gock221B

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『三国志』(1971-1987)/19巻までの前半を読んで本当に恐いのは劉備だと思った🐎

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作者:横山光輝

 

唐突だが、横光三国志を読みたくなった。


はじめに。横光三国志三国志 ※ここは自分の話なので読まずに飛ばしてOK

自分は三国志に全く詳しくない。吉川英治版も演義も正史も読んでいない。
20歳前後の頃、色んな古い大御所漫画家を読もうと各人かたっぱしから読み、全部面白く画も魅力的でことごとくハマった。だが「絵柄や登場人物の顔が渇いていて一番カッコいい」と思って楽しみにしていた横山光輝水滸伝を読んだあと三国志を読み始めたが、正直あまりに淡々と進むコマ割りと物事の結果の羅列(に思えた)に戸惑って何が面白いのかサッパリわからなかった。それまで歴史ものに触れて来なかったのもあるかもしれないが面白くないとかいう以前に、進むストーリーは明快なのに、どう読めばいいかわからない自分に戸惑うという不思議な感覚だった。
その頃は漫画としてジョジョみたいな構成の漫画が最高!と思っていたような頃なので、真逆に位置する本作は自分にとっては高度な漫画に思えて非常に読み難い‥、一言で言うと、登場人物の心理をもっと書いてくれないとアホだった俺の脳では結果の羅列にしか見えず、いきなり能(のう)を見せられたみたいな気分になり理解できなかった。まだ頭が柔らかい小学生の頃、読んでおくべきだったと思った。キャラの名前と顔も一致しなかったし
同時期ある作家が「横光三国志は行間を読む漫画だから実は年取って読んだ方が面白い」と言っていたのでそうする事にして10数年以上経った。
数年前「レッドクリフ」公開時期に横光三国志赤壁部分だけがコンビニ本になってた

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ちょうどいいやと思って買って読んだら、これが死ぬほど面白かった。赤壁編前後を繰り返し読んだ。
面白かったが、その時忙しかったし巻数が多いので、残りはそのうち通して読もうとか思いつつ時が過ぎ、今に至り読みだした。


黄河を眺める劉備(1巻「桃園の誓い」)
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まず最初の、一巻冒頭の劉備黄河を眺めているくだりでしびれた。
この黄河は、三国志そのものや国史横山光輝先生の人生いや各人の人生や宇宙や世界や、万物流転する森羅万象‥あらゆるものに当てはめて観る事ができる。
それを貧しいちっぽけな劉備がニコニコしながら眺めている‥、というこのコマだけで、もうたまらなかった(たまらないので、自分も井の頭公園に行ってデカい池を眺めたりした)
どうしていいかわからない。そう、いつもわからなかった。。
昔はわからなかった劉備の母親の親心もわかるし、黄巾党の横暴には「許すまじ!」と素直に思えたのだった。


戦闘シーン
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序盤を読むと、張飛の戦闘シーンはとにかく気持ちいいものだった。
ブーン!とかいって武器を振り、敵が真っ二つになったり首がすっ飛んでいく。
昔、横光三国志がアニメでやってたが、もっと原作のこの画そのまま(せめて顔だけでも)こういう凄惨な戦闘シーンを観たいなぁと思う。
日本の漫画家が描く男の顔の中では横光先生が一番カッコいいと思う。昭和の時代の男前の顔。黒澤映画に出てた事の三船敏郎的な顔。
また歳取ると、少年漫画とか読めなくなってくる理由の一つに戦闘が異常に長いというものがある。キン肉マン板垣恵介の漫画みたいに対戦カードや戦闘シーンの攻防そのものがストーリーより重要な漫画ならともかく、そうじゃない少年漫画の戦闘シーンはダラダラ続いても何の意味ないので飛ばしてしまう、全部、本作やアメコミみたいに1、2ページで終わればいいのに



