原題:Creed III 監督&主演:マイケル・B・ジョーダン 脚本&原案:キーナン・クーグラー、ザック・ベイリン 原案:ライアン・クーグラー 製作国:アメリカ 上映時間:116分 シリーズ:「クリード」シリーズ第3作目、「ロッキー」シリーズ第9作目
月に最低でも4、5回は更新しようと、誰に頼まれるでもなくしてたのに5月頭の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(2023)から一ヶ月近くも更新が途絶えてしまっていた。いまデイブ・フィローニ制作のスター・ウォーズのアニメ……『クローン・ウォーズ』『反乱者たち』『バッド・バッチ』を一気見してるのと、久々にゲームしたくなって『バイオハザード7』『バイオRE2』『バイオRE2』『SW ジェダイ・フォールン・オーダー』などゲームもしてたので映画とか全然観てなくて更新できなかった。
『ロッキー』シリーズ主人公ロッキー・バルボアのライバル、アポロ・クリードの隠し子アドニス・クリードを主人公にした第3作目。
一作目『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)は文句なく面白かった。『クリード 炎の宿敵』(2018)は『ロッキー4/炎の友情』(1985)の時のロッキーに破れたドラゴの息子がロッキーの弟子アドニスた闘う……というロッキーとドラゴ父の代理戦争みたいなストーリーだった、ドラゴ父子のキャラは良かったが正直アドニスは主人公としてやる事がもうない感じで、つまらなかったわけではないがこの作品の記憶ほぼ残ってない。
今回、シルベスター・スタローンが出演してないのでロッキーは出てこない。
というかスタローンは『ロッキー』シリーズの権利を売った制作者と長期間揉めてるからもう出てこないかもしれない。
あと今回の対戦相手となるデイム役のジョナサン・メジャースが現在、知人女性を暴行した疑惑で裁判してる最中。報道を見てもマジでやったのかやってないのかわからない状態。ただあまり擁護する映画人が居ないし素行も悪かった噂もあったりして、とりあえず業界であまり好かれてなさそうな感じはする。真相はまだわからない。演技めっちゃ良いので無実であってほしい。無実であったなら相手も傷つけられてなかった事になるし只の痴話喧嘩であってほしいね。
ネタバレあり
ボクシング全米チャンピオン、アドニス・クリード(演:マイケル・B・ジョーダン)は一作目、『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)で惜しくも敗北した当時のチャンピオンだったコンラン選手に勝利。有終の美を飾って現役を引退する。
難聴のため歌手を辞めて音楽プロデューサーになった妻ビアンカ・クリード(演:テッサ・トンプソン)との間に娘アマーラ・クリード(演:ミラ・デイヴィス=ケント)も産まれたことだし、引退したアドニスはボクシングジムの経営やプロモート業も順調。育ての母メアリー・アン・クリード(演:フィリシア・ラシャド)も笑顔だしアドニスは幸せいっぱいだ。
そんな、ある日、ジムの前に見慣れない男が居た。
アドニスの孤児院時代の兄貴分だった幼馴染デイム・アンダーソン(演:ジョナサン・メジャース)だった。デイムは18歳の時に捕まり18年間、刑務所に入っていて出所してきたのだ。
少年時代のデイムは、ボクサーを目指していたが30代半ばを過ぎた今もその夢を捨ててないようだ。「いや……無理だろ、その歳で……あんたより3つ歳下の俺ももう引退した のに、デビューすらしてない36歳のあんたが今からデビューしてチャンピオンに?いや~~無理無理」と表情に思い切り出てるアドニスだったが「でもデイムのために何かしてやりたい、出所したばかりで職もなさそうだから……とりあえずボクシングジムの仕事をさせよう」と、自分のジムのスパーリング・パートナーとして雇う。
アドニスのジムは今イキの良い若手を『クリード 炎の宿敵』(2018)でアドニスと戦ったドラゴと戦わせようとしている。仮想ドラゴとしてデイムとスパーリングさせる。
