gock221B

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『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)/シャン・チーとケイティと中盤までのアクションとストーリーが最高⭕⭕⭕⭕⭕⭕⭕⭕⭕⭕

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原題:Shang-Chi and the Legend of the Ten Rings 製作:ケヴィン・ファイギ 監督:デスティン・ダニエル・クレットン 脚本:デヴィッド・キャラハム、デスティン・ダニエル・クレットン 原作:スティーブ・エングルハート、ジム・スターリン 制作スタジオ:MARVELスタジオ
製作国:アメリカ 上映時間:132分 シリーズ:MARVELシネマティック・ユニバース

 

 


🐉マーベル・シネマティック・ユニバースのフェイズ4の2作目、通算25作目(Disney+のドラマ&アニメも合わせると30作目)。フェイズ4の1作目『ブラック・ウィドウ』(2021)はフェイズ1~フェイズ3までのウェーブ1「インフィニティ・サーガ」のボーナス曲みたいな内容だったし、Disney+ドラマ&アニメ群も過去の流れを汲む既存のキャラクターの作品だったので、新ヒーロー登場の本作こそがフェイズ4開幕感ある。
コロナ怖いのであまり人が多い所に極力出かけたくないのだが先日たまたま僕の誕生日(ドラえもん楳図かずお吉田豪チャーリー・シーンと同じ)だったので、先日が公開初日の『シャン・チー』が誕プレに思えて誕生月割引で観ました。

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※下の色が薄い小文字は感想の前の前置きで、その下からが感想なので、薄いゾーンは読まなくていい
25作目となる本作だがMCUが始まる18年以上前、MCUの総監督とも言えるMARVELスタジオ社長のケヴィン・ファイギが「後にMCUと呼ばれることになるMARVEL制作の映画シリーズ」を作るため2003年に銀行から映画製作資金の5億ドルを借りる時の「事業計画書」にあった「MARVELスタジオで製作予定のMARVEL映画10本」の中に、この『シャン・チー』は既に書かれていた(ちなみにMCUの一作目&今までの中心だった『アイアンマン』は10本の予定の中に無かった)。
それなのに制作するまで18年もかかったのは当然「アジア人ヒーロー」「アジア人主人公」という前例のない要素がネックだったからだろう。ハリウッド映画の出資者は前例のないものを嫌う、一部の勇気のあるスタジオと配給会社が先鞭つけて大ヒットさせた後にしか作りたがらない、というか出資者もリスクを嫌い制作資金を出さない。
そもそもアジア人ヒーロー映画どころかアジア人が主人公のアメリカのエンタメ大作映画すら殆ど無い。
というかそもそもアジア人俳優ですらアメリカ大作映画の出演者のうち1%も出てない印象。もちろん古くはブルース・リーを始めとしてミヤギさん、アル・レオン、ジャッキー・チェンジョン・ローン工藤夕貴、本作にも出てるミシェール・ヨー、ジェット・リードニー・イェン北野武真田広之菊地凛子浅野忠信……他にもハリウッドのエンタメ大作に出てるアジア人はいるし『グリーン・ディスティニー』のヒットとかもあったが、カンフー映画という隔離されたジャンル内だったりスポット的だったりして、アジア人俳優勢がハリウッドの本流ド真ん中にいた印象はない。最もハリウッド本流に食い込んでるエンタメも賞レースも行けるアジアン俳優は本作にも出てるケイティ役のオークワフィナだろう。
本作が作られるのを後押ししたのは恐らく25年ぶりに作られた主要出演者が殆どアジア人の映画『クレイジー・リッチ!』(2018)が大ヒットしたのも大きかっただろう。本作にも出てるミシェール・ヨーとオークワフィナも出てた(MCU的には『キャプテン・マーベル』のミン・エルヴァ役&『エターナルズ』のセルシ役のジェンマ・チェンも出てた)。この、あり得ないほどの金持ち中国人ラブコメはブログに感想書いてないけど面白かった、というか内容よりも『オーシャンズ8』で初めて知ったオークワフィナの魅力が印象深かった。そんな感じで『クレイジー・リッチ!』が大ヒットした事によって「ほう、アジア人ばかりでもヒットするもんだね」という認識が広がったのだろう。
作品評価的なところではポン・ジュノMCU次回作『エターナルズ』監督のクロエ・ジャオのアカデミー賞受賞も大きいでしょう。
そしてMCUでも、主要キャストとスタッフの殆どが黒人で作った『ブラック・パンサー』(2018)の歴史的な超絶大ヒット(MCUアベンジャーズではない単独作では最大ヒット)、MCU初の女性ヒーロー主人公映画『キャプテン・マーベル』(2019)の大ヒットも「ほう、白人男性じゃない黒人とか女のヒーローでもヒットするもんなんだね」という事を証明した。本作が「アジア版ブラック・パンサー」と言われてるのもそれ故だろう。ちなみに『シャン・チー』『ブラック・パンサー』『キャプテン・マーベル』3つとも全て、18年前にケヴィン・ファイギが計画してた「MARVELスタジオで製作予定のMARVEL映画10本」の中にあった。しかしファイギが自由に作れるようになったフェイズ3以降の現在のMARVELスタジオと違い、MCUトップにはケヴィン・ファイギだけでなくMARVEL元会長アイザック・パルムッターがいた。パルムッターは「黒人俳優が交代しても誰も気づかんやろw」「女性ヒーロー映画なんて誰も観ないしオモチャも売れんやろw」などと言い放つ多様性に欠けた人物でファイギの邪魔をし続け、2015年に業を煮やしたディズニー会長ボブ・アイガーに追い出された人物。ファイギは彼の妨害のせいで黒人ヒーローや白人女性ヒーローの映画すら作れないのにアジア人ヒーローの映画など作れるはずがなかった(というか下手したらファイギはウルトロンの時に追い出される危険すらあった)。
ここまでのMCUメインキャラを演じるアジア人俳優ってドクター・ストレンジの兄弟子ウォンの人だけだもんね。急速な映画界の流れで「やべえ!ウチのMCUアジア人おらんやん!」と急に焦り始め『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』&『アベンジャーズ エンド・ゲーム』でウォンの扱いが急にアップしてウォンの単独ポスター作ったりメインのポスターにもウォン入れて「ウチにもアジア人いますよ!ほら」とやり始めた。少し可笑しかったがやらないより良い。あとはソーの仲間ホーガン役の浅野忠信とか『アベンジャーズ エンド・ゲーム』で瞬殺される残念なヤクザ役の真田広之しかいない。
そもそも原作のMARVELコミックの有名キャラからしてアジア人キャラ少ないからMCUメインキャラになりようなかったとも言える。このシャン・チーだって同じカンフー系ヒーローのアイアンフィストよりマイナーだったし。現在のMARVELコミックで最も人気出たアジア人ヒーロー主人公と言えばMCUでもDisney+ドラマが来年年明けに配信される『ミズ・マーベル』だろう(パキスタン系)。他にも色々居るが主役級じゃないし出番も安定しない奴が多い。悪い言い方すれば、ニンジャやサムライやアキハバラやヘンタイなどの「変な国ニッポン」を演出したいだけのモンド映画的な扱いだった気がする。本作のシャン・チーも「ブルース・リーをMARVELコミックに出してえ!」ってだけなので似たようなもんだ。だが日本もストIIなどで外国を同じ様に扱ってたからお互い様か。色々、例を出したがそれらが悪いってわけじゃない。
僕は物心ついて映画好きになった子供時代が80年で、そっからずっと白人だけ活躍するアメリカのフィクションに慣れきってて「もっとアジア人とか日本人をメインで出せ!」……などとは最初っから思ってもいなかった、そんな事ありえないと思ってたからだが。だから僕も昔はアメリカのフィクションに出てくる「変なニッポン」大好きで楽しんでたし。だから『エンド・ゲーム』で真田広之がしょうもない役やらされても「しょうもない役だけど、昔はこんなんでも楽しんでたし世界ナンバーワンの映画に出れたんだし……」と前向きに楽しんだ。だがわずか数年の映画界の流れによって今では「あれ?おかしくね」と思い始めた。

