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『オッドタクシー』全13話 (2021)/ここ20年くらいの日本のTVアニメで一番面白かったが、こんなに全部説明しなくてもよかった気はする🚕

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脚本:此元和津也 監督:木下麦 キャラクターデザイン:木下麦、中山裕美
原作:P.I.C.S. 製作国:日本 上映時間:各話24分、全13話




 

すごく評判いいからアマプラで観たら確かに面白すぎて1日半で一気観した。
登場するキャラクターは全員擬人化した色んな動物の姿をしている。ジョージ秋山の『ラブリンモンロー』みたいな感じ。……『オッドタクシー』より有名じゃない『ラブリンモンロー』を喩えに出すのは上手くなかったが。
ネタバレ少なめざっくり感想を書こうと思った。
まだ観てない人は内容知らずに観た方がいいし、既に観た人が読むとしても本作の面白い部分は全部わかりやすく露出してるので改めて本作の面白い部分を書くのが恥ずかしいと思ったからだ。

 

 

 

個人タクシー運転手をしているセイウチの姿をした小戸川(CV:花江夏樹)は、偏屈で変わり者で身寄りのない中年男性。ある女子高生の失踪事件が起きた街で、小戸川と数少ない友人知人、客として乗ってきた目立ちたがりの大学生、アイドル好きのフリーター、売れない漫才師、アイドル事務所、ヤクザ……色んな客との会話などが、やがて一つの大きな犯罪事件に結びついていく……という話。
……そんな、あらすじとかアニメのパッと見た感じは全然面白そうじゃないので観る気なかったが、あまりにも評判を聞くのでポチッと再生してみたら数分で面白かったし多くの人が「ネタバレ厳禁!」みたいな事をやたら言ってるので仕掛けが知りたくなって、そのまま一気に結末まで行った。
やはりパッと見た感じは、ゆるいタクシー漫画という事でジャームッシュのタクシー会話劇『ナイト・オン・ザ・プラネット』(1991)みたいな会話メインのアニメに思える。そんで別にアニメに偏見あるわけじゃないが愉快な見た目なので「どうせ福田雄一の作品とか、携帯電話のCM……Softbank白戸家とかau三太郎みたいなクソしょうもない観ても観なくてもいい感じの会話劇に違いない」と決めつけて観もせず軽んじてたところがある。さっき偏見ないと言った件、言ったが完全に偏見。でも実際観たら転変。実際に雑談するシーンは多かったがリアルでの会話みたいに面白すぎずつまらなさすぎず……凄く丁度良い塩梅の面白さで良かった。ユノー?
監督の手腕もあるだろうけど何となく本作の脚本を書いた此元和津也氏とかいう元漫画家氏の脚本がデカい気がする。脚本を読んだわけでもないし根拠はないのだが本作の面白い場面は会話とか最初から決められてる感じの大きなあらすじなど脚本に書かれてそうな部分が多いのでそう思った。彼の漫画も読んでみようと思ったし自分は中年なので思うだけなら人生が終わってしまうので……早速はい今『セトウツミ』全巻ポチりましたよ……。それにしてもそこそこ売れて儲かってる漫画家が儲からない(ように思える)脚本家になるなんて事がまずあり得ないので、この此元先生への興味が爆上がりした。

 

 

 

小戸川とヤクザやオッドタクシー作戦やアイドルグループ事務所を中心としたメインストーリーが面白いのは勿論、その前フリの雑談から既に面白いので全くスキがない。今まで観た30年くらいの間に観た全TVアニメの中で一番面白かったと言っても過言ではない……いやブルース・ティムの『バットマン』『スーパーマン』『JL』などの一連のDCアニメがナンバーワンだから「日本TVアニメでは最高」と今のうち言い換えたい。……よく考えたら子供の頃観た『機動戦士ガンダム』『スペースコブラ』『新世紀エヴァンゲリオン』『機動武闘伝Gガンダム』などよりも上かどうかはわからんので「ここ20年くらいのTVアニメで一番面白い」と言い方を変えよう。

