gock221B

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『ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から』(2023) 全3話/キアヌとエクストリームアクションは無い代わりにストーリーとキャラクターはジョン・ウィック本編よりこっちの方が数倍面白い🏩

原題:The Continental: From the World of John Wick 企画&脚本:グレッグ・クーリッジ、ショーン・シモンズ、カーク・ウォード 脚本:ケン・クリステンセン 監督:アルバート・ヒューズ、シャーロット・ブランドストロム 原案:デレク・コルスタッド 配信チャンネル:Amazon Prime Video(アメリカ本国ではPeacock) 製作国:アメリカ 配信時間:各話約90分、全3話 シリーズ:『ジョン・ウィック』シリーズのスピンオフ&プリクエルドラマ

 


先月4作目をもって一段落がついたキアヌ・リーブス主演の人気アクション映画『ジョン・ウィック』シリーズ。そのスピンオフ前日譚ドラマ。
全3話だが各1話が90分、と短めな映画くらいの長さがある。
『ジョン・ウィック』シリーズで、ジョン・ウィックの協力者として登場した殺し屋の中立地帯のホテル〈コンチネンタル・ニューヨーク〉支配人ウィンストンの若い時を描く。
……と聞いても正直興味なかった。『ジョン・ウィック』シリーズの売りは「誰もが好きなキアヌ・リーブスが二時間全力投球!」「銃を接近戦で使い必ずトドメも刺すアクション」「鈴木清順っぽいファンタジーめいた特殊な任侠殺し屋世界」「奇抜な照明と美しい美術」などで、ストーリーは「亡き妻の思い出のために戦うジョン・ウィック」というだけで殆ど無いようなもの、だから「ジョン・ウィック世界のジョン以外の話」と言われても別に観たくならない。それら売りの中で一番ヒキが強い「キアヌ不在」という部分でかなり観る気が失せるし知ってる俳優はラスボスのメル・ギブソンしか居ない。しかもたいして興味のサブキャラであるウィンストンの、更に駆け出しの頃とかどうでもよすぎる……でも『ジョン・ウィック』シリーズ全部感想書いてるし来年のアマ・デ・アルマス主演のスピンオフ映画も観て感想書くだろうから一応チェックしときたい。アマプラに入ってさえいればタダで観れちまうし配信されて一ヶ月経って観るものなくて渋々観てみたらこれが面白かった。観る人によっては「映画『ジョン・ウィック』シリーズより、こっちの方が面白い」そういう人も居そうだ(理由は後ほど)。
やはり観ないとわかんないもんですね……。そもそも「これ興味ある」「これ興味ないな」という自分の好み……その自分自身というものがそもそも卑小ですし一度は試すのって大事ですね。

ネタバレあり

 

 

 

 

『ジョン・ウィック』シリーズでお馴染みの、「屋内での殺人」を禁じる〈コンチネンタルホテル〉ニューヨーク支部支配人ウィンストン・スコットが、支配人になるまでの前日譚。
一番最初にざっくりストーリーを言うと「虐げられていた犯罪者たちが集結してNYを牛耳るコンチネンタルNYのボスを倒す!」という水滸伝的な話。

1955年代のニューヨーク。貧しい少年フランキーとウィンストンの兄弟が放火事件を起こし大勢が焼死、弟を庇った兄フランキーが捕まった。
成長したウィンストンはロンドンで実業家として成功し、兄フランキーは面会を拒んだため疎遠になっていた。
数十年後、犯罪者となったフランキー(演:ベン・ロンソン)は、育ての親である〈コンチネンタル・ニューヨーク〉支配人コーマック・オコナー(演:メル・ギブソン)の金庫から〈インプレス〉を強奪(ここのアクションもジョン・ウィック風で良いです)。

