原作:Ironheart 製作総指揮:ライアン・クーグラー、ゾーイ・ナーヘルハウトほか 原案&脚本:チナカ・ホッジほか 監督:サマンサ・ベイリー(第1話~第3話)、アンジェラ・バーンズ(第4話~第6話) 原作:マーベル・コミック 製作:MARVELテレビジョン 製作国:アメリカ 配信サービス:Disney+ 上映時間&話数:43–55分/全6話 放送期間:2025年6月24日(第1話~第3話)+7月1日(第4話~第6話) シリーズ:MARVELシネマティック・ユニバース(MCU)のドラマ第13作目。MCUフェイズ5最終作品
悪魔のような男「時がすべての痛みを癒すなんて言うが それはウソだ」(本編より)
最近、義務CUと呼びたくなるほど打率が低いMCUのドラマ新作。
以下、この『アイアンハート』を観る前に「このドラマを如何に観たくなかったが何故今から嫌々観ることにしたか」ということを5千字くらい書いてたが、いざ本編観たら想像より面白かったので「こんなにボロクソ言った前置きは合わなくなった」と思い消した。
本作がフェイズ5最終作らしいが、それも言われないと「そうだっけ?まぁどちらでもいいけど……」と、わからない感じがあるね。
アベンジャーズ的な集合作を作らなさすぎだよね。『サンダーボルツ*』(2025)が集合作だしニューアベンジャーズだって?あれはゴーストの扱いが納得いかないのでちょっと……。
フェイズ5で面白かったのは映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(2023)、ドラマは『ロキ』〈シーズン2〉(2023)、『アガサ・オール・アロング』(2024)、『デアデビル:ボーン・アゲイン』〈シーズン1〉(2025)、アニメは『スパイダーマン:フレンドリー・ネイバーフッド』〈シーズン1〉(2025)……あれっ意外とDisney+作品ばかりだ。しかも今となってはもはや未だにMCU観てる人しか観てないものばかりだな。
ネタバレあり
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〈これまでのリリ・ウィリアムス/アイアンハート〉
2025年5月(MCU劇中の時系列で)トニー・スターク/アイアンマンの技術に匹敵するアイアンスーツを独学で開発したMITに通う天才少女、リリ・ウィリアムス。
ワカンダ王国と希少資源ヴィブラニウムを巡って争いを始めた海底帝国タロカンに命を狙われたリリだったがワカンダ王女シュリ/ブラックパンサーに助けられ、リリはアイアンスーツでワカンダに協力した。
『ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエヴァー』(2022)
……という事で本作でもエグゼクティブプロデューサーを務めたライアン・クーグラーが監督した『ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエヴァー』(2022)でリリは既に登場しているものの、『ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエヴァー』(2022)を観てなくても観てても一切関係ない感じのドラマになっている(だから本作を観るにあたって映画は別に観なくても良い)。
1週目(第1話~第3話)
天才MIT学生リリ・ウィリアムス(演:ドミニク・ソーン)。
以前から、リリは研究費やスーツの材料を買うための資金集めとして「宿題代行サービス」など学校から禁止されていた活動をして稼いでいたが、学校に目をつけられドラマ開始5分で退学処分になってしまう。
仕方なくアイアンハートを装着してシカゴの実家に帰るリリ。
しかしスーツに不調があり空中分解して故郷の町に墜落する。ボロボロのスーツで倒れているリリ、という画面に『Ironheart』と出る。つまり本作はこういった「堕ちるストーリー(もしくは、堕ちて這い上がる話)」だという事を暗示して始まる。
実家に帰ったが、とりあえずスーツを完成させるにはカネがいる。
地元で勢力を伸ばしている犯罪組織のリーダー、不思議なマントを着て魔法が使えるパーカー・ロビンス/フッド(演:アンソニー・ラモス)は、強力なスーツを持っているリリをスカウトする。
ちなみにリリがワカンダで戦ったことをどこまで世間の人が知ってるのかはよくわからない。なんかニュースにならなさそうな事件だった、だがリリのスーツを観て驚く人は誰もいない。地元では皆知っているようだ。しかしワカンダでのことにふれる人はいない(多分MARVELスタジオも明確に決めてないからふわっとさせてるんだろう。そしてリリは地元で天才少女として有名人みたいなのでスーツを作れること自体は皆知ってるっぽい。
リリは実家でアイアンスーツのAIをワカンダのAIのように向上させようと改良していたが自分の脳に繋げたまま寝てしまう。起きたら5年前に地元の銃撃戦に巻き込まれて継父ゲイリー(演:ラロイス・ホーキンズ)と共にガレージで死んだ親友ナタリー(演:リリック・ロス)が居た。
リリが二人の死のトラウマを思い出しながら寝ていたため、新生AIはリリの記憶やPC内の情報から親友ナタリーをかたちづくったようだ。
ナタリーの姿をとったAIは自分を〈N.A.T.A.L.I.E.〉(演:リリック・ロス)と名乗る。
トラウマを掘り起こされたリリは最初はN.A.T.A.L.I.E.に反発して消そうとするも、助けてくれるし基本的に一番仲良かった人格なので仲良くなっていく。
スーツ改良の資金集めのためフッド一味に戦力として加入したリリは、一味の強盗に協力……って、ええっ!?
