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「アトミック・ブロンド (2017)」誰も信じるなって事と、自分が触れることのできる現実感が大事👓

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原題:Atomic Blonde 製作国:アメリカ 上映時間:115分
制作&主演:シャーリーズ・セロン 監督:デヴィッド・リーチ  
原作:アントニー・ジョンストン&サム・ハート「The Coldest City」

 

 

世界の姉シャーリーズ・セロンによる入魂の企画。
自分でスタントするためだけに自腹で数億円払ってトレーニングしてアクションをこなし、「ジョン・ウィック」一作目で共同監督して本作の後に「デッドプール2」の監督をしたスタントマン出身のデヴィッド・リーチを監督に起用したスパイアクション映画。
「The Coldest City」というモノクロのグラフィック・ノベル(ざっくり言うと大人向け描き下ろしコミック単行本)が原作なので一応、コミック原作映画という事になる。
本作の興行成績は「そこそこ」だったが評価的には高評価だったらしい。

 

 

Story
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ベルリンの壁崩壊が迫った冷戦末期の1989年秋。
MI6は潜伏中のスパイを殺害した謎の組織を崩壊させるべく、圧倒的戦闘スキルを誇る女性エージェント、ロレーン・ブロートンシャーリーズ・セロン)をベルリンへ急行させた。
ブロートンは、MI6ベルリン支部の責任者デヴィッド・パーシヴァルジェームズ・マカヴォイ)とタッグを組まされ、東側陣営の脅威と立ち向かっていくのだが――



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青あざだらけのブロートン(シャーリーズ・セロン)が、ジョン・グッドマンを始めとする上司達に今回の任務がどうだったか説明するという回想形式で始まる本作。
ドイツで組まされるジェームズ・マカヴォイは最初っから敵丸出し。
つまり「シャーリーズ・セロンはマカヴォイに裏切られたり色々大変な目に遭って生き残るまでの時間を楽しんでください」と最初に宣言したスタイル。
しかもブロートンがドイツに来た時から敵に既に待ち伏せされてるし、彼女が行くところ行く所全てバレている。もう何もかもバレてて敵とエンカウントすること前提に任務を遂行しなければならないブロートンの活躍を見守る映画。

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女性スター一人のスパイものって何かあったかなと思ってもあまり思い浮かばない。アンジェリーナ・ジョリーの「ソルト」とかあったがアレは女性版ジェイソン・ボーンって印象で「物理上可能だが超人すぎる‥」って感じだった。
本作はどうかというと、「ジョン・ウィック」監督だけあって実際にある戦闘技術を駆使して「急所のみを狙ったり出来るだけ硬い物で突く」という女性が男性をブッ殺す事が理論上可能な戦闘スタイルを使っている。そんな感じでブロートンは、複数の屈強な男性諜報員を接近戦で倒すので超強い女スパイ(必要に応じて色仕掛けも出来るので男の諜報員より強いと言える)
さすがに圧勝してしまうと現実味がないと思ったのか、ブロートン自身も殴り返される事が多く、彼女の身体は大体あざだらけ。結構騙されたりヘマもする。シャーリーズ・セロンが美しすぎるので非現実的なスパイかと思っていたが彼女はリアル志向のものを作りたかったようだ。‥もちろん強すぎるので現実と比べれば充分スーパーなのだが‥マジンガーZなどのスーパーロボット系と比べるとリアルロボット系と言われるがそれでも無茶苦茶な性能を持っているガンダムみたいな、そういう塩梅の「リアル」。
画面は赤&青で綺麗で、終始懐メロが流れてて、主演や共演者は美男美女ばかりという非現実的な画なのに、戦闘だけが泥臭いという組み合わせから感じる歪みが良いなと思いました。

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この監督を選択したり、自分でスタントしたり、原作にはないバイセクシャル要素を足したりと、セロン氏はかなり時流を読んでる印象。
1~3年前に映画&音楽&ゲーム&コミックなどのアメリカのポップカルチャーで大流行した80年代オマージュもふんだんに盛り込んでいる(具体的に言うと、どこに行っても青と赤のネオンが点いてて、80年代ポップミュージックが流れる)、安上がりかつ誰でも出来るので大流行した80年代オマージュだが、何だかこれを多用して大ヒットしたものが殆ど無いせいか既に廃れかけてる気もする(最近、赤&青の画面見るとちょっとガッカリしてきたりするようになってきたし)
まぁとにかくトレンドを先読みして自分のやりたい事と摺り合せてアクション映画の先端に躍り出てやる!というシャーリーズ・セロンの気合は伝わった。
全部が全部うまくいったわけじゃない成功したと思う。
この映画に足りない要素は、黒人が全然出てこないって事くらいか。

