gock221B

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「デス・ウィッシュ (2018)」ただただ善良な男が善良なまま最初から狂っていた復讐サイコウォーリアー映画💀

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原題:Death Wish 監督:イーライ・ロス 製作国:アメリカ 上映時間:107分
原作:ブライアン・ガーフィールド狼よさらば

 

 

ブライアン・ガーフィールドの小説を元にしてチャールズ・ブロンソンが主演した「狼よさらば (1974)」のリメイク‥と偉そうにペラペラ言ってるが原作もブロンソン版も観てないので当然オリジナルと比べて感想を言うことはできない。
イーライ・ロスはいつも賛否が割れる監督なんだが俺はほぼほぼ好き。‥だが「ノック・ノック」はあまり楽しめなかったかな?(世界で最も良い奴のキアヌがただただ酷い目に遭うだけというのは楽しめない)
今回は有名な話が元ネタだし完全にネタバレあり‥なので、まだ観ておらず自分の目で観たい人は途中で読むのを止めるようにした方がいい。

 

💀

 

ブルース・ウィリス演じる医師カージーが主人公。
カージーの妻はエリザベス・シュー。弟は傑作MARVELドラマ「デアデビル (2015-2018)」のキングピンや「フルメタル・ジャケット (1987)」の、ほほえみデブ役でお馴染みのビンセント・ドノフリオ、この弟は野球選手を目指してたが挫折して貧乏なため兄に金を無心しにちょいちょい来るが凄く良い奴。カージーの娘は初めて見る女優さんがやってたが「この両親からこの顔が産まれてくるか?」って感じの異常にセクシーな顔の女子高生(イーライ好みの南米系セクシー顔だからきっと、自分のオススメ新人なんだろう)
カージー一家は、今アメリカでもかなり治安悪いらしいシカゴに住んでいる。
ある日、カージーが夜勤中に強盗が入ってきて妻は射殺され、娘は意識不明の重体。
で、今まで真面目に暮らしてきたカージーが銃を手に取り‥という復讐もの。
気持ち悪い覆面した強盗がじっくり時間かけてヌラっ‥と現れる様子、脅して金庫を開けさせるが銃にビビった妻がなかなか金庫を開けられずハラハラさせられる様子、強盗の一人が人質の娘を性的な眼で見て それを咎めた仲間と揉める感じ、どれもイーライ・ロスっぽい嫌~な感じが全開。しかも冒頭の短い時間でシュー氏演じる奥さんや娘は凄く健康的で魅力的な女性だっていうのを見せてるからめちゃくちゃ嫌な時間。‥復讐もの映画って身内が殺されたり暴行されるシーンよりもそれが始まる前のシーンがめっちゃ嫌なんですよね。復讐ものなので殺されるとわかっている女性が「あなた忘れ物よ!笑」などと楽しそうにしてたら「こんな良い女性が殺されるの‥?」と絶望的な気持ちになる。
そして殺人の発端だが、強盗達は最初、金目のものを奪って帰ろうとしてたが、護身術を習っていると自慢していた娘がナイフで犯人の顔を斬りつけてしまう、それが切っ掛けで奥さんは撃たれてしまう。暴力というのは振り子だ。一度動き出せばどちらかが滅ぶまで止まらない。
「もう強盗は帰ろうとしてたし、娘が斬りつけなかったらママは殺されなかったのでは?」と思わせられたり、娘は前後の記憶を失ってるのでそれに気づいてないところ。最初に直接的な暴力を振るったのは娘なところ。
色々な要素が組み合わさって居心地が悪い序盤だ。

 

 

 

