原題:LOGAN 監督:ジェームズ・マンゴールド 製作国:アメリカ 上映時間:137分
シリーズ:「ウルヴァリン」シリーズ。「X-MEN」のスピンオフ
❌「X-MEN」シリーズ9作目(「デッドプール」も加えるなら10作目)にあたる。
ヒュー・ジャックマンのウルヴァリン役、パトリック・スチュワートのプロフェッサーXを演じるのはこれが最後。
演じている俳優2人は好きなのだが、X-MENシリーズはあまり好きでないものが多い。
極たまに「X-MEN: ファースト・ジェネレーション」とか「X-MEN: フューチャー&パスト」みたいな名作もあるが、それらの素晴らしさも次回作のクソ展開で台無しにされるという事が多く、全体的には「まぁどうでもいいか‥」という印象になり「ブライアン・シンガー早く辞めろよ‥いつまでX-MENにしがんでんねん‥」などと思ってはや10数年。
この監督は「17歳のカルテ」「アイデンティティー」「コップランド」とか、本作のエンディング曲を歌うジョニー・キャッシュについての映画「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」とかの監督。X-MEN的には前作「ウルヴァリン:SAMURAI」の監督。「ウルヴァリン:SAMURAI」は後半かなりしょうもなかったが東映ヤクザ映画みたいな前半は面白くて好きだった。特に新幹線の上でウルヴァリンと闘った(どう考えても真田広之やミュータントより強い)〈名も無き最強ヤクザ〉の異常な強さには誰もが笑顔になれる。
❌今までのFOXによるヒュー・ジャクマン版ウルヴァリン。
本来のウルヴァリンは「猫背で毛むくじゃらの獣のような小男」ってイメージだったが、ヒュー・ジャックマンによって映画版では「顔や雰囲気は似てるが、凄い長身なイケメンのウルヴィ―」にいうのが最後まで慣れなかった。
そんな感じでヒュージャク氏には長身以外には文句なかったが、レイティングを下げるためにウルヴァリンが全然敵を刺したり斬ったりしないのが不満だった。
本作は「デッドプール」大ヒットの影響で、R指定になりウルヴァリンが思う存分刺したり斬ったりする(カットが変わったりせずちゃんと刺したり斬る瞬間が見られる)
つまり「デッドプール」のおかげで17年かかってやっとまともなウルヴァリンが最後に観れたと言える。
❌ストーリーの原案になったのはマーク・ミラーの「オールドマン・ローガン」やX-23のオリジンなど幾つかのコミックも原案になっているらしい。
Story
近未来、2029年。新しいミュータントは25年間生まれておらず絶滅の危機に貧していた。
X-MENも全滅しており、かつて〈X-MENのウルヴァリン〉として恐れられた初老の男ローガン(ヒュー・ジャックマン)はテキサスで運転手をして生計を立てていた。
ローガンのミュータント能力ヒーリングファクター(超治癒能力)は弱体化しており老化が始まっている。
全身に移植された超硬度金属アダマンチウムも彼の身体を蝕んでいる。
彼は、かつてのX-MENの指導者プロフェッサーX/チャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート)を匿っていた。現在のチャールズは高齢のためアルツハイマーを患っている。
ある日ローガンは、看護師ガブリエラからローラ(ダフネ・キーン)という11歳の少女をノースダコタ州にあるという約束の地〈エデン〉へ送り届けてくれと依頼される。
彼女こそはウルヴァリンの遺伝子から作られたクローンのミュータントX-23だった。
ローラを追うドナルド・ピアーズ率いるリーヴァーズに追われ、ローガン、ローラ、チャールズの三人は約束の地エデンを目指して旅立つ――
X-MEN、こいつらいっつも壊滅してるな。ダークエイジ
ローガンやローラは、ガンガン敵の首や手足を斬り落としたりブッ刺す。
要はヴァイオレンスアクションで送るディストピア風ロードムービーでウルヴァリンの最期が描かれる。
この映画の世界は他のX-MEN作品とは繋がりの薄い外伝的な‥「バットマン:ダークナイト・リターンズ」みたいな一種のifものだと思われる(そもそも映画X-MENシリーズは繋がりが甘く、辻褄が合わない事が多いので観る側もファジーな気持ちで観なければいけない)
おじさんと少女という組み合わせも良い‥というかゲーム「ラスト・オブ・アス」感が凄い!