そして、つい先日も真田広之が殆ど主人公でアジア人も多くメインキャラを演じてた『モータル・コンバット』(2021)も大ヒットしたし「あぁ、俺って何十年もアメリカ映画のユダヤ系白人様に調教されてたけど、アジア人がこんなにも作品に出てこないのは変な事だったんだなぁ」と最近ようやく思い始めた。多様な国アメリカに住んでる白人って60%くらいなのにアメリカ映画の登場人物の殆どが白人ってのも冷静に考えたら変だったよね。
まぁ人種的な話してたら何時まで経っても本作の感想に辿り着けないのでもうやめときます(これでも半分くらいの短さにした)。
とにかく本作は只のマイナーヒーロー映画が公開されたってだけじゃなくて上記のアジア人の兼やマイノリティの兼も乗っかってると言いたかったが長なった。

あと本作は、ジャッキー・チェン映画やチャウ・シンチーの『カンフー・ハッスル』などの中国・香港カンフー映画、あと武侠映画、あとチャン・イーモウ映画っぽい色彩も乗っかってる。
主人公シャン・チーを演じる全く知らないアジア系カナダ人俳優シム・リウ氏は、スパイダーマンスーツ着てバク転したりするバイトしてたらしい。だが支配人に「絶対人前でマスク脱ぐなよ、マスクの下からアジア人の顔が出たら萎えるから」と哀しい事も言われた事もあったそうだがMCUが数年前「『シャン・チー』作る」と発表した時に軽い気持ちで自分を推薦するツイートしたら何かシャン・チーになってしまったというアメリカンドリームな経緯もあった。そして類まれなる才覚とカリスマ性で落ち目だったディズニーを映画界の覇王にお仕上げた前社長ボブ・アイガー……に変わって数字だけ重視して最近スカヨハに訴えられたボブ・チャペック現社長が、本作の事を「(アジア人ヒーローの映画は)一体どうなるものか、”実験”だな」と無神経な事言ったのでシム・リウ氏は「我々の作品は実験ではない!ガラスの天井をぶち破る鉄拳だ」的な事を言ったのも覚えておきたい。このシム・リウの発言は称賛されて「シャン・チー応援しなきゃ」という風潮になったので「ひょっとしてチャペックは、わざと悪役を演じてシャン・チーを盛り上げた……?」と0.05秒だけ思ったが、社長や会社の評判を下げるそんな発言をわざとする事は絶対にあり得ない(もしやるなら、やられ役のライターに書かせただろう)。このように「ひょっとして真相は逆に……!?」といった陰謀論者的な思考が常態化してしまったらガチ陰謀論者になってしまう。そうなれば信じたい事だけ信じ、信じたくない根拠を示されても全て陰謀だと思うようになってしまう。僕もオカルトや都市伝説や陰謀論は(エンタメとして)大好きなのだが、この一線を越えてはいけない……と強く言っておきたい。

劇場公開と同時配信だった『ブラック・ウィドウ』よりマシとはいえコロナ禍というハンデもあるアジア人マイナーヒーロー映画……一体どんな結果になるかは今日から明らかになる。何しろいつも6作くらい契約するMCUが『シャン・チー』主演シム・リウに限っては今後の予定は未だ白紙らしいからね。
ここは一つ大ヒット&高評価を勝ち取ってシャン・チー氏にはMCUのど真ん中に躍り出て欲しいところ……。
僕は、こういった映画が作られるまでの経緯や背景も映画本編の一部だと思ってるので避けては通れず思いのほか長なりましたわ。

殆どネタバレありなので注意。ポストクレジットシーンの事は書いてない
劇中の流れ通りに感想を書いてるのでまだ観てない人は前半のところで読むのやめた方がいいかも。

 

 

