原題:Alien Earth 企画&脚本&ショーランナー&制作:ノア・ホーリー 監督:ノア・ホーリー(第1、5話)、ダナ・ゴンザレス(第2、3、7、8話)、ウグラ・ハウクスドッティル(第4、6話) 脚本:ノア・ホーリー(全話)、ロバート・デ・ラウレンティス(第3話)、ボバック・エスファルジャニ(第4話)、リサ・ロング(第6話)、マリア・メルニク(第7話)、ミギジ・ペンソノー(第8話) 撮影:コリン・ワトキンソンほか 製作総指揮:リドリー・スコット。デヴィッド・W・ザッカー。ジョセフ・イベルティほか キャラクター創造:ダン・オバノン&ロナルド・シュセット 撮影監督&製作総指揮:ダナ・ゴンザレス 音楽:ジェフ・ルッソ 制作スタジオ:26 Keys Productions、スコット・フリー・プロダクションズ、FXプロダクションズ 配信サービス:FX(日本ではDisney+) 製作国:アメリカ 上映時間:各話約60分、全8話 配信開始日:2025年8月13日~9月24日 シリーズ:『エイリアン』シリーズの前日譚ドラマ
地球では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない。
『エイリアン』(1979)の2年前を描いた前日譚ドラマ。
……といっても『プロメテウス』(2012)と『エイリアン:コヴェナント』(2017)が、それぞれ『エイリアン』(1979)の27年前&16年前なのでこれらが一番、時系列が古い前日譚になるわけだが、まぁそれはさておき地球にエイリアン来る展開は初。
ネタバレあり
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Story
2120年。地球と植民地化された太陽系は、もはや国を超えた5つのメガ企業〈ザ・ファイブ〉に支配されていた。
ザ・ファイブの最も新しい企業、若き天才ボーイ・カヴァリエ(演:サミュエル・ブレンキン)がCEOのプロディジーの研究島ネバーランドでは、〈シンセ〉と呼ばれる成人のアンドロイド……その中に末期症状で余命幾ばくもない子供の意識を移した新たなヒューマノイド〈ハイブリッド〉の研究が進められていた。
末期症状の少女マーシー・ハーミットが最初のハイブリッドとなりウェンディ(演:シドニー・チャンドラー)と改名される。
そして5人の難病の子供たちもシンセに意識を移し『ピーターパン』の劇中でウェンディの仲間たちロスト・ボーイズから名前を付けられた。
ウェンディを始めとするハイブリッドたち〈ロスト・ボーイズ〉は、科学主任シンセのカーシュ(演:ティモシー・オリファント)の元で新しいボディに適応し、同様の処置を受けてウェンディ同様にから名付けられた5人の子供たちもハイブリッドとなった。
ウェイランド・ユタニ社の深宇宙研究船USCSSマジノ号は、ゼノモーフを始めとする4つの地球外生物の標本を集めるという65年間の探査を終えて地球に帰還する途中だったが、謎の故障やエイリアン被害でマジノ号は都市ニューサイアムに墜落。
そこはプロディジーの統治する地域。カヴァリエはユタニが採取したエイリアンが欲しい、そしてウェンディはプロディジー衛生兵として墜落現場に向かった実の兄ジョー・ハーミット(演:アレックス・ロウザー)が心配でマジノ号探索を志願。
マジノ号墜落を一人生き延びたウェイランド・ユタニのサイボーグ警備員モロー(演:バブー・シーセイ)も、エイリアンをプロディジーに奪われるわけにはいかない。
エイリアンが解き放たれた現場に到着したウェンディは謎の耳鳴りを覚える――
……という話。
というか第1話の内容ほぼ全部書いてしまった。
だがこの書き方だと必要な情報を全部入れられる……と思ったが「自分が読者ならこのあらすじ部分読まないなぁ」と前から思ってるのであまり意味ないかも。
だから一言で言うなら
「エイリアンが地球に降ってきてロストボーイズ(子供の意識が入れられたアンドロイド)や大企業プロディジー社はどうする?」という話。最初からそう言えばよかったね。