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音楽は1989年のヒット曲が多く流れる。
ブロートン登場ではデヴィッド・ボウイの「キャット・ピープル」が‥というか、ここ数年のアメリカ映画いったい何回デヴィッド・ボウイ流すの?ってくらいデヴィッド・ボウイ流れますね。生前もめっちゃ流れてたが死後もっと増えた気がする。
特にスペース・オデティとキャット・ピープルとか何度映画で流れるの聴いたか‥。
別に好きだからいいけどね。ちなみにジョン・グッドマンが演じたブロートンの上司役はデヴィッド・ボウイに依頼したけど断られたらしい(既に体調が良くなかった?)
だが、ただ懐メロを垂れ流してるだけではなくて、劇中で印象的に流れる曲の中でも、特にパブリック・エネミー「ファイト・ザ・パワー」やニュー・オーダーの「ブルーマンデー」などは、
Atomic Blonde - Soundtrack - Blue Monday - New Order - YouTube
Atomic Blonde - Soundtrack - Public Enemi - Fight The Power - YouTube
「ファイト・ザ・パワー」は1989年の曲だし、「ブルーマンデー」も1988年に出たバージョンみたいだけどブルーマンデーは「90年代の曲」ってイメージが強い。‥何でだろ?ブルーマンデーが90年代テクノに影響与えたせいなのか、それとも自分が中高生だった90年代によく聴いてただけかもしれないが。
とにかく、この2曲は「80年代が終わり90年代が始まる」「ベルリンの壁が崩壊する」という時代の変換をこれ以上ないほど表現していて、値千金の選曲だなと思った。
オリジナル曲だけじゃなくて、わざわざ現代カバー曲も併せて使ったのは「現代の目で、この時代を見ています」という感じを出したかったかららしい。このカバーも結構良いので文句ないです
HEALTH - Blue Monday (Atomic Blonde Soundtrack) - YouTube
だがサントラには、この「ブルーマンデー」「ファイト・ザ・パワー」あとクイーン&デヴィッド・ボウイの「アンダー・プレッシャー」とかデペッシュ・モードの曲などはサントラに入ってないので買う前に注意が必要。

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あと、ここが撮りたかったのかって感じの中盤のアパートでの徒手格闘アクションや、後半の延々と続く7分間のワンカット(もしくはワンカット風)アクションが凄かった。
「凄かった」としか言いようのない小学生みたいな感想になってしまったが、実際凄いので観ればわかる。「一体どこが継ぎ目なのか」と探したり現場はどういう段取りだったのか考えながら観たりと何度も楽しめそうだ。
アパート脱出の際に、敵の首にホースを巻いて窓から飛び降りたところが「敵も倒せるし安全に着地できる」という、その一石二鳥感が気持ちよかった。
まるで麺をふやかした湯でスープを作れる北海道のカップ麺「焼きそば弁当」みたいな倒し方だ。 やきそば弁当 | 商品情報 - 東洋水産株式会社

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前述の「敵の首を利用した飛び降り」の後、警官に呼び止められた時にブロートンは包茎手術の広告のようにタートルネックセーターで鼻まで隠す。すぐさま振り向きざまに警官2人を倒すので顔を隠す意味は全く無かったのだが、恐らく激しい戦闘を制して飛び降りた直後のブロートンの「やれやれ‥透明になりたいわ」という気持ちの現われでしかないだろう。
映画の中の、こういう一見無駄に思える場面が好きだ。正直、超長回しのワンカット戦闘と同じくらい印象に残った。選択基準は謎だが、たとえば対人でも「あの人物の、あの何気ない台詞だけ妙に覚えてる」っていう事はよくある。凄い事言われたとかjなくね。そして何時まで経ってもそれを覚えてる理由がわからなかったりする。だけどそれが人間で、そういう事こそが世界の良いところなんだろうと思う。映画も同じだ

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そんな感じで大体面白かったのだが、映画のラスト5分くらいで色々と裏切りやどんでん返しが何度も行われる。
僕がアホなのかもしれないが正直言って、誰が誰を裏切ってるのか、最後にブロートンが乗り込んで会ってるコイツは誰なのか、とか正直なにがなんだか全然わからなかった。
このページを書くにあたって、ググってあらすじを確認していて「この映画、CIAとか出てたんだ。そういえば誰がKGBだったのか未だによくわからないな」と自分が何もわかってないことを改めて知った。キングスマンのジゼル役してた女優がブロートンと一夜を共にするんだが彼女が誰だったのかもわかってない(CIA?)、あまり言いたくないが終盤の「ブロートンの名前がリストに載っててどうのこうの‥」って部分も一体なんの事だかわかってない。
あまり重要ではない雰囲気だったので「何か色々あるんだね」と思ってわかろうとしなかった。「何か裏切りのサーカス現象が起きてるようだ。わかってるのはブロートンと上司のジョン・グッドマンが味方同士ということだけ。そして彼女は勝った。よかったよかった」と思いながら観てただけで正直、最初からわかる気もゼロでした。
推理小説を読んでても最後に探偵が大演説ぶちかましてるところ読まなかったりする。
シャーリーズ・セロンが自分で企画した終了直前80年代オマージュスパイアクション映画で泥臭く死闘を演じながら、裏切りの連続が色々あって終わる」それでいいだろ。ネタバレ記事を読むことすら面倒なので別に誰が何をどうしてたかもどうでもい。
本作は「誰も信じるな。」という台詞が最初と最後に出てきて、それはキャッチコピーにも使われてる。僕も何度か他人に言ったことあるから印象に残った言葉だわ。
とにかく「『誰も信じるな』とだけ分かってればストーリーは充分だろ」というのが僕の見解。
あとはブロートンが目にするもの、彼女の戦闘、あと我々が耳にするサウンドトラックが大事って映画だと思った。
世の中色々あるが結局は自分で試してみないことにはダメなんだ。

 

 

そんな感じでした

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Atomic Blonde (Original Motion Picture Soundtrack)

Atomic Blonde (Original Motion Picture Soundtrack)

  • Various Artists
  • サウンドトラック
  • ¥1500

 

The Coldest City

The Coldest City

 

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「アウトレイジ 最終章 (2017)」北野武/わかりやすさが加速してとうとう因縁が数値化された中盤が凄く面白い🔫

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監督&脚本&主演:北野武 製作国:日本 上映時間:102分
シリーズ:「アウトレイジ」トリロジー

 

