gock221B

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『ザ・ホエール』(2023)/一見良い話っぽく描写してるが全員ろくでもない人間たちの胸糞悪い話だと思った。でも面白い🐋


原題:The Whale 監督&制作:ダーレン・アロノフスキー 脚本&原作:サミュエル・D・ハンター 製作:ジェレミー・ドーソン、アリ・ハンデル 製作&配給会社:A24 上映時間:117分 製作国:アメリ

 

 

劇作家が書いた舞台劇の映画化。主演ブレンダン・フレイザーは20数年前は『ハムナプトラ』主演のイケメンで人気だったが目立たなくなり大柄になって目立たない役をよくしていたが本作で第95回アカデミー主演男優賞を受賞して再ブレイクした。

監督は『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000)、『レスラー』(2008)、『ブラック・スワン』(2010)など「一見いい話風な映画にまとめつつ実態は精神の歪みが肉体に変化をもたらすホラーコメディ映画を撮る人じゃないか?」と僕は思ってるダーレン・アロノフスキー。本作も正にそんな感じだったのでますますそう思うようになった。
プロレス好きだったこともあり「肉体を損傷しながらも客前でコーナーポストから飛ぶのをやめられないレスラーの話」『レスラー』(2008)を公開日(2008年6月13日)に観て割と感動したが、帰宅したら脳天から落ちるのを子供の時から見ていた元全日のノアのトップレスラー三沢光晴が頸髄離断で死去したので凄く複雑な気持ちになった記憶がある。
また近年は『ノア 約束の舟』(2014)など胸糞悪い映画を多く撮ってる印象。炎上してた『マザー!』(2017)は聖書的な知識が必要みたいで、そういう知識ないので観てない(他のもそういう知識が必要そうだが)。

最初から完全にネタバレありきなので観に行く予定ある人は読まないように。

 

 

 

 

Story
自宅から動かず引きこもり生活を続けて体重272kgの重度の肥満症となったチャーリーブレンダン・フレイザー)。自らの死期を悟ったチャーリーは、疎遠になっている思春期の娘エリー(セイディー・シンク)と会い始める――

自力では立てないほど超大柄となったチャーリーはソファからほぼ動かない生活を送っている。トイレや風呂やベッドには高齢者が使う歩行器で移動し、食事は毎日ピザを頼んでるほか、唯一の友人である看護師リズ(ホン・チャウ)が持ってきてくれる。
生活費は、オンライン授業で「文章の書き方講座」を教えて稼いでいる。生徒が驚くからインカメラを切って自分の姿は映らないようにしている。

舞台劇の映画化だけあって登場人物は少なく。主人公チャーリー、娘のエリー、看護師リズ、偶然訪ねて来て何度か訪れるようになった新興宗教の宣教師トーマス(演:タイ・シンプキンス)、別れた元妻メアリー(演:サマンサ・モートン)、あとピザ屋バイトくらいしか出てこない(PCモニターに映るオンライン授業の生徒)。
チャーリーは、まだ娘エリーが小さかった時に妻子を捨て教え子のボーイフレンドと駆け落ちした。そのボーイフレンドは新興宗教の宣教師の家の息子だったため家族や教会の責めもあって自殺してしまった。チャーリーはそれで絶望し、過食している。遠回しの自殺なんだろう。ちなみにこの自死したチャーリーはボーイフレンドは看護師リズの兄。
映画冒頭、ゲイポルノを観てシコっていたチャーリーは発作で死にかける。偶然訪れた新興宗教の宣教師トーマスによって助かる。トーマスは如何にも救いが必要そうなチャーリーを何度か訪ねるがリズに追い返される、チャーリーが自死したボーイフレンドを思い出して更に絶望することを危惧しているのだろう。
チャーリーは疎遠にしていたエリーを呼ぶ。父に捨てられたと思ったせいなのか他の理由か、又はただ思春期ってだけのせいなのかわからないがエリーはめちゃくちゃ捻くれていた。
チャーリーはエリーに大金をあげるし宿題を代わりにやってあげるという約束でエリーを何度か家に呼ぶ。
チャーリーとエリー、チャーリーとリズ、チャーリーとトーマス、チャーリーと別れた妻……など一対一での対話が本編の殆どを占める。舞台劇を元にした感じ。皆、演技が上手いのだが「ここが自分の見せ場!今っ!」といった感じで皆が張り切って熱演しまくるので、少し滑稽な感じもある。
とにかく余命数日のチャーリーのところに何人かの人が訪ねてくるのがこの映画。
そういえばエリー役のセイディー・シンク、可愛くて好きだがチャーリー役のブレンダン・フレイザーがメイクしてない普段の姿に戻るとすごく顔が似てる。父娘だわ……と思うと同時に現場のセイディーが「私が200kg以上太ったらこんな感じ?」と思ってたかもしれん。

