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『グランツーリスモ』(2023)/トップゲーマーがプロレーサーになった実話。ちょっとテンポ良すぎて場面の一つ一つがライトな気もするが主人公のトラウマが重すぎたから最終的にはこれで良かった気がした🏁


原題:Gran Turismo 監督:ニール・ブロムカンプ 脚本:ジェイソン・ホール、ザック・ベイリン 原作:PlayStation Studiosのゲーム『グランツーリスモ』シリーズ(1997-)のプレイヤーがプロのレーシングドライバーとなったヤン・マーデンボローの実話 製作会社:コロンビア ピクチャーズ、PlayStationプロダクションズ、トリガー・ストリート・プロダクション 配給:ソニー・ピクチャーズ リリーシング 製作国:アメリカ/日本 上映時間:134分

 

 

ゲームクリエイター山内一典を中心に制作され今日まで親しまれているレーシング・シュミレーション・ゲーム『グランツーリスモ』シリーズ(1997-)。
僕はプレステ持ってた時期がほぼ無いので、このゲームを所有していた事はないのだが97年に「すげぇクルマのゲーム出た!」という友達の家でやって「すげぇ」と確かに思った覚えがある。そろそろPCでも出して欲しい。
で、ゲーム『グランツーリスモ』名人の青年が、本物のレーサーになって切磋琢磨するという実話を映画化した話。
監督はニール・ブロムカンプ。僕は『第9地区』(2009)、『エリジウム』(2013)、『チャッピー』(2015)……などを観ました。奇抜でクセの強いSF映画を多く撮る人ってイメージ。特にブレイクした切っ掛けの『第9地区』(2009)がカルト的な人気ある。僕は割とどれもほどほどの面白さ……でも別に観て損することはない……という印象。
今回は、今までと違ってモロに雇われの職人監督に徹してエンタメ映画作りに終始した感じ?……だが俺が知らんだけでブロムカンプが”グランツーリスモ大好き兄ちゃん”だったのかもしれない。でもあんまり本編観てても執着を感じなかったからそれはないだろうと思った。

ネタバレあり

 

 

 

 

イギリス人の青年ヤン・マーデンボロー(演:アーチー・マデクウィ)は、テレビゲーム『グランツーリスモ』シリーズに熱中して全一(全国一位)プレイヤーとなっていた。心の何処かで「レーサーになりたい」という曖昧な夢を持っていた。
この主人公ヤンを演じてるアーチー・マデクウィという全然知らん人を調べたら、『ミッドサマー』(2019)でアジの開きみたいにされてた黒人と白人のミックスっぽいルックスのあの彼だった。同じく『ヘレディタリー / 継承』(2018)での一家の青年役アレックス・ウルフと雰囲気似てる。繊細で上手くやっていけてないがそのうち何かやりそうな青年っぽいというか。主人公ヤンはレース直前にケニーGエンヤなどの異常に渋い曲ばかり聴いてリラックスするという独自のルーティンがある。妙に懐メロなのは、両親が好きな曲ってことなのかな?
元サッカー選手のヤンの父親スティー(演:ジャイモン・フンスー)は超体育会系の男なので大学にもろくに行かずゲームに熱中してばかりのヤンが心配で仕方ない。
ヤンの弟コビーはサッカーしてるので父からも応援されている。しかしヤンに対しては「俺がよく知らんゲームばかりしてないで大学ちゃんと行け!」と、顔を合わすたびにヤンに説教をぶちかましていた。そのためヤンは「父はわかってくれない……」と常に顔を曇らせており、父子は互いに愛し合ってはいるものの気まずい空気が常に流れていた。
本作はヤンの視点で描かれてるので、どことなく「少しわからず屋の父」みたいな雰囲気で描かれてる気がするが、しかし父親なら息子が、高い金出して行かせた大学に真面目に通わずゲームばかりしてたら、これは小言を言いまくって当然という気もする。
最終的にヤンは「『グランツーリスモ』トッププレイヤーを本物のレーサーにしよう!」というプロジェクトに参加して本物のレーサーになるという夢が叶うものの、この時点ではそんなプロジェクトは始まってないから「ただの学校行かずにゲームしまくってる奴」に過ぎないからね。まぁいいや。
そんな父スティーブを演じてるのはジャイモン・フンスー。エンタメ映画やシリアスな映画やら……出まくっている!アメコミ映画だけでも『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)『キャプテン・マーベル』(2019)のコラス、『シャザム!』(2019)シリーズや『ブラック・アダム』(2022)の魔術師シャザム、『アクアマン』(2019)のリクー王……など都合のいい男って感じで、アクセントとしての脇役に使われまくってる。90年代のブレイク直前のサミュエル・L・ジャクソンの現代版って感じだね。37歳くらいかと思って調べたら60歳くらいみたい(黒人男性って本当に老けないよね)。
まぁとにかく、ヤンは明日も見えないまま『グランツーリスモ』やりまくっている。これは、プロゲーマーという職業がなかった時代に梅原大悟やその他の有名ゲーマーがゲームしまくってたのと似ている。そもそも「好きなもの」っていうのは「やってれば儲かる」っていう以前にそういうもんですからね。僕も別にこの映画ブログやってるの只の趣味だしアフィリエイトも面倒で付けてないし……。
ヤンは地元に好きな女子オードリー(演:メイヴ・コーティエ=リリー)がいて互いにまんざらでもないが、まだ何者でもないヤンは自分に自信がなく付き合うに至っていない。
そんなモラトリアムな日々の中、ゲーマー仲間から「GTアカデミー」の存在を教わる。
GTアカデミー、それは日産、SONYプレイステーションポリフォニー・デジタルによって2008~2016年まで行われた「『グランツーリスモ』のトッププレイヤーを本物のトップレーサーに育てる!」というプロジェクト。
勿論、ヤンにとってこれはもう「俺はこれに参加するために生まれてきた!」と思うしかない企画。地域予選を軽く優勝して父の猛反対を振り切って家を出てトライアウトに参加する。