チャンピオンの座を狙う「本物のボクサー」とスパーリングさせることで「アドニス、やっぱ俺が始めるには少し遅すぎたようだ」とデイムにわからせるつもりもあったのだろう。
ジムの専属トレーナー、リトル・デューク(演:ウッド・ハリス)等は「おい、幼馴染か何だか知らんが何だあのオッサン!荒っぽいし胡散臭すぎるだろ!」と反対するがアドニスはデイムをグイグイとジムに押し込み、自宅やパーティにも招く。アドニスはどこかデイムに負い目があるようだ。
周囲が怪しんでいる通り、デイムにはある目的があった。そのためにアドニスに近づいたのだ――
というお話。
アドニスのジムの現チャンピオンが対戦する予定だったドラゴが記者会見場で謎のチンピラに襲撃され試合が延期に。現チャンピオンに許してもらうためアドニスは対戦相手を探す。そうだデイムがいる!と、何とデイムのボクシング戦デビュー試合の相手はアドニスジムの現チャンピオンになった。
誰もが不利だと思ったデイムだったが反則スレスレのダーティファイトでチャンピオンを粉砕。デビュー戦でチャンピオンとなった。
これがデイムの目的だったのだ。ドラゴを襲撃した男もデイムが刑務所で知り合った仲間だと知ったアドニスはようやくデイムの野望に、そして今自分に何が起きているのか気がつく。過去が逆襲しに来ているのだ。
ちなみにデイム役のジョナサン・メジャース。MCUの『ロキ』〈シーズン1〉 (2021)や『アントマン&ワスプ:クアントマニア』(2023)での演技も存在感も良かったし本作のデイム役も凄く良かった。だがジョナサン・メジャース本人は前述した通り現在、知人女性暴行疑惑で裁判してる最中。まだ今は真偽は誰にもわからん状態なのでデイムの何考えてるかわからん怖さが上乗せされてる気がした。
当時、何があったのかという事は2、3回くらいに分けて回想で描かれる。
少年アドニスがアポロの妻メアリーアンに養子にされるまでの間、孤児院に居たらしいがそこで知り合った3つ年上のボクサーを目指す兄貴分がデイム。
ある日、デイムが地下ボクシングで勝利を収めた夜。アドニスはコンビニの前で出会った男が、自分とデイムが居たレオンだと悟りブチギレて殴りまくる。レオンの仲間が加勢してアドニスがボコられてたところをデイムが銃を構えて止めたところで警察が来てデイムは捕まった。アドニスは怖くなって自分を助けたデイムを見捨てて逃げた、それだけでなく只の一度もデイムに面会に行かなかった……というわけ。
出所したデイムはアドニスに復讐したい……というよりも最後まで観た感じだとデイムはアドニスに自分のことを思い出してほしかっただけなんだと思った。
出所して会いに来たデイムにアドニスは職を与えたり飯奢ったりするが、それは今のアドニスには簡単に出来ることであって心を開いてデイムに対峙しているわけでは全くなかったしね。謝罪もしてないし。何ならデイムを憐れんだような目で見ている。ダーティな手段でチャンピオンやドラゴも巻き添えにしてるとはいえデイムが怒るのも一理あるなと思った。
ちなみに当時、アドニスが殴りかかったレオンという男は孤児院の職員らしき男。「らしき」というのはレオンについてガッツリ描かないのでボンヤリしている。デイムとアドニスがボクシングの練習してたらレオンに怒鳴られる……という回想が数秒あっただけ。温厚そうなアドニスがひと目見ただけでブチギレて殴りかかる。あの男は何だったんだろうと思ってたら後半で問い詰められたアドニスが妻ビアンカに「レオンは施設の男でデイムと俺を虐待した」と語った。説明はしてくれたが観てるこちらとしては「レオンに何されてあんなに急変したように怒ったんだ?そしてビアンカに何度も訊かれても答えなかったのは何故なんだ?」と最後まで気になってしまった。てっきりレオンにレイプされたから妻に言いたくなかったのかと思った。そうじゃなければ前半にビアンカに訊かれた時にさっさと答えとれやと思うからね。
まぁ「アドニスは助けてくれたデイムを見捨てた」ってところが大事だからレオン等のきっかけはどうでもいいんだけど、変に勿体ぶってビアンカにも観客にも秘密にし続けるからレオンに何かあるのかな?と最後まで気になってしまったわけ。本作は、こういう「ん?」というポイントが多い。マイケル・B・ジョーダン監督デビュー作のせいで慣れてなかったせいか?
