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『ピースメイカー』〈シーズン1〉(2022) 全8話/「過ちを犯したクソ野郎にも更生の余地はあるのでは?」とジェームズ・ガンが問いかける傑作ドラマ🧜‍♂


原題:Peacemaker 監督&脚本&原案:ジェームズ・ガン 監督:ジョディ・ヒル(第4話)、ローズマリー・ロドリゲス(第5話)、ブラッド・アンダーソン(第7話) 原作:ジョー・ギル、パット・ボイエッテ 制作&配信局:HBO Max(日本はU-NEXT) 製作国:アメリカ 配信時間:約45分、全8話 シリーズ:DC・エクステンデッド・ユニバース第10作目『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021) のスピンオフTVドラマ

 

 

🚽DCコミックのシネマティックユニバース……通称DCEU。その10作目『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)(長いから以下「ザ・スースク」と書く)に登場したキャラクター”ピースメイカ”を主人公にしたスピンオフ・ドラマ。監督はそのザ・スースク同様のジェームズ・ガン監督。
その前に、DCEU3作目まで話は戻る……、アメリカ政府がDC二流ヴィランばかり集めて爆弾を埋め込んで使い捨ての特攻任務させるチームを描いた『スーサイド・スクワッド』(2016)……は、ヒットはしたもののデヴィッド・エアー監督が撮ったダークでシリアスだった映画をワーナーが「もっと『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)みたいにポップにしろ」と編集でズタズタにされたり無理やりポップでカラフルにされた結果とんでもないクソつまらない一品に仕上がり酷評の嵐だったため無かった事になった(良かったのはマーゴット・ロビー演じるハーレイクインの知名度が上がった事だけ)。
そして数年後、MCU『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)シリーズを監督していたジェームズ・ガンは過去の悪趣味不適切ツイートが掘り起こされ、それを嫌ったDisneyからMARVELスタジオから追い出されてワーナーのDCに来て『スーサイド・スクワッド』(2016)のリブート作品『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)を撮った(ガンは一応続編としても観れるように作った)。
僕はDCEUよりMCUの方が最初から好きだが、ガンがDCに行ったらMARVELより自由に作れるだろうからDCに行かないかなと思ってたので嬉しかった。
ガン監督は結局、直後にDisneyと和解し、Disney+アニメ作品『アイ・アム・グルート』(2022)の製作総指揮と、Disney+クリスマス特別ドラマ『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー ホリデイ・スペシャル』(2022)とガーディアンズ完結編『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー Vol.3』(2023)を監督してからMARVELを去れる事になった。ガンは、それらMCU作品を撮り終わるとDCEUに来るらしい。
そんな感じで一瞬焦ったが「ガーディアンズ関連作を3作作った後にDCEUに合流」という僕が願ってた通りになったので良い感じです。
ガンの『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)は、クソみたいな邦題をワーナージャパンに付けられたものの内容は期待通りの面白さだった。
欠点はというと最後に生き残ったスクワッドが終盤、義侠心だか正義感だかに目覚めて突然に団結して命懸けでスタロと戦うクライマックスが違和感あったくらいか(ブラッドスポートは愛娘の命運を握られてるのに何故、娘を捨てて会ったばかりのスクワッドと団結して政府に逆らったのか全くわからない)。ガンはマイルドヤンキーじみた”絆”的な団結描写を入れたがる。個人的にはこれが上手くハマる場合(ガーディアンズ一作目)とイマイチな場合(ガーディアンズ2作目やザ・スースク)の二種類あると思う。身内や同志への愛が溢れて、そういった展開になるのだろうが丁度いい時と丁度良くない時がある。そういった仲間的な要素の良し悪しは、本作にも今後のガン作品にも影響をもたらしそうだし注目すべきポイント(ちなみに僕はガンのこと好き)。
ザ・スースクに文句あるのは、そこだけで作品自体は凄く面白くて良い作品でした。