そしてリリは、ジョー(演:オールデン・エアエンライク)という男性の技術を借りるためジョーを脅迫……えっ!?
自ら進んで犯罪を重ねるリリに戸惑いを隠せない。
パワーを得た直後のピーター・パーカー/スパイダーマンは「パワーに溺れて調子に乗った」というだけの理由でベンおじさんが死んだ(そして「何が起きても絶対に生き返らない」という運命付き)、私欲のために進んで犯罪行為を重ねるリリ……MARVEL世界が彼女にどんな罰を与えるのか、想像するだに恐ろしい。
そしてこの『アイアンハート』(2025) 一週目つまり第1話~第3話のリリはハッキリ言って凄く憎たらしい。いや、憎いというのは少し違うな……なんというか愛せないキャラ造形をしている。「私欲のための犯罪しまくる」というのもそうだし、父の形見の車を資金作りで売っぱらってしまっていたり、心配するママやN.A.T.A.L.I.E.にも反発する。この一週目のリリは基本しかめっ面をしており会話も、否定やスカしでしか答えない。
つまり総合して見ると「わざと視聴者に愛されないキャラとしてリリを描いている」と感じた。まぁ年齢的にはこんなもんだがリリはMARVELヤングヒーローなわけだからね。今までのケイト・ビショップ/二代目ホークアイ、アメリカ・チャベス、カマラ・カーン/ミズ・マーベル、キャシー・ラング/3代目アントマン?などといったひと目で大好きになるヤングMCUヒーローとは大きく違う(それにしても女子ばっかだな)。
わざと愛せないキャラとして描いてると思ったのは、まぁ一目瞭然ですよね。愛らしいヤングヒーローを作るノウハウは山程持ってるのにわざわざ犯罪させたり塩対応してるんだから、わざとでしかありえない。
そしてさっきも言ったが「自ら進んで犯罪しまくり」の件、周りの人にも優しくない件、そういった前半を過ごしたリリがどうなってしまうのか?これは絶対に後半が見逃せないと思った。
後半を観たい理由は純粋に「この愛するヒーローの物語の続きが気になる!」という無邪気なものではなく「こんな愛せない主人公を前半で描いて、後半どう終わるんだろ?」という興味が凄く湧いた。
決して「前半リリが可愛くなかったから後半ひどい目に遭うのが見たい」といった幼稚な理由ではない、少し似てるけど両者は大きく違う。
そして彼女が愛せないキャラである理由は明確で、父と親友が目の前で殺された事が原因で、だから母ロニー(演:アンジ・ホワイト)やイケメン幼馴染エグゼヴィア(演:マシュー・エラム)といった昔から自分を知る人の前で心に壁を作っていることはわかる。そして『ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエヴァー』(2022)でシュリやワカンダ人の前では元気だったのは、彼女らが「外部」の「新しい知らない人たち」で、リリ自身もスーツ開発という「未来」のことをしていたからだ。人間、いつの時期でも一番向き合いたくないのは自分のことなので「本当の自分」を知ってる母たちの前では余計に壁を作って平静を装い遠ざけてしまう。
それはわかる、では何が謎なのかというと一週目の第1話~第3話をこんな雰囲気の作品にしたのか、その狙いがわからないのでそこに興味を惹きつけられた。
作品自体はちゃんと作ってるのだが、殆どの時間映っている主人公が終始そんな感じなのでリリの事情はわかっていても、はっきり言って観ていて全く楽しくない。
MCU自体への「うわ……また配信来た。ここまで全部観たから何だかこれも観なきゃいけない気がする……」という常態化してしまった義務CU現象により気が乗らないところに間違った選択やネガティブな事のみする終始仏頂面のリリを観ないといけないのだから素直に楽しくない。観ている間かなり「無」の状態で観た。ムカつくわけではない、「無」だ。両者には違いがある。
だが一箇所、明確にムカつく場面があった。
強盗して隠れ家に帰ってきて、リリがフッドに「ねぇ……私達、オーシャンズ11よね?」という。つまり強盗した自分が不安になり「自分は”良い強盗”」だと正統化したがっているのだ。この場面だけは「このガキ!」とムカついた。
