gock221B

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『ランボー ラスト・ブラッド』(2019)/狂気のランボートンネルは開始数分で映画終わっても良いくらい秀逸なアイデア🔪

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原題:Rambo: Last Blood 脚本&原案&主演:シルヴェスター・スタローン
監督:エイドリアン・グランバーグ シリーズ:『ランボー』シリーズ5作目
製作国:アメリカ/スペイン/ブルガリア 上映時間:101分

 

 

 

アクション俳優であり映画作家でもあるシルヴェスター・スタローンによる、『ロッキー』シリーズのロッキー・ボルボア、『エクスペンダブルズ』シリーズのバーニー・ロスなどと並ぶ当たり役、社会に適応できない哀しいベトナム帰還兵ジョン・ランボーのアクションと苦悩を描く『ランボー』シリーズの5作目にして最新作。
※この色の薄い部分は今までのランボーシリーズへの私見なので本作の感想だけ読みたい人は飛ばしてOK
アメリカン・ニューシネマっぽい切ない一作目『ランボー』(1982)。アクション・ヒーロー化した爽快感ある娯楽作である二作目『ランボー/怒りの脱出』(1985)、80年代特有の大味すぎて眠くなる微妙な三作目『ランボー3/怒りのアフガン』(1988)と来て、その20年後に4作目『ランボー/最後の戦場』(2008)が公開された。この頃はスタローンに誰も期待してなかった時期だったし「もうやめときなよ……」という感じだったが、同じように向かい風の中作られた『ロッキー・ザ・ファイナル』(2006)が傑作だったように『ランボー/最後の戦場』もまたバイオレンスが100倍になった大傑作だった。暴虐の限りを尽くすミャンマー陸軍を、ランボーがそれ以上の暴力で惨殺……というか銃弾の雨で殆ど液体にしていく痛快作で我々を驚かせた。そして長い旅を経て祖国アメリカのマイホームに帰った見事な完結。
だが12年経って新作が公開された。「え……完全に終わったよね?」と思わないでもなかったが、誰一人スタローンに期待してない中ホームランを打った『ロッキー・ザ・ファイナル』や『ランボー/最後の戦場』を観てきたし、本作同様「え、もう完全に終わってるよね?」という状況の中、公開された『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)も面白い映画だった。「もうやめときなよ」を3回も跳ね返すのは偶然ではない。「誰も期待してなかった」という意味では『ロッキー』一作目もそうか、合計すると4作も跳ね返してきた。普通の人間は一度も打ち返せず何一つ良い事のなかった人生をメソメソと終えるのが関の山だ。もはや凡人である僕がスタローンに文句言う気はなかった。黙って観て、良ければ称賛し、ダメなら「ダメだったね、だけど次が楽しみだ」と言うのみだ。
スタローンは、創作する人の中でたまにいる「エッセイみたいな感じで、自分のその時々の人生を反映させた自分のフィクションを死ぬまで作る系の映画人」なのだろう。だから「もうやめとけば?」等と言わず、見守るのみ。自分がもう観たくないからといって創作する人に「やめといた方が」などと言うのはおこがましい。途中で「もう観なくていいや」と思えば自分が観るのをやめればいいだけ。創作してる人に対して「やめとけば?」なんて言うのは、ロックスターに「20代後半で死んでればカッコよかったのに」と言うに等しい厚かましい台詞だ。世の中に対して貢献できないのなら、せめて挑戦してる人の足を引っ張るのはやめよう。

本作『ランボー ラスト・ブラッド』。一作目『ランボー』原題『ファースト・ブラッド』に対応したタイトルだ。アメリカでは昨年公開されて、コケてはいないがヒットでもなく、また時代錯誤だという評価だった様子。そんな世間の低評価と、自分自身の評価は関係ないのだが、僕も「なんかロン毛じゃないとランボーっぽくないな……」というどうでもいい理由であまり盛り上がっておらず平熱で観に行った。しかし帰国して10数年経ってるのにランボーも髪の毛さっぱりさせたかったんだろう。いや、でも長い方がいいかな……髭そったマリオみたいなもんじゃないか?などと思いつつ、髪のことはまぁいい、内容は自分の目で確かめよう。
ネタバレもクソもない話だけど一応、今回もネタバレ注意。と書いておこう。
考えながら書くので今回は、ちょっと長いかも。だが、これしきの文章を長いと思う人はもはやブログなんか読まずにYoutubeとか見てるだろうから気にせず進めよう。

