gock221B

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「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル (2017)」どうしようもない人間達をアホみたいに描いているが同時に地球を離れて空中にいる時のトーニャへの愛も感じた👱‍♀️

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原題:I, Tonya 監督:クレイグ・ギレスピー
制作&主演:マーゴット・ロビー 
製作国:アメリカ 上映時間:120分

 

 

1990年代前半に活躍して、ライバルのナンシー・ケリガン選手襲撃事件に関わっていたとされるフィギュアスケート選手トーニャ・ハーディングの半生を描いた実話ベースの映画。
連日報道されてた事件だったが、その当時忙しくて‥というか20代の10年間全くTV観てなかったので彼女への知識も思い入れもなし。ついでにフィギュアスケートへの興味もゼロで全く観たことがない。ただ制作&主演のマーゴット・ロビーと実話ベースの映画が好きなだけ。実話だし完全にネタバレありスタイル

 

 

Story
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貧しい白人家庭に育った少女トーニャ・ハーディング(子役:マッケナ・グレイス)。
母親ラヴォナアリソン・ジャネイ)は娘のスケートの才能に気づき、彼女を一流のフィギュアスケート選手にして貧困から脱出しようと本格的にスケートを習わせるが、娘に愛情を示すことはなくトーニャはDVが日常の少女時代を過ごす。
やがて15歳になったトーニャマーゴット・ロビー)はジェフ・ギルーリーセバスチャン・スタン)と出会い、恋に落ちるが――

 

 

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マーゴット・ロビーは痩せてるが下半身が妙にムチムチしてるのでスケート選手役は合ってた感じ。
事件に関わったトーニャ周辺の、彼女ら彼らが語る証言を元にフィクション化している。
だから〈現在のトーニャ〉が「夫はすぐ殴ってきた」と語ると劇中のトーニャが夫に殴られてカメラ目線をするが、すぐさま〈現在の夫〉が「いや、むしろ彼女の方が暴力的だった」と語れば、劇中の〈当時のトーニャ〉が夫を殴り返したり銃をぶっ放したり‥と、そんな感じで進む。
つまり「羅生門」みたいに「真実は藪の中でどれが真実が定まっていない。だから彼らの複数あって、それぞれ違う証言を元に忠実に映像化する」という感じで展開する。
登場人物全員ホワイトトラッシュ(貧乏白人)なので、真剣に描くと観てられない痛々しい映画になった気がするが、彼ら全員アホの証言を元にコメディ形式に撮ってるので劇中で悲惨な事が起きていても全体的に可笑しいムードが漂う。そして複数の真実を描いてるように見えるが、その実ひとつの線にしか信憑性はなく結果的に「アホ達が全員適当な証言してたんだな」感が高まるストーリーとなっている。
幼女時代は「GIFTED/ギフテッド」で天才の娘役をしてた天才子役の彼女が、本作でもスケートの天才幼女を演じている。オシッコしたくても母にトイレ行くのを許されず小便たれ流しながらレッスンを続ける幼トーニャ。
やがて高校生くらいの時にMCUのバッキー役でお馴染みのセバスチャン・スタンと付き合い始め、マイルドヤンキーらしく速攻で結婚する。で、勿論すぐにDVし合って別れたり寄りを戻す‥などの繰り返し‥という底辺定番の流れ。どうせしょうもない原因だったに違いない喧嘩の原因など一切描かず、まるで意味なく殴り合ってるかのように描いてるから二人ともモノホンのアホに見えて可笑しい。
「あなた達の証言どおり描きましたよ‥」という構成を上手く使って完全に馬鹿にしてるとしか思えない雰囲気が可笑しい。その辺はアホのホワイトトラッシュなどを真剣に描いてるかのように見せかけて意地悪く可笑しい感じに描くのが上手いブコウスキーデヴィッド・リンチみたいで面白かった。
「バッキーの人はDVとかしそうにないからミスキャストじゃないか?」と最初は思ってたが、マーゴット・ロビーセバスチャン・スタンという可愛らしい顔の2人が殴り合う様は、子犬がじゃれ合ってるみたいで痛々しくないので「だから可愛い顔のセバスチャン氏をDV夫役にキャスティングしたのかもな」と思った。
また鬼ママ役の人の憎たらしさが凄い。ゴールデングローブ賞 助演女優賞、アカデミー助演女優賞を受賞したらしい。「ヘレディタリー/継承」のトニ・コレットっぽさもある。

 

 