 

 

チャーリーは「入院したり救急車を呼ぶ金はない」とリズに嘘をついている。
チャーリーは娘のエリーに後ろめたい気持ちがあるから全額エリーに渡したいと思っているからだ。だが普通に通院して体調を戻して養育費を払い続け、普通に妻子に会って謝罪したり想いを打ち明けた方がいいに決まってるので、これはチャーリーの真心というよりは「遠回りな自殺」「貯めてた金を全部子供に渡す」という選択肢を取って自分が楽になりたいだけなんだろうと思った。
チャーリーはカネがないと嘘をついてたから、リズは毎日のように訪ねてきて食べ物を買ってきたり脈を測ったりしている。
チャーリーのただ一人の友人そしてチャーリーの自殺した男の妹として、チャーリーの絶望に寄り添ってるんだなと思ったが、しかし映画を観ているとチャーリーに買ってくる食べ物というのが両手で掴む必要があるくらいデカいサンドイッチなどのカロリー爆弾みたいなものしか持ってこない。野菜が全くない。チャーリーが毎日LLサイズのピザ頼むのも止めようとしないし。眼の前でチャーリーが巨大サンドを喉につまらせたら慌てて助けはするもののチャーリーの喰い残りのサンドはそのままにしてある。今にも心臓が止まりそうな肥満が喉を詰まらせた直後だと食べ物を遠くに置きたくならないか?
チャーリーに同情して親切にしたい気持ちも確かにあるんだろうが色々と変だ。
同情はしているし細かく世話は焼いてくれるし病院に入ることを何度も勧めていたが、眼の前のチャーリーの食生活を何とかする気はない。看護師だし……いや看護師じゃなくても中年なら彼の食生活見てたら普通にヤバいとわかるよね。肥満じゃなくても数年以内に死ぬ食生活。実際にチャーリーの余命は残り僅かになってしまった。