 

 


ゲリラ戦のエキスパートであるベトナム帰還兵、ジョン・ランボーシルヴェスター・スタローン)。
ミャンマーでの死闘の後、故郷のアリゾナで古い友人マリアとその孫娘ガブリエラと、家族のように牧場を営んでいた。そして災害等があればボランティアとして救助する(数年前にあった、山で行方不明になった少年を探しだした立派なボランティアのおじいさんみたいなもんだ)。久しぶりに訪れた穏やかな生活。
この初老の女性マリア、詳しいことはわからないが、どうやらランボーの父親の友人だった雰囲気の隣人。ルックスからしてメキシコ系っぽい。このご婦人マリアと孫娘ガブリエラ、経緯はよくわからないがランボーと一緒に住んでいる。マリアの娘……つまり孫娘ガブリエラの母は既に亡くなっており、そのクズだった夫は家出して行方知れず。代わりに身寄りの居ないランボーが父親代わり。我々が知らないこの10年の間ランボーはここでご婦人たちと、やっと人間らしい生活を送っていたようだ。
大学進学を控えたガブリエラは、ある日、マリアとランボーの反対を押し切って、母と自分を捨てた実父に会うためメキシコへ向かうが実父は冷たい態度。やはりマリアが言うように只のクズだった。ちょっと「こんな奴いる?」ってくらいのクズ。失意のガブリエラは知り合いに売られ、あっという間に人身売買カルテル拉致監禁されてしまう。
メキシコでの失踪にはアメリカの警察も手が出せない、言っても無駄、俺が連れ帰った方が早い。そんなわけでランボーは単身、救出に行く。
今どきの映画って、映画館だろうとレンタルだろうと配信だろうと観る前に読む数行のあらすじ紹介や予告編で大体の内容がわかる。本作は孫娘が、あの恐ろしいメキシコに出かけて酷い目に遭うことが予想できる。僕は、犯された女性が男にリベンジするレイプ・リベンジ映画とか、犬が殺されて復讐する『ジョン・ウィック』一作目などの劇中で、前半でやられるキャラクターが楽しそうに過ごしてる様子を観るのが凄く辛いので、本作の冒頭でガブリエラとランボーが触れ合ってるのを観るのが辛かった。
どうやら祖母とランボーの愛情に包まれて育ったガブリエラは性善説の娘のようで、それが災いしてか、取る行動取る行動すべてが間違っており「こりゃだめだ……」と最初っから絶望的な感じを出している。酷い言い方すればランボーが復讐するための舞台装置のキャラなのだが、それにしたって間違った行動ばかり取るので少しイラッとした。
麻薬カルテルによって娼館に囚われたガブリエラ。描写されてないがレイプされまくってると思われる。ランボー早く助けに来てガブリエラを助けて!
ちなみにガブリエラは、クラブでガラの悪そうなチンピラによってカクテルにレイプドラッグを入れられて拉致された。この瞬間ガブリエラの人生は風前の灯となった。
そういえば俺も10年前、六本木のYellowってクラブで踊ってたら次の瞬間、顔の前に壁が……いや、それは床だった。どうやら本作のガブリエラ同様レイプドラッグをかまされて財布取られて店の前で昏倒していた事があった。まぁ財布には5千円しか入ってなかったし生まれてはじめてした失神があまりに気持ちよかったし別に危害は加えられなかったので結果オーライで別にどうでもいいが、とにかく治安の悪い場所で一旦、目を離した飲み物を口にするのは危険だ。
