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『クリーチャー・コマンドーズ』〈シーズン1〉(2024-2025) 全7話/DCU一作目。情緒を上手く乱高下させてくるしガンのバランス感覚も良かった。好かれないキャラ造形されてるフランケンがキーかもしれない🧟‍♀️


原題:Creature Commandos〈Season.1〉 監督&脚本&原案&製作総指揮:ジェームズ・ガン 製作総指揮:ピーター・サフラン 原作:J・M・デマテイス&パット・ブローデリック『Weird War Tales』#93 (1980) 制作:製作 DCスタジオワーナー・ブラザーズ・アニメーション 配信:HBO Max(日本ではU-NEXT) 製作国:アメリカ 上映時間:各話約 分、全7話 配信開始日:2024.12/05~2025.01/09 シリーズ:DCユニバース(DCU)第1作目。チャプター1:『Gods and Monsters』第1作目

 



先日、MCU『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズでお馴染みのジェームズ・ガンによるDCU第1作目『スーパーマン』(2025)の特報が公開されて凄い再生数を稼いだ。
映画『スーパーマン』超<スーパー>特報 2025年夏公開 - YouTube
「DCU」とは、これはMARVELのMCUDCコミックス版。
今までは〈DCEU〉というシネマティック・ユニバースを2013年から2023年までの10年間やってて最初はMCUよりも大ヒットしてたのだが『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)に敗れてからはMCUに形勢逆転されてしまい(MCUはBvSに勝利するため本来の『キャプテン・アメリカ:サーペント・ソサエティ』を、まるで「アベンジャーズ2.5」であるかのような総出演のシビル・ウォーに差し替えて見事勝利した)、更にDCEUは大ヒットこそしていたものの低評価だったことやコロナ禍突入のせいもあって2020年あたりから全く客が入らなくなりDCEUは終了(僕はあまり好きじゃなかったものの最初から最後の『アクアマン/失われた王国』(2023)までちゃんと観た)。
そこでMARVELを去ったジェームズ・ガンが、MCUでいうケヴィン・ファイギのようなクリエイティブ面での総合責任者となって新たなシネマティック・ユニバースを舞台に始まったのが、この〈DCU〉(このガンの流れは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(2023)のページにまとめた)。
で、来年公開のジェームズ・ガン監督作『スーパーマン』(2025)がDCU一作目なんだが、実はこの配信アニメが一足先に始まったDCU第1作目だ。ひっそり始まった。
ちなみにMCUでいう「フェイズ1」みたいな作品群だがDCUの第一章は「チャプター1:Gods and Monsters」という名称が付けられている。よくわからないがヒーローだけでなく本作のようなモンスターっぽい奴らを取り上げる感じ?

ちなみにDCEUとは違う世界、一新した世界が〈DCU〉なわけだが、ジェームズ・ワンが監督した過去のDCEU作品、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)、そのスピンオフ・ドラマ『ピースメイカー』〈シーズン1〉(2022)(傑作)この2作は「DCUの過去にあった出来事」として話は続いている。ただし『ピースメイカー』〈シーズン1〉(2022)ラストでDCEU版ジャスティス・リーグが出てくる場面があったのだが、そこだけ無かった事になった。
だからDCEU版『ピースメイカー』〈シーズン1〉(2022)とDCU版『ピースメイカー』〈シーズン1〉(2022)は全く同じ登場人物と同じ物語が展開されたがJLが出た場面だけDCEU版『ピースメイカー』〈シーズン1〉(2022)での出来事だと思えばいいだろう。

だから

【DCU】

DCUの「過去にあった出来事」:『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)『ピースメイカー』〈シーズン1〉(2022)(JLが出てくる場面は除く)
 ↓
DCU配信での一作目、本作『クリーチャー・コマンドーズ』〈シーズン1〉(2024-2025) 
 ↓
DCU一作目『スーパーマン』(2025)
 ↓
to be continued……

こういう感じ。わかった?
まぁ、ガンは「観なければいけないものが多くあるとユニバース疲れになってしんどいから、DCUは好きなものだけ観ても楽しめるように作っていく」と言っていたので、別に知らなくてもいい。一応書いただけ。