フッドは「良いも悪いもない、俺達は犯罪者だ」と答える。
リリは、自分の前任者ランペイジが死体で発見されたことを知り、この魔法を使うフッドの危険性にようやく気づき恐ろしくなる。
そのため彼のマントの切れ端を奪取するが、それを彼の右腕であるジョン(演:マニー・モンタナ)に見られてしまう。
そしてリリは遂にジョンを殺してしまう。……正確には彼が酸素のない部屋に閉じ込められたのを見殺しにしたので間接的に殺したという方が正しい。しかしアイアンスーツなら簡単に助けられたのにそうしなかった。ジョンを生かせば自分の裏切りがバレてフッドに自分や家族が殺されるかもしれない、だからジョンを見殺しにした。それはわかる。わかるが、リリはMARVELヒーロー(未満)なので話が違ってくる。スパイダーマンなら絶対に敵だろうと助ける。
自ら進んで犯罪を重ねてきてとうとう人を殺してしまった。これはただでは終わらない。そしてジョーに借りた特殊皮膚を犯罪現場に落としてきてしまい、フッド一味の全ての悪事を何もしてないジョーが全て被って強盗殺人犯として逮捕され、ジョーの人生も終わらせてしまった。
ここまでいけない事するMARVELヒーローはなかなか居ない。そこら辺のヴィランより悪事を重ねている。……というか本人の気持ちは置いておいてリリはヴィランと言えるだろう。
だがMCUキッズからは嫌われそうだな、キッズって子供ならではのアホさを持ったキャラって嫌いだから。
2週目(第4話~第6話)
ジョン殺しがバレたリリに、フッド一味が制裁に現れるがリリはダイナーで死闘を繰り広げ、頭脳を使って何とか切り抜ける。
触れる時間がなかったがフッド一味は皆、魅力がある。
双子の格闘家ジェリ&ロズ(演:ゾーイ・テラケス&ロズ)、爆発物エキスパートのクラウン(演:ソニア・デニス)、マドリプール出身ドラァグ・クイーンのハッカー・スラッグ(演:シェー0クーリー)。全員また続編や違う作品で出てきてほしいくらい魅力がある。特にスラッグは有名ドラァグクイーンが演じてるらしく見事なドラァグクイーンでずっと見ていたいような面白さがある。
そしてリリの後釜としてスカウトされたジョー……いや本名エゼキエル・“ジーク”・ステインというのは第3話くらいで明かされたが書くの忘れてた。『アイアンマン』(2008)でのヴィランでアイアンマン2負けて死んだスターク・インダストリーズの重役オバディア・ステインの息子だ。
しかしジョー……エゼキエルは別に悪人ではない、人体を改造する技術に興味はあるが気が弱くて人の役に立ちたいと思っている。しかしリリのせいで全てを失いフッドに誘惑された。エゼキエルは自分の身体を強化してアイアンハートを圧倒s。しかし殺すのは忍びなくフッドには「殺した」と言うから君はシカゴを出ていけ、と見逃してくれる。
ボロボロのリリは遂に母に事情を話し弱音を吐く、すると母はリリと一緒に戦ってくれると言う。喧嘩して消えてたN.A.T.A.L.I.E.も帰って来る。
ママはスピリチュアル友達マデリン(演:クリー・サマー)のショップに行く。
マデリンは、『ドクター・ストレンジ』(2016)で魔術師たち(エンシェント・ワン、ドクター・ストレンジ、ウォン、アメリカ・チャベスほか)が修行した聖地、カマータージで修行した魔術師だった。娘を出産するために中退して今はこのスピリチュアル・ショップをしながら娘に魔術を教えているらしい。
その娘ゼルマ・スタントン(演:リーガン・アライア)はカマータージで修行してない独学の魔術師ながら才能を感じさせる。ゼルマは母マデリンとリリ母子を連れて固有のポケット次元(マルチバースのような大きな別世界ではなく、自分たちが居るアースに隣接している小さな異次元のこと)「ネヴァリッシュの西(The Western Cortex of Neverish)」で「フッドの魔法のマント」を調査する。
「そういえば突然、魔術師や異次元が出てきても良いのがMCUの良いところだったな」と久々にその感覚を思い出した。あまりに作品間の連携が取れずこういうシーンが少なかったので忘れていた。