颯爽と助けに来たランボー、まずはチンピラ相手に無双シーンか?と思いきや追跡があっさりバレて、ラスボスであるマルティネス兄弟と武装した手下に囲まれ成すすべなくボコられる。そしてランボーが救う予定だったため、ガブリエラの命運もこれで完全に終わり致死量の麻薬漬けにされる。
「まずはランボーが軽く無双して、その後罠にはまってボコられ、最後に復活して家で迎え討って終わりかな?」と想像してたら速攻やられたので意外だった。
映画『イコライザー』を観た時、デンゼル・ワシントン演じる主人公が、物理的な殺人術だけでなく街やコネや現代的なあらゆる情報にも長けてて異常なほどクソ強かったのを観て「これ、街ならランボーより遥かに強いんちゃう?」と思ったのを思い出した。
ランボーはジャングルや山など自然の中でのサバイバルを含めたゲリラ戦は強いので自然の中ならランボーは無敵だが、まともな社会生活はおろかコミュ障で人付き合いすら苦手そうだ。ランボーが最も苦手なものは社会生活だ。相手の居場所を知ってて物理的に殺しに行ったり路上で闘ったら……そりゃ勿論それなりにランボーは強いだろうが、街中でよくわからない集団を相手にしてもランボーは勝てないだろう。百獣の王ライオンが都心に逃げた状況を想像して欲しい、一日以内に捕まるか射殺されて終わりだ。
実際、ランボーはアウェイのメキシコで敵を闇雲に追跡してたら、すぐに囲まれた。ラスボスのマルティネス兄弟の兄は「ランボーを見逃す事によって娘を失った哀しみを与えてやろう」というサディスティックな理由により見逃したが、マルティネス弟は即・殺そうとしていた。ランボーは運が良かっただけだ。異能生存者としての悪運だったと言ってもいいが。
イコライザー』観た時にふと思った自分の「ランボー、街の中だと、さほど強くない説」が当たってた事よりも、脚本書いたスタローンが「ランボーなんだから何時でも無敵!」とはせず「敵のホームにいたら、さすがのランボーもチンピラに成すすべなく負ける」と描いたスタローンの誠実さが嬉しかった。
同様に家族を失ったジャーナリストの女性に助けられたランボーだが、四日間も昏睡してた間にガブリエラは既に薬物中毒患者へと完成させられていた。
復活したランボーは何とか娼館に乗り込んで昏睡状態のガブリエラを救出したが、メキシコ国境を越えた辺りでガブリエラは薬物の過剰摂取により死亡。助けに来てくれたランボーによる愛情深い語りかけを聴きながら亡くなった事だけが救いだ。
大学進学予定だった、優しく馬の世話が上手い少女が殺された。ランボーが戦いの果てにやっと見つけた幸せだったが心無い者に踏みにじられてしまった。
か弱いガブリエラ、慣れない街でボコられるランボー、もう二度と生きて会えない孫娘を待っている祖母マリアなどを心配する時間は終わった。以降は、ベトナム帰還兵ジョン・ランボー……いや、連続殺人鬼ランボーを目覚めさせたマルティネス兄弟一派を心配する時間がやってきた。でも……ランボーは絶対に許さない。一度たりとも許したことはない……!ランボーをなめた罪、それはこの世で一番重い実刑情状酌量の余地なし……。彼らは果たして滅びずにいられるのかな?ランボーはマリアと馬を遠くにやり準備をする、一方的な大量虐殺の。
太陽よ、そなたはこれから起こることを見ないほうがよい。