ちなみに『THE BATMAN-ザ・バットマン-』(2022)と、そのスピンオフ・ドラマ『THE PENGUIN-ザ・ペンギン-』(2024) (名作)、そして今後何作か続くこっちのユニバースは「BECS(バットマン・エピック・クライム・サーガ)」というDCUとは別の『バットマン』の登場人物だけの、超人や怪物は今のところ居ないDCUよりリアルな世界線になっている。合流するという噂もあったが先日DCU版のバットマン作品の監督が公に否定した。このBECSもDCUもどちらも大好きだし今後も末永く2本ともこの調子で並行して進めて欲しい。ちょっと話がややこしくなってきたがシネマティック・ユニバースが2本あるだけなのでDC映画好きならすぐわかるだろう。まぁBECSの方はユニバースという大げさなものではなく「スピンオフを含めた『ザ・バットマン』のシリーズ」という感じですけど。

クリーチャーコマンドーズはJ・M・デマテイス&パット ブロデリックのDCコミック『Weird War Tales』#93 (1980)が初出のモンスターばかりのチーム
Creature Commandos - Wikipedia
……らしいが読んだことなく全く知らなかった。フランケンはDCコミックでちょいちょい見かけたことあるが。まぁ全員良く知らんので原作と比べてどうこうは言えない。
とりあえず政府がヴィランを無理やり特攻任務に使うチーム〈スーサイド・スクワッド〉のモンスター版というコンセプトはわかる。人権どころか人間ですらないからスースクよりも酷い扱いを受ける予感はする。
なお、クリーチャー・コマンドーズ(以下コマンドス)のキャラたちはそのキャラっぽい俳優が演じているので今後、他のDCU実写作品にコマンドスが出てくる時は彼ら中の人らがそのままコマンドスに扮して演じるのだと思われる。
そういえば去年、日本のスタッフが『異世界スーサイド・スクワッド』(2024)というアニメを作ってたがあまりにつまらないので3話くらいで観るの辞めた。最近「全部観て、何がどうダメなのか論理的に全部書こう」と思ったが、そんなネガティブなことに時間と労力使うくらいなら、もっと観たいもの観ようと思い再見するのもやめた。個性的なヒーローやヴィランがいっぱいいるDCユニバースから凡庸なオークやら兵隊といった幾ら殺しても殺されてもどうでもいい”異世界”にスースクが行く意味が全くわからなかった。

ネタバレあり。いつもにも増して殆どネタバレしてるのでご注意

 

 

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本作の〈以前〉にあったとされる本作にも一応関係ありそうな過去の出来事


『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)

メタヒューマン(超人)対策の組織、A.R.G.U.S.の責任者であるアメリ政府高官アマンダ・ウォラーは、宇宙生物スターロを使った非人道的な計画〈スターフィッシュ計画〉を潰すため、ウィーゼルその他の犯罪者ばかりを集めた特攻部隊〈タスク・フォースX〉通称〈スーサイド・スクワッド〉を送り込んでスターフィッシュ計画を潰した。
しかしスターフィッシュ計画を行っていたのは実はアメリカ政府であり、このミッションの真の目的は「アメリカ合衆国の、スターフィッシュ計画への関与の証拠を抹消」する事だった。

正義感にかられたリーダーのリック・フラッグ大佐は世間に告発しようとするが、合衆国に忠実なピースメイカーによって殺害されてしまった……


『ピースメイカー』〈シーズン1〉(2022)
・ピースメイカーは〈スターフィッシュ計画〉に引き続き、地球外生命体バタフライを駆除する〈バタフライ計画〉を命じられ、A.R.G.U.S.職員たちや友人のヴィジランテと共にやり遂げて友情が芽生える。
・A.R.G.U.S.職員ジョン・エコノモスはバタフライとの死闘で片足を負傷した。
・A.R.G.U.S.職員レオタ・アデバヨは、母であるアマンダ・ウォラーがザ・スーサイド・スクワッドやピースメイカーなどの囚人を非人道的な作戦に使い捨てていることを世間に告発する。

小国ポコリスタンが、女性だけの秘密の国セミッシラアマゾン族出身の魔女キルケー(演:アーニャ・シャロトラ)から攻撃を受けていた。
事態を沈静化するためアメリカ合衆国の政府高官であり、メタヒューマン対策組織A.R.G.U.S.長官でもあるアマンダ・ウォラー(声:ヴィオラ・デイヴィス)は、爆弾を埋め込んだ囚人たちで構成されたタスクフォースX(ザ・スーサイド・スクワッド)を派遣したいところが、数年前に娘アデバヨの告発で人間の囚人を任務に使用する事が法で禁じられてしまい、もうタスクフォースX(ザ・スーサイド・スクワッド)は使えない。
そこでタスクフォースX(ザ・スーサイド・スクワッド)の監視役兼リーダーだったA.R.G.U.S.エージェントの故リック・フラッグ大佐……の父、リック・フラッグSr.(演:フランク・グリロ)を監視役兼リーダーに据えて「人間以外の囚人」による特殊任務部隊、タスクフォースM(モンスター)、通称「クリーチャー・コマンドー」を結成。
タスクフォースM(クリーチャー・コマンドーズ)はさっそくイラーナ・ロストヴィク王女(声:マリア・バカローヴァ)護衛のため、ポコリスタンへと向かったが――

