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『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』(2024)/”アポロ計画陰謀論の真偽”を”正直な男と嘘が得意な女”に当てはめたラブコメ。ストーリーもキャラも全要素が良いのに要らんとこ切らんせいで勿体ない結果に🌕️🐈‍⬛


原題:Fly Me to the Moon 監督:グレッグ・バーランティ 脚本:ローズ・ギルロイ 制作&主演:スカーレット・ヨハンソン 撮影:ダリウス・ウォルスキー 編集:ハリー・ジエルジャン 音楽:ダニエル・ペンバートン 製作会社:Appleスタジオ 配信:AppleTV+ 配給:コロンビア ピクチャーズ(日本はソニー・ピクチャーズ) 製作国:イギリス/アメリカ 上映時間:132分 公開日:2024.7/12(日本は2024.7/19)

 

 

2025年の正月にAppleTV+が数日間、無料開放されてたのでチャンスとばかりに観たかったけどAppleTV+にしかない映画を観た。これは劇場公開されてたけどAppleが制作のせいかAppleTV+以外の動画配信サービスに来ない。だからこの機会を利用して観た。
1969年、宇宙船アポロ11号は月に行っていない。アメリカ政府による捏造だ」という「アポロ計画陰謀論」を元にしたラブコメ……と、凄く気になる映画だがヒットせず評価もイマイチで、失敗作に終わったらしい。
アポロ計画陰謀論 - Wikipedia

ネタバレあり

 

 

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1960年代、ソビエト連邦と宇宙開発競争をしていたアメリカ合衆国NASA
人類初の月面着陸を成功させる」と宣言した国家的プロジェクト〈アポロ計画〉はすでに8年が経過していた。
1969年7月打上予定のアポロ11号を何としてでも成功させなければアメリカにはもう後がないのだがNASAへのアメリカ国民の関心も薄れつつあった。
元戦闘機乗りのNASA打ち上げ主任コール・デイヴィス(演:チャニング・テイタム)も予算の無さに困っていた。
PRマーケティングの達人でケリー・ジョーンズ(演:スカーレット・ヨハンソン)が、ホワイトハウスから来たという謎の男モー・バーカス(演:ウディ・ハレルソン)に「NASAを宣伝して予算を集めてくれ」と依頼を受ける。
こうして本当のことしか言えない男コールと、嘘が得意な女ケリーは出会った。
彼らは無事、アポロ11号の月面着陸を成功できるのか?――

という話。
ケリーが嘘ついて予算を集め、嘘が嫌いなコールと衝突しながらも、互いに好意を抱いていくラブコメの感じで話が進んでいき、いよいよ打ち上げ!という後半で、ケリーは政府の男モーに「全世界が見ている中、過去のアポロの様に失敗したらまずい。失敗した時に切り替えるために映像作家を雇って月面着陸のフェイク映像の準備をしてくれ」と言われる。ここが本作のメイン。
正直な男と嘘が得意な女性の恋愛」と「月面着陸の真偽」という陰謀論を組み合わせた非常に上手いストーリー。
上手いこと考えたなああぁー!と思わず声が出そうになるほどおしゃれな筋書きだ。
アポロ11号陰謀論という定番の陰謀論をラブコメに消化させるとか、さすが意識が高くて裕福な白人が多いAppleTV+視聴者向けの映画だなと感心させられた。……これは僕のAppleTV+ユーザー想像図、只の想像。しかし「アマプラやネトフリやDisney+やら……色々サブスクに入った上でついでにAppleTV+にも入っとくか?Apple好きだし」なんて人種は自動的に都会に住む金のある白人で間違いないだろう(事実、AppleTV+無料開放で色々観ても2024年なのに出演者が白人ばかりで真っ白なので僕の推測は当たっていると思う)。