葬儀の後、カージーは殺された妻の優しそうな父と居ると、義父は自分の牧場に入った密猟者を見つけて射撃で脅かし「警察が来るのは襲われた後だ。自分たちで護らないと‥」と言うのを若干、引き気味で聞く。
シカゴ警察で犯人を探してもらっていて、担当してる刑事はダイエットのためグルテン断ちしてる刑事で、彼はまともな男なのだが、とにかく治安の悪いシカゴ警察では追っている容疑者の数が多すぎる。このままでは妻を殺してのうのうと生きている犯人たちが捕まるかどうかわからない。
そんなアレコレや突発的な事件が元でカージーは妻殺しの犯人を探す傍ら、まるでMARVELのパニッシャーのような悪・即・射殺の自警行為に走る。
犯罪者を射殺するカージーを撮ったYOUTUBEの再生回数が上がり、メディアでもフードを被ったカージーが「シカゴの死神」と呼ばれダークヒーローのような扱いとなり、賛の声が多いのを聞いてニンマリするカージー。‥もう!この時点でカージー狂ってて笑った。復讐だけが目的ならこんな反応はない。いや善良な男として「妻の仇討ち」が目的のメインではあるものの、それとは全く別に悪人をブッ殺す事そのものも楽しんでいる感じ。そもそも偶然出くわした強盗二人を撃ったカージー、わざわざ動けなくなった奴を冷静に射殺し、出血死寸前の残りの一人も医学的に冷静な目で絶命するまでじーっ‥と観察して立ち去る。「偶然出くわした悪人を流れで撃った」というのはそうなのだが、その後明確な殺意で冷静に殺している。「偶然出くわした悪人を流れで撃った。‥だけど折角だから立ち去らずに確実に悪党をブッ殺しとこう」という感じ。
もうこの序盤の時点でカージーは既に狂っている。
ただ狂っていても、カージーが家族思いの善良な男というのは変わってない。その2つはカージーの中に共存している。
近所の子供にドラッグを売って威張っている小悪党「アイス屋」に怪我させられた少年を診察したカージー、彼はフードを被り、すぐさまアイス屋の元に向かう。
チンピラたち「おいおいw何だか可笑しな奴が来たぜ?誰だてめーは
カージーお前の最後の客だ」バンバンバンバン!
なんと、悪党たちの前に遠景から近づき、そのままワンカットで連射して惨殺してしまった。
もっと何回かラリーがあって「悪党が実力行使に出てきたから仕方なく‥」という流れで撃ち合いになるのかと思って観てたら、カージーが手を出すのが想像より何手も早かったので完全に心を持っていかれてしまった。それにしても映画観てて「へレディタリー」や「エンドゲーム」など自分が凄く楽しめる映画って、想像より数手先に事が動き出すものが多い(そうされると完全に敬服してしまう)。

 

 

 

