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gock221B

映画その他の感想用ブログ(2015年開設) http://gock.flavors.me/

「ブリッジ・オブ・スパイ(2015)」スティーブン・スピルバーグ/傑作。善悪を見極めたいアメリカンヒーロー俳優は何で皆曖昧な表情になるのか

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原題:Bridge of Spies 監督:スティーヴン・スピルバーグ 製作国:アメリカ 上映時間:142分

子供時代が80年代だったので、御多分に漏れずインディ・ジョーンズシリーズを始めとしてスピルバーグが撮ったり彼が制作するスピルバーグ映画で大盛り上がりしていた(どれも家の中にスモークが焚かれてて光り輝く幽霊が出て犬を飼ってる中でノーマン・ロックウェル的人物が活躍するような‥)
90年代は彼のことを忘れて過ごしてたが後から見たら「ジュラシック・パーク」や「プライベート・ライアン」等が素晴らしかった。ついでに初期作の「続・激突!/カージャック」とか観て感動してたりした。
2000年代の「マイノリティ・リポート」「ターミナル」「宇宙戦争」「ミュンヘン」‥この辺りが一番盛り上がってたかもしれない。
しかし、その後のクリスタル・スカルの王国、タンタンの冒険、戦火の馬‥この連打でガッカリして心が離れた(前作リンカーンはまだ観てない)。
しかしスピルバーグのような監督が「ダメになった」なんて事はありえないので、また盛り上がれる時期が来たら盛り上がろうと内心思ってはいたが、そんな感じで期待してなかったが「地味そうだがスピルバーグだから一応観とくか」と義務感で渋々観たが物凄い傑作だったので震えた。。


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冷戦中のブルックリンで世を忍ぶ仮の姿として画家のふりをして暮らしていたソ連のスパイ、ルドルフ・アベル(マーク・ライランス)がFBIに捕まる。
彼の弁護を形だけでいいから務めてくれと言われた弁護士が主人公ジェームズ・ドノヴァントム・ハンクス)。
ドノヴァンはアベルとの守秘義務を守り、裁判をする前からもう有罪が決まっているアベルを真剣に弁護する。
ドノヴァンは裁判所や街中でも「敵国のスパイ野郎を弁護とは何事か!」となじられ、終いには家に銃弾を撃ち込まれる。
そんなドノヴァンの努力も虚しく陪審評決は全員一致でアベルは有罪。
しかし「人質交換に使える」と訴えてアベルの死刑だけは防ぐことに成功。
そんな時、ソ連で偵察活動をしていた米軍の偵察機パイロット、フランシス・ゲイリー・パワーズが撃墜されて捕虜となり厳しい尋問を受ける。
アベルとパワーズ、、ドノヴァンが予期していた人質交換の機会が来た。
そして時を同じくしてドイツにてベルリンの壁を越えようとしたアメリカ人留学生フレデリック・プライヤーも捕えられる。
ドノヴァンはアベルパワーズと留学生と交換し、三人共救うべく東ベルリンのソ連大使館に向かう。。

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という実話を元にした話。
もう序盤、登場人物の中でドノヴァンだけが憲法を死守してアベルを弁護している様子だけでも痺れる。
裁判官とか警護に当たってる警察官なども「スパイを本気で弁護してお前はアホか!」とモロに言ってくる。
発展途上の蛮族共が‥と一瞬思うが、もし今、日本でこのトム・ハンクスみたいな状況で更にそれが報道されてたら‥と想像したら、まとめサイトで佐村河内とかと並んで「今年のやべえ奴」みたいな画像にまとめられ叩かれて、妻は西友で買い物できなくなり子供はいじめられて引きこもる光景しか想像できない。
ネットがある分、今の方が酷い事になるかもしれないな。
アベルはというと捕まっても全く意に介していないかのように飄々としており、ドノヴァンに「不安はないのか?」と訊かれても「不安?不安が役に立つのかね?」と言う。
この如何にもスパイっぽい台詞、違う局面では恐ろしい台詞なのかもしれないが、本作で繰り返し言うアベル氏は正直カッコいい。

何故、善悪を見極めたいアメリカのヒーロー俳優は何で皆ボンヤリ顔になるのか
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スピルバーグ映画で「あまりスーパーすぎない、勇気と誇りを持った市民の延長としてのヒーロー」をよく演じているトム・ハンクス
彼は常に靄がかかったようなボンヤリした表情と目つきをしている。
そしてスピルバーグと仲のいい先輩イーストウッドも劇中で主人公を演ずる時、何を見ているのかわかりにくいボンヤリした顔をしていた‥いやイーストウッドの場合、表情に加えて影が濃すぎるので目元が真っ暗になって急に表情が読めなくなるのもある。
本作のトム・ハンクスイーストウッド映画風に顔が真っ黒になる時が多かった
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この人、昔はツルンとした顔してたが今は老けて、凄く複雑な顔になってきたので段々渋くなってきた。
よくわからないが、アメリカの複雑な社会の中で正義と悪を見極めようとすると自然とそういった曖昧なモヤがかかったような表情にならざるを得ないのかもしれない。
2人のノリとは関係ないかもしれないが、ハリソン・フォードとかキアヌ・リーブスも、また曖昧な表情が有名なアメリカンヒーロー俳優だ。


