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「ザ・サークル (2017)」世界の学級委員長エマ・ワトソンが、ネットによる全体主義に警鐘を鳴らす優等生映画📱

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原題:The Circle 監督&脚本&制作:ジェームズ・ポンソルト
原作&脚本:デイヴ・エガーズザ・サークル」 製作国:アメリカ 上映時間:110分

 

 

 

Netflixで配信が始まったので観た。小説が原作。「エマ・ワトソンが自らの私生活を24時間晒す」というセンセーショナルな内容に反してヒットしなかったことから、あまり期待せずに観たけど、結構面白かったです。 
意欲みなぎる24歳の女性メイエマ・ワトソン)は、親友アニー(カレン・ギラン)の口利きで、スティーブ・ジョブズを思わせるカリスマ経営者イーモン・ベイリートム・ハンクス)が作り上げた世界最大の超巨大SNS企業〈サークル〉に入社する。
〈サークル〉は、GoogleAppleFacebookTwitterを合わせたような大企業。
福利厚生や社員へのサービスがしっかりし過ぎている。
ネット記事などでよく見るGoogleとかAppleとかPIXARのなどの人気企業のように、社員はあらゆる高水準のサービスが無料で受けられるし「自由な発想で遊びのような事がそのままビッグビジネスに繋がり、それで楽しみながら儲かるだけでなく世界そのものをより良い方向に変革さえする」‥という、ああいった大企業のイメージそのものな楽園のような、皮肉ではなく「真の意識高い」系集団という感じ。そして社員が皆、ジョブズっぽい語り口で喋る(以下イノベーション喋り)。ジョブズ役とも言えるトム・ハンクスは正にジョブズのように巨大スクリーンの前でジョークを交えて全社員の前でイノベーション喋りする。イノベーションがどうとか‥楽しみながら世界をより良くするとか‥そういうやつね。全社員はウケたり感嘆しながら意識や知識を共有していく‥。
難病にかかっていたメイの父親も、サークルが派遣してくれた医師によって完治。
メイは入社後、タイジョン・ボイエガ)という青年と知り合う。
彼はSNS「サークル」のシステムを構築した有名な天才青年だった。入社直後でサークルに感嘆してばかりのメイに対し、タイはサークルやSNSサークルの危険性を語る。まぁ要は「プライベートが無くなって全体主義に繋がる」‥とかそういうこと。
日曜大工や自然を使ったアートをやっている自然派のメイの元カレっぽい男友達マーサは、サークルのせいで「動物を殺してアートを創っている」というデマを流されて「鹿殺し」の汚名を着せられ肩身の狭い思いをしていた。マーサはメイに「君のことは好きだったが、サークルなんて異常な世界にいる君にはついていけん」と言って絶交する。
ヤケになったメイは立ち入り禁止海域?でカヤックを爆走させていたら転覆。しかしメイを24時間監視していたらしいサークルのヘリによって救助される。
ずぶ濡れで意気消沈するメイに、トム・ハンクスは優しく語りかける。
トム・ハンクスカヤックでの航海は確かに楽しい。それが不法侵入なら特にね?笑」「だけど、僕らが監視してなければ君は今頃死んでいた」「それに、その深夜のイタズラを秘密にせず、大勢で共有すればもっと楽しめたと思わないかい?」
タイの懸念やマーサの絶交などでサークルへの不信感が鎌首をもたげていたメイだったが「法を犯して死にそうにだったところを助けられたが叱責されずウィットに飛んだ感じで同調されながら優しくもっと良くなる提案をされる」という「若者が一番オッサンにされたい態度」をトム・ハンクスにされて、メイは彼に、すっかり感服してしまった。
そしてメイはベイリー(トム・ハンクス)の「全人類が隠し事をせず完全に繋がり合えば、より良い世界になる」というベイリーの信念を拡張して〈あらゆる個人情報の共有〉を目指す事となる。つまり全世界、全人類に小型カメラを与えて「隠し事できない世界」を実現させようとする。そしてメイは、そのプロトタイプ。その大型プロジェクトのモニター社員に大抜擢される。それは超小型カメラでメイの日常生活を全て記録し、メイの視界も含めてリアルタイムで全世界に配信する新サービスの公開実験。「全世界、全人類を透明化する」というベイリーの理念を素直に全肯定し、自らのプライバシーをとことん公開していくメイ。
フォロワーは社内だけでなく世界中の人に及び、たちまちフォロワーは一千万人を超え、メイは一躍カリスマ的存在となっていく。