シカゴの街では「死神の自警行為は是か非か?」の話題で盛り上がり、模倣犯(死神を真似てフード被った善良な父親)も現れ悪党に返り討ちになる事件も起こる。「フーン」という天気予報でも観てるような表情でニュース観てるカージー
グルテン断ち刑事は「死神」を追うが「銃の素人の白人」という以外の手がかりはない。その間にカージーは妻を殺した強盗の尻尾を掴み、一人また一人と殺し、娘にイタズラしようとしてた一番薄汚い強盗に対しては医師としての知識を活かし「人体で最も苦痛を伴うやり方」で苦しめて情報を吐かせ、教えてくれたお礼に車の下敷きにする。哀れ、強盗はイーライ・ロス的なゴア描写にて脳味噌を周囲に巻き散らして即死!はっきり言って気持ちいい。残ったボス格も自宅を強襲してくるが、まず手下を西部劇的に返り討ち(首が明後日の方向を向く酷い死に様)。残ったラスボスも若干は苦戦しつつも、銃器店CMで見たオモシロ銃グッズをちゃっかり買い込んでいた事が功を奏して逆転、妻を殺した最後の犯人を蜂の巣にして惨殺KO。
少し前から「カージーが〈死神〉で間違いない」とカージーを追い始めてたグルテン断ち刑事も駆けつけるが、カージーは「手に治りかけの怪我あるし、他にも何故か怪我あるし銃器めっちゃ持ってて偶然、強盗がまた来たので返り討ちしたけど全部偶然」という自分は死神ではないというバレバレの言い訳するが、刑事はあっさりそれを受け入れる。今まで我慢してたグルテン(ピザ)食って、それで満足さ‥。この瞬間に死神の行方はこの世から消えた。
カージーは無罪放免。娘は元気になってNYに進学。弟も笑顔。まさかのハッピーエンドだ。娘を見送った後、カージーは盗みを働いた少年に指で銃のジェスチャーを作り狙いをつけてニヤリとする。カージーは善良で理性的な男なので別に悪いことはしないだろう、だがカージーの心は善良な世界と「あっち側」の世界、同時に居ることを示した。何かきっかけさえあればこの男はまたやるだろう。殺しを‥。
‥という爽快感ある映画。居心地悪いシーンもゴア描写も満足。映画鑑賞の評価の主軸がジョン・カーペンターな俺的にもB級映画っぽさ全開だったし、ほぼほぼ好きなイーライ映画の中でもトップレベルに好きかも。
そして復讐もの映画っていうのは大抵、身内を殺されたりレイプされた主人公が武装して復讐を始める‥という内容だが、大抵やられて蘇った時または復讐してる間に、まるで別人のように変貌してしまう。たいてい復讐を始める前は普通に善良な市民だったのが死刑執行人という社会の枠組みから外れてしまうので、そこが若干不満に思っていた。それではまるで殺された者が悪霊となって仕返ししてるみたいで爽快感が薄い、出来ることなら悪党にやられてた時の主人公のまま地続きのその主人公によって復讐して欲しい。その点このカージーは妻が殺された日からガラッと別人のように変わってしまうのではなくグラデーションがあり、ゆっくり‥徐々に‥善良な医師カージーが〈死神〉になっていくので「この死神は、確かに冒頭の善良ドクターと地続きの同一人物だわ」という感触を持てたまま彼の復讐を楽しむことが出来る。これが今までの復讐ものより気持ちいいところだった。もっとも善良だった時と死神がこれほどまでに地続きな理由の奥底には「カージーは元々こういう殺人が出来て、しかも殺人を犯した後に平気で善良な人間に戻れてしまう」という普通ではないカージーの本質があって初めて可能となった部分だ(つまりカージーは善良な男なので問題なく暮らせているが、悪人とは言え他人を次々と惨殺しても何とも思わない元々狂っている男なのだ)。
ネットで評価見るとユーザースコアも好評。‥だが批評家の評価はボロボロ。
一瞬「えっこんな面白いのに?」と思ったが公開されたのは、フロリダ州の高校での銃乱射事件があった直後。遺族や学生たちが銃規制に向けて頑張ってたが、全米ライフル協会は自分たちが甘い汁を吸いたいがために学生たちを汚いやり方で陥れてたりといった銃規制ウォーズの真っ最中だった。そこに公開された本作で〈白人のベテラン医師〉という社会的強者が銃でバンバン自警行為して、劇中でメディアや果ては国家権力である刑事までもが肯定してしまうのだ。これは諸手をあげて称賛はできんな、と低評価レビュアーにも一理あるなと思った。
だが、本作の爽快感はブルース・ウィリス演じるカージーが、割と最初から完全に狂っているサイコウォーリアーだという前提の元成り立っている。
妻を殺された可哀想さや犯罪者への復讐心には共感できるが、カージーは勿論、彼を庇う弟も、皆殺しモードの父を見たが全部忘れた娘も、死神を称賛する劇中の人々も、見過ごす警部も皆、近代国家の現代人として完全に狂っている。
ただ、彼ら全員が良い人たちで、惨殺された犯人達が全員クソ野郎だったから、たまたま爽快感を感じてしまっただけだ。ここで自警行為を許してしまうと、ではクソ野郎達が気に入らない善良な人を撃ち殺してしまったら?自警行為が良ければ司法の意味は?という問題になってくる。
イーライ・ロスが「ただサイコウォーリアーのブルース・ウィリスが無茶苦茶やりまくった末に罰も受けず大手を振って往来を闊歩する」‥という映画を撮ったのは‥まぁただ面白いからというのもあるだろうが(実際めっちゃ面白かった)、人々の価値観を揺さぶろうとしたっていうのも少しあるだろうな、と思った。今の時代、批判されたくなきゃ主人公を黒人にするはずだもんね。白人の医者にしたのは多分いつものように賛否わざと割れさせたんだろ俺は思った(下に貼ったインタビューでもそれを匂わせることを言っている)。

 

 

そんな感じでした

「グリーン・インフェルノ(2015)」意味あるシーンだらけで胸焼けしてたら主人公が無意味に川に落ちる場面で笑った🍖 - gock221B

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Death Wish (2018) - IMDb

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狼よさらば (1974年) (ハヤカワ・ノヴェルズ)

狼よさらば (1974年) (ハヤカワ・ノヴェルズ)

 

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