 

 


ホーム・アローンよろしく自宅の地下迷宮のような広大なトンネルにトラップの数々を仕掛けるランボー
そう、家族を得て幸せになったかのように見えていたランボーだが、内なる獣を抑えるためにか自宅の地下に無目的に巨大な地下トンネルを掘っていた
家族を得て10数年経ってもベトナム戦争が「まだ終わっちゃいない」ランボーは、昼間マリアやガブリエルと穏やかに過ごした後(恐らく)毎晩トンネルに降りては、かつて自分をブッ殺そうとしてきた者や自分がブッ殺した者の声を聞きながら、かつての最大の強敵だったであろうベトナムのゲリラ兵の得意とした殺人トンネルを掘りあげた。自分を苦しめた殺人トンネルを自ら作り出すことによってトラウマを克服するため?よくわからないがとにかく具現化されたランボーPTSDがこの恐ろしいトンネルだ。
このトンネルは映画の冒頭ですぐ出てきて俺をギョッとさせた。恐らく他のランボーファン、スタローンファンもそうだろうと思う。
このトンネルの存在こそ本作最大の売りだ。
当然あとでメキシコ麻薬カルテルをここで皆殺しにする予定のトンネル。やってること完全にトビー・フーパーのホラー映画に出てくるサイコ殺人鬼。
狂った殺人機械ランボーが、彼ら連続殺人鬼と違うのは「普段は優しい」というところだけだ。しかしそれもまた別の怖さがある。その「優しさ」というブレーキをランボーという暴走車自身が外してしまったら?後に残るのは無残な轢死体の山だ。
「文句言わず観るけど、話は『ランボー 最後の戦場』で終わってただろ?」と文句言いつつ観に行ったが開始数分でこのキ○ガイトンネルが出てきて「あぁ!スタローンは、このトンネル思いついたから既に終わった物語の続編を作ったんだな!」と全てを察して、早くも入場料の元は取れた気分になった。それと同時に「もうこれより凄いものや面白い瞬間は来ないだろう。後は娘が殺されてトンネルでホーム・アローン虐殺して終わりだな」と思った(そして実際その通りだった)。家の下に掘ったトンネルの映像一発で、あれこれ台詞にしなくても現在のランボーの全てがわかってしまう。前から思ってたけどスタローンの脚本って意外と文学的だよね。
親友マリアにも見せなかった狂気トンネルだが、娘代わりのガブリエラや、その友人たちにはあっさり招待するところも面白い。若い彼らが見ても真のヤバさに気付かず「なんだこれ?ガブリエラの父ちゃん、やっべーーwww」とウケるだけだろうし、マリアに見せないのは歳を重ねた彼女が見たら、ひと目でランボーの闇が露見して気まずくなってしまうからだろう。
若者たちも実際、目の当たりにしても「何このトンネル。ガブリエラの父ちゃんやべえwww」と面白がっていた。だが本当に何がヤバいのかまでは理解しておらず、単純に表面的なところでヤバがってるのが面白かった。「『なんだ?家にこんな太い棒があるってやばくない?w』と驚きながら若者たちは丸太のような棒を椅子代わりに座ってるが、実はそれはランボーの怒張した男性器だったのだが若者たちはその事実に気付いていない」みたいな感じだ。そしてそういう事は世の中によくある。君がそれを知らないのは、誰もそういったことを具体的に説明しないからだ。未経験の者に経験者が口で説明することほど無駄な事はない。メキシコの危険性や実父のクズっぷりなどの真実をランボーや祖母に告げられても全く言うこと聞かず犯されて殺されたガブリエラみたいなもんだ。そしてランボートンネルを観ても「何か凄いねw」としか思わない彼らと、本作を観て「何か変な映画だなぁ」と思うであろう若い映画ファンはシンクロしている。