同時にこのページで、本作の色んな各設定を一万字くらい書いてたのだが、全然感想まで辿り着かないし、なんでこんなWikipediaみたいなものを……と思って全部消した。
感想と全然関係ないし、そういう考察みたいなのが大嫌いだから。
このシーズン1は(まだシーズン2制作は発表されてないのが監督が「これだけ好評ならS2作れるだろう」と言ってたので本作は「シーズン1」と呼ぶことにする)。
このシーズン1は、映画の三幕構成みたいに大きく分けて3つに別れている気がする。
最初の2話は「地球に墜落した宇宙船マジノ号内部をハイブリッドのロストボーイズやユタニのサイボーグが探索してエイリアン達を回収する」
中盤は「それぞれのロストボーイズに起こる変化、暗躍するモロー、そしてマジノ号で何があったかという回想」
最後の2話くらいは「ロストボーイズが脱走しようとしてエイリアンも少しだけ脱走したりモローも島に攻め入ってくる」というクライマックス。
大体、そういう感じ。
僕はと言えば毎週楽しんでいたのだが最終話でちょっと「あ、あれっ?」と思ってしまったところがある。
人気ドラマ『FARGO/ファーゴ』(2014-継続中)のノア・ホーリーが手掛けており、連続ドラマとしての進め方が凄く上手い。特に感心したのは作品内に複数の「伸びしろ」があるところ。それら設定のことを書いていく(この部分を最初1万字くらい書いてて、無駄なので全部消してまた書く)
・5つのメガ企業「ザ・ファイブ」
エイリアンシリーズといえば冷血大企業ウェイランド・ユタニだけ知られていたが、Wユタニ同様の「国より大きいメガ企業」が実は他に4社あるようになった。
主人公のプロディジー、ライバルのお馴染みWユタニ、残りの3社(スレッショルド、ダイナミック、リンチ)は静観してるだけ。物語には介入してこないがプロディジーとWユタニどちらか倒れれば攻めてくるというプレッシャーのためだけに存在している。
・4種のエイリアン
エイリアンシリーズといえば宇宙生物ゼノモーフだが、他にも三種出てくる。
目玉にタコのような触手が付いた姿で、他の生物の目玉をくり抜いて乗っ取るIQが非常に高いアイミッジ(正式名称ではないが監督や出演者がEye Midgeと呼んでるので従った)。人間に取り憑けばゼノモーフと互角の強さ。しかしゼノモーフには目がないのでゼノモーフを乗っ取ることはできない、上手い設定。大好き。
人が飲む水筒に卵を産み付けて人体で還ったりとIQが高い昆虫型のエイリアン、ザ・フライ、成体になればシンセを倒すくらい何でも溶かす溶解液を噴出する(それ以外は弱い)。
それと第1話と最終話にしか出ないから存在を忘れてた植物みたいなやつ。ずっとおとなしかったが自由に壁を這って人を飲み込む。
・4種のヒューマノイド
まずお馴染みクソ生物、人間。そして人間が機械や電脳で強化したサイボーグ。これは本作の主人公の一人と言えるモローがそう。不老不死らしいし膨大なデータを電脳にダウンロードできたり、あと左手からブレードを出して戦ったりと素直にカッコいい。というかモローは設定からして主人公でもおかしくないような敵キャラだった。
そしてエイリアンシリーズでは恐ろしい敵になったり味方にもなる合成人間シンセ。今まで「アンドロイド」と呼ばれてた存在は全部このシンセと同じものだと思われる。プロディジーの科学主任カーシュがこれ。シンセだから基本情緒の乱れはなく有能だし見た目も『ブレードランナー』のレプリカントみたいなルックスでカッコいい。
そして本作の主人公となる存在がハイブリッド。プロディジー社が開発したシンセに「難病の子供たちの意識」をアップロードした存在がハイブリッド。
全話出てくる割には何でハイブリッドが必要なのか、実はよくわからなかったがサイボーグのモローは「大人が不老不死になると闇の部分ができる」と言っていたため、純粋な子供の精神のまま不老不死にした方が伸びしろがあるってことなのかな。
