gock221B

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『ナイブズ・アウト:グラスオニオン』(2022)/前作の長所は更に伸ばし短所は長所に変え、前作より全て向上させられてた傑作ミステリー。暮れゆく今年のベストはこれかな🧅


原題:Glass Onion: A Knives Out Mystery 監督&脚本&制作:ライアン・ジョンソン 製作:ラム・バーグマン 製作&配信サービス:Netflix 製作国:アメリカ 配信時間:139分 シリーズ:『ナイブズ・アウト』シリーズ

 

 

監督のライアン・ジョンソンは、ブレイクした切っ掛けの『LOOPER/ルーパー』(2012)も『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)も、良いところもないわけではないが長所より短所の方が多かったし、このライアン・ジョンソンは前まで好きな監督じゃなかった。
だがアガサ・クリスティ大好きだというライアン・ジョンソン監督が突然作ったオリジナルのミステリー映画、『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)が、めっちゃくちゃ良かった。ミステリー映画で一番好きかも。この前作一本でライアン・ジョンソンも要チェック監督になるほどに。本作はその続編。だから制作決定して……2年くらい?ずっと楽しみにしてた。本作からはNetflix映画になった。だが配信前に一週間だけ劇場公開するという初の形式だったみたい。だがいざ観ると本作もまた面白すぎるし豪華なので「いや、もっと本格的に劇場公開せい」と思った。

ネタバレなし

 

 

 

 

Story
コロナ禍の中、世界一の探偵ブノワ・ブラン(演:ダニエル・クレイグ)はギリシャの孤島にある「ガラス製の玉ねぎ」のような大豪邸〈グラス・オニオン〉に招かれる。
島と豪邸の持ち主は、巨大ハイテク企業の代表である大富豪マイルズ(演:エドワード・ノートン)。彼は毎年、古くからの友人たちを招いて休暇を楽しんでいた。
メンバーは、コネチカット州知事クレア(演:キャスリン・ハーン)、元スーパーモデルの現ファッション・デザイナーバーディ(演:ケイト・ハドソン)、そのアシスタントのペグ(演:ジェシカ・ヘンウィック)、元Twich人気ストリーマーだった人気YOUTUBERデューク(演:デイヴ・バウティスタ)、そのアシスタントのウィスキー(演:マデリン・クライン)、マイルズの下で働いている科学者ライオネル(演:レスリー・オドム・Jr)。著名人である彼ら彼女らは「常識や旧来のやり方を破壊する〈破壊者たち〉」を自称していた。そしてマイルズによって解雇された元共同経営者だったアンディ(演:ジャネール・モネイ)も姿を現し一堂は動揺する。
数日間、マイルズと友人たちと探偵ブノワしか居ない孤島のグラス・オニオン。
やがて事件が発生し探偵ブノワは彼らの秘密を解き明かしていく――

そんな感じ。数人しか居ない「孤島の豪邸」で殺人事件が発生。探偵は殺人犯や彼ら彼女らの人生の秘密を解き明かしていくという〈グラス・オニオン〉を舞台にした密室殺人ミステリー。
映画の構成は前作と似ていて、

前作

(1)殺人事件発生。主人公の探偵ブノワや全容疑者の紹介
(2)犯人の視点から事件発生を描く
(3)解決編。何度もどんでん返しが起こる。痛快すぎる結末

しばらく観てないからまた観てみようと思うが、そんな構成だったと思う。
倒叙ミステリーというやつ。「倒叙ミステリー」とは『刑事コロンボ』(1968-1978)や『古畑任三郎』(1994-2008)みたいに、殺人を犯した犯人の視点で誰が誰をどうやって殺したのか先に見せ、探偵や刑事がアリバイを崩していくのを見守る構成のミステリーのこと。犯人の主観で観せられるので観客や視聴者は、刑事や探偵よりも犯人に感情移入して観せられ「証拠を見つけないでくれ~!」思いながら観てしまう。
ライアン・ジョンソン監督はミステリー好きだけあって、犯人や容疑者すべて伏線やどんでん返しがあり目が離せない面白すぎるミステリーだった。

本作

(1)主人公の探偵ブノワや全登場人物の紹介
(2)過去と現在で同時に殺人事件発生。しかし犯人はわからない
(3)解決編。登場人物たちの人生の秘密も明らかになる。痛快すぎる結末

という感じ、前作に輪をかけて捻ってある倒叙ミステリー……いや本作はあんまり倒叙じゃないかも?
前作は、(1)で主人公のブノワ探偵が尋問していくかたちで全容疑者の紹介してたが、一つの場所で主人公ブノワや彼ら彼女らがどんな人物たちかわからん興味が湧いてない状態で会話してるだけだったので正直、全然入って来ず正直退屈だった。しかし20分くらい?映画が経過した時に挿入される「殺人事件が起きた時の回想シーン」から後はジェットコースターのように面白すぎた。
本作は、前作の数少ない欠点だった「主人公のキャラが薄いし、容疑者紹介のための序盤が面白くない」というマイナスポイントも全て面白く向上させていたので欠点がない映画になった。映画が始まった瞬間からラストまでずっと面白い。
前作では「よく知らん人同士が同じ場所で話してるだけ」だったので全く彼ら彼女らのキャラが入ってこなかった。本作はというと「マイルズからのグラス・オニオンへの招待状」が入った、からくりボックスを友人たちがそれぞれスマホで協力しながら職場や自宅で解く。からくりボックス自体の見せ方も面白いし、前作の数十倍キャラクラーの情報が面白くバンバン脳に入ってくる。前作はメインの2、3人しか記憶に残らなかったが今回は全員キャラが立っている。
前作ではキャラが薄すぎて舞台装置にしか思えなかった主人公ブノワも、今回は自宅が映るし「事件を解いた後はスリル中毒の廃人のようになる」「実際の推理は天才的だが、頭を使うゲームは得意じゃない」というところを見せて「こういう奴だったのね」と、やっと思えた。自宅で退屈していたブノワはバスタブに何日も浸かりっぱなしで年配の友人たちに『Among Us』でボコボコにされていた。そしてバスルームには難問パズルなどが散乱している。
配偶者っぽい雰囲気で料理してくれてる同居人(ヒュー・グラント)もいたし、ブノワはどうやらゲイなんだろう。