そして話を序盤に戻すがコールとケリーは互いの職業を知らないままNASA近くのダイナーで出会う。
テイクアウトを持ち帰るところだったコールはあまりに美しいケリーに見惚れ、引火したケリーのノートを自分の上着で消すという素敵な出会いをする。
コールは一杯おごらせてと言うケリーと一緒にいたいのだが、ロケット組み立て等で忙しくて時間ないので(これは説明ないので僕の推測)店を出て……しかし心残りがあり、また戻ってきて「僕は君のような美しい女性に初めて出会った。ここで何時間でも話していたいが……そうもいかないので君のことは忘れる。会えてよかった。」と言う。あまりに率直で清廉な台詞、めちゃくちゃ好きになった(そしてチャニング・テイタムキャプテン・アメリカ役をして欲しくなった。性格もルックスもあまりにスティーブ・ロジャース的)。
ケリーの方もコールの正直さに微笑む。
そして翌日NASAで再会した2人は、以降は月面着陸に向けて共にNASAで働く。
コールは伝説的な戦闘機乗りだったものの持病で宇宙飛行士になれなかったりアポロ1号の事故により死ぬまで消えないトラウマを抱えていた。ケリーはケリーで過去に何か後ろ暗い秘密がある様子。2人は互いの考え方の違いによって喧嘩したり仲直りしながら一緒に資金を集めたりして次第に惹かれ合っていく。
そんで、話は一気に飛んでクライマックス。
政府の男モーはケリーに「全世界が見ている中、過去のアポロの様に失敗したらまずい。失敗した時に切り替えるために映像作家を雇って月面着陸のフェイク映像の準備をしてくれ」と頼む。既に誠実かつ努力し続けているコールに惹かれていたケリーは「今も何も知らないコールが頑張っているのに……」と罪悪感が湧いて断ろうとするがモーは「フェイク映像つくってくれたら君の過去を全部洗い流してあげるよ」と言うのでケリーは仕方なく引き受ける。
だが、この依頼は半分嘘で、モーの実際の狙いは「アポロ11号の月面着陸が成功しようが失敗しようが、どちらにせよフェイク映像を流せ」というものだった。
「成功するかどうかわからない、どんなしょぼい映像になるかわからない”リアル月面映像”よりも好きなように表現できる”フェイク月面映像”を最初から流した方が間違いない」という事らしい、多分。最初言ってたように「万が一、失敗した時はフェイクの方に切り替えろ」という作戦、これで良かった気もするが……まぁ、こういう流れで進んでるのでここは素直に従おう。そんなスムーズに切り替えとか出来ない時代かもしれないし。
コールやNASAの皆の哀しむ顔を見たくなかったのか、ケリーはいつものように高飛びしようとする。しかしケリーは空港でアシスタントの女性にプレゼントされた「NASAでのみんな」みたいな冊子を見る。それは鉛筆画で描かれたNASAのみんなだった。もう会えないNASAの皆の似顔絵を見てホロリと泣くケリー。最後のページには「自分ネクタイを結んでくれているケリー……を見つめるコール」の絵が描かれており。このコールの表情が、くもりなきまなこでケリーを信頼しきって真っ直ぐ見つめている絵で、これにはたまらずケリーはNASAに舞い戻る。この絵のコールの表情はヤバい、これは誰でも舞い戻るだろう。写真じゃなくて温かみのある鉛筆画っていうのが良いね。しかも自分たちにずっと着いてたアシスタントの子による客観的な絵というのも胸に迫る。この絵は刺さったしホロリと来そうになった。
ケリーは、フェイク月面着陸や詐欺師だった自分の出自など全てを打ち明け、そして2人とその忠実な部下たちは、ロケット発射の日に政府の目を掻い潜って本物の月面着陸映像を全世界に流すよう工作を始める……。

……と、何か知らん間に大まかなあらすじ全部書いちゃったが大体そういう感じ。
後半までは「面白いんだけど何か妙にメリハリのない展開がノンビリ進むな」と思って観てたが、ケリーがアシスタントの描いた鉛筆画を見てホロリとして以降のクライマックスはさすがに面白かった。
そして最終的に、迷信深いコールが毛嫌いしていたNASA基地に住む黒猫。この黒猫が虚構と真実の境目を切り裂くポイントとなる。『マトリックス』(1999)でも虚構と真実の境目を表現するのに黒猫が使われてたが、おしゃれな使い方だ。猫は言うこと聞かなくて素早いからこういった役目に使われやすいのかも?別に動き回りはしないけど思考実験「シュレディンガーの猫」も観測できる現実がいったりきたりするという意味では同じだし、欧米における猫にはそういった使われ方があるのかな。
 