という話。
なんか余計な情報入りのあらすじ紹介で無意味に長くなったが一言でいうなら「モンスターの囚人で構成されたチームが小国の王女を、魔女から守りに行く話」……と書けば一行で済んだ話だ。

シーズン1のメインストーリーは、ポコリスタンのイラーナ王女を魔女キルケーから護りつつ、毎話コマンドスのメンバーの過去回想を挟みながらコマンドスがどういう奴らなのかを見せながら進んでいく。
そして最終話でイラーナ王女の事件の結末でシーズン1は終わる。
イラーナ王女のメインストーリーも一応ひねりのあるものだが割と薄い内容で、それよりもコマンドスの回想でキャラを紹介していく方が本作が本当にやりたいことという感じを受けた。
コマンドスの任務を通じて「DCU世界はこんな感じですよ」と見せたり、コマンドスのキャラを見せていく、このタイトルを視聴者に紹介する長い自己紹介のような感じ?
一話づつ思い出して感想を書いていこう。

 

 

第1話『胃がキリキリ』 ★★

アマンダ・ウォラー(声:ヴィオラ・デイヴィス)によってコマンドスが結成されて、メインストーリーである「アマゾン族出身の女戦士キルケー(声:アーニャ・シャロトラ)からイラーナ・ロストヴィッチ王女(声:マリア・バカローヴァ)を護る」任務のためポコリスタン王国にやってきたコマンドス。
ポコリスタン王国は古城に王女が住んでいたり、衛兵も巨大な鎧を着ており現実離れした寓話っぽい感じの架空の小国。
ちなみにコマンドスが任務を放棄すれば監視役リック・フラッグSr(以下シニア)や本部のウォラーがスイッチを押せば電流のようなものが流れるのでコマンドスは絶対にアメリカ政府に従うしかない。
攻撃を受けた人間はグッチャグチャの肉塊になったり、シニアがイラーナ王女に誘惑されてSEXしまくる描写が多く、本作はエログロありな事がわかる。またジェームズ・ガンお得意の悪趣味ギャグや懐メロやポップソングの多用、OPにコマンドスと共にジェームズ・ガン本人が出てくるなどの悪ノリが多く『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)の時のように羽を伸ばして自由に作ってる感じが伺える。
僕はガンのファンだが、彼のそういった悪趣味推しや調子に乗ったノリの部分はあまり好きではない、そんな要素ばかりなのに何でファンかというとやがて物語のクライマックスが訪れた時に、他の監督では味わえないくらい胸に刺さったりする事が多いからだ。たとえば人気作の一つ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017)とかは全体的に調子乗った雰囲気やヨンドゥが死んで過剰に哀しむ場面が延々と続くところなどは全然好きじゃない、でもスターロードが実父エゴの悪の誘いを断り「私の誘いを断るとパワーを失い普通の人間になってしまうぞ!それでもいいのか?」と言われたスターロードが「その何がいけない」と反撃するシーンなど、他の短所を大きく上回るくらい感動するので差し引き好きという結果になる。
本作は、映画ではないが順番的にはDCU一作目で、キリがいいから『スーパーマン』(2025)が一発目で良くない?という気も少ししたが、後でまとめるが本作は思いのほか他のヒーローやヴィランがコマンドスの過去回想で出てくるので「他のヒーローやヴィランが既に大勢いる『スーパーマン』(2025)公開前にDCUの世界観を、本作を観るコアなファンに見せときたいのかな?」と思った。後は子供も観る絶対に外せない大作『スーパーマン』(2025)を撮るプレッシャーのガス抜きのため、ファンしか観なさそうな本作でエログロや悪趣味ギャグを交えつつ好き勝手やってストレス発散するために作ったのかもしれない。

 