銃撃を受けたドノヴァン娘のリアクション
アベルを弁護するドノヴァンを脅すために国の人間か市民だかわからないが銃弾が撃ち込まれる。
(1)家でくつろいでいた娘がいたがソファにバスッ!と穴が空き、
(2)しばらく間をあけて銃撃されてる事に気付いた娘「ひいぃっ!」、
(3)続けて置物などが銃弾で割られてテーブル下に避難、娘「ママァーッ!」
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こういうリアクションさせたらスピルバーグは一番うまいと思う。
銃弾も、わかりやすいカメラ前のソファや割れ物だけに命中、そしてスピルバーグ好きなら皆が大好物の「攻撃されている者がドアップで必死リアクション」。
この二枚目の画像の、カーラーを巻いてるフワフワした感じの娘の「ひいいっ!」感が最高だった。

子供でも観れるわかりやすさが魅力
スピルバーグ映画を久々に観て「そういえば判りやすいのが彼の映画のいいとこだったな」と思い出した。
伏線を貼ってわかりやすくサッと回収していく。
アベルの弁護をするドノヴァンが人々に否定されまくる描写のわかりやすさ。
終いには電車に同乗してるババア=民意の集合体が睨んでくる。
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このババアはラストにも出てきて、前半では睨んでたくせにドノヴァンを見つけると(この画像ではわかりにくいが)かすかに「ニヤリ」と微笑む。
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ニヤリとすな!
ドノヴァンの頑張りと真意が国民に伝わった?
いや、新聞がドノヴァンをヒーローだと褒め称えてるから条件反射で反応したに過ぎず、どうしようもない。しかし、このババアは我々自身の姿なのだ。


つるセコ ネゴシエイター
交渉に行ったドノヴァンが受ける脅し‥というか単なる嫌がらせもよかった。
東ベルリンに入ると不良少年達に絡まれてコートを盗られる。何で財布は盗られないんだろうと思って観てると、ソ連側の交渉人と人質交換の交渉に入った。
ドノヴァンは「パイロットとアベルを交換ね」と言ってるのに、ソ連の交渉人は「同時じゃなくてそっちが先にアベルを返せ」とうるさい。一歩も引かないドノヴァンにソ連交渉人は言う「寒いからコートを着た方がいい。カシミヤの‥」とニヤァ‥とする。
ニヤリとすな!お前かコート盗らせたのは
しかもソ連は「アベルの妻」を名乗る偽物丸出しのババアを繰り出してきて泣き落としみたいな攻勢にくる(というか、このババア繰り出しは具体的な目的がよくわからない)。
ドノヴァンは当然、偽物だとわかってるので「はあ‥」といった感じ、奥から本物の交渉人が出てくる。おれ!最初からおれ。
ソ連交渉人に「もういいよ」と言われたらババアはアベルの妻設定の仮面を捨てたかのような仏頂面でドスドス帰っていく。最後まで演技を続けい
この地方によくいる図々しい荒い奴みたいな態度がしんどいな。
また、捕らえられた留学生は東ドイツに捕われてるのだが、ドノヴァンがソ連の交渉人と人質交換の約束を取り付けたのを知った東ドイツの交渉人である弁護士は、東ドイツが軽んじられたと思いスネてしまい留学生を返さんとか言い出す。返せよ。無理に何かを得ようとすな
ドノヴァンは「あのさあ‥偵察してたパイロットと違って留学生はただの何でもねー学生だよ?それでソ連より扱いが軽いって拗ねたりしてさあ‥図々しくない?いいから早く黙って返せよ。そもそも交換じゃなくても普通に返せや」ともっともな事を言う。
するとドイツ交渉人はドノヴァンを車の助手席に乗せたまま猛スピードで爆走!なんなんだよ‥
ドノヴァンだけがオマワリに捕まるのを見たドイツ交渉人
「弁護士さんなら口八丁で切り抜けられるでしょう?」ニヤリ
ニヤリとすな!
脅しがセコすぎて呆れる。留置所で夜を明かしたドノヴァンだが嫌がらせされるたびに、子供にイタズラされた父親みたいなヤレヤレ顔でスルーしてるだけなので可笑しい。
関係ないが若い時に、誰もいない埋立地でバイトした時に、荒くれ者の先輩と昼飯食いに行く時に車乗ったら先輩が(恐らく)俺をビビらせようと急に100km近い猛スピードで誰もいない土地を爆走!だけど若い時の俺は無表情で感情を表に出さないキャラだったのでノーリアクションで、真顔で無言の二人が乗ったままの車がただ意味もなく爆走されてた光景を思い出した。
話は戻るが交渉人たちは少しでも有利に交渉しようとドノヴァンを脅したいが交渉相手だからあまりキツい脅しはできない、だからちょっとした意地悪みたいなセコい脅しになったのか?と思った。それが可笑しさにつながってたな。

しかし実話を元にした話だから仕方ないのだが、アベルは祖国で殺された方が物語としては締まった気もする。まあ、死ななくてよかったと思うことにする。
ドノヴァンとアベル以外の人間を全員アホに設定したのがわかりやすくて良かった。
これはスピルバーグ作の中でもベスト3に入る傑作だと思ったし、スピルバーグのことも3回めだか4回め‥再び大好きになりました。

そんな感じでした

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