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『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』(2019)/キャラクターへの愛情は感じるがとにかく長い……🤡

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原題:IT Chapter Two 監督&製作:アンディ・ムスキエティ 原作:スティーブン・キング「IT」
製作国:アメリカ 上映時間:169分 シリーズ:「IT」シリーズの後編🎈

 

 

 

スティーブン・キングの原作の小説『IT』 の映画化。
本作の前の話が、原作『IT』 の前半部分……七人の少年少女がピエロの姿をした悪魔IT/ペニーワイズや学生生活の困難に立ち向かうジュブナイル・ホラー映画だったのが変な邦題だった前作『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017)。そして、原作の後編部分……40代の大人に成長した彼ら彼女らが再びペニーワイズと対決する展開を映画化したのが本作。
ホラー映画は「ヒットしたから続編が企画される」という事はあっても最初から続編ありきで制作されるという事はなかったため「前作がヒットしたら、後編を制作できるようになる」という契約だったらしく2年の時を経て本作が公開された。
前作は、元々コルロフォビア(ピエロ恐怖症)の人が多かったアメリカで、偶然ピエロの扮装して通行人をビビらせるイタズラが全米各地で流行したのも追い風となってホラーでは異例の大ヒットした。
僕は少年時代に原作の前半の子供時代編しか読んでないので原作の後編どうなるかよく知らない。だけど古いドラマ版IT/イット』(1990)は全部観たので何となくどうなるかは知ってる。だから原作と比べてどうのこうのっていう感想は書けない。
前作は子供ばかりだし怖さも控えめだったのでホラーというよりも同じキング原作の『スタンド・バイ・ミー』みたいな「昔のアメリカで子供時代を過ごしたわけでもないのに何故か強烈な懐かしさを感じるアメリカ田舎ジュブナイル映画」として楽しんだ。ホラー部分はかなり普通の感じだった。ペニーワイズ役の俳優さんも演技を極めてるうちに愚地独歩の散眼みたいにCGじゃなく演技で斜視に出来るようになったりして良い感じだがカートゥーン的なキャラクター性が強すぎて怖さが全く無く「やっぱ昔の、ガイキチが化粧しただけみたいなペニーワイズの方が恐いな」と思った。そして、この監督がIT以前に撮った『MAMA』(2013)っていうホラーも観たのだが、こちらも悪くもないが特に凄く良いわけでもない……という中途半端な印象で感想も書かなかったので本作にも食指が動かず、やっと観たがまぁ普通……って感じだったので感想書く気が起きなかったが、ただの感想といえど前後編が揃わないとブログとして収まりが悪いので一応何とかある程度の感想書くことにした。
それにしても前作同様ひどい邦題だ。だが日本でもヒットしてしまったので邦題付けた人は社内で「な?ヒットしただろ」などと誇ってるのかもしれない。それを想像すると悔しいけどヒットしたので仕方ない。我々の負けだ。ネタバレあり

 

🎈

 