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トーニャはアルベールビルオリンピックで四位に終わり、スケートを辞めて母と同じくウェイトレスをしていたが努力して順調に再びトップ選手に返り咲く。
最高の努力で得た最高の技術で最高の演技をしたはずが、どうにも最高の得点が出ないことに腹を立てて審査員を問い詰めると
審査員「スケートは技術だけじゃないんだよ」
審査員「君からは理想的なアメリカの家庭の温かさが感じられない」と言う。
トーニャは、その半生において「理想的なアメリカの家庭の温かさ」など知らない。
「才能はあるが、トーニャがどんなに努力しても一位の栄光は永遠に掴ませない」と告げられたようなものだ。
トーニャの夫ジェフは、脅迫状が来てビビって欠場したトーニャを見て「そうだ!トーニャのライバルのケリガンに脅迫状出してビビらせ、欠場させる事ができればトーニャの不戦勝になるのでは?」と思いたち、親友のニートのデブに相談。このデブ‥大柄はいい歳をして実家住まいで無職「自分は国のスパイとして暗躍している」などと妄言をいつも吐いている(最後のスタッフロールで「こいつは本当に言ってましたよ」と見せる)。
大柄はろくでもない知り合いに依頼し、ジェフの計画は「脅迫状を出してビビらせるだけ」だったのに、このジェフの親友のニート大柄のろくでもない知り合いの更にろくでもない知り合いは何故か棒でケリガンをブン殴って、ケリガンは次の大会を欠場。大事件となる。
FBIが捜査を始め、関係者は全員バカなのですぐにトーニャまで疑われる。
実際の真実は明らかになってないらしいが、大体上の流れが真実っぽい感じで描かれ、トーニャが指示した感じでは描かれなかった。だが知ってて見過ごした可能性も高い。実のところよくわからない。まぁ知ってた気がするけど‥。
マスコミやアメリカ国民によるトーニャ叩きについて〈現在のトーニャ〉は「大人になってもう一度虐待された気分だった。そう、お前らにな‥」とこちらを睨みつける。すごい迫力。彼女が語りかけてるのは本作を楽しんで観ている我々(広い目で見れば人類そのものの習性について断罪しているようにも見える)。実際、トーニャの上手くいかない人生や彼女周辺のアホな人達をめちゃくちゃ楽しんで観てたからな。当たってる。
そして今まで一度も褒めてくれた事がなかった鬼ママが初めて優しくしてくれた‥と思ったら酷い裏切りだったとか、裁判で二度とスケートできなくされたりして映画は終わる。
ちなみに〈現在の本物ジェフ〉はトーニャに悪いと思ってる感じで〈現在の本物ママ〉は未だに一切悪いと思ってない。
映画のラストは、彼女がトリプルアクセルを成功させた人生最高の瞬間‥〈空中でクルクルと華麗に回る過去の栄光の姿〉と〈スケートできなくなってボクシングの試合に出てブン殴られて惨めに空中をクルクル回ってる姿〉がシンクロする‥という最高のものだった。

 

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ケリガンをトーニャが殴ったのかどうかはハッキリしないが、トーニャが「理想的なアメリカの家庭の温かさ」を知らない事。そしてどうしようもない母と夫、その周りのどうしようもない人間たち、それらが集まってできた澱(おり)のようなものがケリガンを殴りトーニャの成功を阻んだといってもいいだろう。
「トーニャは生まれた瞬間に詰んでいた」という「ヘレディタリー/継承」にも通じるものを愉快に描いた映画だったとも言える。ベテラン女優が怖い顔のオカンを演じるという共通点もあるし。
トーニャは周りのカスどもを切れなかった。だから成功できなかった。だがそもそもカスじゃない人間を知らないトーニャがどうやってカスをカスだと判断できる?
だが、この映画は基本的に登場するどうしようもない人間たちをアホみたいに描いているが(実際アホなので仕方ない)トーニャのことを描く際は、どこか愛情のようなものを込めて描いてるように感じた。
最後の栄光と惨めさの同時スピンというラストも「氷上を舞ってたトーニャが落ちぶれて殴られて宙を舞ってますよ」という意地悪な視点、だけではなく「トーニャも基本どうしようもないが、あの華麗なトリプルアクセルで地球を離れて空中にいたトーニャが輝いていたのも事実」と言いたいようにも感じた。
そしてラストカットはボクシングでブン殴られてリングに倒れた、ろくでもない女トーニャが不敵な笑みを浮かべて立ち上がる瞬間なのだ。だから割と観終わった後はブラックジョーク的な印象よりも爽やかな人間讃歌を聴いた印象が残った。
というか俺、この映画内のトーニャみたいな女、好きかもしれん。

 

 

そんな感じでした

👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️👱‍♀️

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