アウトレイジ (2010)」「アウトレイジ ビヨンド (2012)」に続くシリーズ完結作。
個人的には老若男女みんなが観るシリーズになったので、寅さんみたいに延々と続ければいいのにという気もするが、あまりに延々と抗争が続くのも不自然だしコレは一旦終わりでいいのかもしれない。
早逝されたので大杉漣北野映画に出るのもこれが最後(ついでに言うとつい先日感想書いた「予兆 散歩する侵略者 劇場版」も、大杉漣黒沢清映画へ出演したのがラストだった)
そこそこネタバレしてます

 

 

Story
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関東の山王会 vs.関西花菱会の巨大抗争は花菱会の勝利で終結し、大友ビートたけし)は韓国に渡り、日韓を牛耳る国際的フィクサー張会長(金田時男)の下にいた。
そんな折、韓国出張中の花菱会の幹部・花田ピエール瀧)が大友とトラブルを起こし、張会長の手下を殺して日本へ逃げ帰ってしまう。
これが引き金となり、張グループと花菱会が一触即発の状態になり、更に花菱会は同時に内紛が勃発。
大友は配下の市川大森南朋)を伴い、全ての因縁にケリを付けるべく帰国する――

 

 

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三本共通の結論を最初に言うと「めちゃくちゃ良い!」ってところと「何でこんなに雑なの?」というイマイチな部分があることが共通している。
シリーズで共通してる作品内の要素は、2作目以降のたけしは狂言回し。罵倒合戦。セクシーにクルマを撮るのとガバメント、
それに感情ではなく如何に上手く因縁をつけて相手より自分の立場を上にするか如何に自分の手を汚さず敵同士ぶつけて対消滅させるか、という低体温因縁つけバトル。
それがどんどん転がって大事になっていくのが本当に毎回おもしろい。
一作目からし北野映画と思えないくらい明快な映画だったが、老若男女が観るシリーズになったせいか回を増すごとに分かりやすくなっていった。
過去作だったら登場人物が口に出さなかったような思いも喋りまくるし顔に出すし、本作に至っては色んなキャラが(あの大友までもが)状況説明してくれるようになった。
本作はもう、木村を殺した工務店の奴とか韓国人ヒットマン返り討ちシーン以外は、誰が見ても初見で全部わかる親切な映画製作だった。
それに過去作ではキャスティングしなかったようなメジャーだったり演技が大仰だったりする俳優が多く出ている。
それらのわかりやすくした部分は全部良い部分だと思う。昔の北野映画は、当時すごい夢中になってたけど、今あんな感じでナルシスティックにやられたらキツい。コテコテのギャグが気になる時もあるが昔の感じを再度やるより、その方がまだ良い。
一作目は面白い虐殺オンパレードだったがバラエティ番組っぽくてイマイチだった。
二作目以降は早々にブッ殺すわけにいかない対立関係になったせいか「銃撃の代わりに罵倒の連射で泡食った相手が下手打ったらそこを突く‥」というやり方になった。
これは面白い!虐殺のやり合いよりずっと楽しい。
この、罵倒で相手のミスを誘って報復の理由を作り出して一気に叩く‥!という、このやり方は「三国志」とか戦国ものや経済バトルなどにも通じる普遍的で不朽の面白さがあった。
だから個人的にはアウトレイジが完成したのはビヨンドだと思う。一作目も、序盤での抗争拡大の描写が超面白かったのだが中盤以降めちゃくちゃつまらなくなったのでやはりビヨンドが三作品中一番面白いと思う。

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大友(たけし)は日本に居れなくなったので、前作で描写があった張会長の下に身を寄せて韓国の済州島で舎弟の大森南朋と釣りして楽しく暮らしていた。
この大森南朋椎名桔平中野英雄に続く「大友のことが好き過ぎる舎弟」の三代目(大友だけじゃなく、たけしキャラって事で考えれば大杉漣とか寺島進の弟という見方もできるし、北野映画内におけるたけし軍団だと言えなくもない)
大友が張会長から預かったシマのデリヘル嬢がSMプレイできないって事で、韓国に来てた花菱会の花田(瀧)に難癖を付けられ、大友は女を傷つけられた落とし前として「2百万払え」と妥協案を出してくれるのだが、花田は大友をただのチンピラだと見落とし、約束を反故にして見張りの張会長の若い衆を殺して日本に逃げ帰る。
この瞬間を起点にして最終章の抗争が始まる。
今回は過去作の下剋上と違って、誰一人としてこの抗争をしたがってないけどヤクザだからやっとくか‥って感じで、坂を転がる糞のように抗争が大きくなってくのが良かった(このシリーズの一番面白い部分)。
最初に花田が(たった)二百万払ってれば話は済んでて本作も10分で終わってたところが、ケチがゆえに払い渋ったがために張会長に15倍の3千万払わなければいけなくなり、だがその三千万というのも兄貴分・塩見三省の判断に過ぎず、人命に対しては額が少なかったようですぐに倍の6千万になり、結果的に数億円‥と、支払わなければいけない金額が僅かな時間で倍々ゲームで増えていく。
「因縁のつけあいに失敗すると倍になる」という「負い目の数値化」というドラゴンボールスカウターみたいな分かりやすさで教えてくれる。
日本昔話の様な、童話のようなわかりやすさ。過去二作では「普通すぎて覚えられないキャラクター名」を始めとして初見でわかりにくい部分も多かったが今回はわかりやすさ全開だった。この因縁の数値化が特に顕著だった。
まぁ、そんな感じで張グループ vs.花菱会という抗争が始まり、同時に実質的に主人公の花菱会の内紛が起こり、大友も過去の因縁の全てに(というかシリーズを続けなくても済むように)ケリを付けようと帰国するって感じの話だった。