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『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)の後の世界。
アメリカ・サンフランシスコでホテルマンとして暮らすアジア系アメリカ人シャン・チー(シム・リウ)。彼は、同じくアジア系アメリカ人の車好きの親友ケイティ・チェン(オークワフィナ)と、バイトして飲んだりカラオケで盛り上がるというフリーター的モラトリアム生活を謳歌していた。
そんなある日、強襲してきた刺客を中国拳法で返り討ちしたシャン・チーは、父の意思だと悟り、付いていくと言い張るケイティと共に、長年会っていない妹シャーリンメンガー・チャン)に会いに故郷の中国マカオへと旅立つ。
シャン・チーの父シュー・ウェンウートニー・レオン)、彼は強力な力を発揮し不老不死をもたらす10個の腕輪〈テン・リングス〉の力で千年前から世界規模の犯罪組織テン・リングスを率いて裏社会に君臨し続け〈マンダリン〉などの異名で恐れられていた。ウェンウーは神話の村〈ター・ロー〉にて、己とテン・リングスの力を超える柔軟な拳法を使う女性イン・リー(ファラ・チャン)と出会い、生まれて初めて愛を知ったウェンウーはテン・リングスを封印し、妻と共に歳を取る普通の男(普通と言っても犯罪組織のボスだが)として妻と息子シャン・チーと娘シャーリンと四人、幸せに暮らしていたが妻イン・リーの死で暗黒面に堕ち、シャン・チーを自分の後継者にすべく殺人拳を教えた。その運命を嫌ったシャン・チーはアメリカに逃れ親友のケイティ(オークワフィナ)と気楽な生活を満喫していたが……。
そんな前提。
アメリカでの格闘→マカオで妹や父と再会→母の故郷の村ター・ローでのラストバトルという流れ。

 

 

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前半。シャン・チーとケイティ。二人を演じるシム・リウとオークワフィナ
まず第一幕では、主人公であるシャン・チーと親友ケイティの生活。
ちなみに僕的には本作の中で一番好きだったのは「シャン・チーとケイティというキャラクター」「バスでのシャン・チーのクンフーアクション」なので、それだけを描いた、この前半部分が本作で一番好きだし重要(悪い言い方をすると、この前半がMAXで、映画の経過と共にじりじり落ちていく)。
アジア系アメリカ人の二人は大学で知り合い、20代後半の現在はホテルマンとして働きアフター5は二人で酒飲んだりカラオケしたりを繰り返すフリーター生活。単純に楽しそう。僕も割とこうだったので親近感が湧いた。同級生やケイティの家族には「大学では優秀だったのに一体いつまでフリーターしてるつもり?」と、やんわり言われてるが二人は「フリーター楽しいし別にええやん!」という感じ。ここは割と強調して描かれてる気がしたので重要な気がする。
原作のシャン・チーやブルース・リーやジャッキーなどのカンフスターも無職が多い。やはり半端に金持ったら修行とかしたくなくなるのかもしれない。「滅殺!」くらいしか喋らずまともな生活できてるか心配なストリートファイター豪鬼も道端で果物売ってるし普段は優しいおじさんなのかもしれない。
シャン・チー的には父から逃げ出したので、見方によっては「人生から逃げている」と言えなくもないが父は国際的な犯罪集団をシャン・チーに継がせようとしてるし殺人拳も教え込んだ。ここは一般人目線で見るなら「父から逃げ」たのではなく「父のDVから離れて自由になった」という感じなので、シャン・チーのフリーター生活もネガティブな印象ではなく、あくまでアメリカで「快適な生活」を謳歌している印象だった。
ちなみにアパートでこっそり個人的な修行をしておりクンフーは衰えていない。
ケイティはカーレースが好きでホテルの客の高級車をこっそり乗り回したりしてるが、特にカースタントの仕事を目指したり学歴を活かした仕事に就こうとは思っていない。
ケイティの祖母は、いつも一緒の二人に「二人はいつ結婚するの?」と訊くがシャン・チーは「つるんでるだけ」と返答するしケイティも赤面したりはしない。そして映画が終わるまで二人の恋愛要素はない。「二人の関係を一歩進める勇気がなくて」といったネガティブな感じではなく只の異性の親友。スパイダーマンで言うなら「ピーターとネッドは親友。ネッドはたまたま女性だった」ただそれだけといった感じ。続編で二人の関係がどうなるかまだわからんが多分ずっとこのままだと思わせる雰囲気。
そんな感じでアメリカに暮らすアジア人としての描写、シャン・チーとケイティには社会的地位への上昇志向は一切なく簡単に就ける仕事をして今を楽しんでいる。だが二人は「なまけている」というネガティブな印象では描かれていない。
だが終盤、ケイティは弓矢の訓練時に「狙わないと当たらない」と言われハッとした表情をする。だから「内心その日暮らしを気にしてたのか?もしくはシャン・チーのこと好きなんかな?」と思った。その結果どうなるのか?二人のモラトリアムの行く末は終盤のとこで続きを考える。

