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『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』(2019)/前作よりも都市伝説とオカルトを増量し、映画としての本編が更に薄くなったが楽しいよ🦖

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原題:Iron Sky: The Coming Race 監督&脚本:ティモ・ヴオレンソラ
製作国:フィンランド/ドイツ 上映時間:90分 シリーズ:「アイアン・スカイ」シリーズ

 

 


これ別にわざわざ映画館で観る気なかったけど時間を潰さなきゃいけなくなった街でやってたので観た。
前作「アイアン・スカイ (2012)」は、2006年に企画が始まって面白そうな予告編だけ作ってそれをカンヌ国際映画祭で公開し、クラウド・ファンディングでファンから1億円を集めて制作されたSFコメディ映画。そして7年越しの続編である本作もまた同じ様にクラウド・ファンディング1.5億円集めて制作された。
前作は「月の裏側に潜伏していた月面ナチスが、高度な科学力で作られたUFOで地球に侵略戦争を仕掛けてくる」という話だった。
ナチスに心酔している女性幹部リヒター、色々あって彼女はナチスの洗脳から解けて地球のアメリカ黒人男性ジェームズ・ワシントンと共に月面ナチスの野望を打ち砕く。
とにかく設定やあらすじがぶっ飛んでいて如何にも面白そうだったが、映画自体は割とこじんまりとした普通の作品で、悪くはないが予告編ほど印象に残らなかった。
今回は何もかも言ってしまう完全ネタバレ

 

 

 

前作のラスト、人類は月面ナチスを倒したのに、地球の各国は愚かにも月の資源をめぐり核戦争を起こして地球の文明は60億年の歴史を終えた。核戦争の影響で地球には氷河期が訪れた。
前作の主人公リヒターとジェームズはナチス月面移住区の良き指導者となり、つかの間の平和を甘受した。
そして30年経過したのが本作。
リヒターと、本作では既に亡くなっている黒人男性ジェームズの間に産まれた娘〈オビ〉は大人の女性に成長していた。ちなみに年老いたリヒターは月の女王となっていたが病にかかり余命幾ばくもない。生命の危険はリヒターだけでなく月の人たちも同様、月の資源は尽きる寸前。月面人たちは滅亡寸前であった。スティーブ・ジョブズiPhoneを神のように信奉し、iPhone以外の携帯電話を持っている信者を粛清する〈ジョブズ〉なるカルトのバカたちも勢力を拡大していた。
オビはある日、前作で倒したはずの月面ナチス総統ウド・キアー)を見つける。
彼はとある不思議なエネルギー物質を口にして延命してきたと言う。
そして彼の正体はレプティリアン(ヒト型爬虫類エイリアン)だった。
彼らレプティリアンは遥か昔の原始時代に地球にやってきて、映画「プロメテウス」みたいに人類を作り上げたという。
彼が言うには地球の北極と南極にある穴から入ると、地球内部の広大な空洞が有り、地球滅亡した現在でもその地下世界は健在。そしてレプティリアンが持ってきた神秘のエネルギー源が〈聖杯〉に入っており、それさえあれば月面人類は生き延びられる。神秘の物質を一欠片貰ったオビはリヒターに食わすと母は20歳くらい若返った。これならリヒターの病気も治せるし月面人滅亡も免れる。‥という事でオビは数人の仲間‥仲良しの怪力男、殆ど滅びてる地球からUFOで何とかやってきたロシア人の科学オタク青年、ジョブズ教信者達と共に地球に向かう。
だが地球の空洞に実在した地下都市アガルタは、アドルフ・ヒトラーを始めとしたドイツの秘密結社〈ヴリル協会〉が支配していた。
協会メンバーはヒトラーをボスとしてカリグラ、チンギス・カンスターリン毛沢東スターリン、人食い大統領アミン、ウルホ・ケッコネン、ビン・ラーディン、マーガレット・サッチャーウラジーミル・プーチン金正恩スティーブ・ジョブズマーク・ザッカーバーグ‥など、死んだと思われていた過去の独裁者や偉人や著名人が居た。そして彼らは全員レプティリアンだった。
「人類が地球の文明を発展させて来たのはレプティリアンの暗躍だった」という事。
ここまでならよくあるが、ジョブズザッカーバーグが居るというのが面白い。ちなみにザッカーバーグは「一日中、SNSや猫の動画とかに夢中にさせて地球人のオツムをバカにする」という役目。
前作で地球滅亡の口火を切ったアメリカ合衆国大統領(トランプではなくサラ・ペイリンをモデルにした女性キャラ)は、地球滅亡の責任を詰められて他のメンバーに食い殺される。
あと、アガルタには恐竜たちが生き残っており〈聖杯〉が発するエネルギーで小型の太陽が地下世界を照らしており、かつての地球の地表同様の美しい世界が広がっている。

 

 

 