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たけしはまぁ最初から最後まで「大友はこんな事して、最後にはこうするだろう」と、北野映画全部観てる皆の想像通りの活躍。ビヨンドでは大評判になった、花菱会との怒鳴り合いが良すぎて何度も観たが、期待の罵倒も滑舌に気をつけすぎてか置きにいってる感じで威勢が強くなかったし、髪型や太ったこともありオバチャン化が進んでいてイマイチだった。ビヨンドで獲得した過去の北野映画のたけしキャラが持ってた神性も、たけし&大友が惚れ込んでいる張会長に移ってしまってた。この神性というのは具体的に言うと「めっちゃ強いのだが争いを好まず中空をぼうっと見つめる」という感じ(カメラ目線で見つめるといよいよ神性が更に高まる)
だけどソナチネとかの当時はこのたけしの神性に夢中になってたが、今になるとたけしのシャイさやナルシズムと合わせて何だか気恥ずかしくなる要素なのでこれは別にいい。張会長に分け与えてよかったくらいだ。
ビヨンドではスカッとさせてくれた大友の仁義だが、仁義を重視しすぎて白竜の言うことを全然聞かないので「もういいでしょう‥」と若干イライラするものがあった。だけど本当は一作目ラストの時点で死んだようなもので、以降の大友は幽霊みたいなものなので死に場所探しモードだったんだろうね。
だけどナントカ君の出所祝いパーティ殴り込みは良かった。
本作は割と全編想像通り進んでいって―面白いからそれでいいんだけど―この、ソナチネっぽい出所祝いパーティ殴り込みは全く予想してなかった展開だったので興奮した。西田敏行が唯一ダメージを負ったシーンはここだけだし。
最後の締め方は、何かもうシリーズを終わらせるために「もう‥閉店なんでね‥」と店主がシャッターを閉めるかのような雑さだった。漫才のラストでよく、あまり面白くない事をちょろっと言って「もういいよ。ありがとうございました」と終える感じを思わせた。

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🔫前作の無双キャラ、西田敏行は今回はやられる側かな?と思ってたら今回も強キャラのまま実質的主人公にもなってて驚いた。前作もそうだったが、この役に大喜びしてる西田敏行が更に大仰な芝居をしていて、それだけならまだいいが、あまりにもノリノリ過ぎる態度が出すぎてて更にアドリブやダジャレを連発したまま無双を続けるので「早く誰か何とかしてくれよ」と思った。でも、このキャラそんなに嫌じゃない。
ノリノリの態度がやりすぎ感あるが、このキャラはあくまでも「相手をハメる」というクールなやり方を通してるからかもしれない。

🔫相方の塩見三省も、前作では元気いっぱいだったが今回は呂律が回ってないし目も虚ろで頬も痩せこけてるので「塩見さんどうしたん?!」とビビって検索したら、脳梗塞からの病み上がりで立って演技もままならない状態だったと今知った(ついでに西田敏行も怪我かなんかの病み上がりだったらしい)

🔫マル暴の刑事、松重豊はヤクザに対して完全に上から行く正義感あふれる熱血漢なので好き。瀧同様に活躍を期待していたが上から圧力がかかって活躍できない。
辞表を出すので抗争に参加するのかと思ったら本当にただ辞めただけだったので驚いた(だが同時に松重豊が死ななくてよかった‥とも安堵した)
大友を釈放するよう上に言われた時に上司にキレるんだが、「えっそんなにキレる!?」っていうくらい凄い長時間わめき散らしていて凄く面白かった。たけしも花菱会も歳で元気ない分わめき散らしてくれた感じだった。
関係ないけど世渡り上手い上司の刑事さん、声がめちゃくちゃかっこいいな

🔫新キャラで期待してた瀧は物語の起点となるコメディリリーフだった。瀧はいつもクセ者キャラとか凶悪な約ばかりだが、そろそろ瀧本来の面倒見の良い兄貴キャラとして普通に活躍する映画も観てみたい。津田寛治はどうって事ない役でガッカリ‥。

🔫原田泰造は、もう50近いのに「暴走族上がりの鉄砲玉」キャラを演じているのはさすがにミスキャストだった。「一体このキャラはどういう経緯でこんな事してるんだ?暴走族辞めた後、30年間くらい引きこもりだったのか?」と考えると可笑しくなった。

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そんな感じで凄い楽しんだ。
特に(毎回そうだが)見れない序盤~中盤の抗争が倍々ゲームで拡大してる時間は、北野映画のこのシリーズでしか観れない面白さで他の事を全部忘れちゃうような‥「何でMCUとか好きなんだろう」と一瞬思ってしまうほどの面白さだった。
だけど、これも毎回そうだが抗争のサイズが頂点に達して、店仕舞を始めると途端にさっき言った「しぼんでいって終わる漫才の終わり方」みたいな感じで面白さが減っていく。毎回この店仕舞モードに入ると処理が途端に投げやりになり、賢そうだった白竜もすぐ花菱の言うこと信じちゃうし。
映画開始から終盤までは時が経つのを忘れるくらい面白いが、終盤からの数十分はそれまでの面白さを忘れちゃうくらい一気につまらなくなる。
次回作は純愛映画らしいが、たけしのインタビューを読むと「戦後の闇市でのし上がる青年時代の張会長と大友少年による前日譚」「本作の続きの、張会長 vs.花菱、本当の闘い」をやりたいって言ってて、面白そうだし是非観たい。
ぶっちゃけ前日譚より本作の続きが観たい。
とりあえず西田敏行が泡食って死ぬところ観ないと収まらんだろう。大友がやってた狂言回しは松重豊がやればいい。というか、たけしが出て無くても面白いのは保証されてるのでアウトレイジ続けて欲しい。アウトレイジじゃなくて新タイトルでも昔やりたがってた戦国ものでも政治劇でも何でもいいけど、とにかくこのアウトレイジで出来上がった北野流の揚げ足取り集団戦がもっと観たい!