そしてポイントなのは誰が何なのかは正体が判明するまでわからないってところ。カヴァリエCEOも実はサイボーグやシンセかもしれない。
・6体のハイブリッド「ロスト・ボーイズ」。強すぎるウェンディ
ピーター・パン気取りのプロディジーCEOカヴァリエが『ピーター・パン』に出てくる登場人物から名付けられた6人のハイブリッド、ロスト・ボーイズ。……ちなみに日本語字幕ではロストボーイズが「迷子たち」と書かれていて「ピーター・パン知らないのか?アイアンマンを鉄の男と書くようなものだろ」と思った。
ハイブリッドは高水準な能力と不老不死。しかしプロディジーの設備で適切なメンテナンスや充電をしないと2年で機能停止してしまう。ドラマ向きの良い設定だね。つまり「脱走や逃亡して自由になっても2年で機能停止」してしまう。不老不死だが、それは大企業プロディジーのケアが必要。
リーダーは主人公のウェンディ。能力は過去のシンセ(アンドロイド)と似たようなものか?……と思ったがウェンディは何と兄ジョーを助けるため、ナイフを持って成体ゼノモーフとタイマンして自分も半壊するがゼノモーフの首を斬り落として殺した!
えっ……ナイフだけでゼノモーフに勝てるの?と衝撃だった。じゃ過去作のアンドロイドもナイフでゼノモーフに勝てるのか?と思ったが勝てそうにないよね。とりあえずウェンディは凄い強い……と画面に起きた出来事を素直に受け取るならそう思うしかない。
更にウェンディはモニターに触れてそのままハッキングできる。かと思えば最終話では触れなくても遠隔でプロディジー本社の設備はおろかプロディジーのサイボーグまで全て意のままに操っていた。これは何故かウェンディだけの能力。そういう仕組みなのか?説明がないのでよくわからない。
更にウェンディだけ「ゼノモーフの言葉」が聞き取れて、更にそれを自分の口で再現してゼノモーフとコミュニケーションが取れる。
このゼノモーフ語で本社で誕生したチェストバスターを手懐けて、忠犬のように言うことを聞く成体ゼノモーフが誕生した。これも「ウェンディの言う事を聞く」レベルではなくウェンディが連れてる人間やハイブリッドには指一本触れないしあまりにも言うことを聞きすぎる。更にこの個体だけが特別なのかと思ったら、後から生まれたチェストバスターも同じ様に忠犬になってしまう。
これもまたウェンディだけの能力。そーいう事で最終話のウェンディは「ナイフを持つだけでゼノモーフと同等の近接戦闘!」「不老不死!」「ネットや機械やサイボーグを触れなくても操れる!」「ゼノモーフを操れる!」という感じで……もはやリプリーやプレデターよりよっぽど強いだろってくらい盛られている。メンテナンスできる設備を持ってる限り無敵だ。これらの能力はウェンディだけに付与されたのかな?説明がないからわからない。だが偶然それらの能力を獲得したとも思えないので消去法的にカヴァリエがそう作ったとしか思えないな。
ウェンディ以外のロストボーイズは、ウェンディより大きく劣る……といってもボディの性能が劣っているのかは謎だが精神的なものだろう。
スライトリーとスミーは本当に普通の9歳の男児みたいな内面なので、本当はゼノモーフと戦えるフィジカルを持っているのだろうが、いかんせん子供なので会社のオッサンなど普通の大人が怖い。「ゼノモーフと同じくらい強いのにただのオッサンが怖い」というのは本作の面白いポイントだった。中盤はスライトリーがモローに脅される状況が続く。この2人は揉めたら児童みたいにひっぱりあいっこみたいな喧嘩したり、もじもじしたり座り方もベターっと座ったりして子供っぽさが強い。
ニブスは普通の女児って感じでトラウマを受けて情緒がおかしくなったり怒りで我を忘れて警備兵のアゴをもぎ取ったりする。女児っぽい情緒の乱れで好き。
カーリーはカヴァリエを崇拝してウェンディをライバル視している優等生的な女児、存在感の薄さを自覚しているトートレス改めアイザックはシンセのカーシュに憧れてエイリアンの世話を率先してやろうとして失敗する。
そういう感じでウェンディ以外は、いかにも子供って感じのキャラクター。