🚽そしてそこに出てきた元WWEスーパースターのジョン・シナ演じるピースメイカーが本当に素晴らしいキャラだった。正直言ってマーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインを始めとするスクワッドの面々も皆、魅力的なんだけど、そんなスクワッドを全員合わせたより……いや『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)という映画作品そのものよりピースメイカーという一人のキャラの方が素晴らしかった(自分は映画で特定のキャラクターに入れ込むことは少ないので相当ハマったんだろうと我ながら思った)。そんで今までアメコミ映画100本以上観てきた中でベスト5に入るくらい好きなキャラになった(他にはマイケル・キートンバットマンとかトビーのスパイディーとかMCUキャップとか……)。ピースメイカーがどんなキャラなのかは後で話すとして……だが人を選ぶので「ピースメイカー大嫌い!」という人が居ても納得できるアクの強いキャラでもあった。ガン本人も「ザ・スースクでピースメイカーを嫌いだった人もドラマを観れば好きになるかも」とか言ってたし。
ピースメイカーという男……ガンが言うところ「クソ野郎バージョンのキャプテン・アメリカ」。平和を愛する自称ヒーローで「アメリカの平和のためなら女子供だろうがブッ殺す!」というダークヒーロー(もしくはヴィラン)。と言っても根っからの悪人ではなく優しい心や友情も持ち合わせている、ただ優先順位が個人より「平和」の方が上というだけ、たとえその平和の中身がどんな良くないものでも……。そこが面白かった。正に「アメリカ(……ではなくアメリカの自由な精神)と個人」を重んじるキャプテン・アメリカの正反対のキャラ。だが傷ついた表情で仲間を殺すピースメイカーには単純に「ダメなキャップ」というだけでない奥深さを感じた。だからこそピースメイカー単独作は嬉しかった。むしろ『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)は本作の前振りに過ぎなかったと言っても過言ではない。本作はそんなピースメイカーの内面に迫る。
ガンはMARVELを追い出された後ザ・スースクと、ついでにノリで本作の脚本を書き上げたらしい(本作の視聴にはこの点も重要)。

🚽配信された映像サブスクは、アメリカ本国ではNetflixやDisney+に迫る勢いで勢力を伸ばしつつあるHBO MAXが制作&配信した。だがHBO MAXは日本に来てない。日本ではU-NEXTがHBO MAX作品の数々の権利を買い取って配信するようだ。U-NEXTでないと観れないので僕は本作のためだけにNetflixを抜けてU-NEXTに加入した。だがHBO作品以外にも、僕が好きなタイプの旧作やホラーが豊富なので本作が作られなかったとしてもNetflixより、ずっと良いサービスだと入ってわかった。

🚽主演のジョン・シナWWEのスーパースター(WWEにおけるレスラーの名称)。WWE出身で俳優で大ブレイクしたのはドウェイン・ジョンソンWWE時代の名はザ・ロック)、シナ同様にガンとも組んでガーディアンズに出演しているデイヴ・バウティスタWWE時代の名はバティスタ)に続いて三人目。故ロディ・バイパーはジョン・カーペンターのカルト的な傑作『ゼイリブ』(1988)だけの一発屋(ただし歴史に残る素晴らしい一発だが)、他のストーンコールドやHHHはブレイクできなかった。
ドウェイン・ジョンソンは、その明るいキャラを活かしてコメディも出来る純粋なヒーローとして、バウティスタは雰囲気がシリアス過ぎるのでコメディリリーフや堅物マッチョの役を中心に作品選びするというクレバーな役選びでブレイクした。シナ本人は優しく賢いのだが「アホ」っぽく見せるのが上手いのでピースメイカー役でブレイクできた、という僕の見解。ブレイクできなかったWWEスパスタは、リングの上同様にマッチョで男らしいキャラで行こうとして失敗した感じ(一昔前ならそれでブレイクできただろうが時代を読み違えた)。WWEスパスタ時代のシナはキャップを被って敵をおちょくって倒すという悪ガキの身体だけ大きくしたような「白人の悪餓鬼キャラ」で第一線に君臨してキッズや女性に人気だった。『シンプソンズ』のバートを大人にしてマッチョにした感じか。ピースメイカー役にピッタリなのでガンがシナを選んだのかも。だがシナはプロレスの試合運びがそれほど上手くなく、それなのに運営からのプッシュや扱いが良すぎた、実力と優遇っぷりが見合ってなかったせいか大人の男のプロレスファンからは人気低かった(当時の僕も、嫌いではなかったが興味も無いスパスタだった)。ヒーローとしてリングに上って勝利するのにブーイングされていたスパスタだった。だが賢いシナはブーイングされる事も歓迎し、観客も最初は本気でブーイングしてたのにやがて愛情込めてシナに「声援」としてブーイングするようになりシナもそれを喜んだ。運営による「優遇しすぎ」による弊害を乗り越えたスパスタだった。俳優としては「アホ」「マッチョ」を全面に出してるイメージ。シナ同様にチンパンジーっぽい顔や雰囲気含めてマーク・ウォルバーグの後継者みたいな印象。マーク・ウォルバーグは私見ではガチにアホで悪い奴って印象だが、シナは自ら進んでアホを演じてる感じで、そこがシナの方がマーク・ウォルバーグより優れてる要素。今後のシナも楽しみだ。