第2話『トルマリンのネックレス』 ★★

回想で主人公格である死体を元に作られた怪力の人造人間ザ・ブライド(声:インディラ・ヴァルマ)のオリジンと、彼女のストーカーである死体を元に作られた怪力の大男フランケンシュタイン(声:デヴィッド・ハーバー)との愛憎関係が描かれる。
死体からフランケンシュタインの怪物を産んだ博士が、フランケンに妻を作ってくれと頼まれて花嫁(ブライド)を作る。しかしブライドはフランケンに怯えて懐かない。そして言葉や知識を教えてくれる博士を愛するようになり近親相姦的な関係になる。それに嫉妬したフランケンが博士を殺し、ブライドは元々嫌いだったフランケンが許せなくなる、以降200年間フランケンはブライドをストーキングしてはぶっ飛ばされるを繰り返している……という話。
僕はフランケンっぽいキャラが好きで、バットマンソロモン・グランディとかも好きで、このDCフランケンもキャラよく知らんがフランケンそのものだからボンヤリと好きだったのだが、このフランケンは狂ってるだけでなく異常に嫉妬深いキャラで、嫉妬深いキャラはマジで苦手なので「こういうキャラかぁ」と思った。だがこのフランケンは後の話でもわかるが意図的に愛されないキャラ……本当の意味でのモンスターとして作ってる意志を感じたので好き嫌い関係なくフランケンは重要なキャラだなと思った。
現代の時間軸、ブライドは半魚人ニナ・マズルスキー(声:ゾーイ・チャオ)と共に、王女の城を抜け出して自分が博士に作られた古城で思い出のネックレスを探していたらキルケーに強襲されて戦う。ブライドとニナは少しづつ友だちになっていく。

 

第3話『ブリキ男に乾杯』 ★★★

ナチスを皆殺しにする」ことしか思考していないG.I.ロボット(声:ショーン・ガン)の回想。
第二次世界大戦で作られてSgt.ロックイージー・カンパニーに入隊し生きがいである「ナチを殺すこと」をやりまくってカンパニーの皆と楽しく過ごしたGIロボそして、現在では刑務所に入っていたG.I.ロボットのオリジンが描かれる。
大戦後、GIロボは忘れられるがやがて猫好きの優しい男性に貰われる。ほっこり回想?優しい彼や猫が殺されて復讐で皆殺しにして刑務所に入れられる話かな?かと思いきや、優しい男性は実はネオナチ。ネオナチ集会に連れて行かれたのでナチス絶対殺すロボであるGIロボは全員射殺……というオチだった。確かにナチ信奉者だろうがネトウヨだろうが凶悪犯罪者だろうが家族には優しいからね。「猫やロボに優しい男」と思わせて、優しいままブッ殺すのは良い話でした。
Sgt.ロックは、まだ制作始まってないけど『チャレンジャーズ』(2024)の監督の手で、ダニエル・クレイグ主演でDCU映画『Sgt.ロック』として作られるという有力な噂がある(ダニエル・クレイグ好きだし実現するならDCUで一番観たいかもしれん……)。
この兵隊がそのキャラだと知ったのは後で元ネタ調べた時だった。
また大戦後のGIロボを少しの間預かった科学者がいたが、あの人も観てる時はわかんなかったけど液体金属の人造人間によるヒーローチーム”メタルマン”の生みの親ウィリアム・マグナス博士だったらしい。
そういう感じで観てる時はわからなかったが、Sgt.ロックやメタルマンなどの実在がさりげなく示され、三話観ただけで本人は出てきてないものの既にDCUにヒーローやヴィランはいっぱい居ることが伺える。こんな感じで本作はコマンドスの人間ドラマを見せると共にDCユニバースの拡張をさりげなく行うのが目的のようだ。
現代の時間軸、GIロボットは大破するがキルケー確保には成功してコマンドスの任務は一旦終わる。

 