張飛の純粋さと、その大失敗(序盤と10巻「徐州の謀略戦」)
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読んでなかった癖に言うのも何だが、昔から「張飛カッコいいな」と思っていた。
とにかくわかりやすい。パラメータが攻撃力と忠誠心に全振りというのが明快さ。
七人の侍三船敏郎みたいな爽快さがある。
横光版の張飛の場合はルックスがめちゃくちゃカッコいいというのもある。
他の色んなメディアの三国志に触れる時も、たいてい張飛が好きだった。
本作の張飛は、劉備関羽曹操と共に、おそらく当初の読者である児童が感情移入して読むことができるキャラの中でも特に直情的なキャラだった。序盤は精神年齢10歳くらいに見える。おまけに劉備が芙蓉姫とデートするくだりでは「知らねえけど女の子っていいもんなんだろうな」みたいな事まで言っている。昔の漫画にだけいる完全に子供の心を持った大人(しばらくしたらするっと普通の大人になっているが)
そんな彼だが自分のために怒るよりも、激高する場面の殆どは劉備を侮辱された時や正義感を燃やす時というのがいい。
序盤は、彼が怒ったり泣いたりする度にグッと来る
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劉備関羽が居ない間、徐州を任された酒乱の張飛は、二人からくれぐれも酒を飲まない様に言われる。最初は律儀に守っていた張飛だがつい一杯‥もう一杯だけなら‥と呑んでしまい酔っぱらったところを呂布に強襲され徐州を奪われてしまう。
ほうほうの体で劉備関羽の元に逃げて来た張飛は目も当てられんくらい反省してる!
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こういう場面は大好きだ。
張飛「二人に約束したのに酒を飲んでしまいました‥しかも部下を殴りました‥それが原因で呂布が攻めてきたが酔っててやられました‥」張飛泣いちゃう‥
張飛は自決しようとするが、劉備は止めて「次から気をつけてね」と言う
張飛は子供のように泣きじゃくるのだった。たまらないものがある
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ダークヒーロー曹操の魔性(4巻「乱世の奸雄」15巻「玄徳の秘計」ほか)
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こうして読むと序盤の劉備たち桃園三兄弟の出番は意外なほど少なくて驚いた。
しかもスッキリするシーンは殆ど無く、実力はあって活躍するもフリーターなために一切評価されず張飛がキレそうになって劉備関羽がなだめる、という場面の繰り返し。土地を追われての放浪に次ぐ放浪。。
でも人生ってこんな感じだよね。ますます、小学生の時にジャンプ漫画だけじゃなくて本作を読みたかったと思った。タイムスリップできたら幼少時の自分に本作を読ませて将棋を学ばせたい
まあ前半の真の主人公は曹操だと言われてる通り、劉備たちより曹操の方が出番が多く見えるし内容も濃かった。
曹操は、シャアやディオを思わせるキャラなためか、何となく読んでるうちに彼の声が、若い時は子安、少し出世してからは池田秀一の声で脳内再生された。
この序盤、ダークヒーロー曹操の白面の美男子っぷりは文句なくカッコいい。
かと思えば唐突にうっかりミスして隙を見せ、アイドル性を発揮して男女共に魅了する
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特に有名な、親切にしてくれた無実の叔父さん家族を自分の勘違いで皆殺しにするくだりは100%曹操に否があるにも関わらず、読んでると不思議と曹操を非難する気持ちよりもワクワクしてくる。曹操の魔性に当てられたか?
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↑特にこのコマが放つ活気がすごい
また劉備に「天下を獲る映雄にふさわしい人物は二人いる。それは‥
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」と言う。このコマは単純に痺れた。。
普通、こんな事は直接言えない。よほど自分に自信があるんだろう。
言われて内心「やばい、見抜かれてる」と思う劉備もカッコいいし、名シーンだ

 


董卓をハメる王允のカッコよさ(6巻 「玉璽の行方」&7巻「江東の波乱」)
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輩の集団、黄巾党が滅んでも、また新たな圧制者が現れる展開が延々と続く。
暗君に次ぐ暗君の跳梁。中でも最も横暴な董卓董卓討つべし!という気持ちが更に高まる
www.youtube.com

おもしろ三国志董卓討つべし」は、こちらの6分6秒からのパフォーマンスが更におすすめ
https://youtu.be/pVdje8CNRJQ?t=366

王允貂蝉父娘が美女連環の計によって董卓呂布の心を乱す。
計がうまくいく度に挟み込まれる王允の笑みが、悪辣過ぎて逆賊を討つぞ!という顔にはとても見えず最高だ。毎回悪そうな顔で描いているから、横光先生は王允に対してこういうイメージだったんだろう
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実写版なら津川雅彦に演じてもらいたいところ
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いよいよ、董卓にトドメを刺す場面も実に悪い顔をしている
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三国志詳しくなかったので王允なんかよく知らなかったが、横光版読んですっかり好きになってしまった(まあ、他に出番ないがな‥)
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また貂蝉も架空の人物な上に原作にはいつ死んだかは不明らしいが、本作では王允父娘に操られた呂布董卓を仕留めた後に勝手に死んでいる。理由がわかってない呂布死ぬまで気になるだろうし心的ダメージが半端ないと思う。合理的に言うならついでに呂布も毒で殺した後死ねばよかったのにという気がしないでもない
暗君・董卓は死んだが呂布も相当なアホなので暗い時代はまだまだ終わらないのだった