 

そんな感じでした。もういいよ木村さっ帰ろう

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「予兆 散歩する侵略者 劇場版 (2017)」黒沢清/本編の方は愛の話だったが、こっちは〈心の弱さ=悪〉という闘いがメイン 👉

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監督:黒沢清 脚本:高橋洋黒沢清 原作:前川知大
製作国:日本 上映時間:140分 英題:Foreboding シリーズ:「散歩する侵略者」スピンオフ

 

 

「散歩する侵略者 (2017)」のスピンオフ。WOWOWで数回に渡って放送されたドラマを一本の長編映画にして公開したもの。
黒沢監督の盟友、高橋洋監督が脚本。このコンビの過去作は「蛇の道 (1998)」「復讐 THE REVENGE 運命の訪問者 (1997)」というどちらもめっちゃ嫌~な感じの黒沢映画。長澤まさみ主演の本編は、演劇を映画化したものだが、こっちは世界観は同じだが黒沢&高橋洋による完全オリジナル。本作が編集される前の連続ドラマ版は一応観てた。だけど僕が連続ドラマ嫌いなせいかもしれないが毎週一話づつ観ても面白くなかった。
それが後に長編映画に編集されて劇場公開されたのが本作。
長澤まさみ主演の方の映画が凄く面白かったし、本作もドラマじゃなく長編作品として一気に観たらきっと面白そうだと思ったので改めてこの劇場版を観た。
やっぱり、長編映画として観た方がずっと楽しかった。
それに、どう考えても最初から長編映画として撮ったものを無理やり数本にブツ切りにして放送してた気がする。。

ネタバレあり

 

 

Story
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主婦、山際悦子夏帆)は、勤め先の同僚みゆきから「家に幽霊がいる」と相談を受けた。
みゆきの家に行ってみると彼女が言う「幽霊」とは彼女の実の父親、普通の優しい父親だった。
悦子は、辰雄染谷将太)が務める病院の心療内科にみゆきを連れて行くと「彼女は『家族』という概念を欠落させている、だから父親が幽霊に見えた」という不可解な診断結果を聞かされる。
その後、悦子は外科医・真壁東出昌大)の存在に異常な違和感を抱き、彼と行動を共にする夫・辰雄が衰弱していく様に不安を募らせていく――

 

 

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長澤まさみ主演の)本編と共通しているのは、同じ世界で同時期に起きていた事件という事と一組のカップルが主人公ということ。あと東出昌大がどちらも出ている。
長澤まさみ主演の本編では30代の冷めた夫婦だったが、こちらは20代半ばの若い夫婦が主人公(看護士と工場のパートの夫婦が何故こんなに高級マンションに住めるのか?という疑問が浮かんでくるが、黒沢清映画での常識は我々の現実とは違うのでそんな細かいことに突っ込んでも仕方ない。それに本作とか他の黒沢作品での不思議な日常と比べると些細なものだ)
長澤まさみの方では夫が宇宙人となり妻がそのガイドとなるが、こちらでは夫が東出昌大演じる宇宙人のガイドとなる。では夏帆は何かと言うと「宇宙人が概念を奪うことの出来ない唯一の人類」という役どころ。
ちなみに東出昌大長澤まさみの方にもキリスト教の牧師役で出ている。
最初は同一人物かと思ったけど、あの牧師と本作の医師・真壁は別人のようだ(わざわざ同じ人間に演じさせたのには意図がある気がしなくもないがよくわからない)

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本編では、ジャーナリストの男性が宇宙人の侵略に巻き込まれる話以上に、冷めた主人公夫婦の夫が宇宙人と入れ替わって、妻が別人になった夫と愛を育み直すというインベージョン恋愛もの(‥という形の夫婦の愛の修復もの)という要素の方が大きい映画だったが、本作は宇宙人の恐ろしさの要素の方が大きいSFホラー。
長澤まさみ版では80年代SF風の劇伴が流れていたが、本作では「回路」の劇伴に似たJホラーっぽい怖い曲が流れる。
長澤まさみの方の松田龍平の可愛い宇宙人や殉教者っぽく描かれた青年宇宙人や凶暴なJK宇宙人、本作での恐ろしい東出昌大宇宙人(以下、真壁と表記)や夏帆の上司の妻宇宙人‥色々居るが、彼らを見る人間の視点やタイミングによって彼らの見え方が違う。そして宇宙人が人間から奪う「概念」によって個々の性格が大きく変わっていく。
前提として、この世界では宇宙人が地球を征服するために先鋒として数人が地球に訪れ、実体を持たない彼らは地球人に同化する必要がある。同化された人間は永遠に眠ったままになってしまう。

👉宇宙人は何も知らないので人類から「概念」を奪ってそれを理解する
👉概念を奪われた人間はその概念を永遠に失い、高い確率で廃人になる
👉宇宙人は概念を奪って学習しつつ誰かが宇宙人本隊を呼ぶ装置を作って呼ぶのが目的
👉宇宙人本隊が来てしまうと地球人は全滅、役目を終えた同化した宇宙人も死ぬ