第4話『リスを追う』 ★★★★★

『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)では「27人の子供を殺した」と言われて収監されていたイタチ人間ウィーゼル(声:ショーン・ガン)の回想。
実際のところは、ただ孤児院の子供たちと仲良くしていただけだったのだが近所のオッサンに「バケモノが子供たちを狙っている!」と勘違いしてウィーゼルを殺そうとしたら孤児院に引火。ウィーゼルは子供たちを助けようとするが警官隊の銃撃で救助もできず、せめて一番仲の良かった金髪の少女を助けようとするが警官隊にそれすら妨害されて子供が全員焼死してしまいウィーゼルは捕まる。
現在、親切な弁護士がウィーゼルは無実ではないか?と奮闘してくれているのだがウィーゼルは本物のイタチ程度の思考力しかないので喋れないし、そもそも無実がどうとかそういった事もわからない。
彼は無理解な人間たちが起こした火事から命懸けで子供たちを助けようとしたが「子供たちを殺してる!」と邪魔されて子供全員死亡……というあまりに可哀想な話だった。
ウィーゼルは「自分は子供たちを助けようとしたんだ」などと言える知能すらなく、彼のヒーロー的行為は視聴者しか知らないという切なさ。
『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)は公開から3~4年くらい「ウィーゼルは本当に27人の子供を殺したのかな?」と思っていたのも前フリになって何だか凄く胸に来た。この説明しにくいエモさ、これって自分がジェームズ・ガンに求めているものですわ。なんか細かいこと覚えてないけどとにかくこの回がめちゃくちゃ良かったことは覚えてる。この「リスを追う」という村上春樹作品みたいなサブタイトルもめちゃくちゃ効いてて良かった!
そしてウィーゼルがイラーナ王女に懐いていた理由は「遊んでくれるから」というだけでなく、ウィーゼルが最後に助けようとして叶わなかった少女にそっくりだったからということもわかった。これは最終話でもまた効いてくる。
現代パートでは、捕まった魔女キルケーが「イラーナ王女を狙ったのは、彼女が将来ヒーローたちや人類を皆殺しにして地球を征服する予知を見たからだ」と言う。
そしてセミッシラ研究の第一人者であるアイラ・マクファーソン教授(声:ステファニー・ベアトリス)は「キルケーの予知は絶対」というのは間違いないらしく、予知のお裾分けしてもらったアマンダ・ウォラーが「あかん!ホンマや!イラーナ王女を殺さなければ……」という事で帰還したコマンドスを再び、今度はイラーナ王女暗殺のためにポコリスタン王国に送る。
リック・フラッグSrはイラーナとSEXしてたし信じたくないんで独自に証拠を探す。その過程でブライドを追いかけてきたフランケンと知り合い共に行動する。
という事でイラーナ暗殺任務に向かうコマンドスは、ブライド、二ナ、Drフォラスフォス、ウィーゼルの4人だけ。
キルケーが見せた予知夢には「このままでは成長したイラーナ王女に殺される」という未来として色んなDCヒーローが出ていた。
『ピースメイカー』(2022)からピースメイカー、ビジランテ、ジュードーマスター。
今年夏に公開される『スーパーマン』(2025)に出るスーパーマン、ミスター・テリフィック、ホークガール。来年公開の『スーパーガール:ウーマン・オブ・トゥモロー』(2026)のスーパーガール。
制作予定の映画『ブレイブ&ボールド』からバットマン、ダミアン・ウェインのロビン。まだ噂段階の制作予定映画『ティーン・タイタンズ』からスターファイア。
制作予定のドラマ『ブースターゴールド』からブースター・ゴールド(いかにもガンが好きそうなヒーロー……)。『パラダイス・ロスト』から?ワンダーウーマン
あとイラーナの部下としてゴリラ・グロッドも出てた。
こいつらが既にいるのかこれから出るのかはわからないが、順当に行けばこいつらも存在する世界、という事がよくわかった。
それにしても今は只の人間でしかないイラーナ王女と衛兵たちがこんな強いヒーローたちを皆殺しにするパワーをどうやって手に入れるのか……これは最後まで観てもわからない。ただ漠然と「王女はこのまま育つとめちゃくちゃ強いヴィランになるらしい」という確定された未来を甘受するしかない。
あと『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)『ピースメイカー』〈シーズン1〉(2022)その他DCEU幾つかに出ていたウォラーの部下のA.R.G.U.S.職員エコノモス(声:スティーブ・エイジー)も出た。大柄のバカにされやすいキャラだが『ピースメイカー』〈シーズン1〉(2022)では意外と強敵を倒した(というギャグ)。その時のラストバトルで片脚を怪我したので本作でも杖をついていた。観てる人だけ気づくが別に知らなくても全く構わない、さりげないサービスだね。