ウェンディは割と常識あるのかと思ってたけど第7話で脱走する時にゼノモーフを解き放って罪のない警備兵や科学者を殺しまくるので目的のためには手段は問わないところがある。
そういう感じで設定や要素が多い。
これらはドラマが面白くための「伸びしろ」だと思った。
そして不明なところは不明のままサッパリわからない……たとえばこの世界にどのくらいサイボーグやシンセ(アンドロイド)がいるのか、世界情勢はどんな感じなのか?等は、明瞭にはわからない。「超巨大企業5社が世界を支配している」ということしかわからない。そして主人公ウェンディに何故こんなに凄い能力がいっぱいあるのか、何故以降の時代の作品にウェンディくらい凄い存在が出てこなかったのかなどもわからない。
変に色んなところを決めてしまうとドラマを進める上で枷になってしまうので、わざと明瞭にしていない(というかあんまり考えてない気がしてきた)。
そんな感じでこれら「設定の増量」や「不明瞭な設定の多さ」などは、制作者の都合というより「こうした方が面白いだろ」といった感じでわざとそうしているのと思うので別にこれでいいと思った。1話終わるごとに今後の展開を予想したりして楽しかった。
これは画面上で展開する描写以上の余白、プレイグラウンドが広がってるからだと思った。要するに僕は、嫌いな考察厨みたいな感じで楽しんでいた。
そして最終話、ロストボーイズはカヴァリエCEOやシンセのカーシュやサイボーグのモローやCEO右腕のオッサン、女性科学者……など自分たちが今まで苦手だったり因縁があった「大人たち」を倒して閉じ込める。
子供たちが大人たちと支配構造を入れ替えゼノモーフも掌握した、だが島にはエイリアンを奪還するためWユタニの部隊が迫ってきている……ここで終わり。
とりあえず「大人を打ち負かして入れ替わる」というひとまずの決着が見れたので、ストーリーはまぁこれでいい。しかしメインキャラ、特に大人キャラがこんなに生き残るとは……てっきり最終話でプロディジー壊滅くらいまでいくと思ってた。メインキャラだとアイザックが半壊(だが別のボディに意識を移せば生き返るだろう)、あとアーサー博士が死んでアイミッジが取り憑いたくらいか。「全員シーズン2で使うんで」と言わんばかりの生き残り方だった。正直モロー以外たいして面白くないから全員殺しても良かったのに(カーシュも面白いけど同型のシンセを出せば済むし)。こんなキャラ全員温存するのかよって感じがあった。
逆にエイリアンズは死んだら補充できないから皆無事で良かったけど。
そして忠犬のようなゼノモーフや、ずっと囚われてるアイミッジも最後に大暴れするのだろうと期待してずっと観てたのだが最後までなくて残念。
それと「ウェンディやロストボーイズを使ってトランスヒューマニズムやポスト・ヒューマン思想や生命創造みたいなリドスコ的哲学を描くのかな」と思ってたがそれも浅いし。おおむね楽しんでたのだが最終話でちょっとテンション下がったのは、この腰の引けた控えめな展開や結末?これらのせいかなぁ。ほんと第7話までずっとめちゃくちゃ楽しんでたんだけどね。それとリドスコが制作に入ってるせいか今回もギーガー色少なめ……ギーガー色強いエイリアンはできないものか。「期待してたものが描かれなかったから減点」というのも幼稚な判断基準だとは思うがそう思うのだから仕方ない。
なんか、物凄いラストがあるんだろうと思ってたが過大評価だったのかな。
でもまぁ続きが作られたらまた観るよ。次からはエイリアンもっと強くしたり、残り3社も参戦してエイリアン三国志をぶちかましてほしい。
そんな感じでした
〈『エイリアン』シリーズ〉
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Alien: Earth (TV Series 2025– ) - IMDb
Alien: Earth | Rotten Tomatoes
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