gock221B

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『ワイルドキャット』 (2022)/鬱の退役軍人と山猫と野生動物保護女性の人生が一瞬だけ交差したフィクションのようなドキュメンタリー🐆🧑🏼👩🏼🐆


原題:Wildcat 監督&撮影&制作:トレバー・フロスト/メリッサ・レッシュ
配信:Amazonプライム・ビデオ 製作国:アメリカ 配信時間:105分

 

 

Amazonプライム・ビデオ配信ドキュメンタリー映画。よく知らんが戦場で鬱になった退役軍人の青年がジャングルでヤマネコを育てて癒されるドキュメンタリーと聞いて面白そうだから観た。猫飼ってるし
ちょっと今回はいつにも増してめちゃくちゃ全部ネタバレしてて、全部読んだらもう観る気なくすかもしれんから興味出たとこで読むのやめて観てください

 

 

 

 

退役軍人のイギリス人青年ハリー・ターナーは、ペルーのアマゾン野生動物保護センターホジャ・ヌエバ〉を創設した生態学サマンサ・ズウィッカー通称”サム”と共に暮らしていた。
ハリーは都会から離れ、サムとアマゾンで暮らす事で鬱病を癒やしながらオセロットの赤ちゃん”カーン”を育てていた。
オセロットとはネコ科の豹に近いヤマネコ。美しい毛皮は高く売れるし異常に人懐っこい性格はペットとして人気があるため乱獲が続き絶滅危惧種に指定されている。
映画冒頭、野生に帰すまで残り僅かまで育てたカーンだったのに、ハンターが仕掛けた銃弾が発射される罠によって命を落としてしまう(このジャングルは私有地だが密猟者がこっそりやってきて野生動物を狩ったり樹齢千年の木が切り倒されて盗まれる事がたまに起こる)
ハリーは嘆き悲しむ。
「犬とか猫が死ぬ映画は観れない」って人が多いらしい、別にオセロットの傷とかは映らないし鳴いたりもしないが「犬とか猫が死ぬ場面がある映画」が苦手な人は注意。そして以降はそういう場面はない。逆にオセロットがネズミとか喰う場面はあるが。
カーンが銃殺された事よりもハリーの慟哭や数日間、哀しみがハリーを支配してうずくまってたりする様がもうハリーの哀しみが観てるこっちの脳に直接流し込まれる感じで辛い。
しかし仲間が再びオセロットの赤ちゃんを連れてくる。ハリーは今度こそ無事に育ててジャングルに帰そうとオセロットに”キアヌ”と名付ける。特に語られないがキアヌ・リーブスから名付けたんだろう(だって他にキアヌなんているか?)。
ハリーはキアヌを夜は小屋で寝かせ、昼や夜は一緒に散歩に行ってネズミなど小動物の獲物の獲り方を教える……という日々を過ごす。キアヌが神経毒を持つ蜘蛛に鼻を噛まれてしばらく麻痺して動けなかった場面は(笑ったら可哀想だが)可愛かった。その間ハリーは号泣していた(ハリーは鬱のせいか元々の優しい性格のせいか割と頻繁に号泣する)。
只でさえ人懐っこいオセロットが「人間そのもの」に懐いてしまったら密猟者に捕まりかねないので育てたり仲良くするのはハリーだけ、サムはキアヌと少し距離を置いている。「ハリーという人間は優しいけど、他の人間は未知」という感じをキアヌに植え付けたいのだろう。
そして約18ヶ月後にはキアヌをジャングルに放し今度こそ野生に戻すのだ。
〈ホジャ・ヌエバ〉こと二人が住む小屋には、ハリーの両親と歳の離れた弟も数日間遊びに来たりして楽しい日々が過ぎる。

 

 

ハリーはアフガニスタンの戦場に半年くらい居たが、そこで仲間や敵の死、無関係の現地の子供の死、殺された少女などを見て完全に鬱になり除隊、イギリスの実家に居ても辛いので金を貯め、ここペルーでサムがやってる野生動物保護センター〈ホジャ・ヌエバ〉にやってきたのだ(野生動物保護センターといってもパッと見は只の小屋だが)。
またハリーは優しい青年なんだが、まだ情緒不安定なので怒りや哀しみが自分の中で膨れ上がりリストカットのように腕を切る自傷癖や自殺願望がある。劇中でもトラブルがあると号泣したりするし希死念慮が浮かんでくる(そのため映画始まる前に「希死念慮とかのシーンがあるからメンタル不安定な人は注意して」みたいな注意文が出てくる)
〈ホジャ・ヌエバ〉を創立して動物を保護しているサム。今はハリーと恋人関係にあるようだ。彼女もまた幼い時に父親の家庭内暴力に怯えて過ごした。普段は楽しく優しい父親だが酒を飲んだ時だけ怖くなってしまうようだ。怒鳴ったり暴力?があったようだが彼女もあまり語りたくなさそうなので詳しくはわからない、何か語ってないことがあるが想像してくれって雰囲気を感じた。そしてサムは「そんな父は『俺を諦めないでくれてありがとう』と最後に言った」と締められる。ってことは父親は死んだのか?というか自殺っぽい言い方だな……と不穏な気持ちになったが、これもまた詳しく語らないのでよくわからない。何事もつまびらかにすればいいというものでもない各々が察するしかない。