第5話『鉄の鍋』 ★★★

リック・フラッグSrとフランケンが前話でキルケーの予知を「キルケーの予知夢は絶対」と決定づけたセミッシラ研究の第一人者であるアイラ・マクファーソン教授(声:ステファニー・ベアトリス)追跡している。シニアは自分がイチャついた王女が悪人だと信じたくないのでキルケーの予知がハズレだという証拠を見つけたいのだ。彼女の家にフランケンと忍び込んで観察してたら、本物の教授は既に殺されており教授だと思っていた教授は、ゴッサムのシェイプシフター、クレイフェイスが変身した姿だった。
……ということはキルケーがウォラーにニセの悪夢を見せたのか?
クレイフェイスはめちゃくちゃ強いのでシニアは死亡寸前にまでボコボコにされる。そしてかなり強いはずのフランケンも腕力では勝てず……コンセントに手を突っ込んで電力でクレイフェイスを倒す。なるほど、フランケンシュタインは電気に強いからね。キャラに似合わないクレバーな勝利を得たフランケン。
クレイフェイスはDCUバットマン映画もまだなのに急転直下で来年、単独作『クレイフェイス』(2026)公開が決まったので一足先にキャッチーな出演。ほんとに只のどうしようもない悪者だったけど……。
クレイフェイスは「セミッシラは全員レズビアンの最高の島!」とか『モータルコンバット』をXBOXでプレイしまくってたり、全体的に只のアホなキャラという印象だった。
そして回想はフランケンの「俺も昔ジプシーの女と暮らしたことがある」というもの。今回もまたブライドに殺されそうになったフランケンは、犬と暮らしている目の見えない老婆ボグダナ(声:イリーナ・マレエワ)というに助けられる。
傷を治しつつボグダナと犬と穏やかな生活を送るフランケン。平和に暮らしながら笑顔も見せるフランケン。こういうまともなところもあったのね。「昔はアホだったフランケンだが老婆との生活で人の温かみも知った」という回想か?
しかし傷が癒えて再びブライドを探す旅に出るフランケン。ボグダナは一人ぼっちになりたくないと泣いている。
フランケンは「ボグダナ、君を一人にはしない」そう言って鉄の鍋でボグダナを撲殺。
えっ、こんな結果に……!?
サイコパスの大男だと思わせて実は他人と暮らして人並みの優しさを得た……と思わせて、やはりサイコパスだった」という流れ。
しかもわざわざ撲殺するのが「目の見えない優しくて寂しい老婆」だからね。
明らかに観ている視聴者の情緒を乱高下させようとしている。
ここでポイントなのは、フランケンは「純粋な悪人」というわけではなくて思考回路が通常と違いすぎるだけのヴィランというところですね。フランケンとしては「ボグダナは一人になりたくない」→「でも俺はブライドを探したい」→「ボグダナを一人にさせないにはどうすれば?」→「ボグダナを殺そう」という思考回路なわけで、フランケンは悪い考えではなく、むしろ優しさでボグダナを殺してるんだよね。犬は「犬には理解できない」と言って家の外にわざわざ出して殺してるから、彼なりに色々考えていることはわかる。
ウィーゼルは全く自己主張しないがゆえにモンスターだと誤解される善良なモンスターだったが、フランケンはただいるだけで災厄となるヴィラン
普通に生きているだけで、彼の優しさが他者にとっての害悪にしかならない……という、そういうタイプのヴィラン。正に悲しきモンスター。愛ゆえに抱きしめたら怪力だから愛する相手が死んでしまうフランケンシュタインの怪物っぽさを、怪力じゃなくて精神がモンスターというキャラ造形。
相変わらず応援する気にはならないが、これはこれで目が離せない面白いキャラだ。

 