シャン・チー役のシム・リウ
シャン・チー役のシム・リウ。アクションも良いし無職みたいな状態からMCU主人公ヒーローになったというヒーロー的な経緯も良い。
最初にシャン・チーのルックスが発表になった時の僕は「思いのほか地味な顔だが、ここまで地味だと『アジア人男性の絵文字』みたいな顔で逆にいいやん、優しそうだし」と好意的に思った。だがアジア人のMCUファンからは「イケメンいっぱいいるのに何でこんな地味な不細工を選ぶんだ!」などと心無いコメントが寄せられシム・リウは少しだけ悲しんだ(そして悲しむシム・リウを見て僕も悲しんだ)。中国とか韓国のエンタメや好みを見てるとわかるが「より美しく!より速く!より正確に!」といった傾向が強いように思う。勿論、僕も機能美に優れたものに「すげぇ……」と思ったりするが「レーダーチャートの六角形を全て満点にしよう!劣ってるところがあるものはゴミ」みたいな感性は昔から好きじゃない。多分子供の頃からプロレス、お笑い、サブカルとかにも触れてないとダメだなと、シャン・チーの容姿を批判する中国の人を見て思った。ちなみに原作のシャン・チー、昔のコミックではブルース・リーそのまんまの顔をしてたが現在では似てない。描く人によって絵柄が変わるアメコミだが、アジア人キャラの顔の特徴は厳密に決められておらず「前髪のある黒髪の直毛のアジア人」という共通点しかないので描く人によってシャン・チーは全然違う。凄い美少年の時もあるし糸目のオッサンみたいな時もある。黒人キャラもそういう傾向あるね。まぁとにかく「シャン・チーの顔の特徴」は無いに等しいので誰がやってもシャン・チー。
だけど春に『モータルコンバット』(2021)が公開された時、原作では主人公のアジア人リュウ・カン役の人がアクションも凄いし、ルックスが正に格ゲー主人公的な美形だった。あまりに魅力あったので「あ、この人がシャン・チーだった方が……」とモーコン公開時は思ってしまった。ごめんね。だが、本作の公開が近づいてくると『刃牙』の板垣恵介が中国拳法の達人キャラ〈烈海王〉を作った逸話として「ブルース・リーなど既存の〈拳法の達人〉キャラとは違うオリジナルの中拳キャラ作ったった!」とか言ってたのを思い出した。「確かに、こんな優しそうで絵文字みたいな顔の達人キャラは居ないな……そう思うとリュウ・カンは如何にも格ゲーっぽいから、やっぱシム・リウの方が良いかも。それに現在のMCUは『エンド・ゲーム』でも提示した大柄ソーやスマート・ハルクなどの、男性的な暴力やイケメン方向に振れない方向性を出しとるし、そう思うとシム・リウは如何にもMCU的でいいかもな」と思った。リュウ・カンはモーコンで観れるしね。

ケイティ役のオークワフィナ
ケイティ役のオークワフィナは最初は『オーシャンズ8』でアジア人女性メンバーのコンスタンスという役で知った(この映画面白かったのだが忙しくて感想ここに書けなかった)。ラッパー出身で、今は多分アジア系で一番売れてる俳優。スリの達人で、最後には強奪した金で広いアパート借りてスケボーに乗ってYOUTUBEに投稿するという「90年代の格ゲーの脇役のエンディングかい」って感じの超適当なエンディングが好きだった。失礼な言い方だが彼女は一見おばちゃんっぽい顔をしてるのだが『オーシャンズ8』には色んな有名な女優や美人が出てるのだが、もうオークワフィナにしか目が行かなかった。魅力がありすぎて。もう喋ったり動いてるだけで魅力がありすぎる。古くは勝新太郎とかブルース・リーとか若い時の北野武とか……今ならフローレンス・ピューにもそう感じる、「性的に魅力がある」とか「(黄金比率的に数値化できるという意味での)美しい」「もふもふして可愛い」「滑稽で間抜けな容姿なのでつい見てしまう」などの説明しやすい魅力ではなく、理由よくわからんがとにかく魅力がありすぎて目が離せない人。スターのオーラ的なものなのかもしれん。そしてオークワフィナを見るにつけ「白い歯見せてニッコリ笑うのは重要だな」と思った。
ケイティは「シャン・チーの友人」のサブキャラだが、思いのほか出番が多くてよかった。というかはっきり言って全編……冒頭からラストまでずっと出てる。MCUサブキャラで一番出番多いんちゃうか。これはもはや「シャン・チー&ケイティ合わせて一人のシャン・チー」って感じでオークワフィナ好きの僕は嬉しかった。何だか「マット&カレン&フォギー3人合わせて一人のデアデビル」って感じだったNetflixデアデビルを思わせる(というか、あの作品もはやマットよりもフォギーとカレンの方が有能かつ魅力高かった)。
なんだか二人共について今の時代に容姿の話ばかりして良くない感じもするが、僕は二人の容姿も含めて好きというポジティブな気持ちなのでまぁいいだろと思って書いた。
それとTwitterとか見てたら二人は人気出て良い感じなんですけど、もし今が2000年初頭くらいだったら……いや2010年代であっても、中国のMCUファンみたいに「もっとイケメンをヒーロー&ヒロインにしろよ!」みたいな声の方が多くてウンザリしてただろう。そう思うと今の方がいいなと思う。もっとも本作は今だから制作&公開できたのであって「もしも2000年初頭に本作が公開されてたら」というホワットイフは有り得ないですけどね。

バスでのレーザーフィスト戦
二人はバスの中で、父マンダリンが放った刺客レーザーフィスト(元ヘビー級ボクサーのフロリアンムンテアヌが演じてる)と死闘。
レーザーフィストはその名の通り片手がジェダイライトセイバーみたいにガンダムのグフみたいに鋼鉄をも斬り裂くヒート剣になっている。明らかに現在の科学技術ではないがMCUでは『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)で「『アベンジャーズ』(2012)で、アベンジャーズが倒した宇宙の戦闘種族チタウリの超科学武器が裏社会で流通している」という事が描かれた。だからレーザーフィストだけでなくテンリングス配下もレーザー捕獲器みたいなを持っている。
レーザーフィストの何でも斬り裂くヒート剣……「だったらさぁ!義手を作ってヒート剣を手に持った方が絶対に良いと思わない!?ねえ!ガキじゃねえんだからさぁ!」などとホリエモンみたいな嫌ごとを言いそうになったが言う前に気を取り戻したので野暮を言うのはやめておこう。いつの間に童心を忘れてしまったのか?手がヒート剣いいじゃないですか。しかし右手がなくてどうやってシコったり美味しいピザを食べたりするというのか…長くなるので続きはまた今度考えよう。
話を戻してバス内でのシャン・チー vs.レーザーフィスト&配下。
これは完全にジャッキー・チェン的アクション。具体的に言うと閉所で周囲を効果的に使いながら格闘し、たまに椅子に座って書類をまとめる可愛いOLにニッコリ微笑むシャン・チー氏。中でもクソ狭ったらしい荷物棚にスルッと入ったり出たりしながらのアクションが凄い。ジャッキーがよく、受付カウンターの狭い穴にスルッと入ったり出たりしてたの思い出す。
予告でもよく使われてたシャン・チーの構えも超カッコいい。ケイティも得意のカースタントを活かして乗客から一人の被害も出さずバスは停車。
シャン・チーとケイティの活躍は大柄YOUTUBER(ザック・チェリー)が生配信していたためシャン・チーとケイティはたちまち世界中に知れ渡り、父や妹や一般人の間で「格闘家バスボーイとバスガール」として話題になる。アベンジャーズ残党やSHIELD残党も当然観ているであろう。ちなみに、この大柄は『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)でピーターに「バク転してくれ」と遠くから言ってた大柄。
シャン・チーとケイティのキャラは、この10数分だけで既にMCUベスト5に入るくらい好きになった。そしてバスでの見事なアクション(このシーンの撮影だけで一ヶ月かかったらしい)。最高の前半だったと言える。

