を盗んだりペットを盗もうとする仲間に「もうやめようよ」「ペット盗むのはダメだ!」と注意するし、捕まった後にSNSで人気が出ても「慈善活動とかの良い事で褒められるなら嬉しいけど泥棒してフォロワーが増えても嬉しくないよ‥」と語る、有罪判決が出て他の少女たちは一切反省していないがマークだけは反省していた。マークだけは善良な精神を心の奥底に持っていたようだ。‥だが、自分もセレブの物をたっぷり盗んでるし盗品を換金して羽振りもよくなってるし、SNSでフォロワーが増えたりファンページが作られたのでヤレヤレ‥的態度を取ってはいるが犯罪の甘みもちゃっかり甘受している。しかも反省したような顔してるが「まぁ世間の人は僕たちみたいなのが好きなんだろうね‥義賊が‥」などとコソ泥の自分の事を義賊などとカッコいい言い方してる辺り本当にはわかってない事を露呈させる。
主人公かと思ってたエマ・ワトソンは、只の甘やかされたアホ少女役だった。
取り柄と言えば可愛いことだけで、‥だが↑この画像のクラブで踊りながら舌を出すシーンは、あまりにも可愛すぎて「空虚な映画だが彼女のこの顔だけで値段分あるかもしれん」と思った。
彼女はとりあえずモデルになって有名になることしか考えておらず、セレブの豪邸に不法侵入して窃盗しても一切悪びれておらず、逮捕されても「私ってモデルになる前に有名になっちゃう娘なのよね」としか思っておらず、逮捕から裁判までの間にインタビューされた時も「今後はこの私がホームレスの炊き出しとかして、恵まれない奴らに施しするつもり!」などと将来のために自分を売り込む。呆れるインタビュアー。そしてこれで世の中渡っていけてると思ってる彼女とママの浅はかさ。。悪いことしたと一切思ってないので懲役が決まると号泣するし、釈放された後は有名になるためTV出演して「本当にキツかったわ‥。毎朝早くに起こされるのは‥」と語る。刑務所では彼女が不法侵入&窃盗したリンジー・ローハンも居たが「彼女はピーピーうるさかった」と言っており心無さが振り切れておりある種気持ちよくなっても来る。
エマ・ワトソンのことは、レスリー・マン演じる母親が甘やかしまくっていて、まずエマ・ワトソンは学校に通っておらず、この母親が家庭学習で教えている。その授業内容もアンジェリーナ・ジョリーの写真を持って「彼女のクールなところを言ってみて!」というアホ丸出しなものだし、娘のエマ・ワトソンが窃盗で捕まっても「ママが何とかしてあげる!」としか言わない。ママもまた、娘がセレブになる事しか考えていない。つまりこのエマ・ワトソンのキャラが成長した姿がレスリー・マン演じるママ。他の悪びれてない仲間たちも同様。ブリングリング団をフォローしたりファンページ作ったりするアメリカのアホの少年少女たちも同様‥。まとめるとアメリカ全員アホ‥という映画だったんだろう。
このエマ・ワトソンのアホの生意気キャラは、凄いハマっていたし「実際の彼女は賢いくせに頑張ってクソ女の役しちゃって‥」というメタ的な可愛さもあった。
エマ・ワトソンは、ルックスもキャラも将来性も全て優等生過ぎて「こんなに完璧ならわざわざ応援したり観なくても良くね?」という気持ちが生まれてきてしまうので、今後は5作中3作くらいの割合で見かけだけ良いクソビッチ役した方がいいかもしれないと思いました。
ちなみに他の3、4人の少女もこのエマ・ワトソンと殆ど似たような、セレブになりたくて心無い少女なので割愛する(ちなみにマークが親友になれたと思っていた少女は、自分が逃れるためにマークを速攻で警察に売る)
💎そんな感じで今までのソフィア・コッポラ映画同様、美しい映像&薄い内容という感じだったが、にも関わらず本作もまた「薄いと思いつつ何故か最後まで観れるわ~」という映画だった。実話や登場人物やストーリーが持つ殆どSFかってくらいの空虚さが上手く表現できてたように思った。
エマ・ワトソンに限らず窃盗団ブリングリング達は、パリス・ヒルトンやリンジー・ローハンやミランダ・カーなどのアホセレブの生活に憧れているがセレブたち本人には憧れていない(特に尊敬できるところもないし‥)だけど自分たちもそのセレブになろうとしてるし確実に少女たちもセレブ達同様にアホ。だけどアホゆえに自分たちがアホだと気付いておらず、またセレブと自分たちの事を「彼女たち」「私たち」と分けて呼称しているのが興味深かった。
「少女たちが望み通りセレブになれた暁には『私たち』の意味が、言い方そのままに一般人からセレブに変わるんだろうな」と思うと何とも言えないアホさが香るし、この少女たちだけでなく我々、大勢の人間たちがそんな風に「自分達」と「奴ら」と分けて考えるのを止めない限り、差別とかイジメは永久に無くならないだろうな、という絶望の香りもした。
💎「加害者意識を最後まで持たないアホの少年少女たちが、ネットでセレブを知って調べて窃盗して、その品をSNSで自慢して捕まってもSNSで人気になって‥」という、ストーリーそのものが何というかもう‥あらすじ聞いただけで本編見なくても作品の言いたいことが全部分かるような感じなので今更本作を観て「SNSが蔓延る現代社会に生きる若者のリアルを切り取って‥」‥などと語ることを想像しただけで顔真っ赤になるし、仕事で本作のことを語らなきゃいけなくなった評論家の人とかはかなり苦労したのではないか?などと余計なことも考えた。
💎現実のブリングリング団の写真も検索したが実際に美男美女たちだった。
エマ・ワトソンが演じた少女の本物は(どういう娘か知らんがどうせアホに決まってる)本作が公開された時に「私の役をエマ・ワトソンが演じた!ハーマイオニーが!」とか死ぬまでめっちゃ自慢してそうだな。
💎それとここ数年は「色んな人種を活躍させよう」っていう近年のアメリカ映画の風潮が激しいせいか映画に白人しか出てこない時に何か妙な感じがするものだが(そういう意味では去年のツインピークス新シリーズも登場人物の98%くらい白人しか出てこなかったのが異様でもあった)。「裕福ではあるが頭空っぽの白人だけがどうしようもない犯罪を犯す」という内容もまたディストピア感が半端なかった別に「白人俳優しか出てこないなんて許せん!」などと言いたいわけではない。
実話を元にした映画だから仕方ないわけでもあるし。ただ「まだわずか数年前のアメリカ映画なのに白人しか出てないと異様な雰囲気だな」と感じるようになってしまったという事が言いたいだけ。
決して傑作じゃないし面白いのかどうかもよくわからない映画ではあったが結構楽しめました。
そんな感じでした
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ブリングリング: こうして僕たちはハリウッドセレブから300万ドルを盗んだ (ハヤカワ文庫 NF 393)
- 作者: ナンシー・ジョー・セールズ,高橋璃子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/10/10
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