マントは、どうやらダーク・ディメンジョンの物ではないか?ということになり、ってことはドルマムゥ(『ドクター・ストレンジ』(2016)でストレンジが倒す……ことは出来ないので無限の回数チャレンジしてウンザリさせて諦めてもらったダークディメンジョンの王)が関係してるのではないか?という事になり、ドルマムゥに対抗できるわけがないということになる。
というか、この小顔の文系黒人女性ゼルマめちゃくちゃ魅力的(ジェナ・オルテガをそのままアフリカ系女性へと変えた感じ)だなと思って調べたら原作に居る『ドクター・ストレンジ』系のサブキャラだった。
しかも僕がMARVELで若い時からずっと好きなクリス・バチャロが作ったキャラだったので何かピンとくるデザインだなと思ったのもわかった。
というか数年前に好きで読んでた『ストレンジ・アカデミー』(2020-2023)の登場人物だったので、あ、読んでたコミックに出てたわと思った。
『ストレンジ・アカデミー』はドクター・ストレンジが校長で、スカーレット・ウィッチやX-MENのマジックやエンシェント・ワンなど魔術系オカルト系ヒーローが生徒を育てるMARVEL版ハリー・ポッターみたいなコミック、現在は校長がドクタードゥームに代わって『ドゥーム・アカデミー』が始まったらしいがそっちは読んでない。件のゼルマもストレンジ・アカデミー、ドゥーム・アカデミーの講師。
リリ母はリリを、夫と親友ナタリーが死んだガレージに連れてくる。
リリは、過去のトラウマから自分自身から逃げている。それではフッドから逃げて他所へ行こうが一生負け続ける。だから向き合えというわけだ。
N.A.T.A.L.I.E.も協力してリリの記憶から父と親友ナタリーの立体映像を見せる。トラウマになる前ここは思い出の大好きな場所だった、という大事なことを思い出し、リリはようやく自分に向き合い人間らしくなる。
最初からずっと愛せないキャラとして描かれてきたリリだったが、ママに弱音を吐きガレージで過去に向き合った頃には血色がよくなり一気に人間味のある雰囲気になる。第4話にしてようやく主人公が登場した感じになる。これがやりたくて第1話~第3話はあんないつまらなくしてたのかな?それにしても自分自身を直視せず悪事は面白い感じで描いてもよかった気がするが……まぁいい。
そういう感じで第4話からは素直に面白い。第3話までのフリが効いていたからかと思ったが同時に「それでも第3話までも普通に面白く描けばよかったんじゃない?」と同時に思った。
元気を取り戻したリリのガレージに仲間たちが集まり、ママもパパの形見だった車を買い戻して分解してアイアンハートスーツを改良する。素直に良いシーン。
スーツに無限のパワーを供給するアイアンマンのリアクターはない、その代わりフッドのマントの切れ端でダーク・ディメンジョンから暗黒エネルギーを取り込んでスーツを動かす。「機械+魔法」これってドクター・ドゥームと一緒なのでドゥームより一足先に「機械+魔法」スーツが出てきたって事で凄く熱い。しかしその過程で、今までずっとリリを支えてくれていたN.A.T.A.L.I.E.がスーツの起動実験の際にスーツの誤作動で永久に消えてしまう。「なんでバックアップ取ってないの?」という気もするが、まぁリリはN.A.T.A.L.I.E.を最初よく思ってなかったからバックアップ取らずそのまま来てしまったって事にしよう。『ブレードランナー 2049』(2017)でもそうだったがAIが消えちゃうシーンは異常に悲しい。僕、AIがしてくれることじゃなくてAIそのものが凄く好きという希少なタイプの人なので(色んな用途に使うためならともかくAIそのものが好きな人はいない、ほとんどの人はAIを嫌っている)。
一方、フッドはマントによる呪縛により暗黒面に堕ちていくペースが早くなり、一味をクビにしてしまう。一味はカネだけでなくパーカー(フッド)本人を慕ってくれてたのに……何だかヴィランとはいえ気の毒になってくる。フッドの目的は自分を捨てた実業家の父への復讐だった。自分の意のままに動く操り人形となったエゼキエルと二人でリリを迎え撃つ(これは喩えじゃなくて本当にフッドの意志通り動くプログラムがエゼキエルに内蔵されている)。