架空の小さな田舎町デリーで起きた連続児童失踪事件の恐怖……ピエロの姿をした人の恐怖につけ込む悪魔〈ペニーワイズ〉を、七人のいじめられっ子〈ルーザーズ・クラブ〉が退治して27年後。
ルーザーズ・クラブの面々は大人になった今、デリーを出て大人へと成長していた。
ルーザーズ・クラブで、ただ一人デリーに残って事件の調査を続けていた黒人男性マイクは、ペニーワイズが再び蘇って殺しを再開した兆候を察知し、かつての仲間たちを招集する。
デリーを出た元ルーザーズ・クラブの面々は、他のルーザーズやペニーワイズの事を全く忘れてバラバラに生活していた。そして彼らは、作家になったり売れっ子コメディアンになったりと皆、大きく成功していた(一方、一人デリーに残ったマイクは暗い部屋でデリーの歴史やペニーワイズの調査などをしていて世捨て人みたいな感じ)。成功したルーザーズだが、太っちょだったベンは筋トレして体型へのコンプレックスを脱してイケメンに成長してたり、DV父を嫌っていたベバリーなのにその嫌な父を思わせるDV夫と辛い結婚生活をしていたりと、良い意味でも悪い意味でも子供時代だった時の片鱗を感じさせる成長の仕方をしていた。
マイクから電話を受けたルーザーズ達は「マイク?君は誰だ?」と、マイクを覚えてもいなかったのだがマイクから「あの夏ルーザーズ・クラブで一緒に遊んでたマイクだ」と聞くと全てを思い出し皆、口々に「……何で今まで忘れてたんだろう……?」と思い出し、彼ら彼女らは27年前の約束を果たすため田舎町デリーに帰郷する。
自分は、大人に成長したルーザーズと同世代なので「小学高学生の数年間だけ付き合ってた同級生から電話かかってきたら……」と想像すると、皆がマイクと言われても思い出せなかったのがよく分かる。原作とかドラマ版に触れたのは自分も10代だったのでピンと来なかったが今だと大人ルーザーズの視点でも観れて面白い。
ペニーワイズを倒した27年前「もし再び奴が蘇ったら再会して今度こそ殺そう」と約束していたのだ。このルーザーズたち、ライフワークとも言える重要な「ペニーワイズ退治」や「再会の約束」をしてる固い絆で結ばれた子どもたちであるにも関わらず、ペニーワイズを倒して以降は付き合いが無くなってたのがリアルだ。子供の時の付き合いというのは引っ越しやクラス替えで、あっけなく途切れたりするし、また「あまりに重要な体験を共有してしまったため、もう平凡な遊びや私生活を共有する気など、逆に無くなる」……といった事は現実世界でもよくある。
大人になったルーザーズは27年ぶりにデリーの中華料理屋で再会を果たす。
そこで「自分は復活した」というサインをルーザーズに送ってきたペニーワイズ。
そして一人だけ来てなかったユダヤ系男性スタンリーは死亡したことが明らかになる。
ペニーワイズの恐ろしさを思い出し恐怖するルーザーズ。彼らはペニーワイズを今度こそ滅殺できるのか?もし今、殺しそこねて生き残れたとしても次に奴が襲ってくる27年後にはルーザーズは老人になっていて、とても悪魔と対決できない。そうなった場合、生き残れたとしても死ぬまで一生、悪魔に怯えながら人生を過ごすことになる。
かつてルーザーズをいじめていた不良少年も27年間ずっと精神病院に入院していたがペニーワイズの悪魔の波動で覚醒し、病院を脱走してルーザーズを殺害しに来る。ペニーワイズは自分を恐れるものしか餌にできない(子供を襲うのを好むのはそのため)。だから大人ルーザーズを直接殺すことは難しいので不良少年を使役したんだと思う。もしくはルーザーズを色々ビビらせて恐怖の感情を沸かせたらやっと食えるんだと思う。そうでないと、さっさと殺せばいいだけなのでそう思った。もっともペニーワイズがルーザーズを中々殺せないのをメタ的に言うと「ペニーワイズとは、ルーザーズが子供の頃から心の底に残ってる克服したいトラウマだったりやり残したことや後悔」などの想いをキャラクター化したものだからなんだろうけども。

 

 

 

