gock221B

映画やドラマの感想ブログ。ネタバレ多め 🍿 Filmarksも https://filmarks.com/users/gock221b おしずかに〈Since.2015〉

『ジョジョ・ラビット』(2019)/全編楽しいが同時にハラハラさせられ続ける傑作。年々素晴らしくなるスカヨハの感情表現👠


原題:Jojo Rabbit 監督&脚本&制作&出演:タイカ・ワイティティ 上映時間:108分
原作:クリスティン・ルーネンズ『Caging Skies』 製作国:アメリ

 

 

 

『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』(2014) 『ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル』(2016)など監督し世界的に有名になった切っ掛けはやはり『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)、そして今夏公開予定のその続編『ソー ラブ&サンダー』(2022)が楽しみなニュージーランド出身の映画監督、ディレクター、脚本家、俳優、コメディアン……など多才なワイカ・タイティティ監督作。
予告編だけ観ても感じの良さそうな本作は、第92回アカデミー賞で作品賞を含む6部門(作品、助演女優、脚色、編集、美術、衣装デザイン)にノミネートされた事を始めとして高く評価されたコメディ映画。だが「ナチスに憧れる主人公の少年の母(スカヨハ)がユダヤ少女を隠しており、少年は少女によって思想が変わっていく話」という時点で「ワイカ監督の作風からして楽しいんだろうけど後半でスカヨハ……ひょっとしたら少女が処刑される……または酷い目に遭うの確定やん」と思って観るのを先延ばしにしてるうちにウクライナとロシア間の戦争が始まって更に観るのが辛くなって先延ばしにしてる間に、2020年の日本公開映画をほぼ観終わってこれだけ残ってたので、やっと観た。
今回はこのブログにしては珍しくネタバレなし

 

 

 

第二次世界大戦中のドイツ。少年、ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイヴィス)はイマジナリーフレンドのアドルフ・ヒトラータイカ・ワイティティ)を作って話相手にするほどナチスに漠然と傾倒していた。
ジョジョは、ナチスの”キャプテンK”ことクレンツェンドルフ大尉サム・ロックウェル)に頼んではナチスのへんてこな広報活動に励んでいた。
ある日、ダンス好きで愛の強さを説く優しい母親、ロージースカーレット・ヨハンソン)が、屋根裏の隠し部屋にユダヤ少女エルサ(トーマシン・マッケンジー)を匿っているのを発見し、最初は”憎むべきユダヤ人”である彼女を警戒していたが素敵なエルサと触れ合ってるうちに今まで盲信していたナチスへの印象が変わっていく――

という話。


※画像一枚だけという自分ルールのブログだが本作だけはどうしても「ジョジョ、ママ、トーマシン・マッケンジーサム・ロックウェル」の四人で誰か抜かすの嫌だが四人映る場面がないのでトップ画もう一個作った
あらすじ聞いただけでラストまでが何となくわかってしまうほど風刺的すぎる話。
本作は割と本編の9割くらいがコメディ調で楽しく映像も可愛くて軽快に描かれる口当たりの良い映画なのだが、自分的にはむしろそういった描き方が、より画面外で無惨に殺されたユダヤ人を想像させられ、果ては戦争、紛争、テロ等で死んだ人たちや今現在のウクライナの人たちや情報戦で啓蒙される世界中の人達……あらゆる争いを想起させられて非常に辛いものがあった。
最初に書いた「スカヨハ、もしくは少女が処刑されそう」という不安感、それは置いといても「少女がゲシュタポに見つかったらどうしよう」「通報はしなくてもジョジョから少女の事が漏れて見つかったらどうしよう」という身体に悪いハラハラが最後まで続くので、たとえ楽しい映画だろうと辛いものがある。もの凄く赤ワインを痛飲しながら観た。
そんな登場人物のピンチだけでなく、主人公の幼い少年ジョジョナチスに無邪気に傾倒しており、ユダヤ人のことは同じ人間ではないバケモノだと信じてるし、ママが説く”愛”やダンスもバカにしている。いや、そもそもジョジョには最初から愛があるのだが、どちらもバカにしているというよりは「ユダヤ人や愛やダンスをバカにしなきゃ敬愛するナチスになれない」ので必死にそれらを否定しようとしている。
それは最初からわかってるが「レイシストで居なければ!」とレイシストとして振る舞ってるジョジョの姿もまた見ていて非常に辛い。これもまた世界中の色んな悲しい出来事を思い出されるせいか大体ずっと辛い。
そんな感じで本作は……もしくは本作を観てる俺の心のせいか?、可愛いコメディ調で進む本編が非常に辛いものだった。他の人がどうなのかは知らん。「Jホラー映画などが苦手な人」って、友達でいるが大抵、幽霊が出る前の状態を、いやむしろJホラー映画を観てない時点から怖がってる人が多い(それでいて実際観たらそれほど怖がらなかったりする)、その感じに似てる。他にも昔よくあった「レイプされた女性がレイプ魔に復習する系バイオレンス映画」などを観ようとしたら冒頭の、レイプされる予定の女性が楽しく買い物したり食事してるシーン観たら「後で酷い目に遭うのに今は楽しく過ごしてる!」と思うと悲劇が起きるという運命に対して恐れ慄いて観るのがめちゃくちゃ辛くなったりする、その感じに近いかもね。
あとワイカ監督の今まで観た映画の傾向を思い出すと、全編楽しい感じなのだが仲間が死ぬ時は、誰も死を予想して備える間もないタイミングで突然死ぬので、それもあって辛いものがあった。