ランボーは、マルティネス兄弟の組織を我が家(トンネル)に招待するため、メキシコに舞い戻りマルティネス兄弟の仲間を手当たりしだいに惨殺する。まるで『ハロウィン』のマイク・マイヤーズ、『13日の金曜日』のジェイソンのようだ。次々と瞬間移動して悪漢共の前に現れ一撃で絶命たらしめていく。そしてガブリエラを薬漬けにした張本人であるマルティネス兄弟の弟を斬首。首はストリートに投げ捨てた。ラスボスである兄へのメッセージだ(弟はシャワー浴びてたから、わざわざ服着せて殺したのか?弟を殺す場面は見たかった)。どうでもいいけど、この際だから今回の悲劇の発端となったガブリエラの親父もブッ殺してほしかった。
これでラスボス兄は、肉親を殺された怒り、部下の前で潰されたメンツなどにより、ランボーの敷地を自ら強襲せざるを得なくなった。ランボーは以降、マルティネス兄の事をデッドマン(死人)と呼ぶ。彼がランボーへの襲撃を決めた瞬間、彼自身の命は終わったからだ。
かくして敵の組織が迷い込んだこの場所は、ランボーが「只の腕っぷしが強いだけのデカいジジイ」でしかなくなるメキシコの街中ではない。ゲリラ戦の天才、殺人マシーン、大量殺戮者ジョン・ランボーによってトラップが張り巡らされたトンネル……いや、ランボーが数十年抱えて熟成させた闇「ランボーの狂った脳内」そのもの、マルティネス兄や組織はその中に囚われてしまった。もはや彼らに出来ることは己の断末魔によって地獄への進軍ラッパを、自らへのレクイエムとして鳴らす事だけ。殺人機械ランボーを作り上げたトラウトマン大佐亡き今、フランケン・シュタイン博士を失ったフランケン・シュタインの怪物……それがランボーだ。
さっきも言ったように街を始めとする地球の殆どの土地では、社会性皆無のランボーは無力だ。だが山の中や無人島など人間のルールが届かない場所ではランボーが勝つ。戦場なら犯罪組織を敵に回してもランボーが圧倒的有利。ランボー「だったら自分の土地を戦場にしちゃえばいいじゃん」。
かくしてアメリカの片田舎アリゾナの小さな一角に突如ベトナムの地獄が出現した。
こうなってしまっては麻薬カルテルに勝ち目はない。落とし穴、土砂崩れ、トラップ、ランボー自らナタで人体切断……ホーム・アローンよろしく一人ひとり殺人ピタゴラスイッチにて確実にバラバラに解体していくランボー。致命傷を負ったチンピラにもわざわざショットガン数発撃ち込んで確実にオーバーキルしていく。ベトナム戦争で米軍が大音量で流してたようなロックを大音量で流し連続殺人を繰り返すスタローン演じるランボー
ランボーが、ガブリエラとマリアと馬たちと疑似家族を形成していた愛情にあふれる場所だった、この土地だが、今ではランボーが殺害した麻薬カルテル達の血や彼らの腹からこぼれる糞の匂いしかしない呪われた土地へと変わった。
この辺で、脚本書いたスタローンも「ピンチが一切なく無双してたら観客も飽きちゃうかなァ……」とでも思ったのか申し訳程度に腹を撃たれてみたりさせるのが可笑しい。だが、ここはランボーのテリトリーなので地形効果によって撃たれたくらいで死ぬわけないのはわかりきっている(メキシコの街中だと死んでた可能性ある)。
そして本命のマルティネス兄は「最後にじっくり殺すため、10回も見逃してた」と嘯くランボー
もし自分がランボーなら、ラスボスを痛めつけたり殺す瞬間よりも「10回見逃して命を助けてやった」事とか「今からトンネル爆破するからライトの方向に逃げろ」と指示する時の方が気持ちよさそう。