 

 

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中盤。超高層の闘技場編。悲しきマンダリン
レーザーフィストとテンリングス構成員を退けたシャン・チー&ケイティだったが次は妹のシャーリンメンガー・チャン)が危ないってことで中国・マカオに。ケイティは友情で付いてきた。
シャーリンはシャン・チー同様に家出してマカオ裏社会でのし上がり、闘技場を内包するナイトクラブ〈ゴールデン・ダガーズ・クラブ〉を経営していた。
地下闘技場だ!いや地下じゃない、超高層闘技場といったところか。
金を賭けて特殊技能を持った戦士やメタヒューマンが試合を行う場所。
一番デカいリングでは予告編でも話題になった「魔術師ウォン vs.怪物アボミネーション」が死闘を繰り広げていた。
ソーサラー・スプリーム(至高の魔術師)ドクターストレンジの兄弟子兼カマー・タージ書庫管理人ウォンベネディクト・ウォン)、サノス軍打倒のため数年で魔術師をアホほど集めて指パッチンで消えたヒーローを集結させて世界を救った英雄の一人だがこんなバイトをしていたとは。
対するは、元は超人兵士エミル・ブロンスキーティム・ロス)、現在はハルクの血液を取り込んだ怪物、通称アボミネーション『インクレディブル・ハルク』(2008)から数えて13年ぶりの再登場。背びれが増えて進化している。MCUもいよいよ原作同様「二桁年ぶりに登場」とかアメコミみたいな恐ろしい事になってきた。登場時間1分くらいしかないしCGで出来た筋肉ダルマでしかないので、てっきりCGの塊かと思って一応検索したらクレジットにあるのでティム・ロスがちゃんと演じてた事が今わかった。ご苦労さんだ。
ハルクと五角以上のパワーを持つアボミネーションにウォンでは勝ち目がないように思えるが、ウォンはハルクと同じくらいのパワーを持つと思われるサノス四天王のカルの腕をポータルで切断した事がある。そう、ヒーローサイドだから使わないだろうけど魔術師キャラはポータルを武器にすればどんな硬い物でも真っ二つにできる恐ろしい攻撃力を持っているのだ。アボミネーションの打撃を何とか交わして首を撥ねればウォンの勝ちだ。実際の戦闘でも、アボミネーションのパンチをポータルでアボミネーションの後頭部から出現させ自爆させていた。ウォン強すぎる。
だが二人の様子を見ていると打ち合わせしてるし一緒に帰っていく。どうやら示し合わせて超人プロレスしていた様だ。ドクターストレンジとウォンって社会的には只の無職の中年で貧乏だからね。ウォンが頑張ってバイトしてたわけだ。というかアボミネーションもウォンと仲良くしてたし13年経ってすっかり更生したのか?
只のバケモノとしてウォンと試合するとばっかり思ってたからこれは嬉しかった。
僕がティム・ロス好きというのもあるがアボミネーションに変身する前の超人兵士ブロンスキーも凄いカッコよかったんだよね。今後また出てほしいわ。
最近、ずっと黒歴史みたいな扱いだった『インクレディブル・ハルク』(2008)は現在配信中の『ホワット・イフ……?』(2021-)でもベティやインクレハルクがピックアップされたりしてきた。権利が還ってきたせいか時間が経ったからか知らないけど。アボ氏も『シーハルク』(2022)でまた会えるかもね。
話を戻そう。ひとしきり盛り上がったが、この試合30秒くらいしかなかった。
続くは闘技場経営者シャーリン vs.バスボーイ(シャン・チー)の対決。だがシャン・チーは妹と闘う気はなく、あっさりKOされる。
折角の闘技場編だが試合は2つ合わせても2分あるかないかしかなく残念……。
そこへテンリングスの新たなる刺客、父マンダリンと共に幼いシャン・チーを鍛えた師範代デスディーラー(アンディー・ル)と雑魚構成員が、シャン・チー&シャーリン兄妹とケイティに襲いかかる。
シャン・チーらは、ビルを工事してる足場で戦闘。なんかワンチャイでこんな場面あったよね。第一幕では横の闘いだったので今回は縦の闘いって事か。
残念ながら視力が悪い俺は映画館の目の方に座りすぎたせいかスクリーンが暗くてよくわかんなかった。とにかく高い所怖い系の闘い。
デスディーラーは京劇風の仮面を被っていてルックスが凄くカッコいい。あと上からニュッと登場する時に不気味な音楽が流れたりするのもいい。だが彼のキャラはそれだけで何を考えてるやつなのか最後までわかんなかった。シャン・チーはデスディーラーを倒し彼の苦無を構えるが幼い時に稽古してもらった記憶が脳内をかすめてトドメをさせず……そこに父マンダリンが登場し三人を拉致する。
ちなみにシャン・チーに見捨てられてグレたシャーリンだったが、シャン・チーをシバき回してスッキリしたのか高所での死闘中に知らん間に仲直りしてた。
シャン・チーらと食事を共にするマンダリンはケイティに中国での名前を聞き「名前は大事にしろ」と言う。アメリカを快く思っていない。
全体的に、心なしか愛情も持ってるのだが好戦的ゆえに身を滅ぼすマンダリンは中国そのものを揶揄してるキャラのように思った。
この辺の回想で、最愛の妻でシャン・チーらの母イン・リー(ファラ・チャン)は、マンダリン時代の敵組織のお礼参りで死んだことがわかった。それによって真人間になってた(といっても普通のヤクザになってただけだが)ウェーリンは封印してたテンリングスを再び装着し、裏社会の恐怖の帝王として復活、シャン・チーを暗殺者として鍛え上げたがシャン・チーは殺しを嫌ってアメリカに逃亡した事が語られる。
またマンダリンは極悪な男だとばかり思ってたが、愛を知って家族を愛していた系のボスだとは意外だった。
というかマンダリン、映画観るまでは恐ろしい巨悪だと思ってたが、彼は実質的に妻が死んだ時に既に死んでいる。本編に出てるマンダリンは「かつてマンダリンと恐れられたウェーリンという男」の残穢に過ぎない、というのが映画観終わった後の感想。
マンダリンが使う不思議な武器テンリングスだが原作では一つ一つが違うパワーを持った指輪だったが映画では、五個づつ腕に付けて自由自在に動く武器になった。恐らくインフィニティ・ガントレットと被るからシンプルな武器にしたんだろう。予告編で最初に見た時に「『カンフーハッスル』(2004)に出てきた〈乙女の心を持つ仕立て屋のおっさん〉が使う洪家鐵線拳(ほんけてっせんけん)みたいだな」と思ったけど、