スティル画像が完全に一致。
この世界ではX-MENは全滅していて、ローガンとチャールズは完全に人生に絶望して生きている。
疑似親子の様なローガン一向は劇中、リッチなホテルに泊まって映画を観たり親切家族の家でディナーを食べたりとささやかで楽しそうな瞬間が幾つかあって良かった。
関係ないけど後半リクターっぽい奴もチョイ役で出てくる
ローガン/ウルヴァリン
元X-MEN。本名ジェームズ・ハウレット
本作ではヒーリングファクター(超治癒能力)が衰えたため老化した。
怪我が治るスピードも落ちた(拳から飛び出た爪の跡が治るのも遅いし膿が出ている)
それに伴い、全身の骨に鋳込まれているアダマンチウムが彼の身体を蝕み始めた。
運転手をしながらメキシコ国境付近の廃工場でチャールズと暮らしている。
働いて稼いだ金は、ヨットを買って海に出る資金と、自分とチャールズの病を緩和させる特別な薬をキャリバンに作らせるために使っている。
X-MENは全滅しておりローガンは完全に人生やこの世界に失望して仕方なく生きている。人助けの精神も失せてしまい助けを求めてきても基本的には無視しようとする。
映画冒頭、ただのチンピラに撃たれて昏倒したローガンの身体に「LOGAN」というタイトルが出る様が「この映画のウルヴァリンは今までと違ってこういう感じですよ」という事を雄弁に語ってて良い。
その後、殴られたり撃たれても大して怒ってなかったが大事な車を撃たれたらスイッチが入り、ヒーローっぽい崇高な怒り‥ではなく只の苛立ちでもってチンピラをズタズタに斬り裂いて殺す様が良かった。
こういうノリが見たかったのだが17年経って最後にやっと観れた。
全編ジジイ+アダマンチウム病でヨレヨレなので戦闘ではずっと苦戦していた(チンピラやドナルド・ピアーズごときに苦戦してるところからしてローガンの弱体化がよくわかる)
殺気100%なのはいいのだが、折角なら体調万全の状態で敵をズタズタにしまくるところが観たかったのだが、まぁ仕方ない。
ローラ/X-23
ミュータントを人工的に生み出し兵器に育てる機関で生まれた、ローガンの細胞から作られたクローン。ローガンと彼女は父娘のような関係になる。
原作でも似た感じの能力を持つ無表情&不愛想キャラだけど、原作では幼女ではなくハイティーンくらい。現在絶賛死亡中のウルヴァリンの代わりに二代目ウルヴァリンをやっている。
登場して人気が伸びなければどんどん殺されるX-MEN若手キャラの中で(だからX-MEN若手は10年以上、安定して活躍してないと突然無残に殺されたりするので好きにならないようにしている)ここ10年くらいでは一番の出世頭と言える。
最近のMARVEL女性キャラの中ではカマラ・カーンに次いで好き。
演じているダフネ・キーンさんは身体は子供すぎるが顔が(特に横顔が)大人び過ぎていてビビる。芸術一家の子らしい。24歳くらいの精神年齢のように見える顔。
彼女はウルヴァリン同様、ヒーリングファクターを持っている(まだ若いので胴体を貫かれてもまるで平気)。そしてウルヴァリンの様に両手からそれぞれ2本づつ、足のつま先から一本づつアダマンチウムの爪が飛び出る。
チャールズによれば足からも爪が出るのは女性特有のもので防御用らしい。
ここは時間取って意味ありげに言っていたので、ここがローガン=攻撃的な男とは違う、ローラ=大事なものを守る女性の本質だと言いたいのかもしれん。
凄く幼い体格のローラがバンバン敵を残虐に殺したり、またヒーリングファクターがあるのでローラ自身も胸を貫かれたりしてるのでR指定要素を彼女が70%くらい占めている(残りの20%はローガンの残酷アクションと残り10%はパリピJDがオッパイ出す場面)