……この世界の裏社会は〈主席連合(The High Table)〉という秘密結社によって仕切られており世界各地にある暗殺者の中立地帯〈コンチネンタル〉も主席連合の配下にある。暗殺者や犯罪者達は特別な〈コイン〉の取り引きによって依頼や「コンチネンタルの宿泊」などを可能にする。つまり暗殺者間だけで流通するコインを作成できるコインプレスには莫大な価値がある。
主席連合の代理&執行人としてコンチネンタルNYを訪れた裁定人(演:ケイティ・マクグラス)はコーマックを「三日以内にコインプレスを取り戻さないとコンチネンタル支配人の任を解く」と脅す。
〈コンチネンタル〉の宿泊客は全員配下の暗殺者のようなものだし建物自体にもあらゆる装置があるコンチネンタル、しかもホテル内部での殺しは御法度……「もしコンチネンタル内部で殺しを行ってしまうとどうなるか?」というのは『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019)『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(2023)で描かれた(一言で言うと世界中の暗殺者から半永久的に命を狙われる)。つまりコンチネンタル支配人であることは、あらゆる危険から護られる事になる。コーマックはその地位に甘えてあらゆる悪い事をしているので大勢から恨みを買っている。だからコーマックが都会の要塞コンチネンタルNYから追い出されるという事はイコール死を意味する。
メル・ギブソン演じるコーマックは昔ながらのわかりやすい悪人。傲慢で街を牛耳る強権を持ち気に入らん奴は速攻で殺す非情なサイコパス
……しかしコーマックが最強なのはNY内だけの事であり、上にいる主席連合に不利益が生じたり掟を破れば、たちまち自身が市民を自由にできるのと同様に主席連合の刺客に消されてしまう。

本作の悪役コーマックを演じるのはメル・ギブソン

40代以上の老にとっては元お馴染みの大人気アクションスター。若にとってはたまに映画を監督したり主演してる怖い顔のおじに過ぎない。メル氏は大人気アクションスターだったがカトリック原理主義で避妊や妊娠中絶へ反対し更にレイシストかつ元妻へのDV等も嗜んでおられたので干された。
そう考えると配信ドラマの悪役とはいえ、こういった大作のメインキャラで出れてるのは奇跡的ですね。出演できた大作といえば『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』(2014)もあったが、あれはスタローンによるやらかしアクションスター救済企画でもあるからね。そういえば『ブルータル・ジャスティス』(2020)への主演もあったか、でもあれって大作じゃないよね?監督も特殊な人だし……。
とにかくコーマックは、強権を持った悪魔でありつつ同時に主席連合から派遣された若い女性……裁定人にはビビり倒すしかない小物っぷりも同時に見せるキャラなのが味わい深かった。危機的状況や気に要らない奴に対してイライラが湧き上がってる時は凄い怖い。もう今のメル・ギブソンの顔は悪魔みたいだしね。

コーマックに付き従う助手の少年シャロン(演:アヨミデ・アデグン)。

映画『ジョン・ウィック』シリーズでは常にウィンストンに忠実なコンシェルジュとしてコンチネンタルを護っていた。本作から映画『ジョン・ウィック』シリーズに引き続き出てるのはウィンストンとシャロン……だけかな?アフリカの紛争地帯からコーマックに拾われた彼はコーマックからの絶大な信頼を集めている。いつも故郷に住む父を案じている。コーマックの非情さを見続けてきた彼だが、それが自分の唯一の友人に向けられた時、遂には半旗を翻すことになる。


話をあらすじに戻すが、ロンドンで実業家になっていた主人公ウィンストンはコーマックの部下に拉致されて連れてこられる。命より大事なコインプレスを盗んだ兄フランキーの居場所を訊くためだ。しかしウィンストンは幼い時以来、兄とは疎遠なのでわからない。そこでコーマックは、ウィンストンに兄フランキーとコインプレスを見つけるよう依頼。ウィンストンは昔の犯罪仲間や聞き込みをして「チャイナタウンにある『バートン空手』という空手道場の師範であり犯罪も行っている空手の達人マイルスルー兄妹の仲間になってる」と聞き道場を訪ねるが兄妹はフランキーと仲間割れしたという。

このマイルス&ルー兄妹もメインキャラ。兄妹は死んだ父から空手道場を受け継ぎ妹のルーは道場一本でやっていきたいようだが、近所の中国人に「空手は日本のもんだからチャイナタウンでやるな!しかもお前ら黒人だろ」と商売の邪魔をされている、そのため門下生が全く増えず、兄妹は仕方なく犯罪に手を染めている。マイルスはウィンストンの兄フランキーとはベトナム戦争に従軍して知り合ったようだ。兄より道場経営に固執しているルーは、近所の悪どい中国人と個人的な抗争も行っている。