 

 

そしてパズルを解いたマイルズの旧友である成功者たちのグループ〈破壊者たち〉と、少し前まで〈破壊者たち〉の一員だったアンディ。誰が招いたのかわからない探偵ブノワは孤島のグラス・オニオンに赴く……。
最初から面白かったし「一体、誰が殺されるんだろ?」「彼らの関係は?そしてどうなっていくんだ?」というのが絶妙に読めず目が離せない。第二幕の冒頭で遂に殺人事件が発生し、そこで時系列が序盤に巻き戻りブノワとある一人の人物が、序盤から「現在」まで何を考え何をしていたのかが明かされ殺人事件が発生した「現在」に時系列が追いつく……そして二転三転する解決編が起きて……今回も前作より更に面白すぎる。面白い時間が最初から最後まで持続して痛快な結末を迎えて終る。「復讐者が暴れまわるのをバックに、禁煙の場所で葉巻を吸う主人公」というのは「最高の反抗の展開」や「最高のラストシーン」を量産しまくってた監督、ジョン・カーペンターの『エスケープ・フロム・L.A.』(1996)の結末を少しだけ思い出したし胸が熱くなる。
前作ではキャラが薄かった主人公ブノワも「正義感あるし、推理や捜査はするが法に触れる事はしない。しかし復讐者にヒントは与える」という性格が前作よりわかりやすくなっていた。ダニエル・クレイグといえばジェームズ・ボンドで、彼のボンドは「時代とズレ始めた滅びゆくマッチョ」という氷河期を迎える恐竜のような哀しさが魅力だったキャラだったが、このブノワは恐らく意図的にボンドと全て正反対なキャラというところも面白い。御洒落だし暴力は振るわないしおしゃべりや演説が得意、あと多分ゲイ?だが燃える正義の心だけはボンドと同じ。ボンドに続けて良い役もらいましたね。
他の出演者は、もともと好きなデヴィッド・バウティスタが「筋肉や銃に依存する男権主義者だが実家住まいでママに頭が上がらない」というキャラを演じててよかったし、これまた好きなジェシカ・ヘンウィックはケイト・ハドソン演じる炎上ばかりしてるファッション・デザイナーのアシスタントとして常時こまってて全カット可愛かった。
主催者マイルズはエドワード・ノートンがはまっていた。MCU第二作目『インクレディブル・ハルク』(2008)では彼がハルク役だったんだよね。マーク・ラファロのハルクの方が好感度高くて好きだがノートンの方が原作のブルース・バナーに似てるよね。もしノートンのままだったら、神経質そうだし絶対にワールド・ウォー・ハルクが起きてた気がする。ケイト・ハドソンは昔はラブコメの女王だったけど久々に観た本作では炎上ばかりするアホのセクシー熟女役しててインパクトでかかったね。
そして何といってもアンディ役の俳優さんは始めて観たけど最高でしたしね。

どんでん返しが多いミステリーだからネタバレしたくなくてネタバレなしで書いた。
まぁそんな感じで、期待してただけあって最高でしたわ。ちょっと強引な部分もあるが他の要素が全部面白いので気にならない。あまり気まずいシーンもないので年末年始に家族と観ても大丈夫。爽快な新年を迎えられるだろう。
ライアン・ジョンソンは『ナイブズ・アウト』三部作としてNetflixと契約したので最低でもあと一本は作られるだろう。だが、ライアン・ジョンソン監督が全て一から考えるオリジナルのミステリーなので、ストーリーやトリックやキャラクターを考えるのが死ぬほど大変で脚本だけで1、2年かかるらしい。だから三作目が何年後になるのかわからない。だが本当に好きなシリーズなので願わくば新しいスター・ウォーズとか作らなくていいから、このまま永遠に作っていって欲しい。
ミステリーと言えばサム・ロックウェルシアーシャ・ローナンという好きな二人のミステリー『ウエスト・エンド殺人事件』(2022)が劇場にかからずDisney+スルーになってしまい悲しかった。ミステリーって流行らないのかな。
とにかく本作は2022年の映画で一番面白かった。……いや『バーバリアン』(2022)も捨てがたい……決めかねるが、本作か『バーバリアン』(2022)のどちらかが今年一番良かった映画だ。2回目観たら見え方が変わるので最低でも2回は新鮮に楽しめた。クリスマスは二夜連続でこれ観たからね。

 

 

 

 

そんな感じでした

gock221b.hatenablog.com

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)/映画としてもSWとしても完全に破綻してるが初見時はその焼畑農業っぷりを楽しんだ部分もあった⭐ - gock221B

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ナイブズ・アウト: グラス・オニオン | Netflix (ネットフリックス)公式サイト
Glass Onion: A Knives Out Mystery (2022) - IMDb

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