ストーリーや会話が面白い以外にも、キャラクターや声優の魅力も高かった。
自分は特に主人公・小戸川や悪役やアホキャラが好きだった。
好きなキャラクターは終盤までは主人公の小戸川だった。彼はハードボイルドでミステリアスで無愛想だが情に厚く極端に無欲…という限りなくヒーローに近いキャラクターで好きだったが、ラスト数話辺りになると無欲なのはいいがくれるっていう数億円も受け取らないし命がけで他人を助けるし、ちょっと聖人度が行き過ぎてた気もする、更に最初は照れてなかったヒロイン白川さんにも照れるようになってしまった。無欲で純粋で利他的なヒーローってだけじゃなく優しすぎて女が苦手……これは30年前の香港映画の子供の心を持ったヒーローレベルで純情で聖人になりすぎた。小戸川は純粋な中年男性ではあるが最終回あたりは行き過ぎだと思った。もうちょい中盤くらいまでのドライな小戸川で居てほしかった感じ。女を武器にして近づく白川さんを遠ざける態度はカッコよかった(それでいて白河さんを陰で助けるし)。声優は花江夏樹が務めて変な声で話してはいるがそれでもイケボ。大柄のセイウチなのにイケボというのがギャップあってよかった。小戸川や本作全体の秘密は中盤の「人混みの中で後ろ姿でも、すぐ誰が誰だか見つけられる」という特技を聞いてすぐわかった。でも押し入れの中に何があるのかは最後までわからなかった。どちらも素晴らしく面白い謎だった。
次にドブを始めとする悪人の魅力がデカかった。
ヒヒの姿をしたヤクザ、ドブ(CV:浜田賢二)。彼は頭が切れてメンタルも腕っぷしも強い悪党、高圧的だが感情に走らず怖い時は怖がるし常に理性的でカタギ相手でも自分をスッと引けたりするし柔軟。愛嬌や親しみやすさまで感じさせてくる。だが小戸川も恐れてたように、ストックホルム症候群的な感じを発生させるDV夫的な人物だと思われる。実際は他人のことなど何も考えていない暴力にすぐ頼るDVヤクザ。ドブは芯が最初から最後までブレないし愛嬌もあって魅力が一番あるが所詮はヤクザ、「悪いけど根は良い人」なんてあり得ない事を再認識させてくれる。突然ゾンビが発生したりしたら仲間として魅力だろうが平和な社会ではクズでしか無い。
ドブの元後輩のライバル、ヤマアラシの姿をしたヤクザ、ヤノ(CV:METEOR)の魅力も凄かった。ホストっぽい髪型した20代の時の有吉弘行みたいなルックスで可愛いし強面のシロクマの姿をした舎弟の大柄ヤクザとのコンビネーションもいい。そして声優はラッパーのMETEOR氏。大柄なのに声が細いイケボというギャップが良い小戸川とは対象的に、小柄で細いヤノは如何にも大柄中年男性っぽいメテオ氏の声で喋る。これもまた小戸川同様にギャップあってよかった。メテオ氏といえばラジオなどで知っていたが数ヶ月で廃れたClubhouseを流行ってる真っ只中に始めた時、メテオさんの2、3人しか居ない部屋に入ってトークしてClubhouseの使い方を学んだ。そのせいか親近感がある。あとついでにメテオ氏はアニメ完結後にヤノのキャラEPを出したのだが、これが凄く良くて今リピートしている。