そんな感じで再会を喜んだのもつかの間、ペニーワイズと対決しなければならなくなったルーザーズ。今度こそ命を懸けて奴を倒さなければ人生はない(もっとも我々全ての人類は常にそういった局面にいるわけだが……しんどいので考えないようにしてるだけでね)。
デリーに残ったマイクは町の歴史や、この地にかつて居たネイティブ・アメリカンのスーパーナチュラルな儀式について学んでいた。マイクが言うには、ルーザーズ達は27年前の自分を象徴する品物を、それぞれ一人だけで独自に集めなければならないらしい。
マイクはネイティブ・アメリカンのスーパーナチュラルな神具?(火を起こして物を燃やせるバケツみたいな形の器具)や麻薬を使いこなしている。「危ないから、ルーザーズは団体行動でアイテム探しした方が安全じゃないの?」という観客が感じがちなメタ的な疑問は作中で「一人でやらないと『儀式』としての効果がない」という力技で否定してくれるのが、ちゃんとしてるなと思った。この説得力をもたらす舞台装置が〈ネイティブ・アメリカンの超自然的な儀式〉というわけだ。
それにしても昔は何も知らなかったけど大人になった今では「アメリカに入ってきた白人たちがネイティブ・アメリカンを如何に卑劣に騙したり虐殺しまくって繁栄したか」を知ってるので、ここ数年キング作品に触れた時「キング作品って妙に〈ネイティブ・アメリカンの呪い〉がよく出てくるなぁ」と感じる事が多い。またそれらがアメリカ人に強い恐怖の説得力をもたらしてるんだろうなとよく感じる。モロに作中で「ネイティブ・アメリカンの呪い」と語られるわけではないが『シャイニング』とか『ペット・セメタリー』とか、どれも作品の奥にネイティブ・アメリカンの「自分たちからアメリカを奪った卑劣な白人たち……つまり現代のアメリカ白人への呪い」のようなものを感じる。本作もハッキリ言及されるわけではないがペニーワイズの誕生や逆に彼の倒し方など超自然現象的な事は全てネイティブ・アメリカン由来のものだ。それらは説得力をもたらす便利な舞台装置ってだけじゃなく「彼らネイティブ・アメリカンに、あれだけ酷いことしたんだから呪いや悪魔くらい生まれても不思議じゃない」という底知れなさを生んでいる。
それで各自、思い出の場所に行ってペニーワイズの幻覚や攻撃を受けるが何とかかわして品物を集めてくる。
ここで本作の感想を先に言ってしまうと皆が集まる序盤までは結構面白いんだけど、中盤からラストまで、あまり面白くない。「良いところもあるし別につまらないわけではないが特別良くもない」という水平の状態で最後まで行く。
ルーザーズ達の回想とかアイテム集めや各自でペニーワイズの攻撃と闘う様子を、一人ひとりくどいほど長く同じ熱量で描いていて、それが延々と続くので正直かなりかったるく感じる。ここが短かくテンポ良く進めばまだ良かったんだろうけど、熱心に描いてはいるのだが、それがあまりに何度も繰り返されるんですよね。そしてまた再結集した彼らが27年前の下水道に行って幾つかの障害をクリアしながらペニーワイズと対決するのだが、そこでもまた各自バラバラで個人個人の抱えてるトラウマと再び対峙して、それを全員分見せてくるし、それが終わってのペニーワイズとの対決もめっちゃ長い。レイドボスか。もう、いいからさっさと倒して映画終わってくれや……と感じる。
この監督は前作も『MAMA』もそうだったが、ホラーというよりファンタジー映画っぽいんですよね。全然怖くないしペニーワイズや彼の見せる恐ろしい幻覚は冒頭から何度も何度も出てくるので中盤以降は全く緊張感がないんですよね。この人の作品には、やたらと細長いデッサン狂った顔の幽霊がよく出てきて、それは結構恐いんだけど本作では色んな細長幽霊が、最初から最後まであまりにも何度も出てくるので「また細長が出てきた……」とすっかり飽きてしまった。しかもペニーワイズが見せるそれらの攻撃はルーザーズを全く殺せないので、そうなるとお化け屋敷のキャストと大して変わらないので緊張感ないし。
僕と同じこと思う人は多いと思うけど「これ、前作と本作合わせて2時間ちょっとの1本の映画にまとめれば丁度良かったんじゃないの?」と思った。とにかく「ルーザーズの思い出を七人分とか三時間以上ある時間とか……要らんだろ!」って感じだ。主人公格のビル、ベバリーと大柄少年の三人だけ念入りに語って残りの四人は語りとか一瞬の幻で見せるくらいで短くすべきだろう。前作と本作を観てると「話が脱線しまくる上に長い」という恋人の話を聞かされてる感覚に近い。
結局、観てて嫌になるってほどつまらなくもなく一応最後まで楽しめるくらいの面白さはギリギリある(100点満点で言うと51点くらい)でも、長いしあまり面白くはない。
だが不思議と嫌な気分にはならない。と、いうのも「この監督はルーザーズたちのキャラクターとかペニーワイズが大好きなんだろうな~」という熱意が伝わってくるからだと思う。とにかく「一分一秒でも長くルーザーズと一緒に居たいから彼らの事をたっぷり描きたい!」という熱烈な愛情を感じた。そういったエモい波動を感じたので悪しざまに言う気が起きないのかもしれない。
ベバリーとベンの27年ぶりの恋愛描写とか、俺が好きなビル・ヘイダー演じるリッチーのキャラとか、他のエディとかスタンリーなどのキャラも人間ドラマは個別で見れば結構良かった、ただそれが念入りで多くて長すぎるのがネックなだけだ。一時間短くするだけでもっと面白かったと思う。
……今思ったけど本作はNetflixで2シーズン全16話くらいかけて描けば良かったんじゃないかな?。それなら同じ熱量で各人の事を描いても間が持っただろう。同じ熱量ってことは緩急がないって事だから、映画にするには不向きだったのかもね。
そう言う僕のこの感想もまた、さっきから「映画がなげえ」って事を同じ熱量で延々と書いてるし、この映画っぽい微妙な感想になった気がしなくもない。
お子さんや「怖い映画観たいけど怖すぎたら観れない」って人には丁度いいかも。
古いドラマ版とどっちが良いかは……どちらにも一長一短あって一概には言えない。
リッチーなどのルーザーズはこっち、ペニーワイズはドラマ版かな?

 

🎈

 

 

そんな感じでした

gock221b.hatenablog.com

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 It Chapter Two (2019) - IMDb

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