gock221B

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『野球少女』(2019)/昆虫観察のように淡々とした低温で強い意志を持った少女を見つめる感じ良かったです⚾

f:id:gock221B:20210906214318j:plain原題:야구소녀 監督&脚本&編集:チェ・ユンテ
製作国:韓国 上映時間 :105分 英題:Baseball Girl

 

 

 

映画のメインビジュアルや主演俳優の女性が凄く良い感じだったので気になってたこの映画、Netflixに来てたので観た。
大ヒットした韓国ドラマ『梨泰院クラス』で人気が出た俳優イ・ジュヨンという人らしいが自分は観てないのでよく知らない。あと野球自体も、子供の頃には放課後やって遊んでたり親戚に野球場に連れられて行った事があるくらいで試合を見たりするのは全く興味ない。野球というかサッカーとかも全く観れない。選手全員のキャラクターや過去、戦術などを知ってたら楽しいのかもしれないし、どちらかのチームに「勝て!」と思えるのかもしれない、とは思うが実際のところ野球やサッカーのファンが、試合を観て一体何が面白いのか、どちらかを応援しようという気持ちが何故湧くのか全くわからない。いや球技というかオリンピックとかスポーツ全体そうかもしれない……しいて言うなら総合格闘技とかならまだ観れるか、テニスも一対一で格闘技っぽいから理解しやすいかも。選手が親戚だったり友人なら思えるのかもしれない。野球やサッカーを愛好する人はかっこいいので何度か好きになろうとした事あるが無理だった。さすがにスタジアムとか行ってビールとか球場飯食って見る楽しさはわかる。だがTVで観たりあげくの果てにラジオで中継を聞く人の楽しさがわからない。まぁ自分のスポーツ観戦への興味の無さの話は別にいい。
野球を扱った映画といえばベネット・ミラー監督の『マネーボール』が傑作だった。これはブラピ演じるGM統計学を元にチームや戦術を組み立て直すという映画で、これは僕が理解できない野球選手への感情が一切入ってないので凄く良かった。『マネーボール』とは違い本作は野球選手の話だが、映画のメインビジュアルや予告が『マネーボール』に似た低い温度感だったのできっと面白そうだと思っていた。
90年代に実在した女性の高校野球選手がモデルになってるらしいが、その人物も大学への特待生にはなれたがプロにはなれなかったらしい。

 

 

 