「フランキーは閉館した映画館に居る」と聞いたウィンストンは廃映画館に行き、兄フランキー(演:ベン・ロンソン)と数十年ぶりの再開を果たす。その傍らにはベトナム人の妻イェン(ヌン・ケイト)が居た。
しかしウィンストンが尾行されていて、コーマックからの刺客が連続して襲いかかってくる。ウィンストンとフランキー兄弟の銃、イェンの近接格闘術などで撃退して逃亡。
逃亡中にフランキーは「子供の頃、お前がした放火の罪を被った後、一度も面会しなかったのは、お前を犯罪の世界から遠ざけたかったからだ」と吐露する。
ベトナム戦争時、子供が出来ない身体のイェンは人間爆弾となって白人をふっ飛ばすつもりだったが爆弾は不発。その時いたフランキーと互いに一目惚れで結ばれる。

業を煮やしたコーマックは、コンチネンタルに泊まっていた中で最も強力な双子の暗殺者“ヘンゼルとグレーテルを差し向ける。

二人ともオカッパ頭で一言も喋らない異様な雰囲気の兄ヘンゼル(演:マーク武蔵)と妹グレーテル(演:マリナ・マゼーパ)。常に一緒にいるし初登場時に妹グレーテルが下着姿だったしで近親相姦を思わせる。最初から最後まで感情を表すこともない完全に殺人マシーン。兄ヘンゼルは黒尽くめのオカッパなので久我重明を思わせるが多分『ノー・カントリー』のシガーがモデルでしょうな。妹はJホラー幽霊っぽい雰囲気、半身が焼けただれていて凄い軟体。なんと名作『マリグナント 狂暴な悪夢』(2021)で怪物ガブリエルを演じた女優らしく軟体にも納得です。

一方、女刑事KD(演:ミッシェル・プラダ)。

上司と不倫している正義感の強い彼女は幼い頃にフランキー&ウィンストン兄弟が起こした放火で家族を失っており、兄弟の手がかりをコンチネンタルに見つけて捜査する。彼女を案じた上司は「コンチネンタルには警察ですら手出しできないほど危険だからやめとけ」と強く忠告するが正義感の強いKDは止まらない。最終的にはバッジを捨て何でもない復讐者としてコンチネンタルに乗り込む。
最初は「何も知らない女刑事がコンチネンタルを嗅ぎ回って消される役柄かな」と思ってたら最終的には、もう一人の主人公くらい目立ってたのが意外だった。

……そんなメインキャラを紹介しつつ逃亡の末、第一話ラストでフランキーは自らを犠牲にして弟や妻イェンを逃がす。自分たちを逃して双子に殺されるフランキーを見てイェンは復讐者となる。

第二話は各メインキャラを回想など交えて深掘りしていく。
そしてフランキーの仇を討ち、コーマックを転覆させるため、ウィンストン、イェン、バートン空手道場の一派、フランキーの旧友達……はコンチネンタルに殴り込みをかける事にする。
しかしコンチネンタルは外敵を阻むあらゆる仕掛けが施されており、そもそも宿泊客が全員暗殺者。「この人数ではとても勝てない」という事で更に仲間を増やす。
かつてコンチネンタルの常連だったという老紳士スナイパージェンキンス(演:レイ・マッキノン)。
コーマックに唯一従わない地下犯罪組織の大物”ホームレスの女王メイジー、その配下の”殺人ホームレス軍団”を貸してもらう。達人ジーンのスナイプは攻守共に使えるし、メイジーの軍団は足りてなかった数を補える。
老紳士スナイパーのジェンキンスは『七人の侍』の剣豪などのようにチームものに一人はいる達人キャラ。しかも物腰柔らかい老紳士なので誰もが好きになるようなキャラ。第一線から退いてバイト感覚で殺し屋稼業をやっているジェンキンス。「『殺しまくってきた』なんて昔話を喜ぶ御婦人はいないから独身を貫くさ……」と言ってはいるが、最終話でのコンチネンタル攻略戦でスナイプの場所として老婦人の部屋を借りる、それがきっかけで老婦人と知り合うし本当に面白い。
”ホームレスの女王”メイジーは、映画『ジョン・ウィック』シリーズに途中から出てくるローレンス・フィッシュバーンが演じてた”ホームレスの王”バワリー……の先代なのは明白ですね。バワリーも本作に出てたのかな?それっぽい奴は居なかったよね。
ウィンストンは「金は要らない、魂を見せろ」という彼女の要求に答え、彼女の殺人ホームレス軍団は最終話で加勢してくれる。
第2話は『キル・ビル』で流れてた「バンバン」とか、イェンが寂れた映画館で死闘する様や武器視点で飛んでいくカメラなど全体的にタランティーノ作品っぽかった。