本作の監督は『カンフー・ハッスル』に影響されてると言ってたし本作には至るところに『カンフー・ハッスル』要素が多いし『カンフー・ハッスル』出演者まで出てるので、仕立て屋のおっさんがテンリングス装着マンダリンになったのは間違いないだろう。『少林寺三十六房』(1978)などでも少林寺の修行に使う鍛錬器具として出てたね。
マンダリンは「妻は死んだが毎晩、妻の声が聞こえる」と言う。妻の故郷である竹林に隠された神話の村〈ター・ロー〉が死んだはずの妻を匿っているので迎えに行き、断るなら村を焼き払うと言う。単純に闇に魅入られて気が狂ってる哀しきヴィランだった。
トニー・レオンもカンフー上手いが他にもカンフースター居る中で、何でトニー・レオンを雇ったのかわかったね。「瞳だけで演技できる」と言われてるトニー・レオンの物憂げな哀しい雰囲気が欲しかったんだね。
シャン・チーらは、牢で『アイアンマン3』(2013)に出てきた、マンダリンを偽装させられていた売れない俳優トレヴァー・スラッタリーベン・キングズレー)が居た。彼は、ソー2だかなんだかのDVD特典の短編で「刑務所に居たが本物のテンリングスから電話かかってくる」という経緯が語られていた。拉致されて道化師として過ごしていたようだ。
そして牢には他にもトレヴァーの友達がいた。妻とター・ローから出る時に付いてきたっぽい。頭がなく六本足で翼が四つある生き物モーリスがいた。検索したら「帝江」と呼ばれる中国の空想上の生き物らしい。
ja.wikipedia.org

これが、めちゃくちゃ可愛い。僕はディズニーがお出しするマスコットキャラは大抵嫌いだが(ベイビーグルートもあまり好きじゃない)これはさすがに可愛い。何が良いって他にも色んな中国の空想上の生き物いっぱい居て後で出てくるのだが頭がないコイツをマスコットに選んだところがセンス良い。もしクリクリした瞳を持つ頭が付いてたらディズニーっぽすぎて好きじゃなかった。
隠されたター・ローへの入り方がわかるという帝江のモーリスに導かれ、シャン・チー、ケイティ、シャーリン、トレヴァーらは脱獄してター・ローに向かう。そして、それを追うマンダリンとテンリングス。
今までMCUの「第一作」で最も好きだったのは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)『キャプテン・マーベル』(2019)だったが、シャン・チーは超えるかもしれん……と、この第二幕まで観てて思った。

 

 