娘のエリーも、チャーリーの金と宿題代行に釣られて嫌々訪ねてくる。
憎悪を隠そうとせずチャーリーを罵倒するエリーだが、チャーリーはそんなエリーやエリーの文章を褒めまくる。チャーリーは「覆い隠してない正直さが良い」みたいな感じで褒めまくる。父親だから子供を肯定するのはわからなくもないが傍から見てると何が良いのかわからないので「チャーリーはエリーに向き合いたいけど怖くて出来ないから誉めてるのかな」と思った。
後でチャーリーの別れた妻も訪ねてきて「エリーは邪悪だ」と言うのでギョッとする。エリーのSNSにはチャーリーの写真と嘲笑する言葉があったがチャーリーは「思春期だし、これくらい書くだろ」と言う。それはそうだが犬の死体の写真とか載せてるしかなり捻くれてるよな。そしてメタ的な話になっちゃうのだが普通だったら母親が「最近あの子のことがわからない」という場面で「あの子は邪悪」とハッキリ言うので「本当に邪悪なのかも」と思った。チャーリーと久しぶりに語り合った元妻は「私はエリーを育てた、貴方は金を残した」と互いを肯定する。一見いい場面のようだが「私はエリーを邪悪に育ててしまった」という台詞の直後なので「二人とも現実逃避してるな」と思った。
後日、エリーはチャーリーに睡眠薬を飲ませる。これも理由が有耶無耶になって理由がよくわからないままだった。カードとか探して金だけ奪おうとしたのか?
チャーリーが寝てる間、エリーは宣教師の青年にマリファナを吸わせて「実家の金を持って家出した」など罪の告白をさせる。そしてそれを録音して宣教師の実家に送る。送った結果、青年は自家から「気にしてないから帰ってきなさい」と言われて喜ぶ。
青年は「エリーは意地悪だったのか、それともこうなる事を見越した善行だったのか」と言うが、これも当然意地悪だろう。チャーリーはエリーが善行をしたと盲目的に信じている。
エリーは、チャーリーが窓際に来る鳥に餌をやる皿を見るカットがある。後日皿は割れていた。当然エリーが割った以外ないのでエリー邪悪説が濃厚になってくる。
宣教師から聞いた、死んだボーイフレンドの心の内の推測を聞いてチャーリーはショックを受けてオンライン授業の生徒たちやピザの配達員に自分の姿を見せるが彼らは嫌悪感を示す。それでチャーリーは自暴自棄になり暴飲暴食をする。
ただし、生徒たちや配達員が嫌悪感を表したのは、既に宣教師の言葉で傷ついたチャーリーの主観だった気もする。エリーをやたら素晴らしいと言いまくる様といいチャーリーは信用できない語り手としか思えない。
チャーリーはエリーの宿題代行として、昔エリーが『白鯨』について書いたエッセイをそのまま出して不可になった。それでエリーは激怒して怒鳴り込んできた。そのエッセイはチャーリーが冒頭から発作を起こしたら読んで心を落ち着かせていた文章。チャーリーは今までのように「エリー自身とエリーの文章は素晴らしい!」と褒めまくる。
そして今まで出来なかった、一人で立ち上がる様をエリーに見せて希望を見せたかのようなラストを迎える。『レスラー』でコーナーから飛んで終わるラストに似てるな。
エリーのエッセイ、一体何が素晴らしいのかよくわからないが、本当に素晴らしい文章なら何でわざわざ「学校で合格しなかった」という展開にしたのか。全然素晴らしくないんじゃないのか?「エリーもエリーの文章も素晴らしい、チャーリーも反省して立ち上がってみせた」そんな希望に満ちたラストだったとしたらエリーのエッセイは普通に合格する展開にするんじゃないか?
何ならチャーリーが最後に立ち上がったのも、死んでる最中のチャーリーの空想の可能性もある。

そういう感じで本作について「登場人物全員ろくでもなくて特にチャーリーは認知が歪んでいる。だからチャーリーが言うことや主観は信用できない。一見、感動的な話に見えるかのように描写されてるが実際はそんな良い話などでは全くない」というのが僕の感想。あらゆる暗喩で見た目通りの内容ではないと監督も言ってたし。
『レスラー』(2008)や『ブラック・スワン』(2010)などの精神と肉体が変容していく系の話と『ノア 約束の舟』(2014)などの胸糞悪い話を合体させたような話だと思った。
では、そんな話で監督が何を言いたいのかというと全くわからないが。しいて言うなら「何なのこの話?」と思わせ語り合わせたいのかも。
だが最後までスクリーンに惹きつけられるし面白い事は間違いない(公開当時は胸糞悪くて嫌いだったが『ノア 約束の舟』(2014)も今思うとおもろいかも)。
面白いが何を伝えたいのかは全くわからない。聖書とかユダヤ人史観などの知識が必要なのかもしれないが調べるほど興味ないので僕は調べないが観た人同士で話すと面白い映画なのは間違いない。

 

 

 

 

そんな感じでした

『ノア 約束の舟』(2014)/妊娠した娘に「孫なんか要らんし女が産まれたらブチ殺す!」とか言う胸糞の悪い主人公ノアだけはガチ🚢 - gock221B

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The Whale (2022) - IMDb
www.youtube.com
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