本作の「真壁」は、ガイドに任命した染谷将太が個人的に選んだ生贄から「プライド」「過去」「未来」「命」「恐怖」などを奪う。
「命」の概念を奪うと当然死なせてしまうし、どれも人間を廃人にする恐ろしい場面で、自然と真壁は悪役になっていく。
長澤まさみ主演の本編では松田龍平(宇宙人)が、引きこもりの青年から「家」という概念を奪うと青年が引きこもりではなくなり活発な青年にしてしまったり、更に長澤まさみの嫌なセクハラ上司から「仕事」という概念を奪って廃人にして長澤まさみを救う‥という場面があった。別に松田龍平宇宙人は妻や引きこもり青年に良いことをしようとしたわけではないのだが、結果的に「良い宇宙人」に見える描き方をしていた。そして最終的に龍平はあるホットな感情を奪って完全に良い人間そのものになってしまうオチだった。宇宙人本隊を呼ぼうとする青年宇宙人も、実際は地球侵略のために奔走してただけだったが、まったく協調できない愚かな人類よりも崇高な殉教者みたいに描かれていた。
本作の真壁は、前述した宇宙人達と違って最初から最後まで邪悪な宇宙人に見える。たまたま長澤まさみ版の宇宙人達が純粋な奴に見えるように描いて、真壁は邪悪な宇宙人に見えるように描いているだけ‥のように途中までは進んでいくが、やがて真壁は実際に悪い宇宙人になっていく。
だが、似た話だが描き方が違う作品が2本あったことで複眼視点を持てて楽しかった。
具体的な説明は避けるが、最初から最後までめっちゃくちゃ優しい人‥が実はめちゃくちゃ悪い事してた過去があるのを後から知ったことが何度かあった。
常に何事も多角的な視点を持ちたい‥と、思いがけず両作を観て思えた。

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黒沢清高橋洋というコンビ。そして冒頭で夏帆の同僚が「幽霊がいる」というので黒沢清の幽霊のことがMARVELヒーローくらい好きな僕は色めき立ったが、彼女の言う幽霊とは優しい実の父親の事だった。
彼女は既に宇宙人によって「家族」の概念を奪われていて父の事を幽霊だと思ったのだ。
「家族」の概念を奪われた彼女が見る実父は「家に知らないオッサンがいる。だけど見覚えがある気がするし他人とは思えない」というものだった。
この「知らないオッサン」と、同じ血が流れてるので彼女の身体が「他人とは思えない」という体感が反発しあった結果、恐怖を産み父を幽霊だと認識して恐怖したようだ。
モノホンの幽霊ではなかったので最初はガッカリしたが、「家族の概念がない時に家族を見たら幽霊に見えて気持ち悪い」という描写は面白かった。
よく考えたら、心が通じ合ってない親族というのは「気持ち悪いけど、死ぬまで縁が切れない」という、ある意味、幽霊より気持ち悪い存在なのかもしれないと思った。

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夏帆の夫・染谷将太は真壁のガイドに任命られた。
真壁の言いなりとなって「概念を奪わせても良い人間」を生贄として差し出し、真壁に重大な「概念」を奪われた彼らは廃人となる(もしくは死ぬ)。
生贄が染谷に選ばれた理由は「染谷が個人的に嫌ってる、上司とか嫌だった教師とか目についた奴」とか、それだけの理由。別に凄い悪人を選んでるわけでもない。
だから「自分が個人的な理由で選んだ生贄が眼の前で廃人になったり死亡する」の目の当たりにした事が原因で、彼は罪悪感を抱き精神的要因から衰弱して片手が激痛を覚えていく。
染谷は「宇宙人のガイドは、宇宙人に対して心の底から服従せず反抗心を抱くと衰弱していく」と思い込んで衰弱していっている。
後で真壁本人に「君の思い込みだよ」と言われても、染谷の心の弱さのほうが勝っていたせいか手の痛みは治らない。
妻である夏帆は「宇宙人が概念を奪う事の出来ない脳波の持ち主」だった。
それは夏帆が非常に強い女性だった事をデバフ能力化したものだろう。
彼女は、愛する夫を護る事を宣言して真壁に立ち向かう。
この辺は、さながらブラック企業や日本社会の軋轢に潰された夫を立ち直らせるために立ち上がった強い妻のように描かれる。

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真壁のパワーは増していき、指で触れなくても周囲の人物の「概念」を奪えるようになっていく。
そして「ガイドが連れてきた人間の概念だけ奪う」というルールも守らなくなったので明らかに邪悪になっていってるように見える。
彼が変わっていったのは恐らく「恐怖」の概念を奪って以降だと思う。
フィクションに出てくる悪役には、生まれついての純粋悪とかサイコパスなどのピュアイーヴィルがいるが、多くの悪人は心の弱さを悪行に変えていく悪人が多い(ジョジョの悪役とか‥現実世界の悪人とか嫌な奴の殆ども心が弱いだけの奴だろう)
そして真壁は、概念を奪えない女性・夏帆に興味を抱いて三角関係となり、
染谷は、黒沢清高橋洋が如何にも好きそうな「動き出したら止められない機械」で真壁を潰し、更に「羊たちの沈黙」めいた夏帆 vs.真壁のラストバトルを迎え、何時ものように世界が破滅して終わる。(本当は本作が終わった後の世界は破滅しないのだが、本作だけ観た場合「破滅して終わった」でいいだろう)

