gock221B

映画やドラマの感想ブログ 😺🐱 殆どのページはネタバレ含んだ感想になってますので注意 😺 短い感想はFilmarksに https://filmarks.com/users/gock221b おしずかに‥〈Since.2015〉

『アメリカン・スナイパー』(2014)/時と共に増していく影が酸みたいに彼を侵す🧿

f:id:gock221B:20170210125700j:plain
原題:American Sniper 監督&制作:クリント・イーストウッド 原作:クリス・カイル 製作会社:マルパソ・プロダクションほか 製作国:アメリカ 上映時間:132分

 

 


アメリカンスナイパー観た。

僕にとってイーストウッドは、作品数がやたら多いがその殆どが面白いという最も打率が高い監督で、監督作と主演作合わせて約60作(これほど大物だとただの主演作も製作作品のように合わせて考えてもいいだろう)全部観たけど「これはダメだろ‥」と苦手だったのは確か2、3作くらいしかなかった
70年代~2000年くらいまでのB級映画ぽさを残してた時期が一番好きだが、近年の重厚なやつもそれはそれで好きだ。
しかしインビクタスヒアアフターJ・エドガーという流れは正直、高尚すぎて今一つピンと来なかったが、前作ジャージー・ボーイズは久々にイーストウッド作品の中でもトップクラスに好きだった。
特に主人公の娘の幽霊みたいな登場シーンも凄かった。死人が座っている。
f:id:gock221B:20150719235644j:plain


 
入隊して基礎訓練~美人と知り合い結婚~伝説のスナイパーになり‥と、かなり軽快に話が進み、面白かった
その後も、アルカイダの残虐性や主人公クリスが容赦なく標的をスナイプしていくなどの見世物要素、敵スナイパーとの死闘などのエンターテイメント要素が妙に強く、そういう見世物根性は大好きです
「深刻な話なのでそういう面白い要素があるのは不謹慎だ」みたいな意見もあったようだが、ロッキー4みたいな結末にされてたらそう言ってもいいと思うけど、後半でやる事やってるんだし劇映画を面白くして何が悪いんだよと思いました
とはいえ、前半であまりにも米軍にいい奴が多くアルカイダ側は邪悪な奴が多すぎるので「何かイーストウッドっぽくないなぁ、大丈夫だろうか‥」と不安になった
しかし戦場で、標的をスコープで見ながら奥さんとラブラブ会話する様子とかやたらと女子供を死んだり、敵スナイパー以外の残虐な敵キャラは全然死ななかったりする様子を見て、すげーなこれは何かあるんだろうなと思って観ていました

PTSDになっていきはじめてから、イーストウッドっぽい濃すぎる影がクリスの顔に落ちはじめる辺りから、不穏な雰囲気が増大していった。
どんどん濃くなっていく影が酸みたいにクリスを侵す。
でもイーストウッド本人が演じていたような聖なる雰囲気で顔が見えないキャラとは違って、クリスはどんどん人間じゃない雰囲気になっていって怖い

PTSDになったクリス本人も怖くて、何かいきなり笑顔から真顔になってブン殴ってきたりしそうなムードが充満していく
そういうクリスが怖い雰囲気を出してるシーンでは、画面には犬とか赤ちゃんとか妻とかナースとか、本来なら守るべき対象のものがいてクリスがそれらを今にも殺しそうな雰囲気が出てるから余計怖かった。計算されつくされてるわ。。
愛妻に銃を向けて遊ぶシーンも撃つんじゃないかと怖かったし。

紛争地域で戦闘中は真人間に見えるのに、穏やかな生活パートになったら途端に、危険な人物に見えるのが、もう平和な生活送る人じゃなくなってるんだなという感じがあったわ

 

 


最後まで観ると、前半の見世物要素とか、恋愛結婚も仕事も頑張るサクセス描写、宿敵とのカッコいい死闘‥などのエンターテイメント要素は全部、終盤のためのフリなんだなと思いました
ただ単に自分を信じていたマッチョで優しかった主人公が、ひたすら力を行使していった結果、膨れ上がった自分の影に飲み込まれたというだけの話だったのかなと思った。
そして、実際のクリス・カイルの事を全く知らなかった事もあり「膨れ上がった自分の影を家族愛で制御する映画なのかな?」とギリギリまで
思ってたら、まるで妻子が居ないバージョンのクリスのような男がやって来る。
こいつのこのカット、立ってるだけなのにかなり恐い。
イーストウッド映画によく出てくる幽霊みたいな男。
主人公も戦争終わったら幽霊のような男になってしまった。
その直後の奥さんがゆっくり扉を閉めるカットも、2000年以後の作品の終盤によくある「それが最後でした」的なスローのカットで、これも近年のイーストウッドでよくあるやつ。
主人公が自分の中の膨れ上がった腫瘍を何とかしたと思ったら、実は腫瘍は癌細胞の様に外部にも‥というかアメリカ全土にも転移していてそれに飲み込まれる‥という丸っきりホラー映画みたいな結末だった。
これを観て好戦的だとかプロパガンダ的な映画だと思う人がもしいたらアホだろう。

良かったが、それにしてもこの内容で、本国でもってイーストウッド史上最大のヒットというのが信じられん。
次のイーストウッド新作も、人命救助した英雄の実録映画らしい。
 

 

 

そんな感じでした

『ハドソン川の奇跡』(2016)/本作もさらっと凄い映画だった。久々にイーストウッド的ヒーローキャラが出た🛬 - gock221B 
『グラン・トリノ』(2008)/久々に観たが面白すぎて15分間くらいに感じた。深い感動と牧歌的な間抜けさ🚙 - gock221B
『15時17分、パリ行き』(2018)/当事者達の素材の味を出しすぎて奇跡体験!アンビリーバボー化🚄 - gock221B
『運び屋』(2018)/今まで観たイーストウッド監督作+主演作全62本中で一番好きかもしれん。自分だけの面白さを掴み取ろう🚙 - gock221B
『リチャード・ジュエル』(2019) /正義を行った大柄まじめ系こどおじ一筆啓上、煉獄が見えた👮🏻‍♂️ - gock221B
『クライ・マッチョ』(2021)/本作のテーマには同意できるがそれを全部台詞で言っちゃうのはイーストウッドらしくなかったですわ🐓 - gock221B

🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿🧿

American Sniper (2014) - IMDb

www.youtube.com

Amazon: アメリカン・スナイパー ※Kindle
Amazon: アメリカン・スナイパー クリス・カイルの伝説と真実 ※Kindle

Amazon: アメリカン・スナイパー (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
Amazon: アメリカン・スナイパー クリス・カイルの伝説と真実 (竹書房文庫)

f:id:gock221B:20150914052331g:plain

#sidebar { font-size: 14px; }