 

 

 

というのが中盤くらいまでで、ここまでは凄い面白い。
「(世界一可愛い)エマ・ワトソンがトイレ以外の24時間の生活を全世界に公開」と聞くと心がざわっとしてしまうが、エマ・ワトソンが主演してるだけあってSEXしたりとか着替えがどうとか、そういった下世話な下ネタ要素は当然ない。‥まぁエマ・ワトソンじゃなくても、そんな下世話な描写はないけどね。
エマ・ワトソンについてだが、ハリーポッターは殆ど観てないので数本しか観てないけど、美しいし彼女がやってるフェミニズム活動も好感持てるし彼女を見かけるたびに、その圧倒的大正義生徒会長オーラに圧倒され、あまり彼女をよく知らないにも関わらず「よく知らないがエマ・ワトソンに嫌われないように生きていきたい」という気持ちに自然とさせられたりする。そんな感じが彼女のパワーなのかもしれない。大ファンではないが「漠然と好き」という感じ。エマ・ワトソンが出馬したら「何となく」一票入れてしまう‥そんな曖昧な「エマ・ワトソン何となく層」にいるのが俺だ。
それにしても、いつも完璧なエマ・ワトソンが演じる女性メイ。そんな彼女が「トゥルーマン・ショー」みたいな私生活公開したらもっと大変な事だと思うが、劇中ではそうでもない。恐らく本作の主人公メイは、少女漫画の主人公みたいに「読者(視聴者)の我々から観ると美人すぎるけど、劇中では『どこにでもいる普通の女子』として描かれている」‥んだろうなと思った。まぁ普通の女性だとしても私生活を一千万人に全公開していれば異常なファンが大勢生まれてそうだがそういう奴らは出てこない。
その代りと言っては何だがメイの両親が性行為しているところをTV電話越しにメイが見てしまい。その結果、メイが見た両親の営みが全世界に配信されてしまう。
メイは「ちょっともう!映っちゃいけないものが映ってる~!なんなの~笑」といった感じで「ちょっとしたハプニング」として笑いにしたが、両親は「全世界に24時間自らを晒しているメイ」と毎日テレビ電話してるので自然と自分たちも毎日一千万人の人に見られてしまう、両親はその状況に耐えられずメイと連絡しなくなる。
またカレン・ギラン演じる過労死寸前で疲弊していた同僚アニーも、メイが始めた、このイカれた企画についていけなくなり疎遠になってしまう。そしてアニーが言うには「皆は信奉してるけど社長と副社長は犯罪そのものみたいな事してるのよ。私はそれを連日徹夜でもみ消してる。もうウンザリよ」と疲れ果てている。
政府や大企業に雇われたエンジニアが、政府や大企業に都合の悪い情報を連日連夜消してるうちに病んでいく、だが守秘義務があるので更に病んで潰れていく‥という人物の集合体がこのアニーだ。
この企画を始めた結果、親友、男友達、両親‥などの大事な人に関係を一時停止されたメイ。しんどいが何とかモニター期間を終え、この〈全世界、全人類の24時間監視システム〉は完成に近づく。
メイは社長のように、モニターをバックに全社員の前でシステムを発表する。
たとえばテストとして「全世界のみんな!この子供殺しの逃亡犯を探して!」と逃亡犯の顔写真を全世界に発信するメイ。逃亡中だった殺人犯は何と20分足らずで見つかり逮捕される。全人類もカメラを持ってるのでその様子も生中継されている。
「プライバシーこそ阻害されるが犯罪の90%は無くせる」という、このシステムの威力を見せつけた。だが「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」のインサイト計画に似すぎていて暗雲立ち込める。
次に人々がサーチをリクエストしたのは、メイを絶交した個人主義者マーサだった。
「メイはマーサに絶交されて落ち込んでるから、マーサを見つけて仲直りさせちゃおう!」というノリだ。メイは「やめて!マーサはこういう事が苦手なの!」と言うが盛り上がってる独善的な同調圧力には勝てず全人類サーチがスタートする。
‥と言えば何が起きるかは想像つくだろう。