第6話『優しいホネさん』 ★★★★

放射線を発し人体が透けているDr.フォスフォラス(演:アラン・テュディック)。
彼は原作ではバットマンの古いヴィランらしい。
回想は勿論、Drフォス。
フォスは中東系の妻子と暮らす天才科学者で、永久機関のようなものを作っていた。
彼のスポンサーらしき男はギャングのルパート・ソーン(演:ベンジャミン・バイロンデイビス)。こいつは知ってる。90年代のバットマンのアニメや去年の『バットマン:マントの戦士』〈シーズン1〉(2024)にも出てた。ファルコーネ家ほどじゃないけど有名なゴッサムのギャング。
このルパートがめちゃくちゃ悪くて、エネルギーのことでフォスが命令に背いたとかで彼の妻と幼い息子が殺されてしまう。モロに死体が映るのでショック。あと奥さんが何故か中東系のキャラに設定されてるせいでより非道さが目立つ。
更にフォスが開発した放射線の機械に入れられ処刑されるが……たまたまスーパーパワーに目覚め……というスーパーヒーロー映画でありがちなオリジン(だがこの後からフォスは普通に残忍なヴィランになってしまうので文字通りこの時にフォスは一回死んで地獄からフォスの記憶を持った悪魔が現世に出現したとも言える)。
妻子を殺して自分も殺そうとしたギャングを一人づつ惨殺し、最後は家族と夕食を食べようとしてるルパート・ソーンの家に行き、皆殺しにする。
凶悪なルパート・ソーンだが自宅では家族や孫には優しくしてるというところを見せた後で殺すのがいい。ギャングのままだと「人間じゃないかのように悪いギャングに酷いことされた」→「その、人間じゃないかのように悪いギャングに仕返しした」。これじゃ片手落ちで「人間じゃないほど悪いギャング」を一旦「家では孫には優しいおじいちゃん」というところを見せて「彼も普段は人間だ」と、我々と同じ地点に持ってきて、そして殺す。この方が誠実な見せ方ということ。
画面には映らないが、何の罪もないルパートの幼い孫娘の顔面から焼き殺したっぽいアングルで次のカットに移る。自分の罪のない妻子を殺されたから同じ様にルパートの何の罪もない可愛い幼い孫娘から惨殺したのだろう。
かと思えばサブタイトルにもなってるエピソードで幼女を殺す……と思わせて今度は殺さない。ここまで散々「子供や年寄りもすぐ死ぬ世界」を見せてそう思わせての良い裏切り。
その後はルパートの縄張りを乗っ取って普通のヴィランになり……そしてバットマンに捕まる。シルエットだけだがDCUにバットマン初登場した(第4話のバットマンは予知夢だからね)。しかしバットマンはフォスをどうやって捕まえたんだろうね。何か放射能に対抗する秘密道具を作ってきたのかな。
この回でチンピラがエロ本見てるんだがスーパーヒーローみたいなコスチュームを着た女のエロ本だった。スーパーヒーローが普通に大勢いる世界なら確かにヒーローのスーツも性の対象になるわな、という描写だった。
現代パートは、ポコリスタンに再入国したコマンドスの4人。ポコリスタンの衛兵に王女暗殺の狙いがバレて逃亡する。途中、娼館に逃げ込む。そこで娼婦に酷い扱いするスーパーパワーを持ったチンピラが現れ、ニナが立ち向かいブライドが惨殺する。
「卑小な奴がスーパーパワー持っててもDVにしか使わない」ということで、非道すぎるルパート・ソーン一味とか、さっきのエロ本もそうだがDCU世界の暗部をちょいちょい見せてくる回だった。
この回もウィーゼル回の次くらいに好き。Drフォスもかっこいいし。

 

第7話『愉快なモンスター』(シーズン1最終話) ★★★

コマンドスの過去は全員出た。残るは心優しい半魚人ニナ・マズルスキー(声:ゾーイ・チャオ)ニナだけだ。
生まれつき「肺が体外に露出した身体」で産まれたニナは父親が作った自重と同じ重さの機械を着て過ごした。母は出ていったが父はずっとニナを愛した。
ある日、水生生物のDNAをどうのこうのしてニナの身体を改善しようとしたら、水生生物化が進んで現在の半魚人になってしまった。
それでも父と楽しく過ごしていたニナだが、社会を知らない彼女を不安に思った父はニナを普通の学校に通わせた……が当然のように苛烈にいじめられた。
ここまで観てきてわかるけど、このアニメに出てくる「DC一般人」はかなり酷いからね。いじめられるだろう。
生き辛さを感じたニナは「パパの重荷でしょうから出ていきます」と家出して町の池や川で暮らすようになる……が、またしてもDC市民がやってきてニナを捕まえる。
ずっとニナを探していた父がやってきて「ニナは水の外では呼吸できないんだ!」とニナを助けようとするが警官に銃殺される。また……すぐ撃つなDCU警官。
息を引き取る前に父は「ニナは重荷なんかじゃなかったよ」と想いを告げて絶命。
これでキレて警官殺すのかな?と思ったら普通に捕まった。
ニナの場合、ウィーゼル同様、マジで悪いこと何もしてないままあんな厳重な刑務所に入れられて今は使い捨て特攻任務させられてるわけで気の毒すぎる。
そして現代パート。イラーナ王女が湖で泳いでいたので、衛兵に見つからず暗殺できるのはニナだけ……という事になりナイフを持って王女に水中から近づくニナ。
しかし昔仲良しだった少女に似てて遊んでもくれた王女に危険が迫ったことでウィーゼルが暴れて王女に気づかれる。そしてニナはナイフを王女に奪われ20回くらい刺されて死ぬ。
えっ……死んだ!?
ついさっき物凄く可哀想な回想を見せられて、非力な半魚人キャラが唯一活躍できる水中戦がラストバトルに来た……当然ニナが活躍できる、と思わせての突き放し。
過去も現在も可哀想な心優しいし何も悪いことしてないニナがやっと活躍できるステージがラストバトルに来たのに、仲間のウィーゼルの自覚のない裏切りが原因で刺されまくる何の価値もない犬死に……。
こんな気持ちにさせるためのキャラだったとは……。せめてもの慰めは過去回想で父と再会して父の愛が真実だったと知れた事だけか。
さすがに可哀想すぎる。まぁウィーゼルもイタチと大差ないIQしかないし悪気ないしな。
とはいえニナ……さすがに可哀想。
最後はブライドが「ニナだけは私達の中で唯一、悪気のない心の優しい……私のたった一人の友だちだった」と仇を討ってくれたのが救いか。
じゃキルケーの予知は本物で、それをより信じさせるためにクレイフェイスを雇ったってこと?それとイラーナ王女は結局なんだったの?「理由は考えてないが生きてたら将来死ぬほど強くなる悪の卵」ってだけのキャラだったって事でいいのか。元ネタいないのも読ませないためか。