 

呂布をハメる陳父子のカッコよさ(12巻「南陽の攻防戦」~14巻「呂布の末路」)
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董卓をハメた王允父娘のように呂布をハメる陳父子もカッコよかった
三国志に詳しくないので王允も陳老人も全く知らなかったので、不意打ちにここだけ活躍しまくる彼らの悪だくみが異常にカッコよく感じた
このコマなど完全に真っ黒!になっていて異常なカッコよさ
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そんな感じで呂布は滅びる。呂布は体育会系の嫌な部分を煮詰めたような男だった。
精神的に弱く、すぐに流されたり裏切ったりする。その癖一番強いのだから始末が悪い
史実や演義などでどうだったのかは知らないが、横光版だけ観た印象だとイメージ悪いな。。地方のDV夫のような良くないイメージ。呂布を応援したくなったのは可愛い娘を背負って逃げてる場面だけだったな。あと一個だけ「実は賢いところもあるよ」って感じの矢の逸話もあったな。しかし全体的にはどうしようもない奴だった
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関羽の千里行、面白すぎる!(17巻「関羽の苦悶」~19巻「呉国の暗雲」)

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攻められ劉備張飛は行方不明、一人で頑張ってた関羽も城を奪われ討ち死にしようとする。しかし関羽を配下に欲しい曹操のために張遼関羽を口説くが、この張遼口説きが何とも冴えてる。こういう場面や、先の王允や陳老人や後の徐庶孔明のような「この人、確実に賢いわ~!」と思わされる場面を読んだら「読んでよかった~」と凄く思う。
曹操の元に来た関羽曹操関羽を口説くが、劉備への忠誠を示しつつ失礼のないように曹操をいなす関羽のいい女っぷりが凄い。
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この辺を読んでると、この髭の大男が黒髪ロングヘアーの女に思えてくるから不思議
そして、劉備の安否がわかり劉備の妻子を連れ、数々の関所の、ただ仕事をしてるだけの門番の首を刎ねまくって突破し続けるというコマンドーのシュワ氏のような関羽。親切な父子に会ったり山賊が仲間になったり、あまりにも面白すぎる!
ここだけ映画になってるので観たが、色々いじりまくって相当つまらなかった
そのままやるだけで面白すぎる千里行をこんなつまらなくできるというのも凄い

gock221b.hatenablog.com


繰り返す相槌がいい。相槌が
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相手の言った事を繰り返す相槌がツボにはまった。俺も使っていきたい


本当は怖い劉備の真の恐ろしさ
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曹操に「真の英雄は二人いる。君と余だ!」と言われ、まだ体勢が整っていないうちに器と実力を看破された事を恐れた劉備は、曹操警戒心を解こうと雷にビビるフリしたり農作業を始めて必死に舐められようとする。
ひとまず曹操を上手く騙せたついでに関羽張飛も呆れるのが面白い。
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この、アホになってバカ負けして、今のところは相手に舐められようとする」いう劉備のやり方は凄く賢い人って感じがして大好きだ。
もし言われたのが、俺のような凡人だったら「うほっ、曹操に恐れられてるぜ!」と得意になってしまいそうだ。
19巻まで読んでると、序盤は掴みどころのない聖人君子然としていてそれは19巻前後も同じなのだが徐々に「この劉備って‥本当に、本当の意味で怖い人なのでは?」と思えてくる。
劉備嫌いが言いがちな「劉備は偽善者」みたいなしょうもない事が言いたいのではなく、臥薪嘗胆の時を待ち、それでいてキラキラした爽やかな好青年顔のまま雌伏の時を過ごし続ける劉備が、だんだん本気で恐ろしくなってくる。
この僕の言う事を信じてもらいたい。
横光先生が狙ってそのように描いてるのか、それとも描いてるうちに偶然そんな感じになってしまったのかはわからない。もっと先を読めばわかるかもしれないので楽しみだ




他にも面白いところは色々あるが長くなるので思い浮かぶ事だけ書いた。
あと巨大化張飛とかウム!の等の、ネットで人気のネタとかは今更わざわざ書いても仕方ないので省いた。それにしてもウム!のコマが出て来たときは不意打ちだったのでインパクト大だった。
そして自分が真に好きだったのは中盤だし、劉備が更なる怖さを見せてくれるのも楽しみ。この感想の続きは、またいつか読んだ頃に書くかもしれない。
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そんな感じでした

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三国志 (横山光輝) - Wikipedia

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三国志全30巻漫画文庫 (潮漫画文庫)

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三国志 (新書版) 全60巻 (希望コミックス)

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横山光輝三国志大百科 永久保存版

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