gock221B

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『スコット・ピルグリム テイクス・オフ』(2023)/旧作を踏まえて現代に照らし合わせてブラッシュアップしたアニメ版。僕にとっては前半4話が傑作🎸


原題:Scott Pilgrim Takes Off 脚本&エグゼクティブプロデューサー&原作:ブライアン・リー・オマリー『スコット・ピルグリム』シリーズ(2004-2010) 監督:アベル・ゴンゴラ 脚本:ベンデビッド・グラビンスキー キャラクターデザイン:半田修平、石山正修、西垣庄子 アニメーション制作:サイエンスSARU 主題歌:ネクライトーキー『bloom』(2023) エグゼクティブプロデューサー:エドガー・ライトほか 配信サービス:Netflix 製作国:アメリカ、日本 配信時間:格話約30分、全8話 配信開始日:2023年11月17日

 

 

カナダの漫画家兼ミュージシャンのブライアン・リー・オマリーのコミックスコット・ピルグリム』シリーズ(2004-2010)を元にしたNetflixのアニメーション。
そして、エドガー・ライト監督によって実写映画『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(2010)も制作されて公開された。
ブライアン・リー・オマリーのコミックは、日本のアニメやゲームなどのサブカルに多大な影響を受けており、絵柄も欧米カートゥーンと日本のアニメっぽさの超丁度いいハイブリッドで、とにかく絵柄やキャラクターが最高だった。「日本のアニメやゲームに影響された海外アーティスト」って90年代以降いっぱい居たけど彼は最も上手く自分の絵柄を作りあげた印象。『スコット・ピルグリム』のコミックは当時、邦訳版も出てたのだが、その頃ちょうど貧乏で金なくて高い邦訳版は買えなかった。
映画『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(2010)は、監督がエドガー・ライトだし当然映画として面白くはあったのだが「カワイイ絵柄のキャラが格闘ゲームみたいなポップな映像で活躍する」様を実際の人間でやるのは少し無理あった気がする。
ちなみに本作はその実写版のキャストが声を当てている。つまりMCUが出来る前のクリス・エヴァンスブリー・ラーソンが吹き替えしている。
アニメーション制作やキャラクターデザインは日本人が参加している。監督も過去に日本アニメに参加してた人らしいし。元々、作者も日本のオタクカルチャーが好きで『スコット・ピルグリム』シリーズ(2004-2010)を書いたので日本人がアニメ制作する方が丁度いいのかも。

後で述べるが本作は、エヴァで言うと「旧『新世紀エヴァンゲリオンTVシリーズ+旧劇場版」を観てから「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」を観て『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』(2021)を観ないと真の感慨深さは湧いて来ないのと似てると思うので、このアニメを観る前に映画の旧作で流れをざっと知っといた方が、より感動できると思われ。
スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団 | Netflix

本編では様々な日本のアニメやゲームやアメコミや映画や音楽などアメリカのサブカルのパロディがたくさんあるけど、いちいち指摘してたらキリないのでこのページではしません。気づく人は観たら気づくし、知らん人に説明しても「ほう」と思うだけで大して意味ないので。

ネタバレあり

 

 

 

 

〈超ざっくり語る原作のストーリー〉
※踏まえなくても本作は観れるが本編のストーリーに関わってるので触れといた方がいい

バンドマンの青年スコット・ピルグリムラモーナ・フラワーズという女の子と出会い恋に落ちる。
しかしスコットが付き合ってて捨てられた女子高校生ナイブス・チャウが闇落ちしてしまう。
そしてスコットは、ラモーナと付き合うために彼女の過去の恋人たち「邪悪な元カレ軍団」を全員倒す必要があった。
何だかんだあって元カレ軍団を倒しナイブスと仲直りしたスコットはラモーナと結ばれるのだった。