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黒沢映画のキャラと言えば、混乱した人物、アスペっぽい態度の男性、もっさりした女性‥大体そんな感じ。どんな女優が黒沢清映画の出演しても皆同じ様なもっさりした雰囲気の女性キャラになるが夏帆の場合、黒沢映画に出てない時でも黒沢映画の女性キャラみたいな雰囲気なので当然はまってた。
かっこいい画面のこと描くの忘れてた。夏帆が病院に行ったり夏帆の友達が病院に行った時などの、病院でカッコいい場面展開が何度かあった。曖昧な説明だが見ればわかるからいいだろ‥。
面白かったが去年、連続ドラマで観たとき全然面白くなかったのは何故だろう。
殆ど同じなので、やっぱり連続ドラマっていう形態が嫌いなんだろう。
クリーピー」が強烈すぎて苦手になってたが(というか香川照之がイキイキしてる)2年ぶりに黒沢清好きになれた。
次回作を検索したところ‥日本とウズベキスタン合作で、TVリポーター役の前田敦子ウズベキスタンをウロウロする「旅のおわり、世界のはじまり (2019)」って映画を来年やるらしい。ジャンル映画じゃなさそうなのが残念だが、楽しみにしていよう。

 

そんな感じでした

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「散歩する侵略者 (2017)」黒沢清/理由はよく分からんが黒沢映画の壊れた夫婦もの観ると物凄く胸に来る👉

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監督&脚本:黒沢清 脚本:田中幸子 原作:前川知大 英題:Before We Vanish
製作国:日本 上映時間:129分 シリーズ:「散歩する侵略者

 

同名の舞台劇を黒沢清が映画化した異色SFサスペンス映画。
90年代~2000年代は黒沢清信者状態だったが「叫」以降、幽霊が出なくなってからの黒沢清映画はあまりハマらず遠巻きに観る感じだったが、本作は久々にハマった。
やっぱり夫婦や愛情を描くにしても、本作みたいにSFやホラーなどのジャンルムービー要素があった方がいい‥と個人的に思う。ジャンルムービー要素がないと黒沢清特有の「不思議な日常描写」が悪目立ちする、と個人的に思います

 

 

Story
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街では、あらゆる概念がわからなくなってしまった人達による事件や事故が頻発していた。
加瀬鳴海長澤まさみ)も、まるで別人のように変ってしまった夫の真治松田龍平)に困惑していた。
ジャーナリストの桜井長谷川博己)は世間で起きている事件の原因を探ろうと、奇妙な青年・天野高杉真宙)と、一家惨殺した女子高生・立花あきら恒松祐里)を調査する。
そんな中、鳴海は真治から、桜井は天野から「自分は地球を侵略に来た、人間から概念を奪う宇宙人だ」と告白されるのだった――

 

 

 

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結論から言うとドラマ版や過去の黒沢映画よりかなり一般層にも受けいれられるようにかストーリーや表現など全てがわかりやすくなっていた。黒沢映画の中でもトップレベルでわかりやすい作品だったので入門用にいいかもしれない。
展開や描写やBGMが80年代B級SF映画っぽくて、黒沢監督作の過去作としては「CURE」とか「岸辺の旅」に似ている。黒沢映画によく出てくる壊れた夫婦と、自由に動ける中年男性によるダブル主人公。
話は、長澤まさみと、宇宙人に融合された松田龍平のストーリー。
長谷川博己が二人の宇宙人に密着取材してるストーリー。この二つが終盤クロスする。

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宇宙人は地球人の概念を奪って、それを自分のものにしていく。
たとえば「『仕事』って何?」と訊くと、訊かれた人間は催眠術にかかったかのようにぼーっとして「仕事」の概念を頭いっぱいに思い浮かべる。思い浮かべるとテレパシー能力も持ってるらしい宇宙人は思い浮かべきった事に気づき、人差し指で人間の額をチョンと突くと、その概念をGETできる。概念を奪われた人間は、その奪われた概念を永遠に失う。
たとえば長澤まさみの妹、前田敦子は姉と仲良かったのに、松田龍平に「家族」という概念を奪われると、もう姉である長澤まさみに触られるのも気にかけられるのも不快になってしまい立ち去ってしまう。
地球に来た彼ら、宇宙人は何もわからないので、地球人を一人「ガイド」にする。
そうして地球の知識を教わったり、世話をしてもらったり、他の人間から概念を奪う手伝いをしてもらったりする。
松田龍平は乗っ取った男の妻である長澤まさみを、少年&少女の宇宙人は自分たちを長谷川博己をガイドにする。
「私は地球を侵略しに来た宇宙人です。行動しやすくするためにガイドになってください」というのも無茶な話だが、そもそも彼らは人間と見分けがつかないので、長澤まさみ長谷川博己も当然、最初は信じない。
だが概念を奪う様子を見たり、暗躍する日本政府や自衛隊を見て徐々に信じるようになる。
それでは何故、彼ら人間は宇宙人だとわかってきても、強制されたわけでもないのに何故まだガイドを続けるのかと言うと、
長澤まさみは、完全に夫婦仲が冷めきった夫の代わりに、自分が世話しないと何も出来ない赤ん坊のような素直な精神の夫が現れたので、完全に夫婦仲が冷めきった夫の代わりに愛を育み直しているように見える。
長谷川博己はなんだろう?最初はジャーナリズム精神で行動を共にしていた。彼は長澤まさみ同様、現世に飽きていたように見える。妻子とも別れているし。やがて長谷川は自分をハメようとした日本政府や、宇宙人の侵略について訴えても信じようとしない市民に愛想を尽かし―まぁ、信じないのが普通だけど―最終的には嘘をつかず孤独に使命を全うしようとする青年宇宙人に自分を重ねたのか感化されていった。

 