ネタバレあり

 

 

 

 

前作『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)の、ピースメイカー中心のStory
政府のアマンダ・ウォラーヴィオラ・デイヴィス)の元に集められたスーパーヴィランたちは使い捨て特攻チーム”タスクフォースX”を組まされて”スターフィッシュ計画”に挑んだ。少しづつ団結が生まれてきたタスクフォースXだったが、その一員”ピースメイカ”ことクリストファー・スミスジョン・シナ)はアマンダ・ウォラーから「スターフィッシュ計画の秘密を外部に出すな」という密命を受けていた、正義感で政府の陰謀を暴こうとするリック・フラッグ隊長をピースメイカーは「(アメリカ政府の)平和のために」殺害する。リックは死に際に「一体、お前のどこが”ピースメイカー”なんだ?笑わせんな」と言う。そしてピースメイカーは、その行為に怒ったチームメンバーの怒りの銃弾に倒れた。
しかしピースメイカーは奇跡的に一命をとりとめて病院で目覚めた。

本作のStory……と登場人物紹介
はぐれ者チーム”タスクフォースX”からも、はぐれて致命傷を負った「平和のためなら女子供でも殺す」と嘯く露悪的な中年白人男性自称ヒーローピースメイカ”ことクリストファー・スミスジョン・シナ)。
奇跡的に一命を取り留めたピースメイカーは、残っていた長い刑期の免除を条件に、またしてもアマンダ・ウォラーの監視のもと「アメリカを脅かす驚異を秘密裏に排除する」という極秘任務「バタフライ計画」を強要される。
ピースメイカーをサポートする他のチームメンバーは……、
『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)
の”スターフィッシュ計画”でアマンダ・ウォラーの部下としてタスクフォースXをサポートしていたがウォラーに逆らったため「ピースメイカーのサポート」という汚れ任務に飛ばされたNSAエージェント、エミリア・ハーコート(ジェニファー・ホランド)。

ハーコート同様に”スターフィッシュ計画”でウォラーに逆らって今回の任務に飛ばされて後方支援担当になったベルレーブ刑務所の所長、ジョン・エコノモス(スティーヴ・エイジー)。
アマンダ・ウォラーの部下で今回の”バタフライ計画”の責任者、クレムゾン・マーン(チュクウディ・イウジ)。

そして新人エージェントなのに何故か突然この難易度の高い任務に編入されたレズビアンの女性、レオタ・アデバヨ(ダニエル・ブルックス)。

ついでにピースメイカーのペットであり唯一の親友でもあるワッシー(言語ではEagly/イーグリー)。
ピースメイカーのストーカーで、ピースメイカーを数倍アホにして「正義のためなら殺しまくる、もし関係ない人を巻き添えで殺しても何も感じない」というサイコパスでもあるクライムファイター、エイドリアン・チェイスビジランテ(フレディー・ストローマ)。ワッシーとビジランテも、ピースメイカーに好意で協力してる内に、いつの間にかバラフライ計画チームのメンバーになる。

ピースメイカーのは、女性蔑視レイシスト白人至上主義の元スーパーヴィラン、”ホワイトドラゴン”として知られていた最低最悪の男、オーガスト・“オーギー”・スミスロバート・パトリック)。