 
そういう感じで本作は良い部分がめちゃくちゃ多かった。
アポロ計画陰謀論」の「虚実」を「正直な男と嘘が得意な女」に当てはめてラブコメにするというオシャレなストーリー。そしてその結末。
何よりも「NASAは本当に月に行っていた」と「NASAは月に行っていない!全部スタジオ撮影!」という正反対の出来事を「どちらも真実」として描いた結末はめちゃくちゃ上手い(これもまた「シュレディンガーの猫」的である)。大逆転の気持ちよさも大人の対処も同時に見せてたし。
チャニング・テイタムとスカヨハの演技やキャラ、脇役のキャラも良かった。
チャニング・テイタムのキャラのことは前述したが、スカヨハは得意にしてる感のある、非難された時に見せる「哀しい笑顔」を必殺技のようにここぞとばかりに繰り出していた。いつから多用し始めたんだろう?凄くグサッと来る。コールに恋人がいると勘違いした時のオロオロ笑顔も最高だった。
あと単純にNASAのセットとか最寄りのダイナー等の美術も「皆が好きなアメリカ」感で最高だった。
……という感じで、実際にあらゆるパーツが長所ばかりなんだが実際のところ中盤かなり気が散るというかあまり入っていけなかった。……と、言うとつまらないようだが別にそんなことはなく中盤で起きる出来事やストーリーも普通に面白い。だけど要所要所で「今現在も面白いまま……なんだけど、何故かつまらないな」という、あまり感じたことのない種類の不思議な感覚を味わった。
観てる途中で気が散ってシークバーを見たら「ここで半分くらいかな?」→「げっ、まだ四分の一!?」とか「もうそろそろ終わるな」→「うわっ、今から第三幕か……」などといった「長く感じる」現象が多かった。つまり「つまらない」に片足つっこんでいるのか。だが他の「つまらない映画」とは違って明確につまらないわけではない、むしろ面白いしキャラや俳優も良い。それなのに時間の進みが遅い。
そんなに長いにも関わらずNASAの様子やサブキャラの見せ方も少し下手(チャニング・テイタムの相棒のおじさんとか存在感なさすぎてスカヨハと話し込みはじめた時「誰だっけ?」と思った)。
つまり「要らんとこが多くて、もう少し見たい部分が少ない」。
……やっぱ単純に、要らんとこ切ってタイトにしてないせいで弛緩して観えたのかな?
これで132分って長すぎるしね。
ちょっと一つ一つのシーンが、どれも面白いんだが長いんだよね。「これにてTHE END」って思っても5分くらい「そして……こうなりました」という感じでダラダラ続くしね。SEXが終わった後のピロートークやいちゃつきが全てのシーンにくっついてる感じ?それぞれのシーンや映画全体のストーリーや展開は前述したように凄く良いので勿体なく感じた。
たとえばDisney+のMARVELとかスター・ウォーズのリミテッド・シリーズのドラマは、その9割がつまらない(これは印象ではない、全部観て全部感想書いてる)。これってショーランナーがいなくて「映画を作るやり方で映像を作って、それを取捨選択せず全6~8話くらいにブツ切りにしてるだけ。そして各話のラストにクリフハンガーくっつけて、オタクが喜びそうな匂わせしてるだけ」だから、つまらないものが殆どなんだけど、それらMCUやSWのドラマも2時間くらいの映画にギュッとしたら面白い可能性は高いよね。MCUやSWのドラマも最終話の前の回くらいまでは割と面白い、つまり観てる最中はある程度面白い、でも最終話まで観終わったらウンザリしてることが多い。本作は、それらMCUやSWに感じる感覚に似てる。
これじゃないか?映画がコケて賛否両論になったの理由は?
何度も言うように本作の「都市伝説と大人の事情と爽やかな恋愛という食い合わせ悪そうなものを混ぜて世間一般大勢が楽しめるものにする」というのは凄く僕好みの要素だし。本当に勿体なかった。あと1歩、2歩違っただけで大傑作になった可能性すらあると思う。
最後の「宇宙人はいる?」と訊かれたモーの返答とか……色んな部分がオシャレなので勿体なかった。

 

 

そんな感じでした


 

tv.apple.comFly Me to the Moon (2024) - IMDb
Fly Me to the Moon (2024) | Rotten Tomatoes
Fly Me to the Moon (2024) directed by Greg Berlanti • Reviews, film + cast • Letterboxd
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