‥と、ここまでで本編の後半くらいまでかかってた気がする。
前作もそうだが、このシリーズは設定こそがコアで、映画本編のストーリーや展開などは殆どおまけみたいなものなので、まぁこれでいい。
前作の〈生きていたナチス〉〈月の夜側に月面都市〉〈各文明国が宇宙戦艦を保有〉という設定に加えて本作では上記の〈レプティリアンが人類創生した〉〈地球空洞説〉〈小さな太陽がある地下世界〉〈恐竜戦車〉〈地下都市アガルタ〉〈秘密結社ヴリル協会〉〈生きていた独裁者〉など数々の都市伝説やオカルトが出てきて飽きさせない。
特に僕は最近、地球空洞説が大好きなので楽しかった。真偽の程はわからないが今の地球の科学では一定以上の地球内部がどうなっているかわからないので、本当に地下世界があってもおかしくないって言うじゃないですか。
映画の残り時間も少ないので、オビ達は襲いかかる独裁者達たちと恐竜戦車で争いながら聖杯をさっさとGET。地球に来たロシアUFOで月にさっさと帰る。普通の映画なら二時間くらいかけるところを10分で済ませてしまった。
せっかく出てきた独裁者や偉人達だが、出落ちでしかない彼らをじっくり描いている時間もないので、レプティリアンの本性丸出しでヨダレを垂らして襲いかかってくる只の蛮族でしかない。ジョブズも知性を全てどっかに落としたみたいでジョブズ教信者を踊り食いする。
早い話が、石川賢の「ゲッターロボ」みたいな話だ。
そんでアガルタ宇宙戦艦で地球を出発したヒトラーや恐竜たちは月を攻めてきた。
だが聖杯のレプティリアンのエネルギーを飲んで前作くらいの年齢にまで美しく若返ったリヒターはキャプテン・マーベルのように覚醒し、月面スーパー飛び蹴り一発でヒトラーと恐竜を瞬殺!やったぜ。だがウド・キアー演じる月面ナチス総統に銃殺された!泣きわめくオビを宇宙輸送船に押し込めて、月を捨て出航した月面人たち。追う月面ナチス総統。だがiPhoneの伏線を使って逆転勝利!(Appleを散々おちょくったがここでバランスを取った)
「どこへ行く?」「赤い星‥火星よ。80年後には着くから私たちの子供や孫に託しましょう」オビとロシア人青年は残りの人生を火星までの旅で平和に暮らしていく‥。
ラストショットは〈赤い星〉で誰でも想像する、続編を作ろうと思えば作れそうなオチがついて終わる。ゆるい映画だから人気キャラであるリヒターも若返ったことだし死なせなくてよかったのに。普通の映画なら「前の主人公は次世代に託して自己犠牲」が定番だが普通の映画じゃないので存命だったり生き返っても一向にかまわん。
低予算で恐らくCGに殆どの予算が使われていると思われる。敵のヴリル協会だが、兵士とかいっぱいいるはずなのに元大統領だった幹部たちやヒトラー自らが飛びかかってくる。まぁご愛嬌か。前作も本作もそうだがコメディでもいいけど、莫大な制作費をかけてシリアスな語り口で作られてたら、もっとハマれそうなのだが基本低予算のコメディだからね。全ての敵は一撃で絶命したりして‥とにかくすぐ死ぬ。「1コマ1ページごとにどんどん超展開が進んでいってしまう」という‥60年前のアメコミとか漫画をそのまま映画化したかのようだ。死さえもギャグとして扱うコメディ映画だとしても、せめて「マイティ・ソー:バトルロイヤル」みたいにシリアス要素もあれば‥と思ったが、あの境地まで達してる映画は他にないので無理な注文か。ロバート・ロドリゲスの映画にも言えるが出てくる登場人物全員が弱く見えるので「ヒトラーとかレプティリアン達も、俺が鉄パイプ持ってれば皆殺しに出来るんちゃうかな?」と思えてきてしまう。一発一発が軽いというかね。
さっきも言ったようにこのシリーズは「どうだい?この設定?面白いだろ」と見せつけてくる楽しい基本設定が映画のキモで、映画としての本編はオマケみたいなもんだ。だけどつまんないわけでもなくちゃんと作られてるけどね。
このシリーズで観れるものは他では観れないので独自の楽しさもある。
そして前作も本作も「特にもう一回観たりソフトを買う気には一切ならないが一回観る分には最後まで楽しめるよ」って感じだ。こう言うと貶してるようだが、そんな事はない。それと〈主人公が黒人女性〉〈ヒロインが男〉〈マッチョな怪力男が実はアレルギー持ちのゲイ〉などのキャラ設定は現代的だな、と思ったりもした。
海の家で食う焼きそば、みたいな、安いけど確実な面白さを持ったインディペンデント低予算SF映画。監督は、その範囲内で最大限に面白くしてると思う。だけど真っ赤な3作目はもういいかな‥(でもリヒター生き返るなら続き観たいかも)。

 

 

 

そんな感じでした

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映画『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』オフィシャルサイト

Iron Sky: The Coming Race (2019) - IMDb

www.youtube.com

Amazon: アイアン・スカイ (竹書房映画文庫) ※前作のノベライズ

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