男子の野球チームに一人だけいる高校卒業間近の女性選手チュ・スイン(イ・ジュヨン)。
スインは同じチームのジョンホ(クァク・ドンヨン)と共にリトルリーグから投手として野球を続けてプロ野球選手を目指しているが女性は入団試験もまともに受けさせてもらえない。韓国の野球界、規約によって一応なる事は出来るが、なろうとする女性は少ないだろうし球団も女性を取りたがらない。いわばポースとしての規約でしかない。
球速130km以上の球を投げて天才少女と呼ばれてたスインだが、女性ゆえ身体の成長が止まり投げる球も130kmどまりのため監督や周囲から「無駄だから辞めたら……」という雰囲気で見られている。……見られているというか、もうそう見られていた期間をもとっくにやり過ごしてかなり時間が経って何も言われなくなっている雰囲気。
というか劇中では「160km投げたらプロにもなれるが……」と相手にされないスインだが……さっき言ったように野球よく知らんのだが130kmって凄くない?まぁよくわからんが現在では凄くないらしい。
プロ野球選手になかなかなれない新任コーチ、ジンテ(イ・ジュニク)がやってくる。
コーチは「男子に混じってプロ野球選手になるのは無理だから」とスインに何かと辛く当たったり辛い試練に直面させて辞めさせようとする。がスインは全く辞めない。女子野球を勧められても自分は男に混じってやりたいという堅い意志を見せる。監督の諦観した雰囲気を見るにつけ、恐らく監督も過去に似たようにスインをやんわり辞めさせようとしたが無駄だったのだろう。
スインの家庭は、両親と幼い妹、父は何かの資格に落ち続けていて母が働き続けている感じ。母は働かない夫に苛立っており、その苛立ちをスインにぶつけており折り合いが悪く、母はスインには一刻も早く工場で働いて欲しがっているので野球をやめてもらいたがっている。夢を追ってる父は応援してくれてるが働いてないので発言権が弱い。
仲のいい友人は、歌手になりたいがオーディションで顔を見ただけで落とされた同性の友人(この友人も厳しい闘いをしているが終盤で再びやる気を出す)。
スインと共にリトルリーグからやってきた男子野球部員ジョンホ。昔は野球も体格も全てスインが上回っていたが現在では逆転されジョンホはプロ行きが決まる。
色んな世界で「女性も平等に」と言われていて、それは良い事だがスポーツだと厳しい。男性と女性では筋肉量や体格が違いすぎる。
スポーツなので全ては数字の世界。球速とか脚の速さとか打球の伸びとか……細くて130kmしか投げられないスインは情熱だけではプロ野球選手になれそうもない。
スインを応援してくれてるのは友人2人と無職の父くらいの無力な人たちだけで、後は野球部もコーチもプロ野球界も、なんだか世界全体がスインに野球をやんわりと辞めさせようとしているがスインはスンとした表情でやり過ごして諦めない……という様が淡々と、昆虫の観察のような低温で描かれる。それが凄く良かった。
やがて根負けしたコーチは「160km以上投げなければプロ投手になれない」と速球にこだわるスインに変化球を勧め、そこから風向きが変わる。
確かに理にかなってる。筋肉量とかの限界があるから速球で勝負しようとしても確かに男子には勝てない。
最初は辞めさせようと意地悪してたコーチも何か知らん間にマンツーマンで肩入れしまくりクライマックスでは遂にプロ野球のトライアウトを受けることが決まる……。
そんな話。女性を描こうとしてるのは間違いないが、よりによって物理的社会的すべてにおいて不利な野球界の女性を扱ってるのが面白い。かといってスーパーパワーを発揮したり奇跡が起きるわけでもないので、ほぼ全編がクールで「勝たせてあげたいけどだめなものはだめ」と淡々と描いてる様が良い。
そして上手く行かない事が多いスインが基本、スンとした表情でやり過ごすのがとてもいい。たまに閉所にこもって泣いたり別の道を何度も提示されるが「プロ野球選手になる」という先しか見ず一切下や他所を見ないので悲壮感が一切ない、だから観ていて気持ちいい。
リトルリーグから一緒だったジョンホが、コーチに「リトルリーグでのスインはどうだった?」と訊かれてジョンホは「一人だけ女子なのでめちゃくちゃ虐められたり嫌がらせされてましたよ」と答える。結果的にスインも嫌だっただろうが現在のように夢にだけ目を向けてやり過ごして結果的に残ったのはスインとジョンホだけだったとわかる(つまんない映画とかなら子供時代のいじめシーンとかが一々挿し込まれてたんだろうな)。
観ようと思ったきっかけがスイン役のイ・ジュヨン氏とかいう女性の俳優。
彼女のクールな表情や佇まいは本当に良かった。確かにこれはスターだと思った。
日本の90年代男子みたいな髪型も良いし毛量が多すぎる、それでいて凄く細くて良いスタイルなもんだからマウンドで一人ぽつんと立ってる姿が風に決して折れない植物みたいでこの主人公をバッチリ表現してた。
不仲だった母もアイスの思い出を語って仲直りする。そしてラストシーン直前にスインがアイス買って食ってるカットが入るので「スインは殆ど独力でやり遂げたって意味だな」という感動があった。お金のことで勘違いするお母さんも何かグッと来ましたし。
それにしても、こういう感じで感情を隠してやりたいことやり続ける人物とかキャラクター本当に好きですわ。感情を出来るだけ隠すってのが大事ですね、感情を見せて事態が好転するわけでもないのに見せてくるやつ、そしてそんな感情出しまくってる奴の涙や鼻水出てる顔面ドアップを担保にして感動とかを通そうとしてくる映画とか、理解できないっすわ。その点、この映画とイ・ジュヨン氏は良かったですわ。
「無理なことは無理、ではどうすればスインでもプロ野球選手になれるか?」というのを考えて撮ってる感じや、周囲でスインを応援してる人が異常に少ないのもリアル(悲しい結果に落ち込みたくないからね)。
球団の人が最後に言う台詞もまたこの映画の誠実さを表現してたね。

 

 

 

そんな感じでした

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Baseball Girl (2019) - IMDb

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