キアヌと別れの時が近づいてきた。
いや別れの日どころか別れの日の半年前にハリーは「半年後きっと悲しいだろうなぁあああ!」などと号泣している。
そこで今までは小屋で寝かせてたが一晩だけキアヌをジャングルで過ごさせたり、何日かジャングルに放して少しづつ自然に慣れさせる。
ハリーはジャングルのあちこちに夜間カメラを設置しており、キアヌの様子は後日チェックできる。放すたびに「これでもう二度と会えないかもしれない……」と涙ぐんだり「大丈夫かな……」とカメラをチェックしたりしている。
だがその度にキアヌは帰ってきて抱き合う二人。
しかしキアヌは、この小屋の場所を覚えてしまった。
ジャングルに放しても帰ってきてしまう(まぁそりゃそうだな)。
ハリーは「この一年半のことは失敗だった……?」とパニックになる。
キアヌを家から遠ざけるため、大好きなのにも関わらず「出て行け!」「帰ってくるな!」と怒鳴り近くの柱を叩いたり木を揺すってキアヌを怯えさせようとするハリー。だが「出て行け!」などの怒鳴り声が全然不快な響きじゃないので本心で出ていって欲しいわけではない感じがめっちゃ出ていた、出ていってほしくないのに大好きなキアヌにそう怒鳴る度にハリーは自分の心も傷つけていったのだろう。重い鬱だしね。
というか僕もようせんわ、この仕事。自分にかけよってくる大好きなヤマネコに怒鳴って離れさすってかなり辛いよね。
この事からハリーのメンタルはバランスを崩し希死念慮が高まり、カメラには映ってないが言動も刺々しくなっていったようだ。
そのことで傷ついたサムは自殺相談センターに電話する。その事が更にハリーの哀しみや怒りも増幅する。キアヌもジャングルに帰らない。……完全に悪循環。二人と一匹の楽園が破綻してしまった(またカメラには映ってないが激しい言い合いが何度もあった事は感じさせる)。
サムに三行半を突きつけられハリーは出ていくことにする。
確かに、いつものようにキアヌをジャングルに置いてハリーがここを立ち去れば、もうキアヌが戻ってくる所もなくなるのでキアヌの野生への帰還も、ハリーとサムの別離も全てが解決する。
ハリーはジャングルでキアヌに別れを告げてペルーからイギリスに帰る。

 

 

最後まで観てると割と多くの人が「ハリー、もうキアヌを飼えば?」と思うと思う。僕も思ったし。飼育が難しい野生動物と違いオセロットはペットとしても充分飼えるらしいし。
ハリーがキアヌを飼わずどうしても野生に返したいという理由は語られないが、ハリーはオセロットの世話以前に自分の鬱を治すためにここに来ているという事がある。推測だが、キアヌを野生に帰すという行動を通して自分の心を癒やしているわけであって、「キアヌを飼う」という事をしてしまうとそれはハリーにとって現実逃避でしかない、とハリーが思っているのではないだろうか。
またサムは最後に終盤のハリーとの不和を語る。いつも優しいハリーだったが鬱が重くなって言動が刺々しくなったり「死ぬ死ぬ」と言う事によってサムを傷つけたりする様が、幼い頃の父親のDVと被っている。皮肉なことに幼い時の自分に辛く当たる父、今の自分に八つ当たりするハリーが被っていた事を悟り、もうやっていけないと確信したのだろう。
ハリーとサムはあんなに仲良かったのに、キアヌを野生に帰す日くらいからはもう同じ画面に映らない。気になって調べたが二人のInstagramとかにも互いに全く登場していない。もう当分時間が経たないと談笑とかできないくらい破綻してしまったんだろう。DV父と似た印象を持ってしまったからには簡単に会いたくなくなっても仕方ないかも。
ハリーとサムとキアヌ、死んだカーン、互いに癒やし合うこの場所は役目を終えて終わった。楽園のようだったこの場所から、それぞれの現実に帰っていった。
こうして最後まで観るとハリーがキアヌを世話していながら、キアヌがハリーを癒やしたとも言える。
サムは引き続き違うジャングルでオセロットを保護しているが、ハリーは爬虫類専門の保護活動してるのはキアヌとの別れが辛すぎたせいかなと思った。
一方ハリーはクソデカいキアヌの引き伸ばした写真を家に飾り、後頭部から尻までオセロットの模様のタトゥーを彫っていた。「帰ってもお前のこと忘れないよ」と言っていたがマジで忘れてない。
一方、ジャングルに帰ったキアヌは野生に戻った姿が半年後にカメラに映っていた。
二人とオセロットの、人生におけるこの場所での人生がまるでフィクションのように切り取られた面白いドキュメンタリーでした。
そういえばこの作品は出演者が語りたくない話や映してほしくない場面は映してんだろうなってところが多く、だから推測しないとわからないことが意外と多いのだが、推測できるだけのヒントは出してた。そういう誠実なところが現代のドキュメンタリーって感じで好感持てました。

 

 

 

 

そんな感じでした

🐆🧑🏼👩🏼🐆🐆🧑🏼👩🏼🐆🐆🧑🏼👩🏼🐆🐆🧑🏼👩🏼🐆🐆🧑🏼👩🏼🐆🐆🧑🏼👩🏼🐆🐆🧑🏼👩🏼🐆

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Wildcat (2022) - IMDb

Samantha Zwicker - Hoja Nueva
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