騒ぎを起こしたピースメイカーとホワイトドラゴンを追うアジア系の捜査官ソフィー・ソング(アニー・チャン)。
地球人ながらバタフライ側に味方してピースメイカー達に立ちはだかる超小柄だがマーシャルアーツの達人のジュードーマスター(ヌット・ リー)。

ピースメイカー達は任務に取り組むうちにバラバラだったチームには結束力が生まれ、ピースメイカーの心の闇や”バタフライ計画”の全貌が明らかになっていく――

そんな話。
ピースメイカーの吹き替え声優は大塚明夫大塚明夫は名優なので演技には文句はないが大塚明夫の低い声はシナに合ってない気がしたので初回は字幕で観た。でも二回目にイッキ観した時は吹き替えで観た。やはり大塚明夫の演技はバッチリだったものの、やはりピースメイカーはもう少し軽めの声が合ってる気がする。

 

 

 

🚽ここからやっと感想だが、感想までの前段階が長くて疲れた……。でも感想書く前の、前述で書いた作品の背景の事も知っておかないと本作はただ「そこそこ楽しいドラマ」に過ぎないので、作品背景のことも感想に含まれるのでこのブログでは毎回書いている(ゴッホの絵を真に理解するには、ゴッホの私生活を知る必要があるのと同じ)。

「政府がヴィランに爆弾を埋め込んで使い捨ての決死の任務をやらせるチーム”タスクフォースX”(ザ・スーサイド・スクワッド)……からも、はぐれてしまったクソ野郎ピースメイカーを、政府からはぐれてしまった者達がサポートして地球外生物の驚異を排除する(ただし都合の悪い事は隠蔽する)」という構造やメインストーリーとなる”バタフライ計画”は、地球外生命体だけが悪いだけではないという点も含めて『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)の”スターフィッシュ計画”と似ており、本作はザ・スースクをピースメイカーで更に向上させて繰り返した作品とも言える。
本作の表面的なウリはガン監督が得意とする、はぐれ者達の団結、懐メロや楽しいダンスのOP、悪趣味なSEX&残虐描写、くだらないジョーク、ガンが好きだったサブカルや懐かしい音楽、かわいい動物、DCコミック原作のマイナーなネタ、最後にDCEU的なサプライズ……など。まぁそれらの楽しいガン要素は、いちいち挙げてったらブログが長くなるし楽しさは一目瞭然なので、この感想からは全部省きます、自分で観てください。

🎹いや、懐メロについてだけ少し書く。本作ではジェームズ・ガン恒例の80年代の懐メロが頻繁に流れる。ピースメイカーと幼くして死んだ彼の兄が(勿論ガンも)80年代ハードロックやメタル好きだったという理由でそういう音楽がよく流れる。僕も本作のサントラの中ではモトリー・クルーとかハノイ・ロックスとかは持ってたけど、好きだったのは小学生の時だけだし、あまり思い入れなかった。……だけど聴いてるうちに良い曲が色々あったので貼っとこう。

まずは素晴らしいダンスと共に毎話で聴くことになる素晴らしいOP曲↓

ジュードマスターが逃亡しようとした時にカーステから日本の女の子の唄が流れてたけど、ジェームズ・ガンが作ったSpotifyプレイリストによると”BAND-MAID”っていうメイドの格好でハードな演奏をする日本のガールズバンドの曲だった(『パリピ孔明』のアザリエみたいに、売るためにプロデューサーに萌え衣装を強要されてるのかと心配したもののWikipediaを読むと「メイド喫茶で働いてたリーダーのアイデア」らしくて安心した)。↓

あとビジランテが収監される時のこの曲が好きだった。↓

警察署を襲撃するバタフライのシーンの曲も凄くカッコいい。↓

ペットの犬が余命数日で傷心のジェームズ・ガンを元気づけるため空港のピアノを弾いたという出来事からジョン・シナ本人による感動的なピアノ演奏が本編に組み込まれた。その曲もあった。↓

この曲もよかったが、どの場面に流れた曲だったか覚えてない。終盤かな↓

※追記:このブログ書いた夜に、このジェームズ・ガンの『ピースメイカー』プレイリスト流して寝たが、ガンの良い選曲もそうだがガンによる曲の並べ順が絶妙だと思って何度も聴いた。ハードロックやメタルに興味ない僕が言うんだからガチ。