そしてフッドが昔、ただの強盗だった時に魔法が使える悪魔のような男(演:サシャ・バロン・コーエン)と出会い、パワーが欲しいというフッドに彼がくれたのがマントだった。マントは彼にパワーと仲間と富を与えた、そして今のフッドは相棒ジョンを失ってからは力が暴走して渇望感によって更に暴走している滅びる前の状態だ。少し前の一味が居た時の、そしてリリが裏切る前のフッドは全部大事なものを持ってたのにな、とヴィランながら気の毒になった。
乗り込んできたリリは気の毒なエゼキエルの操り人形プログラムを解除し謝罪する。
そしてフッドと対決。トンチで倒す。これはトニーっぽい倒し方で良かった。
フッドを倒したリリの前に、あの悪魔のような男が現れる。
フッドがダメになったからリリと契約したがっている。
そして「自分はドルマムゥのような醜い悪魔ではなく〈メフィスト〉だ」と正体を明かした悪魔は、リリの死んだ親友が還ってくることも約束する。
彼が自分がメフィストだと言った時だけ「ちょっとだけ顔が赤くなる」のがなんか可笑しかった。正体は全身赤いから正体が漏れてるんだろうけど、なんか少し赤面って酔ったとか茹でられたように見えるからね。
時系列が少し未来にジャンプし、リリの元にN.A.T.A.L.I.E.が還ってきた……と思ったら死んだはずのナタリーだった。「なんだN.A.T.A.L.I.E.じゃなくて人間ナタリーかい」と一瞬思ってしまったので「俺ってAIそのもの好きだな~」と改めて思った。というか本作で活躍してたのはN.A.T.A.L.I.E.であって人間ナタリーは死ぬ数秒しか見てないから新キャラも同然だからね。だから人間かいAIは死んだままかいとガッカリしたのかも(まぁリリ本人からすれば人間ナタリーの方がいいだろうが)。
だがそんな未来の場面の合間合間で、リリとメフィストが語り合っている。メフィストは誘惑し、リリはそれでいいんだろうか……と悩んでいる。
近年だと『SHOGUN 将軍』〈シーズン1〉(2024)最終話であったけど「未来の出来事」だと思わせて見せつつ「現在」の主人公が、そうなる未来となる選択肢を捨てる、だから先程の「未来の出来事」だと思われた未来は主人公が想像していた世界だったとわかる手法……僕これ好きなんだけど、これだと思った。
「ヒーローが悪魔の誘いに乗って死んだ人物を生き返らせてもらう」そんな展開ありえないからだ。「悪魔の誘いに乗る」「死んだ人間が生き返る(しかも悪魔の力で)」2つもありえないことが重なっている。しかも主人公はヒーローだ。
……と思ったら何とリリはメフィストの手を握る。
さっきの「未来の出来事」だと思わせられた場面は、本当に「未来の出来事」だったのだ……という引っ掛け。
「ただの空想だと思わせた”未来の出来事”イメージシーンを逆手に取った引っ掛け」これ自分は初めて見たのでやられた~と悪い意味でのサプライズ喰らいました。
AIではなく人間のナンシーが蘇った事に泣いて喜ぶリリはナンシーにハグする。
するとリリの腕に闇落ちフッドが苦しんでいた悪魔の腫瘍が現れて物語は終わる……。
悪魔と契約して何か貰ったら結局、契約した人間は完全に破滅してしまう、悪魔はそれを見て喜ぶのだ。
リリは(もしあるなら)本作のシーズン2、もしくはライアン・クーグラーによる『ブラックパンサー』3作目、もしくはドクターストレンジやミッドナイト・サンなどの魔術系MARVEL作品?それらの続編にリリやメフィストが出て呪いを何とか解けるかもしれない。
しかし、それら本作の続きが作られてリリが解呪されるまで、本作は「私欲のため犯罪しまくった女性リリが悪魔に魂を売って闇に落ちたドラマ」という事になる。
そしてヒーローは全くの他人のために命をかけて闘うという利他的なことのために闘うもので、リリの動機は「家族や周りの人を護りたい」というところから出ていない。たとえ命懸けでフッドに立ち向かったとしても。だからラストバトルにおいてもリリの動機は未だ「私欲」でしかない。