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後半。個人的には神話の村ター・ローは……
神話の村ター・ローは、現実世界から切り離された神秘の村だった。
そこでは中世のような暮らしをしている人達が武術を学んだり、龍の鱗で出来た武器を訓練していた。村には龍とか麒麟とか帝江などの中国の空想上の生き物がたくさんいる。村の外れには〈ダークゲート〉と呼ばれる門があり、地獄の悪魔みたいなのが入ってこようとしている。世界を悪魔から守護するための隠された村という事らしい。
ワンダーウーマンのアマゾンの島セミッシラみたいな感じか。
スクエニローカライズしたオープンワールド洋ゲーに出てくる神秘的な東洋の村みたいだな」と思った。とにかくスクエニ臭が凄い。
ドクター・ストレンジがここを知らなそうって事は西洋魔術からも隠された村って事かな。
ター・ローを代表する守護者はシャン・チーらの母の姉妹でシャン・チーらの伯母さん、イン・ナンミシェール・ヨー)。
マンダリン&テン・リングスを迎え撃つために、シャン・チーや村の人は応戦準備を始める。
シャン・チーは伯母さんに武術を学び直す。ミシェール・ヨー……当時はミシェール・キングは『ポリス・ストーリー3』(1992)で知ったけど、とんでもないアクションだった(正直ジャッキーより凄いと思った)そんでハリウッドに旅立ってるスターで、本作ではミシェール・ヨーvs.トニー・レオンが観れると思ったら、まさかやらんのでガッカリした。というかミシェール・ヨーのまともなカンフーは見れなかった。このシャン・チー修行シーンで、予告編にもなってたけど陰陽を全身で表現する太極拳的な動きがめっちゃカッコよかっただけだ。さっきから予告編予告編言ってるけど本作の名場面は予告編で全部出てる。アメリカのエンタメ映画は予告編で出しすぎ傾向にあるが本作はもう99%くらい見せてた、と観終わってから思った。そんだけ未知数で不安だったんだろう。
伯母さんは修行中、マンダリンに教わった殺人拳の握りこぶしを柔的な開いた拳に変える。地味だけど、ここは優しい武道家シャン・チーを上手く表現したシーンだと思った。
シャン・チーの優しさは武術家ヒーローとしてかなり突出した特徴だろう。何しろマンダリンはおろか中ボス、小ボス、誰一人として殺さなかった(まぁナイトクラブの足場から落ちた雑魚は死んだだろうけど)。かなり優しさを強調されたヒーローだ。
……と、それだけだったら「何を甘いことを……」と乗れなかったところだが16歳の時、母を殺したヤクザ暗殺に出かけたシャン・チーは殺しが嫌で、そのままアメリカに家出した……と言っていたが「実は母の仇をしっかり殺してた」という事実が語られる。
綺麗事でシャン・チーを綺麗なカンフーヒーローにしたいだけなら、こんな設定いらない。「自らの手を一旦汚したからこそ血の香りを嫌うようになった」というのがシャン・チーの優しさを後押ししている。この監督はこんな感じで設定のフォローが上手い。
どうせならシャン・チーが殺人を犯した回想シーンも欲しかったが全年齢向けディズニーだからダメだった。
というか今に始まったことではないから最初から諦めてるけど、殴りまくろうが刺そうが撃とうが怪物に喰われようが、本当に一滴も血が出ませんね。まぁ仕方ない、そういう欲はDC映画や『モータルコンバット』『ジョン・ウィック』『ザ・ボーイズ』等で満たすしかない。
シャーリンは縄鏢の訓練、この武器は『モータルコンバット』でスコーピオンも使ってたがカッコいい。こんな世界で知られてなさそうな武器がアメリカ映画のナンバーワンヒット大作2作で観れるという縄鏢の当たり年だった。父に無視されたまま終わり結果的に父のものだけ受け継いだシャーリンも面白かった。シャーリンは原作のシスターダガーに髪型とか似てる、シスターダガー好きなので映画でも彼女を観たかった気持ちも残った。
ケイティは、村のナンバー2みたいな弓矢おじさん(『カンフー・ハッスル』で豚小屋砦の大家を演じたユン・ワー演ずる)から弓矢を習う。予告でケイティが弓矢持ってて「何で?一般人だろ」と思ってたけど、こういう事か。個人的にはこれは要らなかったように思う。結果的にはピンチのシャン・チーとシャーリンを弓矢で救うってだけなんだけど、それだけなら車の運転が売りだから乗ってきたレーザーフィストの車で体当たりした方がケイティっぽかった気がしなくもない。
とにかく、マンダリン&テン・リングスもター・ローに到着。争いが始める。
世界的な犯罪組織だったはずのテンリングスだが、ハイエース四台ぐらいでやってくるという町のヤンキーレベルの規模になってるのが気になるが「大勢で竹林を抜けるのは困難だったんだろう」と汲み取った。
予告編でこの辺を見て『ブラック・パンサー』『インフィニティウォー』『エンド・ゲーム』などで顕著な、僕がMCUラストバトルで気になってる「ワカンダ運動会」と呼んでいるラストバトル(大量殺戮兵器なども持っているはずが、どういうわけか全員原っぱの一箇所に集まって上下の動きも少ないまま殴り合う展開)を危惧していたが、さっきも言ったように監督はフォローするのが上手くてワカンダ運動会に見えそうな部分を回避していたように思う。
まず第一に、合戦シーンは一瞬だけで後はシャン・チー対マンダリンの背景でワーワーやってるだけなのであまり気にならない。あとテンリングスはチタウリの「レーザー捕縛銃」みたいなのを使って村人を捕縛している。これによって「銃撃戦なのに一滴も血が出ないMCU……」的な呆れをしなくて済む。
いよいよシャン・チー vs.マンダリンの時が来たが、腕輪テン・リングスが闘いのメインになるので「MCU初のカンフー映画」と聞いて期待していたカンフーの攻防が全く見れないので少しガッカリした。腕輪テン・リングスはカッコいいんだけど、これを使われるとカンフーが全然見れないというジレンマ。
正直、ター・ローに来てからの、空想上の生き物たちや神秘的な村人やチャン・イーモウ的な鮮やかな色彩や龍に乗ったりワイヤーアクション的な東洋ファンタジー的な武侠映画っぽい戦闘は、個人的にはあまり乗れなかった。何でかと言うとそれらの要素が増えれば増えるほどカンフー見れなくなるから。めちゃくちゃ金かかって豪華だけど「これならバスや工事現場でシバき合ってた方が100倍良かったよ……」と落胆した。
かといってフィクション的にこれらが間違ってる訳ではないので「良い悪い」ではない、僕が「全編カンフー映画を期待してたら後半で東洋ファンタジー映画になっちゃった」という個人的な「好き嫌い」でしかないんだけどね。Twitter検索したら後半の村のシーン絶賛してる人しか居なかったしね。
だがそんな僕にも好きな場面はあった。