またデイムがボコってアドニスを引きずり出すわけだが、普通に考えたら『ロッキー4/炎の友情』(1985)でドラゴ父がアポロを倒してロッキーを引きずり出したように普通にドラゴを現チャンピオンにして、そのドラゴを卑怯な手で倒した方がスムーズだよね。それじゃドラゴにあんまりだしドラゴの格を落としたくなかったのかな?
そしてアドニス育ての母メアリー・スーが病死してしまう。『ロッキー3』で試合前にミッキーが死んだような、このシリーズによくある展開。メアリー・スーは死の間際、意識が朦朧としておりアドニスのことを亡き夫アポロだと思い込みアドニスをどれだけ愛しているか語って死ぬ。さすがにここは素直にグッと来る場面だった。
このシリーズでよくある展開でメアリー・スーが死ぬのもどうかと思うが、これによって物語としてアドニスが勝つ道が出たと思った(そうでないと物語としてアドニスが勝てそうな雰囲気が全然ないからね)。
そしてお馴染みの敵味方、双方のトレーニングモンタージュを経て「アドニス vs.デイム」の幕が切って落とされる。
ここまで、おぼつかないシーンや繋ぎが多かったが試合が盛り上がれば良い。
本作のプロモーションでマイケル監督は、『はじめの一歩』『NARUTO』など日本のアニメから着想を得たと言っていた。いざ観てみるとボクシング映画なだけあって割とアニメ的な演出は控えめだった。
試合会場がの観客が全員消えて暗い異界になるのは「アドニスとデイム、二人だけの世界」という事を強調していて良かった。二人の愛憎もナルトとサスケ的ではある?強引に結びつけたら。アドニスがロープ際に追い詰められたらロープが監獄の檻になってしまうのはアドニスの後ろめたさとデイムの怒りを表現しててよかった。あとは漫画っぽいクロスカウンターや、アドニスが最大のピンチになるボディブローでアドニスの背中からぶわっと汗が飛散するスローなども『はじめの一歩』っぽいといえばっぽいかも。
なかなか良いぞ、と思ってたら突然アドニスのパンチが決まる。
えっ?
「最終12ラウンド!アドニス・クリードの勝利!」
えっ!?
もう終わり?『ロッキー』シリーズだと思って観てるから「まだ試合の半分くらいだな。いや三分の一かも」という体感の時に突然終わってしまった。
あっさりしすぎでしょう。『ロッキー』シリーズだったら途中で試合中のダイジェストシーンが流れるので「激闘が続いた!」と感じさせてくれるが本作にはないので「第3ラウンドで試合が終わったら、知らん間に最終ラウンドだった」って感じだった。
アドニスも1、2回ピンチになっただけ。一体なんでアドニスが突然勝ったのかもよくわからなかった。デイムが強かったのかどうかもよくわからない(チャンピオンに圧勝したから設定上は強いんだろうけど)。
リング上が異界になったりするのは面白かったけどさ、肝心の試合がつまんないよ。
「『ロッキー』シリーズみたいにヘビー級ボクサーが最終ラウンドまでぶん殴り合うのは非現実的!突然、終わる方がリアル!」と思ったのかもしれないけどさ。『ロッキー』シリーズの延長として観てるわけだから、この試合はつまんなかったな。全9作で一番薄かったね。
別にストーリーはわかりやすいし、これで良かったと思うけど、要所要所の描写や語り方が歪で集中できなかったな、そんで試合もしょぼいし。
マイケル氏は「アドニスの娘を主人公にしたドラマなどのクリード・バースを作りたい」と言ってたけど本編も満足するものが出来ないんだから作らなくていいと思う。
『クリード』シリーズなのでロッキーが出なくても面白ければ良いと思ったけど面白くなかったのでダメ。アドニスがロッキーから卒業して独り立ちするのは良いことだから面白くあってほしかったけど。
やっぱデイム役のジョナサン・メジャースが良かっただけの映画だった。
これが完結作だと締まらないから、あと一作だけ傑作作って終わらせてほしい。マイケルが監督だろうと、そうじゃなかろうがどっちでもいいけど面白くしてほしい。
そんな感じでした
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