〈本作のストーリー〉
バンドマンの青年スコット・ピルグリム(CV:マイケル・セラ)は夢で見た女の子ラモーナ・フラワーズ(CV:メアリー・エリザベス・ウィンステッド)と出会い、二人は恋に落ちる。
しかしスコットは、二人の恋を邪魔しようとする「ラモーナの邪悪な元カレ軍団」の攻撃に遭い、スコットは消滅してしまう。
ラモーナはスコットの安否や行方を探るために、元カレ達を一人づつ訪ねて調査を始める――

ということで、スコットの仲間達やラモーナや元カレ軍団などキャラクターはほぼそのまま。
第一話の終盤まではほぼ同じ。しかし第一話ラストから、原作や映画版(以下『旧作』と書く)とは大きく変わっている。
僕も本作がアニメ化された事は年末に知ってたが「原作の絵柄好きだったし楽しかったけど今更『スコット・ピルグリム』観てもなぁ」とスルーしていたがハマった友達に聞くと、どうも微妙に展開が違う……?という事がわかってきて興味が湧いて観た。そしたら凄く良かったというわけです。
まず一番デカいのは旧主人公スコットが消えて、旧作ではトロフィーのように奪い合いの対象のヒロインに過ぎなかったラモーナが、主体的に動いて活躍する実質的な主人公になっている事。本作の主人公はラモーナ。本作のスコットはヒロインっぽくなっている。という事で旧作では、ヒロインのラモーナを男たち(と少しの女たちが)がトロフィーのように一方的に奪い合ってた。まぁ別に2000年代はそれで良かったけど今見ると旧態依然としてるのでラモーナを主人公に変えた……これは今の時代に合わせた値千金の改善でした。

 

ナイブス問題の改変
また旧作では「スコットは20歳超えてるのに女子高生ナイブスと付き合っている」「ラモーナと出会ってスコットはナイブスを捨てるナイブスは闇落ちしてダーク忍者になって襲ってくる。でも何だかんだあって仲直りしてスコットの恋愛を応援してくれる」といった感じでナイブスの存在がノイズになっていた。
一言で言うとナイブスが可哀想過ぎてスコットとラモーナの恋を全力で応援できない感じだった。スコットの優柔不断さも微妙に腹立ったし……。また(特に日本では)「ナイブスの方が可愛くない?」という論調も強かった(この論調には「処女の女子高生の方が良くない?」というニュアンスも言下に漂っていた。俺じゃなきゃ見逃しちゃってたね)。
また旧作のスコットとナイブスは多分ガッツリつきあってた気がするが、本作では「スコットに夢中なナイブスが付きまとうから、スコットは彼女と一回デートしただけ。SEXはおろか手も握ってない。『これで付き合ってると言えるか?』とスコットは思っている」といった感じでボンヤリと「プラトニックな交際」をしているような雰囲気に変更されている。昔よりも「20歳過ぎた大人が10代の子供と付き合うなんて!」という世間の流れになったせいだろう。
そしてナイブスも最初は「スコットが死んだ」と思い哀しむし「スコットの本命はラモーナで自分は遊ばれてただけ」と知ってショックを受けるが割と早い段階でスコットには自分の脳内で見切りを付ける。またスコットの葬式にて、スコットの元カノで現在はセレブであるエンヴィー(CV:ブリー・ラーソン)が来ると「セレブだ!」と大はしゃぎする。「俺らのバンドが良いと言ってなかった?」というティーヴンにナイブスは「あー……スコットのバンドも良かったよ。プロじゃないミュージシャンの中ではね!?」と言う。そしてナイブスは旧作のように嫉妬で闇落ちニンジャになるのではなく手先の器用さを活かしてスコットのバンドにキーボードで加入する。
ナイブスによるこれらの細かい改変で「スコットは自分に付きまとう女子高生ナイブスをガールフレンドにしてたが、プラトニックなものだよ?」「ナイブスもまた精神的に子供」という2点を強調していた。これによって「なんか色んな箇所のせいでナイブスが気になって本編に集中できん……」という旧作のナイブス問題を処理していた。……オッサンになった今だからそう思って過去改変しただけだろ?的な欺瞞も感じなくもないが、人や社会は、たとえ表面的にでもコミュニケーションを洗練させていき、たとえ表面的だろうとそれによって暴行などが減っていき世の中はマシになっていくもの、だから表面的な欺瞞であろうと別にこれでいい。
これによってナイブスは第2話くらいで「スコットの仲間達の一人」となるので旧作のようにノイズにはならない。
言うなれば同じバンドメンバー、キムやエンヴィーと同じく「スコットの元カノ」になったわけだ(高校時代の僅かな間のキムとスコットの交際も描かれる)。
そして最終話付近で帰還したスコットはナイブスに、自分の優柔不断な態度で二股かけてしまったことや「大人の自分が高校生の君と付き合ってしまったこと」等を、ちゃんと謝る。旧作で一番ノイズだったナイブス問題を丁寧に処理してて、おかげでラモーナや物語に集中できた。
このナイブスへの改善は「自分も若かったから、俺が若い時に付き合ってたあの娘に、悪い事しちゃったな」といった感じの?作者ブライアンの懺悔だろう。この「作者による旧作(過去の自分)への後悔」は本編の中で何度も何度も出てくる。
過去のエヴァから最後まで観た中年は『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』(2021)でシンジとアスカが過去、互いについて想っていた事を打ち明けあうシーンでたまらなくなったはずだ。エヴァ自体やシンジやアスカや庵野、または自分自身の過去の恋愛や人生など全て蘇ってきて……本作は何度もそれと似た気持ちになる。