一番良かったのはマンダリンとの対決で、シャン・チーは伯母さんに習った太極拳的なやつでテンリングスを受け止め、母がかつてマンダリンを倒した「テン・リングスを真空波動拳にして撃ち返す」をやろうとするが「やめた」って感じで地面にバラッと落とすところ。そしてマンダリンを説得する。ここはルークがパルパティーンの前でライトセーバーを捨ててダースベイダーをライトサイドに引き戻そうとした展開を思わせて凄くよかった。なによりテン・リングスを投げ捨てるカットが「あぁ……何やっとんだ僕らは……」っていう「しょうもな!」って感じでマンダリンの殺気を見事に削ぐ捨て方で素晴らしかった。マンダリンもあと少しで説得できそうだったしね。
それとダークゲートから侵入してきた悪魔を、殺し合ってたはずの村人とテンリングスが共闘して迎え撃つ場面。普通だったら「そんな綺麗事……」と思いそうなもんだが、悪魔は龍のウロコでできた村の武器じゃないと倒せない。だからどうあっても共闘せざるを得ないという説得力満載になってて疑問を挟む隙がない。
そうこうしつつラスボス的な邪悪な竜みたいなやつにシャン・チーがトドメを討つ。
シャン・チーは村の龍を踏み台に上空に舞い上がり悟りを得る、そして邪悪竜に撃ち込んでおいたテン・リングスにChi〈気〉を送り込んで内破させた。これもまた『カンフー・ハッスル』での「鳥を踏み台に上空に飛んで悟りを得、悟りを得た事でそれまでの100倍くらい強くなり(中華系フィクションでよくある覚醒)、その場の上空から掌から大地が砕けるほどの威力の気を放つ〈如来神掌〉」のオマージュですね。それはいいんだけど、ここはシャン・チーが拳でトドメ刺してほしかったんで観ながらずっと「テン・リングス使うなよ……必殺拳を編み出してくれ……」とハラハラして観てたんですが、マンダリンがシャン・チーにテン・リングスを継承し、テン・リングスが邪悪な青から善の黄色に変わったので「あぁテンリングスで邪悪龍を倒すのか」と個人的に落胆しました。そして監督が『カンフー・ハッスル』ヲタという事もあり如来神掌でフィニッシュ。「シャン・チー」を中国読みすると「上氣(立ち昇った気の躍進)」なので、如来神掌、又は、かめはめ波や真空波動拳がトドメでも良い気もするが個人的には「譲渡されたテン・リングスすら効かない邪悪龍」を素手で粉砕してほしかった、それがダメなら如来神掌やかめはめ波でもいいです、とにかく一刻も早くテン・リングス卒業して欲しい……。それは続編に期待します。続編でもダメなら……もう仕方ないので「テンリングスはキャップの盾みたいなもの」と割り切り切り替えて応援するしかない。
そんで最後てっきり災いの象徴たるテンリングスは解決した後に破壊すると思ったら、しっかりシャン・チーが継承して持ち帰っちゃいましたね。これじゃ続編でもテン・リングス使っちゃうね、ソーのハンマーとかキャップの盾みたいに……。さっきも言ったがテン・リングス自体はカッコいい武器なんですよ。だけどこれ持ってるとシャン・チーのカンフーとか必殺拳が全然観れないから僕的に良くないんですよね。しかもテン・リングスはハルクバスターとか「ムジョルニア持ちキャップ」みたいな一回だけのイベント用武器じゃなくて対チンピラから対邪神まで……普段使いできる汎用性に優れた武器。これではシャン・チーがテン・リングスばかり使うようになってしまう!しかも何度も言うようにテン・リングスは剣とか棒みたいなしょうもない武器じゃなくて少林寺の鍛錬具や洪家鐵線拳からインスパイアされた他にはないカッコいい武器ってのが始末が悪い。人気が出てしまう。シャン・チーじゃなく妹に持たすか?それだと妹の方が目立ってしまうからダメ。仕方ないのでシャン・チーの拳がテンリングス以上の破壊力になるのを期待するか?もしくは「非常時以外は父みたいにしまっておこう」としまってくれるかウォンに預けるのを願うのみ。ポジティブに考えるなら「シャン・チーはテンリングス、アイアンフィストは鉄拳」と差別化出来て、攻撃手段が被ってるアイアンフィストがMCUに登場しやすいかも?抵抗しても無駄そうだから早めにテン・リングスに慣れよう。
それと続編でもター・ローに極力来てほしくないのでダークゲートの影響でアスガルドみたいに崩壊して伯母さんたちもサンフランシスコに来るのを期待したがダメだったね。伯母さんもおるから絶対またここ来ちゃうじゃん。だがTwitterとか見ると武器テン・リングスやター・ローや幻獣は人気みたいなので僕の負け。素直に武器テン・リングスやター・ローや幻獣を好きになった方が早いのかも……。
そんな感じで後半は文句多かったが、個人的な趣味を別にしたら別にダメなところはなかったし、全体的には良かったです。
『ブラック・パンサー』のラストバトルは実際にショボいので「批判」したい気持ちですけど、ター・ローや幻獣やテンリングスなどの中華ファンタジー要素は「『自分が期待してた』カンフーを阻害するから、それらのファンタジー要らん」ってだけなので今回抱いた気持ちは「批判」とは違う。今回のは「勝手にしてた自分の期待と違った」という逆ギレに近いだけなので作品的におかしなところはない。だから映画のせいじゃなくて僕の感じ方の違いって事です。くどいようだが……。武侠ものやファンタジー映画好きな人なら最初から問題ない。僕はその辺あんまりなんです。『グリーン・ディスティニー』とかも観ないし。
まとめると良かったのはシャン・チーとケイティのキャラ「シャン・チーが母の仇を実は殺害してた」という事実をわざわざ付け加えてシャン・チーの闇を描いてた点バスやビルでのカンフーアクションが最高で、ついでにワクワクする闘技場や『カンフー・ハッスル』オマージュとかモーリスも気に入った感じでした。あと何時もながらのMARVELスタジオのバランス能力や監督のフォロー能力。その他は普通で、村以降の後半は好みじゃないって感じでした。
あとサントラが『ブラック・パンサー』並にかっこいい(下にSpotify貼った)。
本作のオープニング成績はワイスピ最新作を超えるがMCU作品としては「まぁまぁ」という感じだったらしい。『ブラック・パンサー』ほどの超絶ヒットではないが、とりあえず続編作ったりシャン・チーを今後も登場させられそうなヒットはしたみたいで一安心した。
滅多にグッズ買わん僕だがテンリングスは我慢できず買いました

 
 
 
 
 
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次は『ホワット・イフ……?』の続きと、二ヶ月後の『エターナルズ』か。

 

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そんな感じでした

『ドクター・ストレンジ』(2016)/西洋医学に見捨てられ東洋魔術でヒーローになっても医療を捨てないドクター👁‍🗨 - gock221B
『ブラックパンサー』(2018)/ワカンダフォーエヴァーしに行ったらジャバリ族になって帰宅しました💙 - gock221B
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『カンフーハッスル』(2004)/主人公のパワーアップが中国的過ぎて魅力を伝えるのが難しいけど傑作✋ - gock221B

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