誰もが想像しうる悲劇が起きて、傷心のメイは目を覚ましてアニーや両親と仲直り、そして毎週やってる衆人環視のプレゼンテーション会合で、気さくなオッサンを気取りつつ自らの手は汚さず全人類のプライバシーを阻害しながら自分のプライバシーは死守して利権をむさぼるトム・ハンクスと副社長に反旗を翻す。衆人環視の中、人々はメイを支持しているのでトム・ハンクス達は逆らえず「彼女に見事にしてやられたな笑」
メイが勝った。終わり
うん、観ていた僕は確かに、完璧なエマ・ワトソン演じるメイが洗脳から解き放たれて親友や両親と仲直りして体制を刺して欲しかったよ?
だけどそれが残り5~10分くらいであっさり実現してしまい。ラスボスであるトム・ハンクスも「やられた~僕の負けだ~笑」みたいな態度を取られたら「‥いや、これメイの妄想やろ!」としか思えないよね。もしくは「これ、映画本編が終わった近日中にメイは暗殺されて情報操作されるだろ」と逆に不安になっちゃうよね。
原作がどうなるのかは知らないが「マーサに起きた悲劇で〈サークルの危険性〉を思い知ったメイは洗脳から解かれ、アニーやタイの協力も得てトム・ハンクスを討とうとする。だが志半ばでトム・ハンクスに返り討ちされ死亡。だがメイの残した盗聴とか盗撮映像が全世界に公開される装置が動き出した‥」こんな「ゼイリブ」とか「ウォッチメン」みたいな終わり方が丁度いいやろ。
洗脳されてたエマ・ワトソンがハッと気づいて5分くらいで完全勝利。両親も親友も全て取り戻す。ラスボスのトム・ハンクスもそこまで邪悪に足掻くわけでもなくスマブラで負けたかのようなヤレヤレムード。「ごめん、僕が悪かったよ」などと言い出しかねない雰囲気。
こうあって欲しい。こうあって欲しいけど、こんなこと現実では起こり得ないだろ。
勿論そうあってほしい。エマ・ワトソンが苦しむところも見たくないし皆が笑顔でいて欲しい。それでいいと思ってる、人間はそうあるべきだと思ってる。気ままに?楽しく?平和に人生を送る?冗談じゃない。世界はそんな風になってないじゃないか!
黒沢清「CURE」の役所広司は置いといて、前半中盤は良かったけど終盤が絵に描いた餅っつーかお花畑すぎるっつーか楽園にでも住んでウルトラマンにでも護られてるかのようっつーか‥(坂本ジュリエッタ)。そんな感じでラストで一気にアホらしくなりました。原作通りなのかもしれないが、エマ・ワトソン主演作は割とこういう理想論的な映画が多いような‥カルト宗教に入った夫をエマワトが救出しにいく映画も似た感じだったし、脚本を選べる立場のエマ・ワトソンは理想主義的すぎる脚本を選んじゃったのかな?と少し思った。エマワト本人は高潔なので「当然こうあるべきやろ」と世界にもそれを求めてるのかもしれないな‥と思うのは穿ち過ぎかな?
またメイの両親がSEXして全世界に観られる場面も、本当はメイがやるべきだろう。別にエマ・ワトソンの濡れ場が観たいわけじゃないので、その場面は別に鮮明に映らなくても良いけど、とにかく「メイの両親が営みを見られて疎遠になられてメイが悲しむ」というのは遠回しすぎるだろ「メイがカメラのこと忘れてボーイフレンドとセックスして見られて監視システムに疑問を抱く」という方が自然だろう。
とにかくあらすじだけ聞くとめちゃくちゃ面白そうな本作が全然人気でなかった理由も後半でわかったね。
「一日中スマホ観てる人や自分をさらけ出し過ぎるのは危険」「GoogleAppleに世界征服されてない?」「全体主義はアカン!」といった分かりやすいストーリーや主張自体は僕も当然共感できるものだったしエマ・ワトソンもいつも通り美しかっただけに誰かの甘い妄想みたいな終盤が勿体無い一作でした。
この監督が、もしジョン・カーペンターデヴィッド・フィンチャーだったら、傑作だったに違いない。

 

 

 

そんな感じでした

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The Circle (2017) - IMDb

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