 

元カレ軍団
旧作ではスコットが単純に邪魔な「ラモーナの元カレ軍団」を倒していくだけの単純な展開だった。
それは日本のアニメやゲームなどやアメリカのサブカルのパロディだけでなく「好きで付き合い始めた彼女に色んな元カレ(色んな過去)が居たら?」という、若い男にとって大問題である『チェイシング・エイミー』(1997)的な問題でもあった。
要は、旧作では「元カレ軍団(恋人の過去)も含めて、君を包むよ」という『めぞん一刻』的な事を「元カレ軍団をしばいていく」っていう楽しい展開で見せてたものだった。
本作では、一人目のマシュー戦でいきなりスコットが消失してしまうため、ラモーナが原因やスコットの行方を探すべく元カレ(&元カノ)を一人づつ訪ね、話をしたり場合によっては戦ったりする。
まず一人目のマシュー、旧作では初戦でスコットがいきなり倒す雑魚でしかなかったが本作ではバトル中にスコットを倒す。そして旧作ではボスだった大富豪ギデオンと対決して倒す。マシューはギデオンの財産や元カレ軍団を手にして旧作でのギデオンのようなポジションとなる。一方、ギデオンは全てを失い廃人のようになり、かつての恋人だったジュリー(CV:オーブリー・プラザ)の家に転がり込む。
ラモーナの元カノ、ロキシーは闇落ちニンジャになっており、キムのレンタル・ビデオ屋でラモーナとタイマンする。
……ちなみにラモーナはNetflixレンタルビデオ配達のバイトをしている(配信サービスになる前のNetflixはビデオ・レンタルのサービスだった)。
ラモーナとロキシー、二人には幸せな日々もあった、しかしある日突然ラモーナが何も言わず出ていったことでロキシーは多大な心の傷を負って邪悪な元カレ軍団入りしてしまった。ロキシーの慟哭を聞いてラモーナはたまらず泣いて謝る。ラモーナはとにかく別れるのや乗り換えるのが早かった。そして「邪悪な元カレ軍団」が生まれて次々と攻撃してくる原因は、ラモーナがキチンと相手に別れを告げないせいなんだなとハッキリわかるね。ラモーナがそうしてしまってたのは若さゆえ、相手に向き合うのが怖かったんだろう。でも、少しわかる。僕も他者と相対して心を動かしたくないもの。いざ向き合えばスンナリことが進んで万事OKになる、のはよくわかってるんだけど、その「心が動く」っていうのが面倒なんだよね。まだまだ経験したい人はいいだろうが、別に僕は面倒だからそういうのもういいよ。
とにかく出ていくラモーナを見て心底ハートブレイクしてるロキシーがあまりに哀しそうで、そしてプライドもあるので引き止めて理由とか聞けないんだろうなって感じの表情で、心を打たれた。