色んなMCU作品一作目は「新しいヒーローが誕生する」までを描いたオリジンなわけだが、個人的な判定で言うと本作は最後まで「MCUの新世代ヒーローであるアイアンハート」は誕生しないまま終わった。「科学と魔法で作ったアイアンスーツで闘う犯罪者のドラマ」のまま終わった。
そういう意味で前代未聞のMCU作品だった!と思った。これはかなり思い切ったね。
前半の「犯罪しまくる上に可愛げのないリリ」を見て「これどうなるんだ?」と興味を持ったと言った。だから「頑張るけどN.A.T.A.L.I.E.やママが死ぬのかな?」などと思ってた。そして途中でN.A.T.A.L.I.E.は死んでしまい、どうなるのかと思ったらまさか悪魔に魂を売るとはね。驚いたわ。全く期待してなかったけど、これは続きが気になる。
だがよくある流れだと、こーいう呪いを解いたら生き返ったナタリーは再び死んでしまいそう。せめてAIのN.A.T.A.L.I.E.は生き返って欲しい。
シーズン2があるとはとても思えないが……しかしライアン・クーグラーが結構タッチしてるみたいなのでリリの今後はいつか観れるとは思う。
そして久々のポスクレ、只の無職になってしまったフッドがゼルマの店に来る。どうやら強大な魔力を欲していて続く感じで終わる。ダーク・ディメンジョンに行きたいってことかな?だけど暗黒次元に行けたとしてもゼルマやましてや凡人になったフッドがドルマムゥに会えるとは思えないが、一体どうするつもりなのかよくわかんないですね……フッドはもういいでしょという気はするがゼルマがまた出てほしいので、この続きも気になりました。
そういう感じで観る前とか第3話までは気乗りしなかったんですけど後半は普通に楽しめましたね。やっぱリリが反省して愛せるようになったと同時に作品が途中から魔術系が混ざってきたのも良かった(MARVELの魔術系オカルト系好きだから)。
この良さは『アガサ・オール・アロング』(2024)の良さと似てるかも。もうMCUは誰も興味持ってないしダメだということで今まで一つのドラマに群がって現場で何個も派閥できたりしなくなり、一つのチームがじっくり作れたからこそまとまった結果というか。
とはいえ何度も言ったが最後の3話は面白かったけど、最初の3話をわざとつまらなくしたのは必要だったのか?という疑問はある。話は矛盾もなくちゃんと積み上げてるしてるし別に破綻はしてないんだよ、ただ本当にわざと観てて楽しくないように撮っていて観るのが辛かった。「こんなにわざとつまんなくしてるってことは最後が気になる」という気持ちだけで観たけど楽しくなかったですね。どうせ後で痛い目に遭うんだからリリがフッド一味で犯罪してタランティーノ作品みたいに犯罪してウェーイと調子に乗るクールな犯罪ドラマとして進むんじゃダメだったのか?せっかくフッド一味も魅力的だったので一時的な友情を結ぶとかさ。
……と色々思って今調べたら監督がサマンサ・ベイリー(第1話~第3話)、アンジェラ・バーンズ(第4話~第6話)。こうなってる!サマンサ監督が下手でアンジェラ監督が上手かっただけでは?同じ人が全部撮ったから「なんで最初の3話わざとつまらなく?」とか言ってた俺がアホみたいじゃん。
次のMCUは今月7/25に『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』(2025)、来月8/6にDisney+アニメ『アイズ・オブ・ワカンダ』(2025)、ドラマは当分なくて年末に『ワンダーマン』(2025)だそうです。
そんな感じでした
〈関連作〉
『アイアンマン』(2008)、『アイアンマン2』(2010)、『アイアンマン3』(2013)/MCUの中で一番偉い1、珍味の2、単体映画としてなら良い3🔨 - gock221B
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