 

 

 

🚽自称ヒーローのピースメイカー、その能力は、鍛え上げた筋肉と父親に叩き込まれた殺人技術、重火器や爆発物や刃物などの武器。そして父が発明した「衝撃波」「透視ビジョン」「空中浮遊」「人間魚雷」など用途別の様々な機能が付いた便器みたいなヘルメット(一つのメットに全部の機能があるわけではなく「メット一個につき一つの機能」というのがマヌケな面白さを醸し出している)。その物理的な強さをMCUヒーローで喩えるなら丁度ホークアイくらいの強さ。
あとペットである鷲のワッシー(原語ではイーグリー)によるサポート……友達が居ないので鳥がサイドキックというのが泣かせる(それは劇中でビジランテにも「口答えしない動物しか友達がいない!」と言われる)。僕も中年になって遊んでくれる友だちが数少ない人間と猫二匹になりつつあるので共感ポイント。
白人の「無自覚ないじめっ子」をそのまま大きくしたような性格。男性優位的でマイノリティを下に見るジョークをついつい言ってしまい嫌われる。だが観ていくと、それは「父に好かれるため、そうしなきゃいけない」という思い込みで無理に露悪的にしている事がわかってくる(これは時代に合わせて悪趣味な露悪的ジョークを言ってMAEVELを追い出されかけた若い時のジェームズ・ガンに通じている)。本来のピースメイカーの内面は、愛情に飢えており動物やカワイイものが好きな男(ペットのワッシーや「子猫の形のクッキーの型」などへの愛情、そして敵のラスボスであるゴフにすら親切にする優しさなどで、それは見て取れる)。そして本当は感受性も豊かなのだが父に「女々しいダメな息子だ!」と言われるのが嫌で隠している。彼の繊細な感受性は誰も見てない場所で美しいピアノを弾くシーンや自部屋で不完全な自分を憐れんで泣くシーンなどで見て取れる。
そしてピースメイカーは、前作ザ・スースクで「リッグ隊長は正しい事をしようとしてたのに、政府に与えられた任務によって盲目的に殺してしまった」ことが脳裏に残っており、本作の劇中で何度も何度も回想しては泣く。後悔しているのだろう。
ピースメイカーの歪んだ性格は、実父であるスーパーヴィラン”ホワイトドラゴン”の歪んだ教育や虐待やそれによるトラウマ的な事故から来ている事が明らかになる。ピースメイカーが父に負わされたトラウマを乗り越えるのも本作のメインテーマの一つ。「悪い父親に対応する話」はガーディアンズなどでも出てきてるので第一話観て「また悪い父親ストーリーかぁ……」と少し思ったけど最後まで観たら良かったのでOKです。
父ホワイトドラゴンは、有害な男性性を持ち&女性やマイノリティ蔑視……というか「白人男性以外は全員見下している」最低の男。女性はオナホとしか思っておらず、息子二人を殴り合わせるという闘犬のような賭けの対称にしたり、息子に殺人を強要していた男。もはや更生の余地のないピュア・イーヴィルとも言えるヴィラン。しかし本作のラストでは「そんなホワイトドラゴンでさえも更生の余地はあったのか?」という問い掛けが成される。言うまでもなく不適切発言で干されかけたジェームズ・ガンの過去の悪い部分や「有害な父親像」をミックスさせた存在だろう。ターミネーターT-1000の人が演じてる(年齢の割に異常に老けてたので体調を心配した)。
ホワイトドラゴンは、お気に入りだった長男とピースメイカーを賭けで殴り合わせたら長男が事故で死んでしまい、死なせたピースメイカーを憎んでいる。そんな虐待まみれで育ったピースメイカーは愛に飢えているので、そんな最低の父にすら愛してもらおうとホワイトドラゴンが気に入るような「白人男性以外の人間を卑下したジョーク」などで父に媚びる。父ホワイトドラゴンは、そんな「自分に媚びたジョーク」を聞いてる時だけは笑うが、それ以外ではピースメイカーの事を常にゴミ息子だと思って罵倒する。