荒井由実……もオリジナルで良いけど宮本浩次がカバーした『翳りゆく部屋』を聴きたい感じ。このシュチュエーションがわからん奴は通過しろ。

次はスケボー好きの脳筋ムービースター・ルーカス・リー(CV:クリス・エヴァンス)。キャプテン・アメリカでお馴染みのクリエヴァだが当時はアホの役ばかりしていた(いや今もアホの役ばかり好んでやっている。キャップだけ特別だったんだ)。
スコットの仲間ヤング・ニールが朝目覚めたら部屋にあった脚本を元に『スコット・ピルグリムの人生を描いた物語』が映画化される事になった。
監督はエドガー・ロング……当然、実写映画『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(2010)の監督エドガー・ライトのパロディ。つまりリメイクである本作の登場人物たちが、原作や実写映画版などの旧作を演じている……そういう形でまたしても旧作を事故批判しようとしている。
ルーカスもロキシー同様ある日突然ラモーナに捨てられた。しかしその哀しみからの反動でルーカスは成長してムービースターになれた。ラモーナは今スコット探しで忙しいのでルーカスはロキシーのように想いを叩きつける事もなく、口癖「くだらねぇ」と同時に自己完結してムービースターの座を追われる……ルーカスってこんな良いキャラだったんだ。
そんな感じで僕の一番良かったのは、ロキシーの第3話とルーカスの第4話かな。シリアスで。凄く良かった。

 


その後、ウォレスやスティーヴンやキムやナイブスなど「スコットの仲間達」を描く回や、ヴィーガンやエンヴィーや双子やマシューやギデオン再びの回とか……は正直、面白かったけど第3話と第4話ほどじゃなかった。
そしてラモーナの努力のお陰で消失したスコットの原因がわかり色々あってスコットは帰還する。
ネタバレしてしまうとアラフォーの「未来のスコット」が黒幕だった。
やはり「過去、こうすればよかった!」と、ネガティブに悔いている中年男性の後悔が、若いスコットを操作しようとする話だった。
そうこうしつつ「アラフィフの引きこもり老スコット vs.それ以外の全員」が行われ、色々あってスコット達が勝つ。
本作は最初から「過去の自分についての自己批評(旧作の自己批判)」を行ってきたが、いよいよ後半3話くらいは、もうそれ(過去の自己批判)ばかりになる。
心なしか作画も荒くなってるし「全員突撃してやられて覚醒して……」といった感じで悪い意味で東映の古い少年ジャンプアニメみたいな感じの展開が続いて正直、前半の感動が目減りしていった。
やっぱ第1話から第4話くらいまでの前半が一番良かったな。中でもラモーナが、過去の自分のいい加減な別離に向き合わざるをえない第3話と第4話が心を打たれて凄く良かった。第5話以降は僕にとっては若干イマイチだったが別にそれでも悪くなく振るうには面白かったし、第3話と第4話の真摯さが良すぎて、心に残りました。

とにかく旧作のコミックや実写映画ではナイブズ問題が気になって集中できなかったが今回はやっと夢の女の子ラモーナの素敵さ。「他者の心に対峙することの大事さ」などに感動しました。書く暇なかったが各キャラとか色んな小ネタもよかったよ。

 

 

 

 

そんな感じでした

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スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団 | Netflix

Scott Pilgrim Takes Off (TV Series 2023) - IMDb
Scott Pilgrim Takes Off - Rotten Tomatoeswww.youtube.com

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