子役の時から観てるお馴染みのスカーレット・ヨハンソン……スカヨハがお母さん役なのだが、彼女は若い時は仏頂面のサブカル少女、成長してセクシーな金髪白人女優、MCUで言うと『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)の後くらい……映画自体は別に面白くなかったがスカヨハの怯える演技が異常に上手かった『LUCY/ルーシー』(2014)あたりから急に「スカヨハ感情豊かすぎる」と思い始めた。『マリッジ・ストーリー』(2019)や『ブラック・ウィドウ』(2021)でも言わずもがな。楽しいシーンは昔から上手かったがその辺りから泣きの演技が異常に上手い。映画の中の女性俳優が泣いたら「○○というキャラクターor女性俳優が泣いてる……」と客観的に観ている部分があるのだが、スカヨハが泣くと、まるで自分のすぐ横で泣く人特有の変な体温を発してる様子が感じられる気がする。又は泣いたところを観たことがない実の肉親が眼の前で泣き出したかのように狼狽えてしまう。俺だけか?スカヨハを映画で見かける期間があまりに長かったせいか、単純にスカヨハの演技力のせいか、又はその両方のせいなのかはよくわからない。本作でも凹んだり不機嫌なジョジョをヘンテコな動きで笑わせたり一緒に踊って和ませる……その母の愛情があふれ過ぎてて床が愛まみれになって溺れそうな光景がもう……酔って観てたのもあるが「ま、ママーー!死ぬなーーっ!」というエモーショナルな感情を掻き立てられた。ちなみにスカヨハは本作でアカデミー助演女優賞にノミネートされた。惜しくも受賞はしなかったがまだ若いからダメだった40過ぎた頃に獲るだろう。
ジョジョと一緒に帰宅する彼女のカラフルな靴が印象付けられ、しばらく後にその靴が出た時に「あ……れ?この靴どっかで観たことあるような……?」と2秒くらい間を置いて気づかされるので、それがショックさを更に倍増させられた。

なんとなくゲイリー・オールドマンの後継者的な印象のあるサム・ロックウェルは昔はよく「嫌な奴」の役が多かった気がするが近年は『スリー・ビルボード』(2017)『リチャード・ジュエル』(2019)等、「一見嫌な奴だと思わせといて良い奴、もしくはそれだけではない複雑な魅力のある奴」の役が増えてきた印象。
ただのナチスのおっさんだと思いきや……と思わせる本作での彼もそんな感じで魅力的。何か異常に魅力ある。今、僕が男性で一番好きな俳優は彼だ。
イカ監督のMCU映画で言うと『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)の、ヘラに部下になることを強要されるアスガルド戦士スカージに何となく似ていると思った、スカージは最後にジョン・カーペンター的な特攻して大好きなのだが本作での彼も似た印象がある。MCUと言えばサム・ロックウェル『アイアンマン2』(2020)でトニー・スタークよりかなり劣るライバルのジャスティン・ハマーをインチキIT長者みたいな感じで好演していた。僕は「MCU好きなヴィランTOP3」にジャスティン・ハマーを入れてるくらい好きだ。MARVELスタジオは「アボミネーションだけでなくフェイズ1の懐かしキャラを出すよ」と少し前に言ってたので、ウォーマシーンが盗まれたスタークの技術に立ち向かいそうなMCUドラマ『アーマー・ウォーズ』(2023)にジャスティン・ハマーが出るのがピッタリ!と期待している。それがダメなら黒人天才少女が見様見真似でアーマーを作るMCUドラマ『アイアン・ハート』(2023)のヴィランででも出れそうだし、どちらかでサム・ロックウェルを観たいもんだ。

今かなり売れてきてるトーマシン・マッケンジーも、僕は今最も好きな女性俳優だし言わずもがなの魅力だった。
後半に入った辺りのの場面から流れが変わり、バタバタっと終わる。
これは誰にも文句つけようのない素晴らしい映画でしょう。
もう公開も配信もとっくの昔にされてる映画なので自分が観たのはかなり遅いのだが、まだ観てない人もいるだろうし本作は自分で観て自分で感じることが大事な感じの映画だったので劇中の展開に具体的に触れたくない。そこで久々にネタバレなしの映画周辺についての感想を書いた。
というか、そもそも風刺が強いコメディ映画を「ここは、実は○○だって事を表現してるんですよーっ!」とか……説明する側も説明される側もクソダサい。そんな事になったらあいも変わらず地獄じゃねーか。
この映画のラストのように、言葉ではない表現によってのみ伝わるものが確かにある。
なんと書いていいのかわからない。とりあえずラストでかかるデヴィッド・ボウイの(それにしても年間、ボウイ曲は映画で使われすぎだろう)「ヒーローズ(ドイツ版)」動画を貼って終わりにしよう、ダンスを踊って……。

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そんな感じでした

タイカ・ワイティティ監督作〉
『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)/覚醒した雷神をも電気ショックで気絶させる服従ディスクと溶け棒が強すぎる⚡ - gock221B
『マンダロリアン』〈シーズン1〉(2019) 全8話/EP8&9で負った傷を8割くらい癒やしてくれました👽 - gock221B ※シーズン1最終話の監督

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Jojo Rabbit (2019) - IMDb

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