ピースメイカーと同時に本作のもう一人の主人公と言えるのが、黒人大柄レズビアン女性というマイノリティ要素の多い新人エージェント、アデバヨ。
アデバヨもまた「アメリカの平和のためなら他人の命など何とも思っていない」冷血にして冷酷なアマンダ・ウォラーの娘。ピースメイカー同様に毒親との葛藤を抱えている。そしてピースメイカー同様に親の影響で歪められた性格により過ちを犯してしまう。そして、これまたピースメイカー同様に、親の悪影響や自分の歪みを自力と”ズッ友”達からの影響で乗り越える。
ピースメイカーとアデバヨ、被ってる2人のキャラを出したのは、ピースメイカーの毒親ホワイトドラゴンを描くだけでは足りないと思い、前作ザ・スースクで「タスクフォースX(スーサイド・スクワッド)の毒親」とも言えるアマンダ・ウォラーを「有害な親」として描き、その子供(ピースメイカーとアデバヨ)が乗り越える展開を描きたかったからだろう。本作は、本作で終わっても良いようにかザ・スースクの事も決着付けて終わる。ピースメイカーとホワイトドラゴンの父子だけでなくアデバヨとウォラーの母娘を描くことによって、ザ・スースクからの流れも補完できた。
言うまでもなくピースメイカーとアデバヨ、そしてホワイトドラゴンとアマンダ・ウォラー、本作の軸となるこの四人は何度も言ってるが、ガンが過去の自分を断罪して生まれたキャラ達だろう。
更に、ガン本人の過去の問題と繋がりそうな要素は「良くない思想や良くない過去を持っていた人間は今後も生きていく資格がないのか?」というテーマも含まれている。
ガン本人の過去の不適切発言もそうだが最近、ガーディアンズ主人公のクリス・プラットの色んな問題(書くの面倒なので各自検索してください)で「このクリス・プラット……ガチのクソ野郎かな?」という疑惑がある。それによって「クリス・プラットガーディアンズ完結編に出すな!」とファンに言われたりもした。ガンは「降板はさせない!君達はクリスを知らんでしょ?僕はよく知ってる!」とクリプラを擁護した。本作っぽく言うなら「クリプラはズッ友だから俺はクリプラを信じて共に最後を迎える!」という、あまり論理的ではないガンらしいマイルドヤンキー的な精神論的な擁護意見だった。
それを受けてMCUファンはSNSとかで「ガンが『降板させるなら私もMCUから去ります』?どうぞどうぞ笑」みたいな冷ややかな意見も少なくなくあった。
僕はといえば「クリプラ、確かに問題ありそうだけど色々明らかになってないから、ここは様子見しよう」という「見(けん)」の感じ。だがクリプラが仮に悪くなかったという最良の結果に落ち着いたとしても「現代にしては、凄く無神経でバカな男」という結論になりそうだが。
ガンは、ピースメイカーとアデバヨを通じて「人間、環境によって過ちを犯すクソ野郎にもなり得る。しかし”ズッ友”や仲間達を得て正しい行いをするマシな人間になれるのではないか?だから改善の余地を奪ってしまうのは良くないんじゃないか?」というメッセージを提示した。もちろん干されかけた自分への擁護もあるだろうけどね。ラストでピースメイカーが肉体と精神の二度殺した更生の余地のないクソな父親ホワイトドラゴンの幻影と、反目するでもなく隣に座ってたのはピースメイカーが父を殺すだけでなく「許し」を与える事が出来るほどに完全に乗り越えた描写だと思った。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017)『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)の「ズッ友の絆」描写は乗れなかったが本作のズッ友描写は個人的には納得できるものだった。だからこそ僕はガンやクリプラに対しても、温かく見守ろうと思った。そもそも我々も聖人君子ではなく叩けばホコリの出る奴ばかりだろ、ピースメイカー(ひいてはガン本人)に石を投げれるほど立派な人物ではない。まぁ、清い少年少女とかはピースメイカーやガンやクリプラを非難してもいいかも(本編でもピースメイカーが子供や老人にボロクソ言われるシーンがある)。
だが「そんなの甘い!ガンやクリプラは最低!彼らの作品はもう観ない!」という人もいる、そういう意見も勿論それらの人の自由だと思う。
※追記:Twitterのフォロワーさんの指摘でも思いましたが、庵野がプロデユーサーや夫という只の監督以上の立場に身を置き、そしてオタク道を極めた結果、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』(2021)で限界を突き抜けて1ステージ上に行ったように、ガンも「悪趣味ズッ友」という向上しようのない映画秘宝的などうしようもない要素を突き詰めて突き抜けた感じを本作に感じた。
両者とも「これ続けても先なくない?」という壁を突き抜けた突破者という地平を見せてくれたので他にはない感動があった。