 

 

トライアウトには世界各国の『グランツーリスモ』トッププレイヤーが集められた。
GTアカデミーを立ち上げたのは日産のマーケティング担当の男、ダニー・ムーア(演:オーランド・ブルーム)。
そしてアカデミー候補生をシゴキあげて残った一人を立派な本物のレーサーに育て上げるのがチーフ・エンジニア兼トレーナー……鬼教官ジャック・ソルター(演:デヴィッド・ハーバー)。
「ゲーム名人をレーサーにする」という前代未聞の企画を実行して事故死でもしたらバッシングで社が傾きかねない責任が生じる。
鬼教官ジャックは、元々「ゲーマーをレーサーにするなんて……できるわきゃねえだろ!」とか言ってたが現役レーサーの嫌な若に煽られてGTアカデミーに参加しただけ……だし、参加した以上は事故なんて絶対に起こしたくない。だから「全員落とす!」という勢いでシゴキまくり落としまくる!
……と聞くと『フルメタル・ジャケット』(1987)のハートマン軍曹レベルのものを期待するが、さすがにそこまでではない。軍隊でもないしここ20年以内の「最近」の企業のプロジェクトに過ぎないからね。しかし映画を面白くするために少し持ってジャックが煽りに煽りまくって映画を面白くしてほしかった。この場面に限らず、本作は割と「一大事が起こる」「そこを乗り越える」という繰り返しだが割と、その一つ一つがライトなノリなんですよね……。実話だから盛りまくったら問題あるのだろうが、問題にならんギリギリを狙ってもっとエクストリームなシゴキや苦難を観たかった気がする。
まぁ、とにかくゲーマー達は、スポーツ自体したこともない奴も居るレベルなので特訓中に嘔吐したり軽く事故る奴が続出、どんどん脱落していく。最終的にはヤンが残る。
最終的に残った候補生は皆いい奴ばかりで、二人は最後のル・マンでチームメイトになってくれるし、応援しに来てくれるリア・ベガ(演:エメリア・ハートフォード)という女子は「ロングヘアに角みたいなお団子2つ」「レース直前やレース中はサイコパスすれすれのニコニコ笑顔」というゲーマーっていうかストリーマーに居そうな子で可愛かった。ヒロインのオードリーも可愛いけど僕はリアの方が好き。
ヤンは、喰い下がって鬼教官ジャックも味方につけ最後の一人に残り見事、GTアカデミー専属レーサーになり夢のスタート地点に立つ。
お次は、ゲーマーを馬鹿にするクルーや敵チーム達からの可愛がりでスランプに陥ってかなり多くのレースで低い成績やリタイアばかりだったが、トライアウトの最終戦同様に最後の「4位入賞者までがライセンスが取得できる国際レース」という土壇場レースで逆転勝利。日産と契約する!今回もまたGTアカデミー最終戦同様に乗り越えた。アカデミーの頃からヤンを買っていたジャックは「やはりヤンこそ特別なレーサーだ」と確信する。
ヤンはマーケティング担当のダニーと東京に行って日産と契約する。そしてようやく自分に自信がついたヤンは、地元で片思いしていた仲良し女子オードリーを東京に招待する。
「報道陣に受け答えしなくていいからさっさとデートに行けい!」と送り出してくれるダニー。ダニーはGTアカデミーの時に「陰キャのヤンは宣伝にならんから同じくらい速い二位の陽キャにしないか?」とジャックに言ってジャックに睨まれてたが、ここまで来たらさすがにもうヤンの頼もしい叔父さんみたいになってる。
ヤンとオードリーは東京の……どこだか観ててわかんなかった……六本木?渋谷?新宿?わかんないけどとにかくTOKYOシティで焼き鳥食ったり回らない寿司食ったりクラブで踊って初キス。ゲーマーの陰キャが世界の注目の的のモータースポーツのプロとなり、好きだった女子を実費で呼んで夢の場所だったTOKYOで大遊びしてキス……もうヤンは脳内で子安武人の声で「我ァが世の春が来たァァーッ!」と絶叫してそうな最高の夜。全く自分と関係ない青年ヤンだが、彼が自己実現して幸せを噛み締めてるのを見たら他人事ながら嬉しくなった。
そういえば、二人のデートの寿司屋の板さん、妙に長時間映るなと思ってたら『グランツーリスモ』を97年から作り続けてるゲームクリエイター山内一典氏本人だったみたい。
しかし、ライセンス取得後の初レースで、ヤンは地形や気候の偶然で大事故を起こしてしまう。
しかしヤンは軽症で、夜には目覚めた。しかしクラッシュにより観客に死者が出てしまう。これは予想だにしてなかった悲劇だ。ヤンが四肢を折ったとかなら、まだ若いし怪我が治るのを待つだけだが若いヤンにとって「自分がレースをしたせいで何の罪もない人が事故死して自分は軽症」これは耐えられない。
実話ベースの映画だから本当の事なんだと思うが、ここが映画のクライマックスだね。
エヴァンゲリオンのシンジくんレベルに心が死んで絶望のあまり早くも人生が終わりそうなヤンだったが、ここで「かつて名レーサーだったがル・マン直前にレーサーを辞めた」というジャックが自らのトラウマを遂に語り、家族や恋人でさえ救えなかったヤンの魂をジャックが救う。