こう言うと原案コミック原作者の別のアメコミ映画「キックアス」が思い浮かんで「ヒットガールの二番煎じか」と思われそうだが、この映画の敵は「子供達を人間扱いせず兵器にする国家権力」というかなり鬼畜な敵なので、彼女がそんなカス共の首を刎ねて遊び終わったサッカーボールのように地面に転がす描写に説得力あるので、衝撃的な映画的快楽のみ打ち出していたヒットガールよりも必然性があるとも言える。
銃器で武装した特殊部隊と闘っても圧勝してしまうのでめちゃくちゃ強い。
両手両足に何でも斬れる刃物が付いた敏捷な不死身の猛獣‥と考えると相当強い。
一言も喋らないし、その獰猛な面構えから誰にも懐かない系キャラかと思っていたら、旅を始めたらすぐニコニコするしカワイイ。
子供なのでやたらと洋服やお菓子を欲しがったり微笑ましい描写は、原作の同じく荒廃した未来世界で年老いたケーブルと幼女ホープが放浪してる時に、ホープが欲しがっていたヘアブラシをケーブルがプレゼントしたりするほっこり加減を彷彿させた。
今後どうなるかはわからないがダフネ・キーンちゃんのX-23は引き続き観たいなぁ。
チャールズ・エグゼビア/プロフェッサーX
かつてのプロフェッサーXだったチャールズ・エグゼビア。
要介護老人になって寝たきり生活。一定時間おきにキャリバンが精製した注射を打たないとミュータントパワーが暴走し近隣の人間を麻痺させてしまう。
アルツハイマーになった世界最強のテレパスは不発弾みたいなものなんだな。
詳しくは語られないが、この世界のX-MENが絶滅した原因は、エグゼビアが原因らしい(どうやらパワーが暴走して教え子であり仲間であるX-MENを皆殺しにしてしまったっぽい)
そのため人生や世界に絶望しており介護されながら死ぬのを待つだけの日々。
この映画X-MENシリーズの、エグゼビアの麻痺させる能力は地味に好きだ。
「ファースト・ジェネレーション」でもこの脳ジャックで身動きできなくなった笑顔のケビン・ベーコンをじわじわブッ殺すという時間停止系AVみたいな描写が好きだった。
本作でもやはりローガンがプルプルしながら必死で前進しながらマネキンチャレンジみたいに動けなくなったがローガンが見えているリーヴァーズの頭を一人づつサクッ‥、サクッ‥と刺していくシーンがかなり良かった。悪者は自分がどうやって死ぬかをじっくり見ながら死ななければいけないので悪者を倒す時にはかなり爽快感ある能力だ。
そんな失意のチャールズだが、新種のミュータントたちの存在たちを知覚する。
ローラとすぐ仲良くなって大事な事を教える様はさすがプロフェッサー。
チャールズがローラに見せる西部劇「シェーン」が、彼女に大きな影響を与える。
またローガンに対して「ローラを導く事」を導いたりする。
彼に起きる顛末の描写は凄くあっさりしていて、それはこの監督のけれんみの無さが良い風に働いた気がした(その方が本当に起きている事みたいに見える)
この世界のチャールズは苦しんでるようだが親切な農家の家で過ごせてよかった
キャリバン。ドナルド・ピアーズ&リーヴァ―ス
・キャリバン
他のミュータントの居場所を見つけることができるミュータント能力を持つ。
日光に弱く日の光の下では肌が焼き爛れるので屋外に出ることができない。
IQが高くローガンやチャールズの症状を緩和する薬を精製してローガンに売っている。
原作では、90年代に出た邦訳でケーブル率いるX-フォースに居たので地味に知ってる。
映画でこのキャラは違う俳優によって「X-MEN アポカリプス」にも出ていた。
本編中、三人しか出てこない純正ミュータント。
そしてローガンに協力するだけではなく2人のために身体を張る見せ場もある。
こんな重要な役を何でキャリバンなんて微妙なキャラに振ったんだろう?