第3話(最終話)は、殆どの時間を使って「ウィンストン vs.コンチネンタル」の激闘を見せていく。細かいことは書かんが大興奮でしたわ。

 

 


前置きのとこにも書いたが、これほどまでに観る気が起きなかったドラマだったのにめちゃくちゃ面白くて、そしてこんなに面白いのに誰も観てなさすぎてビビってます。

映画『ジョン・ウィック』シリーズと比べるなら、まずは人気者「キアヌ・リーブス」を映画シリーズから引き、映画シリーズでは毎回更新していたエクストリームなアクションも引いている……とは言え、映画ほどじゃないにしろ充分に面白い色んなアクションを見せてくれる。というか映画シリーズは殆どの時間がアクションなのに対して本作は色んなストーリーや過去回想をしっかり見せて要所要所でアクション……つまり映画に比べて普通のアクションものになってるんですよね。でもアクションのマニアってほどでもないから正直、映画シリーズよりこっちの方がメリハリあって面白かったかも。
アクションを減らしてる代わりに、ストーリーと多くのキャラクターの個性、そしてキャラクター同士の絡みを充実させているんですよね。映画シリーズだとジョン・ウィックが絡むのは、ジョンが絡む僅かな”昔の知り合い”くらい。そして映画シリーズはジョン・ウィックがエクストリームな感じで戦い続けるための映画だから、その僅かな仲間も大して活躍もしないし死ぬ。そんな感じで映画シリーズは戦い続けるジョン・ウィックだけを見つめ続けるだけの作品で、ストーリーやキャラ同士の絡みは薄かった……というか殆ど無いも同然だった。それと違って本作は普通に面白い。
全3話合わせて約4時間半……という事でDisney+のMARVELやSWのリミテッド・ドラマの全体の長さと一緒くらいか。だけどDisney+のMARVELやSWのリミテッド・ドラマとか比べ物にならんほど面白かった。ほぼ一気に観れたからね面白すぎて。
僕、割とドラマあんまり得意じゃなくて色んな人気のドラマ観ても大して面白くない感じなんですけど、このドラマはマジで面白かった。現役で人気あるスターが全く出てないから脚本を一生懸命書いたって事なのかな。
しかし映画シリーズとの違いの中でも「ジョン・ウィックキアヌ・リーブスが不在」というのは一番デカいね。誰も観てないのはこのせいだろう、というか僕もそれで興味なかったし。
『ジョン・ウィック』シリーズの魅力」を考える時、一番最初に頭に浮かぶのってキアヌだもんね。『ジョン・ウィック』シリーズも勿論、キアヌがドタドタ走って殺した敵の頭に保険で2、3発追加で撃ち込むのが観たくて観てたようなもんだったしね。
この、メル・ギブソン以外は知らない人しか出てない本作を観たら「ジョン・ウィック居なくても、続けられるもんなんだな」と初めてわかった。
このドラマもメインキャラに死者が殆ど居ないからシーズン2とかも余裕で作れるしね(ウィンストンとシャロン以外は全員死ぬかと思ってた)。

そういう事で「キアヌが出てなくて知らん俳優ばっかりで、しかも前日譚で4時間半もあるとか観る気しないわぁ」という気持ちは僕が一番わかるが、絶対おもしろいので観て欲しい。映画とドラマというのは形態が違うので明確には比べられないもんなんだが、ひょっとしたら映画『ジョン・ウィック』シリーズより、このドラマの方が面白いかもな?と、それくらいまで思う。
観る前に「若いウィンストンがジョン・ウィックみたいにエクストリームな感じでマラソン殺人をしていくのかな?」と思ってたから観る気なかったわけだが、まさかのチームものだったから、群像劇にしようと思いついた人が冴えてるよね。
だが逆に言えば「このドラマのメインキャラ10数人を全員合わせた分の魅力を、キアヌ・リーブスは一人で満たしている」と考えるとやはりキアヌの凄さも再認識させられますね。

この『ジョン・ウィック』ユニバースは続けていきたいらしい。とりあえずジョン・ウィック不在でも、脚本を凝れば充分面白いことが証明された。
来年はアマ・デ・アルマス主演の、ジョン・ウィックのスピンオフ映画『バレリーナ(邦題未定)』(2024)が公開される。アマデ氏は 『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021)のパロマ役はもはやジェームズ・ボンドより良かったし楽しみにしておこう。

 

 

 

 

そんな感じでした

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ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界からを観る | Prime Video
The Continental: From the World of John Wick (TV Mini Series 2023) - IMDb

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