続編があるなら善人じゃなくヤノを主人公にしたピカレスクロマンにして欲しい。ヤノは小戸川や元兄貴分のドブ同様に最後までキャラの芯がブレなかったキャラ。だがドブと互角に渡り合っていたが惜しくも破れ、それまでの韻を踏んでのラップめいた喋りが崩れる、これこそ分かりやすくヤノの芯がブレた瞬間。年の功や経験の差でドブや小戸川に一歩遅れを取った瞬間だった。
アイドル事務所のチョコプラ長田にそっくりな長身の狐マネージャー山本やドブと癒着した大門兄(CV:ミキの昴生)も魅力的だった。どの悪役も、ただ悪いってだけの一面的なステレオタイプとしての悪ではなく、愛らしい部分もある一人の人間として立体的な魅力があり、そこが良かった。
大門弟(ミキの亜生)を始めとしたアホキャラの魅力も同様に高かった。特に大門弟はちょっと他の作品では見たことのないタイプの新しいアホキャラで面白かった。
そんな感じ。感情移入してたのは独身中年男性の柿花や小戸川、あとアイドルオタクのスカンクの姿のフリーター今井とかか。柿花は貧困独身中年男性非正規派遣ってだけじゃなく最終回でエゲツないハゲ方してるのがわかって痛々しかった。せめて小戸川が大金で個人タクシー事務所作って柿花を働かせて保護してほしくなった。

 

 

 

そんな感じでストーリーには触れなかったが特に面白いところばっかりで欠点がほぼ無いスキのないアニメだった。
批判ってほどじゃないけど個人的な好みとしては最終回一個前あたりが最高潮で、最終回は色んな種明かしや説明や「皆のその後」みたいなエピローグが延々続く無限大団円で結構しつこかった。しかもまだ裁かれてない悪によるホラー的な結末を迎える。これは大好評らしいが個人的にはめっちゃしつこく感じられた(だから同じく人気のオーディオドラマも聴かなかった)。これまた個人的な意見だが、あの悪役はほんの脇役に過ぎないし「怖い要素を足しちゃえ」という目的で多分付け足したんだと思うが、観終わった後にメインストーリーや小戸川じゃなくて、あまりにも作品の話題の全てを持っていきすぎる。人生これからなのに告発しようともしてないメインキャラの命を次々と狙うのはリスクありすぎて非現実的すぎる気がした(まぁ、だからサイコパス殺人鬼って事にしたんだろうけど)。だから正直「殺しをしたのはコイツ、たが捕まらず今も平気で街を歩いてるのだ!」って描写に留めといた方がよかった気もする。「メインキャラがやられちゃうのやだ~」ってわけじゃないんだけどサスペンスミステリー犯罪ものだと思って観てたらオチだけホラーなので違和感を感じる。最近Netflixで観た『ザ・コール』もめっちゃ面白かったのだが自分はサスペンス・ミステリーのつもりで観てたらオチはホラーのオチなので乗れなかった、あれと似てる。
小戸川の世界の秘密、オッドタクシー作戦の結末、各キャラの秘密や結末、小戸川の押し入れの謎……など延々と続いて、まだ捕まってない超常的なまでの殺気を孕んだ悪までお見せしてくる。ちょっと要素が多すぎる。『ファイアパンチ』面白いけど最終回は「タツキが考えた結末」のアイデアが思いつくままごっちゃり入ってる感じが要素多く感じた、あの感じに似てる。
なんなら「小戸川の世界の秘密」も全部、口頭で教えてくれなくても「幼い頃に事故にあった」「人探しが得意」ってだけでわかるので説明なくても良かった、その方がクール。説明されなきゃわからん人もどうせ「オッドタクシー 考察」とかで検索するから劇中で説明せんでいい、その方がクールじゃないですかね。
それらは無理やり捻り出した「ここはちょっと……」部分であって全体的にあまりに面白かった。このまま舞台化もできそうだよね。この脚本家や制作陣の次回作が楽しみですわ。

 

 

 

そんな感じでした
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TVアニメ「オッドタクシー」公式サイト 2021年4月からテレビ東京・AT-Xにて放送開始
Amazon.co.jp: オッドタクシーを観る | Prime Video



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