 

 

 

👩🏾‍🤝‍👨🏻👩🏾‍🤝‍👨🏻(おまけ)ピースメイカーとアデバヨと2人の親以外の話
ガンの奥さん演じるハーコートのカッコよすぎる肉体やツンデレ、ピースメイカーに虐められてたが音楽を通じて”ズッ友”になり非力なのに毎回強敵を倒すエコノモス、秘密を抱えたマーン司令官、ゴフやジュードーマスター……も魅力あったが記事が長くなったし一目瞭然なので彼らについては省略する。
あ、ピースメイカーのアホ過ぎるストーカーから”ズッ友”に昇格したビジランテ。彼は、アホのピースメイカーを更にアホにして更にサイコパスにしたキャラクターとして登場した。天才アラン・ムーア原作のDCコミックを集めた邦訳『バットマン:キリングジョーク―アラン・ムーアDCユニバース・ストーリーズ』で知ってました。原作ではアホではなかったけど。彼の「ビジランテ(自警団)」って名前……スーパーヒーローが「俺の名は『スーパーヒーロー』だ!」と言ってるかのような直球すぎる名前で可笑しい。そして見た目も日本人好みのフルフェイスだし『秘密戦隊ゴレンジャー』の一員みたいなスーツで気に入りました。サイコパスビジランテが人間界と繋がってるのは「ピースメイカーとズッ友になりたい!」という一点のみだ、だけど終盤ではチームの皆とも友達になれた。ピースメイカーが振り向いてくれなかった時の相棒はマターイーターラッド。お気に入りの絵文字は「人魚」という使い道がなくて説明なしでは意図がわからない絵文字(一言で言うと「エモい」という意味の絵文字)🧜
感想書いて疲れたので、アクアマンやマターイーターラッドカイトマンなどのDCコミック原作ネタは各自で調べてください。
あと第一話でさりげなく出したものが実は伏線で最終回で回収されたりするんだが、そんなの初見では二ヶ月経過してるから当然覚えてなかったので、見るなら1~2日で一気に観た方が面白いと思います。

🕊️本作の「スースクの流れ」としては、ガンが本作のシーズン2を作るのが決定(楽しみ)、あとアマンダ・ウォラーのドラマが作られるらしい(こっちは大して楽しみでもない)、悪徳を暴露されたウォラーの話になるのかな?とりあえずガンの今後のDC作品、楽しみです。DCEU的には『ブラックアダム』(2022)、『シャザム!:フューリー・オブ・ザ・ゴッズ』(2022)というシャザム系の二作が年内に公開されるのが楽しみですね。

 

 

 

 

 

 

そんな感じでした

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ジェームズ・ガン監督映画、制作映画〉
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)/この一ヶ月くらい何度も観てるうち物凄い好きになった🦝 - gock221B
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017)/誰もが欲しがる強大なパワーを自ら棄て去るスターロードのカッコよさ🦝 - gock221B
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー/ホリデー・スペシャル』(2022)/暖かい楽しさ!その一方で少年期のトラウマに対峙する以外させてもらえないスターロードと現実のバッシングを反映してずっと暗いままのクリプラ。中年なのでヒーローがキツくなってきたがX-MENまでは頑張る話🦝🎅🎄 - gock221B
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(2023)/ロケットの慟哭、コミックを映像化したかのような鮮やかなアクション、クイルや2014年ガモーラのガーディアンズ達の結末どれも良く今回も安定の力作。友達っていいね🦝 - gock221B

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Peacemaker (TV Series 2022– ) - IMDb

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