……というのは後半までで、ラストはジャックの果たせなかった夢だったル・マンに挑戦。そして父スティーブも……みたいな感じで色々あって終わる。
なんんか久々にスッキリと若者が成功して終わるハッピーエンド映画観て気持ちよかった。意地悪してくるライバルのレーサー以外、皆良い奴ばっかだしね。
前述したように「挫折と、それを乗り越える様」のテンポがあまりに速すぎて「現実ではもっと苦悩してたんだろうけど、こうして映画にしたら随分、軽く見えるなぁ」と思わないでもなかった。ヤンのクラッシュで観客が死ぬシーンとか誰が死んだのかとか一切見せないしね(見せたら重くなりすぎたり「ヤンは辞めるべきだ」と思う観客が出てきかねないからだろう)。只のゲーマーからル・マンまで描こうとしたら工程が多くて、テンポ早くせざるを得ず「妙にポンポンポンポン進むなぁ」と思ってしまうところもあった。
だけど面白かったし「観客を事故死させた」という事実がヘヴィ過ぎてバランス取れてたかもしれない。
何よりもジャック役のデヴィッド・ハーバーの名演技が最高だったね。もう彼はオモシロおじさんからシリアスおじさんから悪役まで、90年代のロバート・デ・ニーロトミー・リー・ジョーンズくらい色んなおじさんを一人で引き受けてるね。
あ、それと終盤まで「面白いけど、これゲーマーじゃなくて只のレーサーの映画になってきてない?」と思ってたらヤンがル・マンの佳境で、ゲームで何千回もトライしたからこその無謀な戦法を使って先んじる場面があって「これはゲーマーがレースする映画ですよ」と、最後に改めて宣言するところが良かった。
あとヤンのクラッシュで観客が亡くなったらしいので実話だとしたらネタにしたらいかんとは思うのだが、クラッシュしたヤンのクルマが垂直に立ったまな板みたいになって、その姿勢のまま水平に猛スピードでカッ飛んでいく様が面白すぎて爆笑してしまった。TVでそれを観てたヤンの両親も水平にブチ飛んでいく下駄みたいなレーシングカーを観て「……あれってヤン?」という台詞もオモロかった。ひとしきり笑ったらジャックが「観客が死んだ」とか言うから気まずくなった。そういう悲惨な事故なら、あんな面白い絵面にすなよと思った。そういえば昔から事故でグシャグシャになった車とか吹っ飛んでいく車見たら爆笑してしまうところがあったが。これって俺が悪いのだろうか?
物語的には、主人公ヤン、道半ばで挫折した未来のヤンがジャック、最後まで夢を信じられなかったヤンが父スティーブ……って感じで、この三人を中心に描いたのが正解だったね。広報の男ダニーを演じてるのが大スターのオーランド・ブルームだからポスターとかでは大きく扱ってたけど本当なら父親役のジャイモン・フンスーの方を大きくプリントすべきだったよ。
そういう感じで、なかなか楽しめました。
観て帰ってレースゲーム……したいけど持ってなかったので『ウォッチドッグス レギオン』(2020)立ち上げてクルマを盗んでロンドンを2時間くらい疾走しました。『グランツーリスモ』はプレステ持ってないし買う予定もないからできないので『ザ・クルー2』が欲しい。
それにしてもレース会場って爽やかだしめちゃくちゃ行ってみたいね。レース会場の屋台でホットドッグとか食べたいわ。いつか行こう。
🏁🏎🌭

 

 

 

 

そんな感じでした

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Gran Turismo (2023) - IMDb

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