薬を作ったり2人を助けたり‥、これは本来ビーストがやるべきのポジションではないだろうか?何でキャリバンにしたのかよくわからないがまぁ別にいい。
・ドナルド・ピアーズ&リーヴァーズ
原作だとこいつはヘルファイア・クラブ出身の体の一部を機械化したサイボーグという事しか知らん。リーヴァーズは彼の私兵、只の雑魚だ。
冒頭でローガンが殺した「エルム街の悪夢のフレディに殺されたかのような」チンピラの死体からローガンの居場所を見つける。
こいつはかなり弱くて劇中4回くらい負けてる(最初にさっさと殺せばよかったのに)
永遠に負け続けてるのに出てくるたびにキメ顔したりジョークを言ったりする様が、SNSなどで完全に論破されてるのに必死で効いてないアピールする人みたいだ
「何でこんな小物がウルヴァリン最後の敵なんだろう」と最初は思ったが、こいつは人工ミュータント兵士製造組織の奴だった事がわかる。
そんなウェポンXの息子みたいな存在の組織全体が本作のヴィランと言える。
ウルヴァリン最大の敵は、やっぱりウェポンX的な組織なんだろう
それよりドナルド・ピアーズ&リーヴァ―ズがローガンと少女を追う、という展開は
やはり90年代に読んだ、ピアーズ&リーヴァ―ズが弱ったウルヴァリンと幼女ケイティ(パワーパック)を雪の中で追ってくる話を思い起こさせる。
ピアーズの死に方はよかった。
エデン
この映画の中の世界でも、今は亡きX-MENの活躍が80~90年代にコミックになっており、ローラは大事に持ってて何度も読み返しているようだ。
ローラの保護者ガブリエラに頼まれた「ローラをここに連れて行って」と言われた目的地「エデン」は、この劇中コミックのラストでX-MENが辿り着く約束の地だった。
それを読んだローガンは「エデンってガブリエラの妄想だったのか‥」と落胆するが‥という展開。
この劇中コミックという要素は楽屋オチみたいな小ネタかと思ってたが、コミックを描いたり売ったり読んだりファンになるという行為が、そのまま現実世界の希望へダイレクトに繋がるというアメコミ映画という要素を凄くポジティブに描いたもので感動した。
この要素によって本作が「ロードムービーをアメコミ映画をに当てはめただけ」なんじゃなくて「アメコミ映画じゃないといけなかった」という必然に変わっていて、だからここは本作の中でもかなりジーンとした要素だった。
十→X
公開された直後なので前半までの感想だけ書いたが、好きな映画だった。
X-MENシリーズの中では最もいい感じ。
三人の旅がもっと観たかったので個人的にはあと一時間長くてもよかった。
気にいらなかったところは殆どないが、本作のローガンは相当ひねくれていて誰の言う事も聞かなすぎる(最初にガブリエラやチャールズの話を聞いてれば何の犠牲もなかった?)
それ以外にも一行がピンチに陥る原因は、ローガンが留守にするたびに起きたり敵を見逃したり、敵が特攻して来てるのに必然性なく余所見して致命傷を負ったり‥彼がうっかりしてなければ回避できたものばかりで少しモヤモヤした。
ダメージを負うなら「ローガンは必死で頑張ったけど、あれは不可避だわ」って感じの説得力が欲しいんだけど、これだと本作のローガンはただウッカリしてる人に見える。
だが、本作のローガンは絶望していて本気で生き残ろうとしてない、だから、うっかりミスが多かったのだ‥と脳内補完した。
観終わった直後は「せっかくウルヴァリンが充分に暴れられるR18なのに本作では弱体化してるしアクション少ないしカタルシス少ないな」とも思ったが、帰り道で反芻するにつれ、それはアメコミ映画脳やアクション映画脳で考えたからそう思っただけで、
この映画は苦虫を噛み潰した表情のローガンが、すぐに動かなくなるクルマ(自分の身体)に蹴りを入れたり、何ひとつ思い通りにならない世界(自分の人生)に対して悪態を吐きながらも子供(未来)を守る様こそが本作の見どころだったんだと思うようになり、家に着く頃にはかなり好きになっていた。
そういう場面を思い返してみると本作と本作のローガンは我々現代人の苛立ちと同種の苛立ちを抱えていて親近感感じた。
そして子供たちが未来に旅立っていくのが素晴らしい。
しかし未来=アメリカの外というのが現在のアメリカの絶望を感じるね。
エンディングではジョニー・キャッシュが殉教者を歌った「The Man Comes Around」が流れる。
ラストでローラがやるちょっとした演出は「その手があったか」という粋でささやかな、こういう話じゃないとできない演出で凄く良かった。
原作のウルヴァリンの最期より好きだな
そんな感じでした
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