 

 


実際この映画も面白いっちゃ面白かったけど、ちょっと古くて単調だった気がしなくもない。観なくてもわかる内容がそのまま繰り広げられただけっつーか。前作では凄かった残虐アクションだが、トンネルのどこから何をしてるのかとかトンネルの広さが全く伝わらないなどアクション映画としても『ランボー 最後の戦場』ほど「最高!」ってレベルではなかった(せめてスタローンが監督してればね)。10年前の『ランボー 最後の戦場』は最先端感あったので古さを感じたのは残念だがスラッシャーホラーのキラー側を主人公にした面白さは間違いなくあった。
まとめると本作の加点の殆どはトンネルに象徴させたランボーの狂気だけで、全体的にはいまひとつという感じか。
「マルティネス兄が自ら組織全員率いて総員突撃して来たから上手く行ったけど、暗殺者を数人づつ永遠に送って来られたらランボーに勝ちめはない」とか変なところはたくさんある、この映画はランボーの「何も終わっちゃいない」を必死で覆い隠してたところに、娘(=ランボーの希望や良心)が悪に麻薬打たれて踏みにじられたので、その憎い悪を「何も終わっちゃいない」ゾーンに誘い込み、ランボー数十年分の「何も終わっちゃいない」を強制的に致死量注入して復讐した……という話なのでそんな現実的な事を言っても仕方ない。あとはランボーのトラウマを大量摂取させられた悪党たちがオーバードーズで死ぬのを待つだけ。ランボーシリーズ自体そうだが、もっと御伽噺的に見るべき。
アメリカ内部で、本作には「メキシコやメキシコ人への差別を助長する」という批判もあったそうだ。まぁ確かにトランプが築こうとしている差別の壁を後押しする内容だと言えなくもないが、実際のメキシコ麻薬カルテルは本作の十倍くらい強くて残虐だし、スタローンも「現実に居る巨悪……ミャンマーはもうやったし中国政府……を敵にしたら映画作れないからメキシコの麻薬カルテルにしとこう!」とか考えて選んだだけだろうし、あまり「現代の映画の線から逆行してる」などとクソ真面目に批判する気は起きない。
この内容なら普通ランボーを最後に相討ち討ちさせるとこだが、本作はかなり早い段階で「これランボー死なないな」と悟った。それだと、ただでさえ予想通りすぎる本作が、更に定番の最終話っぽく堕してしまう。「希望ある若者は死に、大量殺戮しか取り柄のない老兵ランボーは望まぬ余生を生き続ける」それがスタローンの今のメッセージだ。「ラスト」って付いてるから一応終わりっぽいけど、ランボー自身はどうやら今後も家族を失った人を助けていく復讐の精霊になっていく感じっぽい。だから真のラストっていうより「最終章の第一話」って感じの映画だったので続編があったとしてもおかしくはない。俺の妄想だけど走り去ったランボーはその足でガブリエラの親父を殺しに行ってて欲しい。
映画としての完成度は、『ランボー』一作目や『ランボー 最後の戦場』に比べると明らかに劣ってる。単純な娯楽作である『ランボー/怒りの脱出』『ランボー/怒りのアフガン』にはさすがに勝ってる。だが本作に出てくるトンネルだけ、シリーズのどの要素より優れてる最高のアイデアだった。このトンネル思いついたら見せたくて続編作りたくなるのもわかる。昔の映画みたいに物事が単純化され過ぎてたり敵組織全員が丁寧に全員一斉にランボーのトンネルに入って殺されたり心臓つかみ出す場面などの漫画っぽさもあまり乗りきれなかったが、トンネルがナイスアイデア過ぎてトンネルについて考えるだけで一晩飲める。何なら映画冒頭、トンネル出てきた数分の時点で映画終わってもいいくらいだ。もう後の本編は全部おまけみたいなもんだ。
本作はちょっと……ランボーをずっと観てる人やランボーが掘ったトンネルにピンと来る人じゃないと評価は低くなるかも。と言ってもトンネルを理解できない者を見下げてるわけではない、むしろその逆だ。健康に前向きに暮らしている人は心にトンネルなど掘っていない。だから低評価なのは当然。世界中の人がランボーの狂気にすぐピンとくる社会の方がヤバいのでこれでいい。要するに長年ランボーを思い入れあって見てる人はそれなりに思うところある映画だが、穴の多い歪な映画なのでランボー全く観たことない若者とか「単純に映画が好きだからこれも観てみるか」という人が観ても「何か変な、現代的な映画の流れが全く無い微妙な映画だったな」とピンと来ないと思う。もっともランボーは評価の高い1や最後の戦場にしても歪で一部の人しかピンとこない映画ではあったが。
総括すると『ランボー』『ランボー 最後の戦場』の二作は現在の老若男女、誰にでも勧められる傑作だが、本作や残りの2と3は、かなりのファンじゃないと厳しい。『ランボー 最後の戦場』を観て引く人もいるだろうが、引いたら引いたで「助けてくれたランボーの超暴力に引く」劇中のヒロインと同化して作品の一部になれるので映画に引いても絶賛と大差ないが、本作に引いた場合ただ引いただけという残念な結果になりそうっていうか。
まぁ何度も言うようにトンネルに尽きる。本作の映画タイトルが『トンネル』(2019)でも良かったくらい。
ランボーによる大量虐殺は今度こそ終わったのか?
いや、奴はまた殺るだろう。何しろまだ何一つ「終わっちゃいない」のだから。
アメリカ、ベトナム戦争、トラウトマン大佐らが生んだ殺人マシーン、ランボー
彼を何とか普通の人間の域に留めておいた「家族」というストッパーが無くなりランボーが世に放たれてしまった。
麻薬カルテルの全員を殺戮したランボーは狂気の象徴であるトンネルを爆破して麻薬カルテルごとこの世から消した。しかし「トンネル」というのは土を掘って出来た何もない空間に過ぎない。本当の殺人トンネルはランボーの心の中にある。何かあればまたぞろ出てきて悪党が二度と笑ったり食事できたりしないように人体破壊を始める。ランボーが死ぬその日まで。

 

 

 

そんな感じでした

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映画『ランボー ラスト・ブラッド』 公式サイト
Rambo: Last Blood (2019) - IMDb

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