ラスト、刑務所に帰ったブライドに補充された新メンバーを見る。
新しい巨大ボディで蘇ったGIロボットミイラ男カリス吸血コウモリ女ノスフェラータ。そしてウィーゼル同様に『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)から引き続き移籍してきたナナウエ/キング・シャーク
いや、この際だからニナも蘇らせてよ……。優しいニナだけ死んどるやん!
シーズン2で出てくるのを諦めないぞ。

 

そういう感じで、面白かったです。
第1、2話での悪趣味ギャグやエログロの多さ、OPアニメにコマンドスに続いてジェームズ・ガン本人が登場する出たがり(スタッフが勝手に描いたらしいが)……などに不安を覚えたが、どんどん尻上がりに良くなっていった。これは『ピースメイカー』〈シーズン1〉(2022)の時と同じだな。
やはりジェームズ・ガンに期待している、ガン作品だけにある独特のエモさを今回も感じられて良かった。
一番良かったのはウィーゼルの回、次にフォスの回。またこちらの上下を乱高下させてくれるフランケンはシーズン2でも期待だし(ブライド助けて死んで見直されて終わり、などのつまらん最後ではない気がする)。可哀想すぎるニナも良かった……と言えるのか?だが、確かに最終話までニナのこととかどうでも良かったけど死んで一気に可哀想になったな。そういう目的のキャラだったのだろう(だけど蘇らせてほしい)。
ブライドも最後にダークヒーロー性を見せたね。GIロボも「親切にしてくれたけどナチだから殺す」というエピソード良かったし。いつも最低なウォラーも最終話でニナが死んだあたりで「ごめん、間違いだった」と電話してくるあたり最低(そして実は間違いじゃなかったという)。
シニアは、こういうツーブロック白髪ヒゲみたいなイケオジキャラ苦手なんだけど(色気が出すぎてキモい)「同じく白髪ヒゲの出たがりなジェームズ・ガン、まさかこのモテモテイケオジのシニアに感情移入してるのでは……?」と恐れてたけどど、劇中では王女にSEXで骨抜きにされてボコられて終わったのでガンのバランス感覚まだ健在だとホッと安心した。
何だかんだウォラーやシニアといったA.R.G.U.S.上層部キャラは、酷いし最後にあんまり美味しくない役割になるのもバランス取れてる。
アニメじゃなくて実写だったらもっと良かったけど、とりあえずガン作品の中では上位に入る面白さでしたわ。

次は、夏の『スーパーマン』(2025)か?普通に期待ですね。

 

 

そんな感じでした
〈関連作〉
『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)/前作とハーレイ単独作で上手くやれなかった部分を全部こなすガン監督。そして本作そのものより魅力的なピースメイカー⭐ - gock221B
『ピースメイカー』〈シーズン1〉(2022) 全8話/「過ちを犯したクソ野郎にも更生の余地はあるのでは?」とジェームズ・ガンが問いかける傑作ドラマ🧜‍♂ - gock221B


〈DC以外のジェームズ・ガン監督作〉
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)/この一ヶ月くらい何度も観てるうち物凄い好きになった🦝 - gock221B
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017)/誰もが欲しがる強大なパワーを自ら棄て去るスターロードのカッコよさ🦝 - gock221B
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー/ホリデー・スペシャル』(2022)/マンティス&ドラックスは楽しいが、少年期のトラウマに対峙する以外させてもらえない中年男性スターロードと現実のバッシングを反映してずっと暗いままのクリプラが気になる🦝🎅🎄 - gock221B
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(2023)/ロケットの慟哭、コミックを映像化したかのような鮮やかなアクション、クイルや2014年ガモーラのガーディアンズ達の結末どれも良く今回も安定の力作。友達っていいね🦝 - gock221B

 


 

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