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そんな経緯で長澤まさみは夫(の姿をした宇宙人)と共に行動する。
最初は、ただでさえ愛がなくなっていた夫が突然宇宙人になってしまいウンザリしていたのだが、宇宙人は概念を奪ってものにしない限り、情緒というものを持ち合わせていないのだが基本的に素直。
元の人間だった夫は嫌いで食べなかった食べ物もうまいうまいと食ってくれたり、長澤まさみを困らせるセクハラ上司の「仕事」の概念を奪って廃人にしたりと、宇宙人は別に長澤まさみを喜ばせようとしているわけではないのだが、結果的に彼女のためを思って行動しているかのように見える。そして彼は長澤まさみに「君の望みの夫になるよう努力するよ」と言う。
やがて彼女は、日本政府に見つかった夫(宇宙人)を守るため車で逃亡する。
そして世界が終わろうとする最終局面では、彼女は暖かい気持ちになり宇宙人に自分の大事なものを与える。そして夫(宇宙人)は‥。
そんな感じで、黒沢映画にしてはウェルメイドでホットな感じで終わる。
ジョン・カーペンターの「スターマン 愛・宇宙はるかに」にもちょっと似てる。
宇宙人侵略映画と、夫婦仲が壊れて妻には夫の事が宇宙人にしか見えなくなってしまった夫婦の破壊と再生の話にも見える。非常に分かりやすい。
あまりに明快なので、昔の黒沢信者だった時の自分なら気にいらなかったかもしれないが、今は特に思い入れないせいか、こういうわかりやすい方に行ったほうが良い気がした。
だけど「岸辺の旅」とかもそうだったけど「トウキョウソナタ」以降の黒沢清映画のもっさりしたリアリティある壊れかけ夫婦を観てると凄く胸にずーんと来るものがある。別に結婚とかしてないのだが何故か凄く重くて後を引く。
大抵、どちらかが‥もしくは双方の心が壊れていて、その停滞してるのに表面上は体裁を取り繕って家だけはめちゃくちゃ綺麗な、その感じがあまりにリアリティある(ように感じる)。黒沢監督の「恋愛描写」は、ぎこちなくて「無理しちゃって‥」感があるが、夫婦を描くと途端にガチリアルになる。
映画観て滅多にこんな気分にならないのだが黒沢清映画の壊れた夫婦を観た時だけ凄くヤバい気分になる。理由は自分でも良くわからないが深層心理の何かのスイッチや思い出を押されるんだろう。何か否が応でも「どんな人間も、どんな関係性もやがては終りが来る。しかも現実にはドラマチックには終わるのではなく、じめじめと湿っぽく終わる」という、あまり感じたくない事を感じさせられるからかもしれない。
あまりにズーンと来たので、観た直後は「うーん‥本作もイマイチか?」と感じたが、一夜経って感想を書いてるうちに、あまりにズーンと来たから観た直後はノレなかっただけだったんだなと翌日気付いた(「クリーピー」も、気にいらなかったと思い込んでたが本当は感銘を受けすぎたのかもしれん)
この夫婦の愛は、まるで無線での会話のように一方通行が繰り返されていて、その互いから発する愛の矢印が同時に発せられてぶつかり合う時は永遠にない、というのが凄く切ない。だけど、観終わってしばらく経つと「別に双方向でなくても、発信して受信される相手がいるだけで幸せなのかもしれない」と思わせられた。清は結構ロマンチック。
夫婦が凄く胸に来ただけに、長谷川博己が何だか良い意味で子供っぽい人物に感じる。昔の黒沢映画だったら確実にこの男だけがメイン主人公だった気がする(それと同様に、家庭を持った友人知人などから見たら僕の事も子供っぽい男に見えるんだろうなぁとも同時に思った)

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中盤の、長澤まさみ夫婦が病院にいたら厚生省の笹野高史が入ってきて、またカメラが夫婦に戻る長回しが凄くカッコよかった。
あと宇宙人JKがやたらと格闘したり銃撃したりとアクションするのが、「ビューティフル・ニュー・ベイエリア・プロジェクト」とか「Seventh Code」の経験が生きてるなぁと思った(小並感)。彼女が車に撥ねられて上から落ちてくるシーンも凄く良かった(最初の彼女が人形?)彼女はバイオレンス担当って感じで良かった。「寄生獣」に出てくる攻撃性の高い寄生されたキャラっぽい。
というか、昔から思ってるけど、黒沢監督独自の少数の人だけが楽しむような映画を極めるよりも、本格的なアクションとかメジャー大作とかを撮ってほしい。まぁ本作の方向か。
アンジャッシュ児島も凄く良かったし‥(「トウキョウソナタ」で、再ブレイク前の児島を起用してたけど、何で児島をいじめると面白いと知ってたんだろう?)
黒沢清の意地悪キャスティングの一つでしょうね。「アカルイミライ」の はなわ とか。「ドッペルゲンガー」のユースケみたいな「こいつをアホ役にしたら映えるぞ~」というよくあるやつ。
書き忘れたが長澤まさみはめちゃくちゃ良かったし(黒沢清映画に出たらどんな女優でも全く同じ雰囲気のもっさりツンデレ女性になるのだが彼女は、かなり良い加減だった)。
松田龍平も元々かわいらしい雰囲気で好きなので良かった(「予兆」の方では、染谷将太演じる夫がムカついて夏帆が気の毒になってくるので本作ほど楽しく観れなかった)
松田龍平が、引きこもりの青年から「家」という概念を奪うと、青年の引きこもりが治って活動的な青年になるのも面白かった。

 

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そんな感じで、僕はこれ結構好きだった。これを言っても仕方ないのはわかってるが、もう少し制作費があってゴージャスだったら良かったんだけど。。
何か、アカデミックな文章が全くないアホみたいな感想になったが、実際こう思ったのだから仕方ない。
「叫 (2006)」以降の長編映画だとこれが一番好きかも。
短編も合わせたら「ビューティフル・ニュー・ベイエリア・プロジェクト」が一番好きかな(これが長編だったら良かったのに‥)

 

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